――御社のリーフレットには、「世界地図は世界を救う」「もう戦争なんてやめよう!」という見出しがあります。すばらしいですね。
松岡 これらの実現を目指して、私は世界地図ビジネスを一生展開しようと思っています。
――商品としての世界地図ですが、いろいろなバージョンの企画やデザインは、どのように行っているのですか。
松岡 デザインや印刷は外部に委託します。各国の国境の表示は、その時現在での日本の外務省の表示を採用しています。各国の指標資料など、アカデミックな内容のチェックは専門家に委託して間違いのないように努めています。商品の企画も実質的に私だけでやっていますが、現在の悩みは販路開拓です。
――松岡代表は前職の時代からボランティアや社会貢献に尽力なさってきましたが、どのような経緯でそのようなことに関心をもたれたのですか。
松岡 月光仮面です。子供のときにテレビで見たヒーローです。「世のため、人のため」ということに強く憧れてきました。
――74歳でいらっしゃいますが、後継者は?
松岡 それがまた頭痛の種です。次男に期待したのですが、受けてもらえなくて。誰か後継者はいませんか。
――すばらしい事業・運動を展開なさっているので、ぜひ継続・発展を図ってください。本日はどうもありがとうございました。
松岡 ありがとうございました。
(この項 続く)
2018年3月13日火曜日
伊調馨パワハラ告発者と貴乃花親方、シンクロし合う「告発ラリー」(1)
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女子レスリングの伊調馨選手と栄和人強化本部長(AFP/アフロ) |
貴乃花親方のこの思い切った行動は、その約1週間前に女子レスリングの伊調馨選手が日本レスリング協会の栄和人強化本部長からパワハラを受けているとする告発状が、同じく同委員会に提出されていた事実が明るみに出たことと無関係ではないだろう。
前近代的な競技団体組織のなかで起こった2つの造反劇はまた、海の向こうで大きな動きとなっているセクハラ告発ムーブメントである「#MeToo」と軌を一にしている。権利意識に目覚めた被害者的立場の人たちが声を上げ始めている。告発された組織の側は自らの擁護に走っているが、社会人として私たちは声を上げた被害者側を強く支援したい。
(この項 続く)
2018年3月12日月曜日
61歳で起業、世界地図を売りまくり、発展途上国で井戸を掘りまくる松岡さんの野望(9)
――個人の篤志家なら、そのほうがいい場合もあるでしょう。たとえば私が毎年出す年賀状の数は200枚台ですが、個人が世界地図を5,000枚もらってしまったら始末に困ります。個人の方を巻き込むなら、むしろ枚数を減らしたほうがいいでしょう。
松岡 私は、世界に井戸を、綺麗な水をということで、その手段として世界地図ビジネスを始めたのですが、世界地図ビジネスを展開していくうちに、この商材でさらに大きな夢を追えることに気がつきました。
坂本龍馬が地球儀を見せられて自らの蒙を啓かれた、という話があります。子供たちに世界地図を見てもらい、自分の国だけではなく世界のことを知ってもらう、俯瞰してもらう。それによって、自分たちの国や地域で起きている紛争や戦争の愚かさに気がつくことになる。
ノーベル平和賞を受賞したパキスタンのマララ・ユスフザイさんは「1冊の本で世界を変えられる」と言いました。私は世界地図もそんな力を持っていると思います。イラクやシリア、またアルカイダの子供たちが世界地図を見て、「お父さん、戦争なんかやめよう」ということが起きればいいなと願っています。
(この項 続く)
松岡 私は、世界に井戸を、綺麗な水をということで、その手段として世界地図ビジネスを始めたのですが、世界地図ビジネスを展開していくうちに、この商材でさらに大きな夢を追えることに気がつきました。
坂本龍馬が地球儀を見せられて自らの蒙を啓かれた、という話があります。子供たちに世界地図を見てもらい、自分の国だけではなく世界のことを知ってもらう、俯瞰してもらう。それによって、自分たちの国や地域で起きている紛争や戦争の愚かさに気がつくことになる。
ノーベル平和賞を受賞したパキスタンのマララ・ユスフザイさんは「1冊の本で世界を変えられる」と言いました。私は世界地図もそんな力を持っていると思います。イラクやシリア、またアルカイダの子供たちが世界地図を見て、「お父さん、戦争なんかやめよう」ということが起きればいいなと願っています。
(この項 続く)
大成建設、リニア談合「否定」で検察に徹底抗戦…社員寮に資料隠匿疑惑、競合と「勉強会」(5)
欧米では、パーティーで競合会社に会ったら法務部にレポート
私は現役社長時代、アメリカの大手企業の日本法人社長を務めたことがあった。毎年、本社に各国の責任者が招聘されるのだが、その世界会議では数年おきに本社の企業内弁護士が演壇に立ち、アメリカの独占禁止法についてレクチャーした。それは、海外子会社の行動に対しても米国本社にペナルティが課せられるからであり、ひとたび独禁法違反が認定されると恐ろしく高額な罰金がその企業に課せられるからである。具体的には、弁護士から次のように注意された。
「パーティーで偶然、競合会社の幹部と会ったら、必ず相手の名前、肩書き、話した内容について本社の法務部にレポートすること。決して話していけないのは、当社や相手の価格やビジネス動向、自分が関与する市場の動向、将来見込みなどである」
つまり、パーティーで同業他社の名刺をもらったら、一目散に逃げろ、クビになるリスクと遭遇したと思え、ということだった。欧米の独禁法の怖さは、外国の企業、つまり日本企業にも適用されるということだ。実際に過去に北米やヨーロッパで数百億円単位の罰金を払わされた日本企業はいくつもある。そのため、国際的に展開していたり、輸出が多い日本企業のなかには、独禁法や不公正取引に対する知識や感覚を有しているところが多くなった。
しかし建設業界は国内向け事業の比重が高く、いわゆる「純ドメ(スティック)」体質が強いことから、不公正競争に対する理解が進んでいない。05年に4社が出した「談合決別宣言」はなんだったのか。まったく懲りない業界だ。
特捜部がまなじりを決して立件しようとする意気やよし、である。
(この項 終わり)
2018年3月11日日曜日
61歳で起業、世界地図を売りまくり、発展途上国で井戸を掘りまくる松岡さんの野望(8)
国際交流にも発展
――現地での日本人コーディネーター、協力者の存在が大きい、ということですね。
松岡 スムーズに井戸掘削を進める上では必須だと思います。
――現在は松岡代表の個人的知り合いだけで展開していますが、この事業は有意義なことから、できればJICA(国際協力機構)などと連携できるといいですね。JICAから第三世界の多くの国に日本人専門家が派遣され、常駐しているわけですから。
――代表の井戸掘りプロジェクトは、各国でとても感謝されているでしょうね。
松岡 カンボジアで開削した地域にカムリエン高校というのがあります。ここの校内に掘られた井戸は、青森県の八戸高校が当社の世界地図5,000枚をご購入いただいたことで寄付されました。この寄付が経緯となり、カムリエン高校と八戸学院光星高校が姉妹校となりました。カムリエン高校からチェンターさんという女生徒が八戸学院光星高校に留学してきて、さらに松山東雲女子大学を卒業し、その後、愛媛県内の企業に就職して在日しています。
――国際交流にも発展したわけですね。そういう現地の衛生確保に貢献したい、という企業や個人は結構いると思います。世界地図を貴社から5,000枚購入することでそれが実現できるわけですね。もっと知られてよいことだと思います。
松岡 前述の通り海外井戸掘りへの直接寄付というかたちもお受けしていまして、その場合は工事難度によって20万円から30万円の寄付をお受けして、そのお礼として世界地図を500枚さしあげる、というスキームもあります。
(この項 続く)
【伊調馨パワハラ告発】レスリング協会、「即刻否定」直後に「調査」への疑問(6)
今回のパワハラ疑惑の告発者は、日馬富士による暴行事件が公けになる経緯と結果を見て勇気付けられ背中を押されたということも、告発状が提出されたタイミング(1月18日)から推察される。
日馬富士による暴行事件の際は、メディアに東京相撲記者クラブ会友や相撲ジャーナリストが登場した。彼らの大部分は相撲協会と共存共栄しているような立場であり、得てして相撲協会寄り、八角理事長擁護、貴乃花親方批判というスタンスに立っていた。そのような体制側からの指弾を浴びながら毅然として刑事事件としての立件を実現した貴乃花親方の見識は高く評価されるべきだ。
今回の伊調選手パワハラ疑惑についても、日馬富士による暴行事件がたどったような、社会的常識に則ったかたちでの解決に向かってほしい。組織の上位者からのハラスメントに対して、毅然として声を上げる風潮が後押しされるべきだ。
(この項 終わり)
日馬富士による暴行事件の際は、メディアに東京相撲記者クラブ会友や相撲ジャーナリストが登場した。彼らの大部分は相撲協会と共存共栄しているような立場であり、得てして相撲協会寄り、八角理事長擁護、貴乃花親方批判というスタンスに立っていた。そのような体制側からの指弾を浴びながら毅然として刑事事件としての立件を実現した貴乃花親方の見識は高く評価されるべきだ。
今回の伊調選手パワハラ疑惑についても、日馬富士による暴行事件がたどったような、社会的常識に則ったかたちでの解決に向かってほしい。組織の上位者からのハラスメントに対して、毅然として声を上げる風潮が後押しされるべきだ。
(この項 終わり)
大成建設、リニア談合「否定」で検察に徹底抗戦…社員寮に資料隠匿疑惑、競合と「勉強会」(4)
「あの工区、技術的に難しいな」と、A社とB社の両方の幹部が述べたとする。A社のほうは本音で言ったとしたら、その工区の受注意欲の低さを吐露している。B社はただ相槌を打ち、「A社の応札の可能性は低いので、ウチは少し高く札を入れてもいいだろう」と、有能なビジネスパーソンならそう思わなければいけない。これはそのまま、不公正競争の端緒となっている。
4社でリニア工事を担当し、今回の談合疑惑に関与したとされるのは、いずれも「理系技術者」で技術的興味が強いとされる幹部たちだ。リニア関連工事に関する技術情報を共有しようとする意欲が強かったと推測される。逮捕された大成建設の大川容疑者と、談合を認めた大林組の元副社長は早稲田大学理工学部の同級生で、同窓会やゴルフコンペなどで定期的に会っていたとされる(3月3日付読売新聞記事より)。
「会社は談合防止のルールをつくっている。不正が事実だとすれば、個人の問題だと思う」(同記事より/鹿島社員のコメント)
このコメントはこの業界の不公正取引への意識の低さを物語っている。元同級生の2人が特定の工事について情報を交換、共有することは、個人間の親睦ではなく企業としての不正行為なのだ。大手ゼネコン4社は、たび重なっていた談合事件を反省して2005年12月に「談合決別宣言」を出した。ところが4社はリニア工事が始まる前後から、将来受注を目指す工区ごとに工法や地質の研究を行う「勉強会」を開いてきたという。
