――そもそも第三世界の国で井戸を掘るというのは、どのような意味があるのですか。
松岡 現在の活動の契機になったのは、カンボジアで住民たちが泥水を沸かして使っているのを目撃したことでした。本当に茶色の水で、とても不衛生でした。私たちがお手伝いする井戸は昔ながらの手動ポンプ式の井戸ですが、ひとつ開削するとその集落全体で使えます。およそ500m四方の住民の人たちに共有してもらえます。
井戸1基掘ったことで、まず5歳以下の乳幼児の死亡率が劇的に減りました。発展途上国での乳幼児死亡の原因のひとつは不潔な水による下痢という現状があるのです。また、成人を含む死因の80%は不衛生な水によるとも聞いています。水が綺麗になったら、80%の病気が防げる可能性があります。
――掘削する国はカンボジアが多いのですか。
松岡 もちろん、いろいろな国で展開したいのですが。カンボジアは、まず私が最初にこの事業を思い立ったところですし、R.Tさんという、第1回PKO(国連平和維持活動)隊員としてカンボジアに地雷撤去のために赴任されて、定住なさった方がいます。この方がタイとの国境沿いにお住まいで、実際の井戸掘りのコーディネートなどなさってくれています。今現在も2カ所で掘ってもらっています。タイとの国境沿いのほかに、アンコールワットの奥地でも1カ所掘削中です。
――カンボジア以外では、どう展開なさってきたのですか。
松岡 バングラデシュでも手がけましたが、そこでは水質の問題が起こりました。現地で協力していただけるY.TさんとR.T.さんの存在が大きく、私の井戸掘り事業がカンボジアに集中してきました。彼らがいるので、私は新しい井戸が開削されるたびに現地を訪問するわけではありません。
(この項 続く)
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