日本のアマチュア・スポーツ界では長く、長幼の功というか、先輩・後輩関係による上位下達的で封建的な組織や人間関係が醸成されてきた。体育会的な組織のなかで育ってくると、先輩やコーチ、監督にはやみくもに服従してしまうようになる。その延長線上で、協会などの組織が決定、運営していることについては、それを不合理、不適正と感じても従ってしまう。
13年に女子柔道強化選手が監督の暴力を告発するという事件が起こった。このときは全日本柔道連盟のトップが総辞任する大問題となったが、告発したのは15名の匿名選手だった。当時は声を上げるにしても一人では難しく、さらに複数人で勇気を出して告発しても最後まで匿名だった。
この事件を振り返ってみると、今年はアスリートが顔を出してはっきり不合理を糾弾し始めた、画期的な年として記憶されることになるだろう。
今年のこの動きの引き金となった事件がある。それは昨年秋に勃発した「貴乃花騒動」である。暴力事件の被害者は弟子の貴ノ岩だったが、それを表沙汰にして大騒動にしたのが貴乃花親方だった。当初マスコミとコミュニケーションを取らなかったこともあって、むしろ批判、非難を浴びた親方だったが、断固として刑事事件に持ち込み、加害者の元横綱日馬富士を廃業にまで追い詰めた。現役トップの横綱、そして所属する組織である日本相撲協会を相手にして毅然として戦ったのである。
貴乃花親方のこの時の行動が、今年に入って他の競技団体で不当な状態に直面した選手や関係者へ、大きな勇気と示唆を与えたものと私は見ている。
(この項 続く)
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