「談合しなくても、どのゼネコンがどの工区の受注を目指しているのか周知の事実だった」(同記事より/ゼネコン関係者)
つまり、「勉強会」という名の談合だったことになる。
(この項 続く)
4社でリニア工事を担当し、今回の談合疑惑に関与したとされるのは、いずれも「理系技術者」で技術的興味が強いとされる幹部たちだ。リニア関連工事に関する技術情報を共有しようとする意欲が強かったと推測される。逮捕された大成建設の大川容疑者と、談合を認めた大林組の元副社長は早稲田大学理工学部の同級生で、同窓会やゴルフコンペなどで定期的に会っていたとされる(3月3日付読売新聞記事より)。
「会社は談合防止のルールをつくっている。不正が事実だとすれば、個人の問題だと思う」(同記事より/鹿島社員のコメント)
このコメントはこの業界の不公正取引への意識の低さを物語っている。元同級生の2人が特定の工事について情報を交換、共有することは、個人間の親睦ではなく企業としての不正行為なのだ。大手ゼネコン4社は、たび重なっていた談合事件を反省して2005年12月に「談合決別宣言」を出した。ところが4社はリニア工事が始まる前後から、将来受注を目指す工区ごとに工法や地質の研究を行う「勉強会」を開いてきたという。
「談合しなくても、どのゼネコンがどの工区の受注を目指しているのか周知の事実だった」(同記事より/ゼネコン関係者)
つまり、「勉強会」という名の談合だったことになる。
(この項 続く)
2018年3月10日土曜日
61歳で起業、世界地図を売りまくり、発展途上国で井戸を掘りまくる松岡さんの野望(7)
――そもそも第三世界の国で井戸を掘るというのは、どのような意味があるのですか。
松岡 現在の活動の契機になったのは、カンボジアで住民たちが泥水を沸かして使っているのを目撃したことでした。本当に茶色の水で、とても不衛生でした。私たちがお手伝いする井戸は昔ながらの手動ポンプ式の井戸ですが、ひとつ開削するとその集落全体で使えます。およそ500m四方の住民の人たちに共有してもらえます。
井戸1基掘ったことで、まず5歳以下の乳幼児の死亡率が劇的に減りました。発展途上国での乳幼児死亡の原因のひとつは不潔な水による下痢という現状があるのです。また、成人を含む死因の80%は不衛生な水によるとも聞いています。水が綺麗になったら、80%の病気が防げる可能性があります。
――掘削する国はカンボジアが多いのですか。
松岡 もちろん、いろいろな国で展開したいのですが。カンボジアは、まず私が最初にこの事業を思い立ったところですし、R.Tさんという、第1回PKO(国連平和維持活動)隊員としてカンボジアに地雷撤去のために赴任されて、定住なさった方がいます。この方がタイとの国境沿いにお住まいで、実際の井戸掘りのコーディネートなどなさってくれています。今現在も2カ所で掘ってもらっています。タイとの国境沿いのほかに、アンコールワットの奥地でも1カ所掘削中です。
――カンボジア以外では、どう展開なさってきたのですか。
松岡 バングラデシュでも手がけましたが、そこでは水質の問題が起こりました。現地で協力していただけるY.TさんとR.T.さんの存在が大きく、私の井戸掘り事業がカンボジアに集中してきました。彼らがいるので、私は新しい井戸が開削されるたびに現地を訪問するわけではありません。
(この項 続く)
松岡 現在の活動の契機になったのは、カンボジアで住民たちが泥水を沸かして使っているのを目撃したことでした。本当に茶色の水で、とても不衛生でした。私たちがお手伝いする井戸は昔ながらの手動ポンプ式の井戸ですが、ひとつ開削するとその集落全体で使えます。およそ500m四方の住民の人たちに共有してもらえます。
井戸1基掘ったことで、まず5歳以下の乳幼児の死亡率が劇的に減りました。発展途上国での乳幼児死亡の原因のひとつは不潔な水による下痢という現状があるのです。また、成人を含む死因の80%は不衛生な水によるとも聞いています。水が綺麗になったら、80%の病気が防げる可能性があります。
――掘削する国はカンボジアが多いのですか。
松岡 もちろん、いろいろな国で展開したいのですが。カンボジアは、まず私が最初にこの事業を思い立ったところですし、R.Tさんという、第1回PKO(国連平和維持活動)隊員としてカンボジアに地雷撤去のために赴任されて、定住なさった方がいます。この方がタイとの国境沿いにお住まいで、実際の井戸掘りのコーディネートなどなさってくれています。今現在も2カ所で掘ってもらっています。タイとの国境沿いのほかに、アンコールワットの奥地でも1カ所掘削中です。
――カンボジア以外では、どう展開なさってきたのですか。
松岡 バングラデシュでも手がけましたが、そこでは水質の問題が起こりました。現地で協力していただけるY.TさんとR.T.さんの存在が大きく、私の井戸掘り事業がカンボジアに集中してきました。彼らがいるので、私は新しい井戸が開削されるたびに現地を訪問するわけではありません。
(この項 続く)
【伊調馨パワハラ告発】レスリング協会、「即刻否定」直後に「調査」への疑問(5)
貴乃花親方の見識と矜持
さて、一見無関係のような2つの事案だが、今回のパワハラ疑惑が公けになったタイミングから、私は相関があると見ている。伊調選手が練習場などについて不利な立場に置かれていたことや、栄氏が田南部力コーチにモスクワでの世界選手権の折にホテルのロビーで「伊調のコーチをしないように」と発言したと告発されているが、「レスリング関係者の間では知られた話」というコメントが多数報じられている。これはつまり、「レスリング界の人々はみんな知っているのに、知らないふりをしている」「悪いことが糾されていない」ということだ。
多くの関係者が知っている事実が告発によって公けとなったという構図は、日馬富士による暴行事件と同じではないか。暴行事件は昨年11月から12月にかけて大きく報じられ続けた。被害者側である貴乃花親方への非難もあったが、加害者の日馬富士は引退というペナルティを負い、傷害罪で略式起訴され、鳥取簡裁から略式命令を受けて罰金50万円を納付している。
(この項 続く)
大成建設、リニア談合「否定」で検察に徹底抗戦…社員寮に資料隠匿疑惑、競合と「勉強会」(3)
この抗議文が提出されたところ、特捜部はそれに答えるどころか(その義務はもちろんない)、2日夜も第3回目の同社への立ち入り捜査を行ったのである。これは異例のこととされ、大成建設に対する特捜部の疑惑は以前から強いものがあったと推測される行動だ。
疑惑を裏付けるような大成建設側の行動もあった。昨年12月に特捜部の捜査が始まってから、談合案件に関連する資料や書類を社員寮に移動し、2月に行われた社員寮への捜索で資料が押収された。
同社は検察の調べに対し「罰金付きの守秘義務を課せられていた上、今後の工事で参考になるので移動させただけ」などと隠匿の意図を否定しているというが、常識的に通用する説明ではなく、隠匿と批判されても仕方ないだろう。
前述のとおり、大成建設と鹿島は、「4社間の接触はあったが、単なる情報交換だった」として談合を否定している。もし不公正取引に厳しい欧米であれば、とても通らない理屈だ。
(この項 続く)
疑惑を裏付けるような大成建設側の行動もあった。昨年12月に特捜部の捜査が始まってから、談合案件に関連する資料や書類を社員寮に移動し、2月に行われた社員寮への捜索で資料が押収された。
同社は検察の調べに対し「罰金付きの守秘義務を課せられていた上、今後の工事で参考になるので移動させただけ」などと隠匿の意図を否定しているというが、常識的に通用する説明ではなく、隠匿と批判されても仕方ないだろう。
「勉強会」がいけない
前述のとおり、大成建設と鹿島は、「4社間の接触はあったが、単なる情報交換だった」として談合を否定している。もし不公正取引に厳しい欧米であれば、とても通らない理屈だ。
(この項 続く)
2018年3月9日金曜日
61歳で起業、世界地図を売りまくり、発展途上国で井戸を掘りまくる松岡さんの野望(6)
すでに392基の井戸を開削
――松岡代表が世界地図ビジネスを創業・展開なさっているのは、世界に井戸を掘ろう、提供しようという理想がおありになったわけですね。
松岡 世界地図のビジネス展開は、実はその活動の原資を稼ぐことが目的です。私どもがお手伝いした海外での井戸掘削は現在、392基が完成しています。
――世界地図ビジネスの展開において、井戸掘りと関連づけたりされているのでしょうか。
松岡 地図ビジネスの展開では、あまり井戸掘りのことは訴求していませんが、オリジナル地図5,000部をご発注いただけると、その売上約60万円で海外に井戸を1基開削できます。その井戸には記念プレートを設置し、ご発注者のお名前を「寄贈者」として刻ませていただきます。
――直接寄付する、ということもできるのですか。
松岡 はい。個人で寄付していただいて、井戸の開削式にお出かけになった篤志家の方もいらっしゃいました。
(この項 続く)
【伊調馨パワハラ告発】レスリング協会、「即刻否定」直後に「調査」への疑問(4)
今回被害者とされる伊調選手、暴行事件の被害者である貴ノ岩は、個人競技を闘うアスリートという点で共通している。加害者とされたのは、今回は栄氏、前回は日馬富士で、いずれも組織のなかで大きな権力あるいは影響力を持っている人物である。敬意を持って遇され一目置かれているので、被害者よりも防衛的に扱われ、あるいは忖度が働いているような存在と見ることができる。
組織として対応しているのは、前者ではレスリング協会、後者では日本相撲協会で、格闘競技の協会だ。
レスリング協会は前述のとおり「事実はございません」との見解を示し、相撲協会の八角理事長は貴乃花親方に被害届を取り下げるよう圧力を掛けたと貴乃花親方自身が証言している。いずれも組織防衛的に被告発者の権益を守るような言動をして、結果として告発者や被害者の立場を軽視するかたちで対応していた。
被害者とされる当事者の対応も興味深い。伊調選手は前出「週刊文春」の取材に対してパワハラの事実を認めているものの、報道直後に所属会社を通じて「告発状については一切関わっておりません」との声明を出した。貴ノ岩は、事件の翌日わざわざ日馬富士に謝罪し、傷を押して稽古を行ったと報じられている。
狭いムラ社会であるスポーツ界で生きる選手たちは、「その後」のことを考えて、事態を荒立てるのをためらう傾向が強いようだ。
(この項 続く)
組織として対応しているのは、前者ではレスリング協会、後者では日本相撲協会で、格闘競技の協会だ。
レスリング協会は前述のとおり「事実はございません」との見解を示し、相撲協会の八角理事長は貴乃花親方に被害届を取り下げるよう圧力を掛けたと貴乃花親方自身が証言している。いずれも組織防衛的に被告発者の権益を守るような言動をして、結果として告発者や被害者の立場を軽視するかたちで対応していた。
被害者とされる当事者の対応も興味深い。伊調選手は前出「週刊文春」の取材に対してパワハラの事実を認めているものの、報道直後に所属会社を通じて「告発状については一切関わっておりません」との声明を出した。貴ノ岩は、事件の翌日わざわざ日馬富士に謝罪し、傷を押して稽古を行ったと報じられている。
