最大で3500億円の産業革新機構の支援に対し、鴻海案が7000億円の支援を示したことが、ホンハイ側の経済合理性上の強みだった。ホンハイはそれに加えて液晶事業の存続、雇用の維持を提示した。前者はホンハイがシャープを手中にするための戦略的な目標なので当然だったわけだが、後者はその後、ホンハイの態度が転変しているので予断を許さない。
ホンハイ案にはもうひとつ、高橋経営陣の存続があった。高橋前社長が同案にすり寄ったのには、この要素がどれだけ大きかったのかについての分析報道はあまり見かけなかった。しかし、経営者上がりの私としては、意思決定における経営者の人間的要素は看過できないということを知っている。
高橋氏が2月の業績発表会で、支援先の決定について「今、分析などでリソースをより多くかけているのは鴻海のほうである」とした時の顔つきが「ドヤ顔である」、つまり不必要に自信を示していると評された。その後6月に結局、退任に追い込まれた。今となっては、この人の先見性とか見識を分析するに格好な、発表会見だったのではないか。
高橋氏は13年に着任早々、「社長がこんなにしんどいとは思わなかった」と報道陣に漏らしたのも脇が甘い。前任の三社長による「三頭政治」が一掃され、棚ボタ式に着任したサラリーマン社長だった。CEO(最高経営責任者)という重い責任に対するしっかりした覚悟がなかったことをみせてしまったコメントではないか。
危機存亡に際した企業にとって、覚悟と責任感のないサラリーマン経営者は無用の長物だ。高橋氏が社長でなかったほうが、日本の名門企業としてのシャープの晩年はもっと美しかったことだろう。
次回は「2016経営者残念大賞」で輝く第2位の経営者を発表する。
(この項 終わり)
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