――再生経営者としては、そうでなければいけません。
福永 実は、あんぱんに対する思い入れだけでなく、袋パンの製造における職人技神話にもメスを入れました。パンをつくるには、その日その時の気温、湿度、使う水の温度などの微妙な違いを個人で判断しながらつくらなければいけない、と社内では言い伝えられていました。私はそれらを基準・手順の見える化と数値化をして、基準・手順に沿って作業するように改めました。定められた基準と手順による製造プロセスへ転換させたのです。
――私も経営者のときにやりましたが、そういう変革は古手社員にとても評判が悪い。やる前は信じてもらえない。
福永 そうなんです。製造粗利や主要なKPIなどの数値結果が劇的に向上しています。基準・手順に沿った標準化された作業を導入した結果、製造ロスは半分に低減し、製造粗利は5%以上改善しています。加えて、従来の半数の営業担当者で、以前と同規模の売上を維持することもできています。
――大成果ですね。外部から来た経営者のほうが、こういう場面では強いです。
福永 基準・手順に基づく製造が、実は強み・こだわりを強化するために必要なことだという理解度を上げるために、日本酒の獺祭(だっさい)の製造方法や無印良品の店舗運営をモデル事例として、幹部社員と共有してきました。
獺祭の醸造元、旭酒造さんも職人技に頼らず、誰でも同じ仕上がりに仕込めるように醸造法を基準・手順として進化させたと聞きました。無印良品さんは、顧客サービスや陳列について基準・手順などのルールを決めて、いわばスーパー店長は不要だという状況をつくり上げてきました。当社もパンづくりにおいて、いつ、誰が担当でも美味しく仕上がるような状態を目指しています。
福永 社内ではまだ抵抗は少し残っていますが、私は一日に30万個前後ものパンを製造する「袋パンの中量生産」においては「職人技はいらない」と呼びかけています。その代わりに、「キムラヤスタンダード」をつくって、それを遵守してもらうようにしています。基準・手順に沿うことが、美味しい袋パンにつながっていることを理解してもらうためです。
(この項 続く)
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