狭いムラ社会であるスポーツ界で生きる選手たちは、「その後」のことを考えて、事態を荒立てるのをためらう傾向が強いようだ。
(この項 続く)
大成建設、リニア談合「否定」で検察に徹底抗戦…社員寮に資料隠匿疑惑、競合と「勉強会」(2)
大林組と清水建設は談合を認めた
リニア工事で今回検察側が特に絞って捜査を進めているのが、品川新駅と名古屋新駅の工事だという。いずれも技術的難易度が高く、大手4社しか施工能力がないとされる。昨年12月に特捜部が為計業務妨害容疑で大林組を捜査したのが、立件への契機となった。4社のうち、大林組と清水建設は談合を認め、1月までに独禁法の課徴金減免制度(リーニエンシー)により、公正取引委員会に違反を自主申告している。
ところが、この談合に加わったとされ、今回幹部が逮捕に至った大成建設と鹿島では、両新駅工事の受注に至っていない。それだけに、両社は2駅に関する談合をしていないとして、談合参画疑惑を一貫して否定してきた。
特に大成建設は特捜部の捜査に対して強く反発していると見受けられ、特捜部との対立、対決とまで呼べる状況が醸成されてきた。大成建設に対する特捜部の立ち入り捜査が1度で済まず、2月1日に2回目が実施された。その翌2日、同社の弁護人が「捜査は大成関係者に圧力を加えるものである」などとして特捜部に抗議文を提出し、次のように捜査の問題点を指摘している。
・検察官が、大成の委託を受けた弁護士や社内弁護士のPCを押収したり、社員に聴取した弁護用の記録文書を押収した。
・検察官が役職員を社長室に呼び出し、「社長の前でも嘘をつくのか!」「ふざけるな!」などと威圧的な態度を取り、検察に有利な証言を強要しようとした。
(この項 続く)
2018年3月8日木曜日
【伊調馨パワハラ告発】レスリング協会、「即刻否定」直後に「調査」への疑問(3)
「まず、当協会が伊調選手の練習環境を不当に妨げ、制限した事実はございません。同様に、当協会が田南部力男子フリースタイル日本代表コーチに対し、伊調選手への指導をしないよう、不当な圧力をかけた事実もございません」
こういう文章は「木で鼻をくくったような」と評することができる。
問題の告発文は、同協会幹部のパワハラ疑惑を糾弾したものだ。このレスリング協会の声明直後の3月2日、林芳正文部科学相は同協会が伊調選手と栄氏に調査を行うと発表したが、同協会は「事実はございません」とする見解を出す前に、指弾されている栄氏の行動がどうだったのか、それに対する事実確認や見解の表明が必要だったといえよう。報道が明らかとなった後、短時間で出された「見解」なら、「これから十全に調査する」という表現が最低限の誠意ある見解といえる。
ちなみに日本レスリング協会副会長である馳浩元文部科学大臣は、「私たちと強化本部長、伊調選手が一緒にテーブルを囲んで話をすれば済む話だと基本的に思っている」との見解を示している。
今回の事件と、前述の日馬富士による暴行事件が構造的にどのように似ているのか。プレイヤーズ・セオリー(登場人物と役割)によって見てみよう。
(この項 続く)
こういう文章は「木で鼻をくくったような」と評することができる。
問題の告発文は、同協会幹部のパワハラ疑惑を糾弾したものだ。このレスリング協会の声明直後の3月2日、林芳正文部科学相は同協会が伊調選手と栄氏に調査を行うと発表したが、同協会は「事実はございません」とする見解を出す前に、指弾されている栄氏の行動がどうだったのか、それに対する事実確認や見解の表明が必要だったといえよう。報道が明らかとなった後、短時間で出された「見解」なら、「これから十全に調査する」という表現が最低限の誠意ある見解といえる。
ちなみに日本レスリング協会副会長である馳浩元文部科学大臣は、「私たちと強化本部長、伊調選手が一緒にテーブルを囲んで話をすれば済む話だと基本的に思っている」との見解を示している。
相撲協会もレスリング協会もムラ社会
今回の事件と、前述の日馬富士による暴行事件が構造的にどのように似ているのか。プレイヤーズ・セオリー(登場人物と役割)によって見てみよう。
(この項 続く)
大成建設、リニア談合「否定」で検察に徹底抗戦…社員寮に資料隠匿疑惑、競合と「勉強会」(1)
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山梨リニア実験線で試験中のL0系(「Wikipedia」より/Hisagi) |
両容疑者は「受注希望の工事について意見交換はしたが、談合はしていない」と容疑を否認している。鹿島は「誠に遺憾であり、関係者に多大な心配をかけていることを深くおわび申し上げる」とコメント。大成建設は「25回、約3カ月にわたり任意で取り調べに応じているにもかかわらず逮捕された」「到底承服しかねる」とコメントし、逮捕への反発を露わにした。
大成建設幹部が東京地検特捜部による任意の事情聴取に対し、談合があったことを認める供述をしているという一部報道もあるが、現時点で両社の会社としての主張は、「談合をしたとされる4社間で接触はあったが、それは単なる情報交換で、談合して受注となった実績はない」というものだ。しかし、実は競合会社が接触して情報交換すること自体が、不公正競争だとみなされる可能性もある。不公正取引に厳しい欧米のビジネス規範に学ばなければならない。
(この項 続く)
2018年3月7日水曜日
61歳で起業、世界地図を売りまくり、発展途上国で井戸を掘りまくる松岡さんの野望(5)
――広告媒体ということなので、販売対象は企業ですね。
松岡 塾、学校、それから銀行や企業、JICA(国際協力機構)などの国際団体が毎年購入、配布してくれています。ロータリークラブやライオンズクラブでも購入していただいています。それぞれの顧客や関係先に配っていただいて、世界地図を見る習慣を付けてもらいたいと思っています。
学校なら家庭に配るので子供が世界を知るきっかけになります。トイレに貼られることも多いですね。
――広告媒体であり、啓蒙・教育媒体というわけですね。さすがに元教育者だと思います。
松岡 「読み書きそろばん」と言いますが、私は「読み書きそろばん、世界地図」と言っているんですね。世界地図を見ていることにより、知識が深まるだけでなく、世界への興味が湧き、大きな夢が育つのです。世界の人々に世界地図を見る習慣を持ってもらいたい、と願っています。
坂本龍馬が勝海舟の暗殺を企てていたことがありました。ところが地球儀を見せられたことにより、日本の置かれた現状に気がついて、その愚挙を取りやめた、という話が伝わっています。世界の広さを知った龍馬自身が攘夷論者から開国論者に変わったことで、明治維新が成功し植民地にならずにすみました。
――世界地図に関するビジネスは御社独占なのですか。
松岡 独占ではありませんが、弊社はフルカスタマイズと名入れができる世界地図の制作販売について、最初に実用新案登録を行った会社であり、その世界地図の制作販売だけを行っています。そんな会社はほかに聞いたことがありません。
また、いろんな国にも行きましたが、細かく調べるような世界地図や地図帳はあっても、シンプルで楽しい世界地図はないので、弊社はシンプルで楽しく見たくなるような世界地図を考えて制作しています。
――それでは、英語バージョンなども展開なさったらいかがですか。
松岡 実は商品としては開発しており、海外での販路開拓を始めたばかりで、越境ECサイトも昨年末に公開したところです。
――どんな価格体系なのですか。
松岡 国内では500枚からお受けしていて、地図の下の段を自由につくれます。全体をオリジナル版でご発注いただくには5,000部以上からですが、その料金は60万円ほどです。この60万円のなかから、カンボジアでネーム入りの井戸を1つ寄付することができます。
(この項 続く)
松岡 塾、学校、それから銀行や企業、JICA(国際協力機構)などの国際団体が毎年購入、配布してくれています。ロータリークラブやライオンズクラブでも購入していただいています。それぞれの顧客や関係先に配っていただいて、世界地図を見る習慣を付けてもらいたいと思っています。
学校なら家庭に配るので子供が世界を知るきっかけになります。トイレに貼られることも多いですね。
――広告媒体であり、啓蒙・教育媒体というわけですね。さすがに元教育者だと思います。
松岡 「読み書きそろばん」と言いますが、私は「読み書きそろばん、世界地図」と言っているんですね。世界地図を見ていることにより、知識が深まるだけでなく、世界への興味が湧き、大きな夢が育つのです。世界の人々に世界地図を見る習慣を持ってもらいたい、と願っています。
坂本龍馬が勝海舟の暗殺を企てていたことがありました。ところが地球儀を見せられたことにより、日本の置かれた現状に気がついて、その愚挙を取りやめた、という話が伝わっています。世界の広さを知った龍馬自身が攘夷論者から開国論者に変わったことで、明治維新が成功し植民地にならずにすみました。
――世界地図に関するビジネスは御社独占なのですか。
松岡 独占ではありませんが、弊社はフルカスタマイズと名入れができる世界地図の制作販売について、最初に実用新案登録を行った会社であり、その世界地図の制作販売だけを行っています。そんな会社はほかに聞いたことがありません。
また、いろんな国にも行きましたが、細かく調べるような世界地図や地図帳はあっても、シンプルで楽しい世界地図はないので、弊社はシンプルで楽しく見たくなるような世界地図を考えて制作しています。
――それでは、英語バージョンなども展開なさったらいかがですか。
松岡 実は商品としては開発しており、海外での販路開拓を始めたばかりで、越境ECサイトも昨年末に公開したところです。
――どんな価格体系なのですか。
松岡 国内では500枚からお受けしていて、地図の下の段を自由につくれます。全体をオリジナル版でご発注いただくには5,000部以上からですが、その料金は60万円ほどです。この60万円のなかから、カンボジアでネーム入りの井戸を1つ寄付することができます。
(この項 続く)
【伊調馨パワハラ告発】レスリング協会、「即刻否定」直後に「調査」への疑問(2)
その告発状は伊調選手本人が出したものではなく、いわば事態に憤慨した複数のレスリング関係者が提起したという。そのなかには、オリンピック出場経験のある選手もいるそうだが、告発者は表に出ることはなく、貞友義典弁護士が代理人となっている。
「この告発状は、五輪出場選手を含む複数の協会関係者から依頼され、作成したものです。(略)しかし内閣府は『参考にする』と言うのみで、一ヶ月以上経っても調査に動く気配すらありません」(貞友弁護士、「週刊文春」<文芸春秋/3月8日号>より)
告発状の概要はすでに大きく報じられているので、ここでは告発されたほうの対応に触れておきたい。告発されたのは、伊調選手の恩師でもある栄氏だ。栄氏は五輪女子金メダリストを複数輩出している至学館大学レスリング部の監督であり、日本レスリング協会で男女を統括する強化本部長でもある。いわばレスリング界で一定の権力を持つ。
告発状の存在が報道され、大きな話題となってすぐ、日本レスリング協会は3月1日に「見解」を発表した。一部を抜粋する。
(この項 続く)
「この告発状は、五輪出場選手を含む複数の協会関係者から依頼され、作成したものです。(略)しかし内閣府は『参考にする』と言うのみで、一ヶ月以上経っても調査に動く気配すらありません」(貞友弁護士、「週刊文春」<文芸春秋/3月8日号>より)
告発状の概要はすでに大きく報じられているので、ここでは告発されたほうの対応に触れておきたい。告発されたのは、伊調選手の恩師でもある栄氏だ。栄氏は五輪女子金メダリストを複数輩出している至学館大学レスリング部の監督であり、日本レスリング協会で男女を統括する強化本部長でもある。いわばレスリング界で一定の権力を持つ。
告発状の存在が報道され、大きな話題となってすぐ、日本レスリング協会は3月1日に「見解」を発表した。一部を抜粋する。
(この項 続く)
2018年3月6日火曜日
【伊調馨パワハラ告発】レスリング協会、「即刻否定」直後に「調査」への疑問(1)
61歳で起業、世界地図を売りまくり、発展途上国で井戸を掘りまくる松岡さんの野望(4)
広告媒体であり、啓蒙・教育媒体
――お持ちいただいた世界地図を拝見します。各国の中に、それぞれのお国言葉が書き込まれていますね。
松岡 これは『世界の言葉で「ありがとう」』という商品です。地図全体の大きさは縦535ミリ、横775ミリのなかで、下部の縦75ミリ幅で広告や、購買主のメッセージなどを入れてもらいます。
――つまり壁貼り広告媒体ですね。
松岡 その通りです。貼られている期間が長いし、同じ人たちが繰り返し見るので、大きな訴求効果があります。
――メッセージのほかに、その年のカレンダーをあしらったものもありますね。
松岡 はい。カレンダーを表示すると、その年はずっと貼っていただき、見ていただく、ということになります。売れ筋商品としてはほかに、『すばらしい国 日本』(各国との各種比較指標を掲げている)、『みんなで守ろう美しい地球』(各国の環境指標)、『日本と世界の偉人達』(主要国で輩出した偉人の顔イラスト)、『世界遺産めぐり』などあります。そのほか発注主のご要望に応じてオリジナルな内容を盛り込むこともお受けしています。
(この項 続く)
2018年3月5日月曜日
61歳で起業、世界地図を売りまくり、発展途上国で井戸を掘りまくる松岡さんの野望(3)
――それで、すぐに世界地図ビジネスに転進なさったのですか。
松岡 私は実はボランティアをするのが大好きだったんですね。ですからできた自分の時間をボランティア活動に使おう、と思いました。
――それが、なぜ世界地図ビジネスへつながったのですか。
松岡 亡くなってしまいましたが、カンボジアに内田弘慈さんという友人がいました。現地で孤児院を開設、運営していた篤志家でした。
内田さんのところに遊びに行ったら、現地では泥水を沸かして飲んでいるんですね。とても驚き、考えさせられました。それで、これは井戸を掘ってあげなければいけない、と思ったわけです。
私の経歴だと、普通は「学校をつくってあげよう」ということもあったかもしれませんが、その前に「なんとか綺麗な水を飲んでもらおう」と思いました。井戸のほうが優先順位が高い、と強く思いました。
――その原資として、御社を創業されたのですか?
松岡 自分の塾(財源)を手放してしまったことを後悔しました。しかし、嘆いていても仕方がないので、可能性を見いだしていた世界地図で収益をあげて、第三世界への井戸提供に寄与しよう、と思ったのです。
松岡 当社では、定款に最初から「世界地図の制作・販売」と並んで「井戸を掘ること」を謳いました。結論から言うと、井戸掘りの資金稼ぎのためにつくった会社です。
(この項 続く)
松岡 私は実はボランティアをするのが大好きだったんですね。ですからできた自分の時間をボランティア活動に使おう、と思いました。
――それが、なぜ世界地図ビジネスへつながったのですか。
松岡 亡くなってしまいましたが、カンボジアに内田弘慈さんという友人がいました。現地で孤児院を開設、運営していた篤志家でした。
内田さんのところに遊びに行ったら、現地では泥水を沸かして飲んでいるんですね。とても驚き、考えさせられました。それで、これは井戸を掘ってあげなければいけない、と思ったわけです。
私の経歴だと、普通は「学校をつくってあげよう」ということもあったかもしれませんが、その前に「なんとか綺麗な水を飲んでもらおう」と思いました。井戸のほうが優先順位が高い、と強く思いました。
――その原資として、御社を創業されたのですか?
松岡 自分の塾(財源)を手放してしまったことを後悔しました。しかし、嘆いていても仕方がないので、可能性を見いだしていた世界地図で収益をあげて、第三世界への井戸提供に寄与しよう、と思ったのです。
松岡 当社では、定款に最初から「世界地図の制作・販売」と並んで「井戸を掘ること」を謳いました。結論から言うと、井戸掘りの資金稼ぎのためにつくった会社です。
広告媒体であり、啓蒙・教育媒体
(この項 続く)
2018年3月4日日曜日
61歳で起業、世界地図を売りまくり、発展途上国で井戸を掘りまくる松岡さんの野望(2)
第3世界に井戸を掘るために会社を興した
――世界地図という社名がユニークです。
松岡代表(以下、松岡) 世界地図の製造・販売以外は何もしていません。創業して12年になります。今まで延べ550万枚の世界地図を販売してきました。
――御社の世界地図の現物がここにありますが、結構大きい。
松岡 標準的なものは、新聞紙を見開きにした大きさです。これよりやや小さいものも商品としてはありますが、大半は新聞紙見開き大のものをご購入いただいています。
――地球儀や日本地図は手がけていないのですか。
松岡 はい、当社は名前が示す通り、壁貼り型の世界地図一本です。
――松岡代表は74歳でいらっしゃるので、御社を創業なさったのは61歳のときですね。どんな経緯で創業なさったのですか。
松岡 四国の松山市で学習塾と予備校を長く経営していました。その時から、世界地図を生徒募集の販促物として活用していました。それで、世界地図を貼ってもらうということの効用の大きさに気がついたのです。生徒募集でも実際とても効果がありました。毎年松山市を中心に愛媛で10万枚を特に小中学校に配布して、自宅や教室に貼ってもらったのです。
――どのくらいの規模の塾を経営なさっていたのですか。
松岡 3,000名の生徒を集めていまして、県下で2番目の規模でした。東進衛星予備校のフランチャイズにもなっていまして、東進予備校傘下のフランチャイズ塾としては全国最優秀加盟校として10年間連続全国1位表彰されています。
――大成功なさっていたのですね。
松岡 60歳を過ぎましたので、塾を東進の運営元であるナガセに引き継いでもらい、これからは自分の時間を持とう、と思ったわけです。
――それで、すぐに世界地図ビジネスに転進なさったのですか。
(この項 続く)
2018年3月3日土曜日
61歳で起業、世界地図を売りまくり、発展途上国で井戸を掘りまくる松岡さんの野望(1)
株式会社世界地図代表・松岡功(まつおか いさお):愛媛県松山市出身。1943年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。30年間、塾・予備校(生徒数3,000名)を経営。「社会に貢献する子供を創りたい」という理念をかかげ、多くの若者を世の中に送り出す。2006年に第二の人生をスタートさせ、水不足の発展途上国への「井戸掘り活動」と、その資金稼ぎの「世界地図の普及」に賭ける。世界地図は「人々に夢と希望を与える」きっかけづくりとなるため、早く世界中に普及したいと、広告媒体や商材として制作・販売している。2018年1月現在、井戸は392基完成、世界地図550万枚を販売。
図書館や学校の教室などの壁に貼られた世界地図。その製造・販売会社で四国・松山市に本社を置く株式会社世界地図は、「世界に井戸を掘る」という高邁な活動の原資づくりを目的として事業を展開している。今回は60歳を過ぎてこの新ビジネスを立ち上げた同社の代表、快男児・松岡功氏に話を聞いた。
(この項 続く)
2018年2月22日木曜日
カルビー、突然に急成長ストップの異変…圧倒的ナンバーワンゆえの危機(7)
松本会長が打とうとしたもうひとつの大きな一手は、後退してしまった。それは北米事業だ。松本会長が着任する前、06年にカルビーは現地でのジャガイモ生産会社大手であるR. D. Offutt Companyと合弁でCalbee North America ,LLCを立ち上げていたが、17年初頭にこの合弁を解消した。15年にミシシッピ州に工場を立ち上げていたのだが、そのキャパシティを埋めるだけの売上が確保できず、苦戦していた。18年3月期の通年では営業赤字となる見込みだ。
北米での蹉跌は、日本のブランド食品は中国やアジアでは人気が出る、あるいは受け入れられるが、欧米では難しいということだろう。単純に文化や食文化の違いがあるため、それを乗り越えるのは難しいということだ。
それでは、そのハンデを克服してカルビーがどう打って出るのか。北米に現地人による開発チームを組成し、北米に合った新商品を投入するということだろう。さらにもうひとつ、北米での材料調達、つまりジャガイモの買い付けだ。何しろ北海道での調達や契約栽培の確保が天井感を増してきている現在、北米、特にアイダホ州からのポテト買い付けに動くべきだろう。もちろん、品種の問題があるが、カルビーが改良して開発したと報じられている新種のジャガイモ種を提供して生産させるという手がある。
私も経験したことだが、外から乗り込んだプロ経営者も数年すると、改革のカードを切り終わってしまって、手詰まりになることがある。松本会長が活躍するステージを変えることも有用なこととなるのではないか。新天地でさらなるトラック・レコードを積み上げるのはどうだろう。
(この項 終わり)
北米での蹉跌は、日本のブランド食品は中国やアジアでは人気が出る、あるいは受け入れられるが、欧米では難しいということだろう。単純に文化や食文化の違いがあるため、それを乗り越えるのは難しいということだ。
それでは、そのハンデを克服してカルビーがどう打って出るのか。北米に現地人による開発チームを組成し、北米に合った新商品を投入するということだろう。さらにもうひとつ、北米での材料調達、つまりジャガイモの買い付けだ。何しろ北海道での調達や契約栽培の確保が天井感を増してきている現在、北米、特にアイダホ州からのポテト買い付けに動くべきだろう。もちろん、品種の問題があるが、カルビーが改良して開発したと報じられている新種のジャガイモ種を提供して生産させるという手がある。
私も経験したことだが、外から乗り込んだプロ経営者も数年すると、改革のカードを切り終わってしまって、手詰まりになることがある。松本会長が活躍するステージを変えることも有用なこととなるのではないか。新天地でさらなるトラック・レコードを積み上げるのはどうだろう。
(この項 終わり)
2018年2月21日水曜日
カルビー、突然に急成長ストップの異変…圧倒的ナンバーワンゆえの危機(6)
もちろんカルビーは踊り場を迎えた国内市場のてこ入れを図ろうとしている。今年に入り、「浜松餃子味」「芋けんぴ味(高知県)」「奥大和柿の葉すし味(奈良県)」「せいだのたまじ味(山梨県)」などをたて続けに発表している。47都道府県をカバーする“ご当地ポテトチップス”を展開しているのだ。どれだけの増収効果があるか、見ものである。
ついでにいえば、伸び続けてきたカルビーの営業利益率も16年3月期に11.4%を記録したが17年3月もほぼ同様な率となり、足踏みの季節を迎えている。
数年来の業績好調を受けて、次の段階の飛躍のために松本会長が力を入れてきた2つのプロジェクトがある。
ひとつは、通称「フルグラ」、フルーツグラノーラだ。朝食で食べられることの多いシリアルの一種だ。1991年に発売、2000年代の10年間、年間売上高は30億円程度で推移していたが、それが今や約300億円と10倍もの規模になっている。
カルビーはこの商品の海外投入を広げていく。フルグラの中国内販売といえば、国内で業者や個人が買い付けて中国に持ち込む、輸出するという状況から、昨年ようやく中国の電子商取引最大手のアリババ・グループと提携して、アリババが運営するECサイト「天猫国際(Tmall Global)」で発売を開始した。今年は実際に中国の小売店での販売を始め、3月末までにはアジア諸国に販売先を広げるとしている。20年度にはフルグラの海外売上高300億円を目指すそうだ。
また製造に関しては国内生産を続ける、ということだ。中国市場では日本製でアピールできるから、ということだ。主要な原料がオーツ麦と玄米ということで、調達の問題は大きくはならないだろう。しかし、総売上高が約2,500億円のカルビーにとって、フルグラだけでは救世主にはなりそうもないビジネス・ボリュームだ。
(この項 続く)
ついでにいえば、伸び続けてきたカルビーの営業利益率も16年3月期に11.4%を記録したが17年3月もほぼ同様な率となり、足踏みの季節を迎えている。
海外勝負が残された成長への隘路
数年来の業績好調を受けて、次の段階の飛躍のために松本会長が力を入れてきた2つのプロジェクトがある。
ひとつは、通称「フルグラ」、フルーツグラノーラだ。朝食で食べられることの多いシリアルの一種だ。1991年に発売、2000年代の10年間、年間売上高は30億円程度で推移していたが、それが今や約300億円と10倍もの規模になっている。
カルビーはこの商品の海外投入を広げていく。フルグラの中国内販売といえば、国内で業者や個人が買い付けて中国に持ち込む、輸出するという状況から、昨年ようやく中国の電子商取引最大手のアリババ・グループと提携して、アリババが運営するECサイト「天猫国際(Tmall Global)」で発売を開始した。今年は実際に中国の小売店での販売を始め、3月末までにはアジア諸国に販売先を広げるとしている。20年度にはフルグラの海外売上高300億円を目指すそうだ。
また製造に関しては国内生産を続ける、ということだ。中国市場では日本製でアピールできるから、ということだ。主要な原料がオーツ麦と玄米ということで、調達の問題は大きくはならないだろう。しかし、総売上高が約2,500億円のカルビーにとって、フルグラだけでは救世主にはなりそうもないビジネス・ボリュームだ。
(この項 続く)
2018年2月20日火曜日
カルビー、突然に急成長ストップの異変…圧倒的ナンバーワンゆえの危機(5)
その発表によると、それらの活動により18年に5,000トンの調達上積みを目指す、としている。しかし、17年に同社が実際に買い付けた加工用ジャガイモの総量は23万トンとされたので、増量を目指している分は2.1%の上積みでしかない。
毎年9%の成長を7年間続けてきた同社の調達増量としてそろばんが合わないのだ。しかも、17年の買い付け実績としては不作の時期が含まれるので、その前年より少なかったのではないかと思われる。
主要製品であるポテトチップスでマーケット・シェア71%を叩き出した、というのは同社にとって危機的な状況が来ているということでもある。ランチェスター戦略によれば、マーケット・シェアが70%を超えればほぼ市場を制圧、その地位は磐石ということだが、どうか。一企業が70%を超えてさらにシェアを伸ばしていったケースはあまり聞かない。アメリカなら独占禁止法が介入してくるような事態でもある。
ポテトチップスだけのシェアの推移を見ると、カルビーの70%はここ10年間ほど変わっていない。ところが2位の湖池屋は当初10%ほどだったシェアを最近では22%までに伸張している(富士経済「食品マーケティング便覧2017年」より)。
カルビーは日本国内で本当にこれ以上ポテトチップスの売上を、16年までのような破竹の勢いで伸ばすことは可能なのだろうか。そもそも日本人はこれ以上ポテトチップスを食べ続けていくのだろうか。
(この項 続く)
毎年9%の成長を7年間続けてきた同社の調達増量としてそろばんが合わないのだ。しかも、17年の買い付け実績としては不作の時期が含まれるので、その前年より少なかったのではないかと思われる。
伸びしろのないマーケット・シェア
主要製品であるポテトチップスでマーケット・シェア71%を叩き出した、というのは同社にとって危機的な状況が来ているということでもある。ランチェスター戦略によれば、マーケット・シェアが70%を超えればほぼ市場を制圧、その地位は磐石ということだが、どうか。一企業が70%を超えてさらにシェアを伸ばしていったケースはあまり聞かない。アメリカなら独占禁止法が介入してくるような事態でもある。
ポテトチップスだけのシェアの推移を見ると、カルビーの70%はここ10年間ほど変わっていない。ところが2位の湖池屋は当初10%ほどだったシェアを最近では22%までに伸張している(富士経済「食品マーケティング便覧2017年」より)。
カルビーは日本国内で本当にこれ以上ポテトチップスの売上を、16年までのような破竹の勢いで伸ばすことは可能なのだろうか。そもそも日本人はこれ以上ポテトチップスを食べ続けていくのだろうか。
(この項 続く)
2018年2月19日月曜日
カルビー、突然に急成長ストップの異変…圧倒的ナンバーワンゆえの危機(4)
しかしカルビーの今期の不調というか足踏みは、私に言わせればその「巨大性」にある。まず、松本会長の「買って 作って 売る」のうち「買う」である。カルビーはポテトチップスに使うジャガイモを北海道で買い付けている。
16年の天候不順のために北海道のジャガイモが大減産となり、ポテトチップスのメーカー各社は減産をしたりアイテム数の間引きをしたりという大きな影響をこうむった。カルビーもポテトチップスの本格的な生産体制に復帰できたのが17年6月以降ということで、今期の売上予想が伸びていないのもそれによるところが大きい。
焼酎のトップブランド黒霧島を醸造している九州の霧島酒造も同様に、原料を特定種別(霧島の場合はサツマイモ)で特定地域での栽培と限ったりすると、その売上が急増したときに供給の確保の問題が起こり、ひいてはそれが商品ブランドや会社の成長限界を作り出すことがある。
カルビーは前述の第3四半期業績発表会で、北海道での生産者支援に力を入れてジャガイモの調達を確保・増強する、とした。調達を担うカルビーポテト社が生産者への新品種の提案や栽培指導などをする、つまり生産者の囲い込みを図るということだ。
(この項 続く)
16年の天候不順のために北海道のジャガイモが大減産となり、ポテトチップスのメーカー各社は減産をしたりアイテム数の間引きをしたりという大きな影響をこうむった。カルビーもポテトチップスの本格的な生産体制に復帰できたのが17年6月以降ということで、今期の売上予想が伸びていないのもそれによるところが大きい。
焼酎のトップブランド黒霧島を醸造している九州の霧島酒造も同様に、原料を特定種別(霧島の場合はサツマイモ)で特定地域での栽培と限ったりすると、その売上が急増したときに供給の確保の問題が起こり、ひいてはそれが商品ブランドや会社の成長限界を作り出すことがある。
カルビーは前述の第3四半期業績発表会で、北海道での生産者支援に力を入れてジャガイモの調達を確保・増強する、とした。調達を担うカルビーポテト社が生産者への新品種の提案や栽培指導などをする、つまり生産者の囲い込みを図るということだ。
(この項 続く)
2018年2月18日日曜日
カルビー、突然に急成長ストップの異変…圧倒的ナンバーワンゆえの危機(3)
「買って 作って 売る」に何が起きた
松本会長が就任以来掲げた経営哲学でもある社内号令が「買って 作って 売る」というシンプルなものだった。カルビーの主要製品、ポテトチップスの原料であるポテトは北海道で買い付けている。それをうまくやろう、そして鮮度を保つよう早く作ろう、小売の棚取り・面取りをしっかりやってたくさん売ろう、ということだった。
この号令一下、業績の回復と成長は前述した通りだが、マーケット・シェア的にもカルビーの存在感は突出した。ポテトチップス市場(売上規模1,102億円、15年)における各社のシェアはカルビー71%、湖池屋22%、他7%とカルビーが圧倒的に強い(富士経済「食品マーケティング便覧2017年」より)。
また、スナック菓子市場全体(売上規模3,188億円)のうちの各社のシェアは、カルビー50%、湖池屋12%、山崎製パン11%、おやつカンパニー6%、日本ケロッグ4%、森永製菓、明治、ハウス食品がおよそ2%となっていて、カルビーが突出したナンバーワンである。
しかしカルビーの今期の不調というか足踏みは、
(この項 続く)
2018年2月17日土曜日
カルビー、突然に急成長ストップの異変…圧倒的ナンバーワンゆえの危機(2)
松本会長がカルビーに着任したのが09年。ジョンソン・エンド・ジョンソンの社長、顧問を歴任したいわゆるプロ経営者として招聘された。以来、カルビーの業績はすばらしかった。
09年のグループ連結売上高は1,373億円だったが、直近の17年3月期は同2,524億円だった。8年もの間、毎年平均して9.0%の成長を持続してきたことになる。多くの経営者ができることではない。
営業利益の回復はさらに顕著だ。09年の対売上高営業利益率はほぼゼロだったのが、翌10年には早くも6%を超え、17年には11.4%と高い数値を実現した。17年度までの快進撃に比べ、18年3月期決算予想は松本カルビーにとって初めての足踏みの時期が来たことを示している。
(この項 続く)
09年のグループ連結売上高は1,373億円だったが、直近の17年3月期は同2,524億円だった。8年もの間、毎年平均して9.0%の成長を持続してきたことになる。多くの経営者ができることではない。
営業利益の回復はさらに顕著だ。09年の対売上高営業利益率はほぼゼロだったのが、翌10年には早くも6%を超え、17年には11.4%と高い数値を実現した。17年度までの快進撃に比べ、18年3月期決算予想は松本カルビーにとって初めての足踏みの時期が来たことを示している。
(この項 続く)
2018年2月16日金曜日
カルビー、突然に急成長ストップの異変…圧倒的ナンバーワンゆえの危機(1)
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「Thinkstock」より
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松本会長就任以来の業績ブレーキ
カルビーが2月1日に発表した同第3四半期累計(4―12月)の売上高は1,867億円(対前年同期比1.2%減)と微減だったが、営業利益は191億円(同13.7%減)と悪化した。対売上高営業利益率は10.2%となっている。同社は18年3月期通期の予想を売上高2,560億円(対前年比1.4%増)、営業利益275億円(同4.7%減)と今回は据え置いたが、昨年10月に一度下方修正している。
(この項 続く)
2018年2月6日火曜日
ソフトバンク、「Pepper元開発リーダー」不使用要請は「言論の自由への抵抗」(8)
林氏側のこのような対応もあり、ソフトバンクロボティクスと林氏側の対立という構図にはならずにこの問題は決着を見たようだが、実はこの二者のほかに、この問題をめぐる登場プレーヤーがいる。
それは、林氏やPepperを紹介、報道してきたメディアというプレーヤーだ。メディアがある人物を紹介するとき、その呼称をどのように決定しているか。一義的にはその人の正式肩書きであるが、「開発リーダー」のように一般呼称としての称号で呼ぶのは、メディア側の判断となる。つまりPepperについて誰が実質上の開発リーダーだったのか、という判断が無意識に行われているのである。
メディア側が呼称を選択することは評価行為であり、言論行為なのだ。林氏を「Pepperの開発リーダー」と多くのメディアが呼んできたということは、そのまま林氏の業績に対する評価だったといっていい。林氏が自らの業績を誤って、あるいは誇張して伝えてきたわけではない。
このような構造で今回の事案を見てみると、実はソフトバンクロボティクスの「要請書」はメディアの評価、判断に対する挑戦だったと解することができる。ソフトバンクロボティクスは「誤謬を正した」と主張するだろうが、実際には言論の自由、発表の自由に対する物言いとなった。
(この項 終わり)
それは、林氏やPepperを紹介、報道してきたメディアというプレーヤーだ。メディアがある人物を紹介するとき、その呼称をどのように決定しているか。一義的にはその人の正式肩書きであるが、「開発リーダー」のように一般呼称としての称号で呼ぶのは、メディア側の判断となる。つまりPepperについて誰が実質上の開発リーダーだったのか、という判断が無意識に行われているのである。
メディア側が呼称を選択することは評価行為であり、言論行為なのだ。林氏を「Pepperの開発リーダー」と多くのメディアが呼んできたということは、そのまま林氏の業績に対する評価だったといっていい。林氏が自らの業績を誤って、あるいは誇張して伝えてきたわけではない。
このような構造で今回の事案を見てみると、実はソフトバンクロボティクスの「要請書」はメディアの評価、判断に対する挑戦だったと解することができる。ソフトバンクロボティクスは「誤謬を正した」と主張するだろうが、実際には言論の自由、発表の自由に対する物言いとなった。
(この項 終わり)
2018年2月5日月曜日
ソフトバンク、「Pepper元開発リーダー」不使用要請は「言論の自由への抵抗」
林氏は大人の対応
1月24日に出されたGROOVE Xのリリースには次のようにある。
「林要のソフトバンクロボティクス社様勤務時代の呼称について、当社並びに林要自身から特段主張させていただくことはございませんので、ソフトバンクロボティクス社様のご指摘通り、林の経歴を含む表現に関しまして今後は『Pepperプロジェクトの(元)プロジェクトメンバー』または『PMO室長』という表現に統一させていただきたいと考えております」
さらに、林氏の所感と思われる表現もあった。
「当社林は、Pepper開発という大変貴重な経験をさせていただいたメンバーの一員として、ソフトバンク社様に対して感謝の念を忘れることはありませんし、当社GROOVE Xが創る LOVOTという新世代家庭用ロボットが Pepper同様、皆様に受け入れられ、愛していただけるよう開発に注力していくことで関係者の皆様や社会に対して恩返ししていく所存です」
(この項 続く)
2018年2月4日日曜日
ソフトバンク、「Pepper元開発リーダー」不使用要請は「言論の自由への抵抗」(6)
ソフトバンクロボティクスとしては、旧社員となった林氏が今に至るも看板商品であるPepperの生みの親であるかの報道に不快感を募らせていたのだろう。冒頭に掲げた「要請文」のタッチは、そのような解釈をすると腑に落ちる。
その「要請文」の発行人となった冨澤社長が、16年春にロボスタにインタビューされたことがあるという。
「ソフトバンクロボティクスの冨澤社長にインタビューをさせていただいた際に、席に着くや否や『(林氏が)Pepperの父という表現は間違いだ』と指摘された」(同記事)
「また冨澤社長は『彼に部下なんていなかった』とも加えた。周囲に賛同を求めると、6、7人が黙って頷いたのだった」(同記事)
社長が不機嫌にそのように言い放ったとしたら、「そうではありません」などと言える部下はあまりいないだろう。自分を差し置いて在職中は社長でもなかった人物が、看板商品の「アイコン」扱いをいまだに受けているというのは、現社長にしてみればおもしろくないことは想像できる。
そこでカリスマ経営者である孫社長を担ぎ出して、「本当の生みの親はこちらだ」と声を張り上げた。もちろん、それは正しいことだ。大人気ないとする向きがあっても、間違いとして指摘されることはない。しかし、あえて声を上げるようなことだったろうかとの思いは残る。
(この項 続く)
その「要請文」の発行人となった冨澤社長が、16年春にロボスタにインタビューされたことがあるという。
「ソフトバンクロボティクスの冨澤社長にインタビューをさせていただいた際に、席に着くや否や『(林氏が)Pepperの父という表現は間違いだ』と指摘された」(同記事)
「また冨澤社長は『彼に部下なんていなかった』とも加えた。周囲に賛同を求めると、6、7人が黙って頷いたのだった」(同記事)
社長が不機嫌にそのように言い放ったとしたら、「そうではありません」などと言える部下はあまりいないだろう。自分を差し置いて在職中は社長でもなかった人物が、看板商品の「アイコン」扱いをいまだに受けているというのは、現社長にしてみればおもしろくないことは想像できる。
そこでカリスマ経営者である孫社長を担ぎ出して、「本当の生みの親はこちらだ」と声を張り上げた。もちろん、それは正しいことだ。大人気ないとする向きがあっても、間違いとして指摘されることはない。しかし、あえて声を上げるようなことだったろうかとの思いは残る。
(この項 続く)
2018年2月3日土曜日
ソフトバンク、「Pepper元開発リーダー」不使用要請は「言論の自由への抵抗」(5)
また林氏が実際にロボット開発プロジェクトのリーダーだったことを示すエピソードがある。
「『お前の情熱が足りないから、プロジェクトが動かないんだ!』2012年12月3日、ソフトバンク本社の社長室。緊急会議で役員たちが集められた中、激高した孫正義社長は“末席”に座る1人の社員をにらみつけていた。怒りの矛先は林要」(14年10月18日付東洋経済オンライン記事『「ペッパー」が呼び寄せた異能の“トヨタマン”』より)
関係役員を代表して孫社長から叱責されたということは、その人物がそのプロジェクトの実質の責任者だったからにほかならない。林氏は単に「開発リーダー」を超えた存在だったわけだ。にもかかわらず、ソフトバンクロボティクスは今になってなぜ、今回のような要請をするに至ったのだろうか。
(この項 続く)
「『お前の情熱が足りないから、プロジェクトが動かないんだ!』2012年12月3日、ソフトバンク本社の社長室。緊急会議で役員たちが集められた中、激高した孫正義社長は“末席”に座る1人の社員をにらみつけていた。怒りの矛先は林要」(14年10月18日付東洋経済オンライン記事『「ペッパー」が呼び寄せた異能の“トヨタマン”』より)
関係役員を代表して孫社長から叱責されたということは、その人物がそのプロジェクトの実質の責任者だったからにほかならない。林氏は単に「開発リーダー」を超えた存在だったわけだ。にもかかわらず、ソフトバンクロボティクスは今になってなぜ、今回のような要請をするに至ったのだろうか。
出る杭は打たれ、外で伸びた杭は目に障る
ソフトバンクを出て林氏が創業したGROOVE X社は、ロボット開発を標榜するベンチャー企業だ。古巣のソフトバンクロボティクス社にとっては競合となった。
17年12月4日に、GROOVE Xはビジネス拡大のための資金調達の発表を行った。同時にソフトバンク本社がある東京港区の汐留に、期間限定ではあるが大きな看板広告を出した。この広告意図について林氏自身は「尊敬している孫正義社長へのオマージュ、メッセージ」だとしているが、「Pepperに対する挑戦と受け取られても仕方ない」との指摘もある(18年1月24日付ロボスタ記事『ソフトバンクが報道陣に異例の通達 林要氏は「リーダーではなかった」 その全容と詳細』)。
2018年2月2日金曜日
ソフトバンク、「Pepper元開発リーダー」不使用要請は「言論の自由への抵抗」(4)
「Pepperの開発リーダー」と呼ばれていた
まず、(1)問題の呼称群を林氏は自称していたのか。林氏自身は、次のように反論した。
「これまで私が自ら『ペッパーの父』『生みの親』と自己紹介をしたことはなく、今後そのような主張をするつもりもございません」(林氏のFacebook、1月25日付投稿)
次に、(2)林氏はソフトバンクロボティクス社に在職していたとき、実際にPepperの開発リーダーだったのか、少なくともそう目されていたのか、である。GROOVE X社は次のリリースを発表している。
「一方、ソフトバンク社様HPに記載されている以下URLの記事において『開発リーダー』表現が使用されていた事実があることから、Pepper『開発リーダー』の呼称の使用については特段の問題がないものと考えておりました。」(18年1月24日同社リリース)
在職中、林氏がマスコミに露出するときには、「開発リーダー」との呼称が通用していたらしい。同氏の正式な肩書きは「PMO室長」ということだった。「開発リーダー」のほうがその職務内容をわかりやすく表現していたことは間違いなく、それが多用され、会社の広報やホームページにも同氏を紹介するときに使用される、ときには同氏自身もその呼称でイベントなどにも出演するなど、広く使われていた。つまり、「会社公認での使用」だった。
(この項 続く)
2018年2月1日木曜日
ソフトバンク、「Pepper元開発リーダー」不使用要請は「言論の自由への抵抗」(3)
文中では
「これまでも弊社は数回にわたって事実と違った呼称を使わないよう林氏サイドに対し申し入れを行ってまいりましたが、改善がみられないため、今回改めて前述の認識についてメディアの皆様にお伝えさせていただくことにいたしました」
とも記載されている。
この部分などは、林氏を詰問・批難しているようにも受け止められる。2015年9月に林氏がソフトバンクロボティクスを退職したときにはトラブルなど報じられていなかったし、同氏は今でもソフトバンクグループを担う後継者発掘・育成を目的とする企業内学校、ソフトバンクアカデミアの会員で、同社の孫正義会長兼社長に心服しているという。
上記の「要請書」では、2つのことがポイントなる。
(1)林氏はソフトバンクロボティクスを退社した後、「Pepperの『父』」「生みの親」「(元)開発者」「(元)開発責任者」「(元)開発リーダー」などを自称していたのか。
(2)林氏は、ソフトバンクグループに在職していたとき、Pepperの開発リーダーだった、少なくともそう目されていたのか。
(この項 続く)
「これまでも弊社は数回にわたって事実と違った呼称を使わないよう林氏サイドに対し申し入れを行ってまいりましたが、改善がみられないため、今回改めて前述の認識についてメディアの皆様にお伝えさせていただくことにいたしました」
とも記載されている。
この部分などは、林氏を詰問・批難しているようにも受け止められる。2015年9月に林氏がソフトバンクロボティクスを退職したときにはトラブルなど報じられていなかったし、同氏は今でもソフトバンクグループを担う後継者発掘・育成を目的とする企業内学校、ソフトバンクアカデミアの会員で、同社の孫正義会長兼社長に心服しているという。
上記の「要請書」では、2つのことがポイントなる。
(1)林氏はソフトバンクロボティクスを退社した後、「Pepperの『父』」「生みの親」「(元)開発者」「(元)開発責任者」「(元)開発リーダー」などを自称していたのか。
(2)林氏は、ソフトバンクグループに在職していたとき、Pepperの開発リーダーだった、少なくともそう目されていたのか。
(この項 続く)
2018年1月31日水曜日
ソフトバンク、「Pepper元開発リーダー」不使用要請は「言論の自由への抵抗」(2)
しかしながら、林氏が弊社又はソフトバンク株式会社に在籍中に、Pepperに関して、企画・コンセプト作りやハード又はソフトの技術開発等、いかなる点においても主導的役割を果たしたり、Pepperに関する特許を発明したという事実はございません。また、事実として、当社またはソフトバンク株式会社のロボット事業において『開発リーダー』という役職や役割が存在したことはありません」
「林氏にPepperの『父』『生みの親』『(元)開発者』『(元)開発責任者』『(元)開発リーダー』の呼称を用いるのは明らかな誤りであり」
「メディアの皆様におかれましては、今後林氏について報道される際は、『Pepperプロジェクトの(元)プロジェクトメンバー』など、Pepperの技術開発の責任者又は中心的存在であったかのような印象を与えない呼称を使用していただきますようお願い申し上げます」
(この項 続く)
「林氏にPepperの『父』『生みの親』『(元)開発者』『(元)開発責任者』『(元)開発リーダー』の呼称を用いるのは明らかな誤りであり」
「メディアの皆様におかれましては、今後林氏について報道される際は、『Pepperプロジェクトの(元)プロジェクトメンバー』など、Pepperの技術開発の責任者又は中心的存在であったかのような印象を与えない呼称を使用していただきますようお願い申し上げます」
(この項 続く)
2018年1月30日火曜日
ソフトバンク、「Pepper元開発リーダー」不使用要請は「言論の自由への抵抗」(1)
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そんななか、人型ロボットの代表的商品であるPepperを発売しているソフトバンクが、その開発にかかわった林要氏(現GROOVE X社CEO)の呼称についてマスコミへ「異例の要請」を行い、話題となっている。
マスコミがある人物をどのように評価するか、呼称するかということはマスコミ各社の認識の範疇ともいえ、表現の自由、言論の自由にかかわることだ。今回は「報道の自由」に対して「要請」を出したソフトバンク側の言い分を検証する。
林氏はPepperの「開発リーダー」だったのか、否か
ことの発端は、1月23日にPepper開発元のソフトバンクロボティクス・冨澤文秀社長の名義で、不思議な通知文が報道各社に送られてきたことだった。
「報道関係各位
(略)元弊社社員であり、GROOVE X株式会社の代表取締役である林 要氏についての報道において、林氏をPepperの『父』『生みの親』『(元)開発者』『(元)開発責任者』『(元)開発リーダー』などと呼称することで、あたかも林氏が弊社在籍当時Pepperの技術開発の責任者又は中心的存在であったかのような印象を与える表現が散見されます。
(この項 続く)
2018年1月28日日曜日
帝国ホテルで経営相談会
先週、帝国ホテルで行った経営相談会は、1社1時間枠で何社もの社長さんの話をうかがい、その場で助言を行った。
その中で、特にユニークな会社、そして社長さんが居たので、来週別途個別インタビューさせてもらい、記事紹介をすることとした。
株式会社世界地図という。四国は松山の会社だ。2月には記事を挙げて紹介するので是非知ってほしい。
その中で、特にユニークな会社、そして社長さんが居たので、来週別途個別インタビューさせてもらい、記事紹介をすることとした。
株式会社世界地図という。四国は松山の会社だ。2月には記事を挙げて紹介するので是非知ってほしい。
2018年1月23日火曜日
あんぱん有名な木村屋総本店、袋パン事業が「捨てる経営」でV字回復 (12)
対談を終えて(山田の所感)
世の中で「プロ経営者」というと、外部招聘されて大企業の経営を任されたり、大手外資系企業の社長上がりの経営者など、著名な方の顔がいくつも目に浮かぶ。私自身や私の先輩、新将命(あたらしまさみ)氏なども、いくつもの会社を任されたということでは、その走りみたいなものだった。しかし、私たちの時代ではまだ「プロ経営者」という言葉も使われておらず、複数の会社の経営の任に当たるのは例外的な存在だった。
今世紀に入り、企業のM&A(合併・買収)が盛んになるのと軌を一にして、経営者層の流動性が一気に高まってきた。しかし、他の会社の、そして見知らぬ会社の経営を素手で引き受けられる、それこそ「プロ経営者」人材の供給はまだまだ足りない。
そして、特に供給とのミスマッチが生じているのが、中堅中小規模の会社だろう。その意味で、木村屋総本店のケースは外部からの着任経営者が本当に草の根レベルまで浸透していくのか、好個な試金石と見ることができる。経営者として福永氏と同様なキャリア・パスを通過した私としては、福永氏の経営手腕と同社の再活性化の道筋をぜひ見守っていきたい。
(この項 終わり)
2018年1月22日月曜日
あんぱん有名な木村屋総本店、袋パン事業が「捨てる経営」でV字回復(11)
福永氏が考える「プロ経営者像」
――福永副社長が木村屋総本店に入る前のご経歴を教えてください。
福永 大学を出て新卒で日本生命に入社し、14年間勤務しました。その後、製造業の会社を活性化する仕事をしたいとの思いから、コンサルティング会社に5年間勤務し、事業会社では経験できなかった多くのことを学びました。
――その後、経営職に就かれたのですか。
福永 日本航空の再生を手がけたことで知られる企業再生支援機構に移り、再生支援に乗り出した事業会社に派遣される機会を得ました。
――どんな会社だったのですか。
福永 中堅の印刷会社で2年間構造改革担当役員として指揮を執らせてもらいました。この印刷会社が無事にイグジットした際に、木村屋総本店の構造改革の話をいただき、経営共創基盤からの派遣経営者として13年の4月に着任しました。
――2社の再建を手がけて、どんな感想を持たれていますか。
福永 「中小企業だから」「少子高齢化だから」「大手スーパーが強いから」などと考えて諦めている経営者がいるとすれば、考え方や行動の仕方を変えると、まだやれる部分があるな、というのが私の思いです。
――福永さんはいわゆる「プロ経営者」ですが、「プロ経営者」とはどんな経営者だとお考えですか。
福永 いろいろな要素があります。ターンアラウンド(方向転換)できるのは、その会社の既得権や過去の習慣を壊せる人です。それから、軸がブレないということです。カリスマ性などよりも、変革フェーズではトップの軸がぶれないことは極めて重要なことです。
論理的に、戦略的に意思決定できる、ということも重要です。それもスピーディに。そして事業特性に応じた利益創出のパターンを見つけて仕組み化できることが必要でしょう。キャラクター的には猪突猛進で突き進む勇ましい人ではなく、行動、言動に根拠がある人、ということでしょう
(この項 続く)
2018年1月21日日曜日
あんぱん有名な木村屋総本店、袋パン事業が「捨てる経営」でV字回復 (10)
強みを押し出し、日本一の袋パンメーカーに
――木村屋総本店の副社長に着任されて、4年が経ちました。不調のどん底にあったスーパー・コンビニ向け事業を軌道に戻し、これから次のステージに入っていく段階ですが、今後について副社長はどんな経営方針をお考えなのでしょうか。
福永 経営戦略の王道として、「自社の強み、こだわりに徹する」ということがあると思います。インストアベーカリーでは実現できない中量生産で、従来の袋パンの常識を超える「ひと手間かかった美味しい袋パン」を提供することです。製品開発でも大手が実現できないこだわりのあるもの、カスタマイズした袋パンを出していきたい。量産のパンには不可欠な乳化剤やイーストフード、ショートニングやマーガリンなどを不使用とした「ブリオッシュ風クリームパン」を新製品として昨年春に発売しました。素朴な美味しい袋パンということで評価をいただき、今では不使用シリーズが11ラインナップにまで成長してきました。
――社員の意識改革は十分なレベルに達しましたか。
福永 事象に対する認識を変えることと、その結果、仕事のやり方が変わるという、認識と行動の両方が変わることを期待しています。しかし、慣れ親しんだ認識と行動の両方を同時に短時間で変えることは難しい。まずは、理解、認識は完全でなくても、新しい手順や基準を設定して『とにかくそれに沿って仕事をやってくれ』と繰り返しています。理解や認識は後から追いついてきてくれるのを期待しているわけです。数値結果が変わることを体感したことで、認識を変える社員が少しずつですが現れています。
――企業再生で、実は企業文化を変革することが一番難しい。
福永 その通りです。私も繰り返し強く働きかけてきましたが、まだまだ不十分です。これからも継続して働きかけていくつもりです。「社員のやる気が大事だ」などモチベーション向上を優先する経営者も多いですが、実は決まった基準と手順をしっかりやってもらうこと、そしてその重要性を繰り返しコミュニケーションしていくことを先行しないと、社員や会社は変わってくれません。
――変化、変革フェーズではトップからの強い働きかけがなければ、それは実現できません。
福永 部長以上の幹部社員には、毎朝「副社長メッセージ」と題したメールを発信しています。間もなく1,000回を迎えますが、認識と行動の両方の変化が起こるまで継続していくつもりです。
――今後目指していくところは?
福永 日本一の袋パンメーカーになることです。山崎製パンさんやパスコさんの規模になれるとは思っていません。「中量生産」によって、ひと手間かかった美味しい袋パンを提供し、しかも狙った生産性を確保できる特徴のあるパンメーカーになることです。「木村屋の袋パンは美味しいね」「バリエーションも豊富で選ぶ楽しさもあるね」とお客様に認められ、厳しいマーケット環境下であっても、強みとこだわりを消費者に届けている袋パンメーカーを目指していきます。「中量生産」の袋パンメーカーで、こだわりと生産性の両方を同時実現する袋パンメーカーとして日本一にチャレンジします。
(この項 続く)
2018年1月20日土曜日
あんぱん有名な木村屋総本店、袋パン事業が「捨てる経営」でV字回復 (9)
――キムラヤスタンダードとはどんなことですか。
福永 「品質作りこみスタンダード」「開発・販売スタンダード」そして「行動スタンダード」という3つの認識・行動をモノサシとする考え方です。「品質作りこみスタンダード」としては、食品業界でNo.1の品質作りこみを実行する。「開発・販売スタンダード」では、当社の強みにこだわった開発・販売を実行する。そして「行動スタンダード」においては、私が正しいと考えるビジネス上の5つの価値観にしたがって行動することを求めています。
――副社長が目指す、実現したいことを言語化し、社員に具体的に明示したわけですね。
福永 そして、それら3つのスタンダードの上位概念として、「キムラヤカテゴリーを創造する!」「『おいしいパン』を提供し続け、正しい利益を得る!」という方向性を示しています。仕組みや基準・手順に沿って考え行動することが、「ロボット人間をつくる」「没個性を求める」のではなく、「木村屋の強み、こだわりを発揮する」「利益を得て継続性のある事業にする」ということを認識して、唯一無二の中量生産の袋パンメーカーになりたいとの思いがあります。
――私の経験からも、古い行動規範や価値観に染まった古手社員ほど動かしにくい。何より彼らはどう変わればいいか、自分ではわからない。副社長がそれらの文言を通じて、求める新しい基準、価値を示したのはとてもよかったと思います。
(この項 続く)
福永 「品質作りこみスタンダード」「開発・販売スタンダード」そして「行動スタンダード」という3つの認識・行動をモノサシとする考え方です。「品質作りこみスタンダード」としては、食品業界でNo.1の品質作りこみを実行する。「開発・販売スタンダード」では、当社の強みにこだわった開発・販売を実行する。そして「行動スタンダード」においては、私が正しいと考えるビジネス上の5つの価値観にしたがって行動することを求めています。
――副社長が目指す、実現したいことを言語化し、社員に具体的に明示したわけですね。
福永 そして、それら3つのスタンダードの上位概念として、「キムラヤカテゴリーを創造する!」「『おいしいパン』を提供し続け、正しい利益を得る!」という方向性を示しています。仕組みや基準・手順に沿って考え行動することが、「ロボット人間をつくる」「没個性を求める」のではなく、「木村屋の強み、こだわりを発揮する」「利益を得て継続性のある事業にする」ということを認識して、唯一無二の中量生産の袋パンメーカーになりたいとの思いがあります。
――私の経験からも、古い行動規範や価値観に染まった古手社員ほど動かしにくい。何より彼らはどう変わればいいか、自分ではわからない。副社長がそれらの文言を通じて、求める新しい基準、価値を示したのはとてもよかったと思います。
(この項 続く)
2018年1月19日金曜日
あんぱん有名な木村屋総本店、袋パン事業が「捨てる経営」でV字回復 (8)
――再生経営者としては、そうでなければいけません。
福永 実は、あんぱんに対する思い入れだけでなく、袋パンの製造における職人技神話にもメスを入れました。パンをつくるには、その日その時の気温、湿度、使う水の温度などの微妙な違いを個人で判断しながらつくらなければいけない、と社内では言い伝えられていました。私はそれらを基準・手順の見える化と数値化をして、基準・手順に沿って作業するように改めました。定められた基準と手順による製造プロセスへ転換させたのです。
――私も経営者のときにやりましたが、そういう変革は古手社員にとても評判が悪い。やる前は信じてもらえない。
福永 そうなんです。製造粗利や主要なKPIなどの数値結果が劇的に向上しています。基準・手順に沿った標準化された作業を導入した結果、製造ロスは半分に低減し、製造粗利は5%以上改善しています。加えて、従来の半数の営業担当者で、以前と同規模の売上を維持することもできています。
――大成果ですね。外部から来た経営者のほうが、こういう場面では強いです。
福永 基準・手順に基づく製造が、実は強み・こだわりを強化するために必要なことだという理解度を上げるために、日本酒の獺祭(だっさい)の製造方法や無印良品の店舗運営をモデル事例として、幹部社員と共有してきました。
獺祭の醸造元、旭酒造さんも職人技に頼らず、誰でも同じ仕上がりに仕込めるように醸造法を基準・手順として進化させたと聞きました。無印良品さんは、顧客サービスや陳列について基準・手順などのルールを決めて、いわばスーパー店長は不要だという状況をつくり上げてきました。当社もパンづくりにおいて、いつ、誰が担当でも美味しく仕上がるような状態を目指しています。
福永 社内ではまだ抵抗は少し残っていますが、私は一日に30万個前後ものパンを製造する「袋パンの中量生産」においては「職人技はいらない」と呼びかけています。その代わりに、「キムラヤスタンダード」をつくって、それを遵守してもらうようにしています。基準・手順に沿うことが、美味しい袋パンにつながっていることを理解してもらうためです。
(この項 続く)
福永 実は、あんぱんに対する思い入れだけでなく、袋パンの製造における職人技神話にもメスを入れました。パンをつくるには、その日その時の気温、湿度、使う水の温度などの微妙な違いを個人で判断しながらつくらなければいけない、と社内では言い伝えられていました。私はそれらを基準・手順の見える化と数値化をして、基準・手順に沿って作業するように改めました。定められた基準と手順による製造プロセスへ転換させたのです。
――私も経営者のときにやりましたが、そういう変革は古手社員にとても評判が悪い。やる前は信じてもらえない。
福永 そうなんです。製造粗利や主要なKPIなどの数値結果が劇的に向上しています。基準・手順に沿った標準化された作業を導入した結果、製造ロスは半分に低減し、製造粗利は5%以上改善しています。加えて、従来の半数の営業担当者で、以前と同規模の売上を維持することもできています。
――大成果ですね。外部から来た経営者のほうが、こういう場面では強いです。
福永 基準・手順に基づく製造が、実は強み・こだわりを強化するために必要なことだという理解度を上げるために、日本酒の獺祭(だっさい)の製造方法や無印良品の店舗運営をモデル事例として、幹部社員と共有してきました。
獺祭の醸造元、旭酒造さんも職人技に頼らず、誰でも同じ仕上がりに仕込めるように醸造法を基準・手順として進化させたと聞きました。無印良品さんは、顧客サービスや陳列について基準・手順などのルールを決めて、いわばスーパー店長は不要だという状況をつくり上げてきました。当社もパンづくりにおいて、いつ、誰が担当でも美味しく仕上がるような状態を目指しています。
福永 社内ではまだ抵抗は少し残っていますが、私は一日に30万個前後ものパンを製造する「袋パンの中量生産」においては「職人技はいらない」と呼びかけています。その代わりに、「キムラヤスタンダード」をつくって、それを遵守してもらうようにしています。基準・手順に沿うことが、美味しい袋パンにつながっていることを理解してもらうためです。
(この項 続く)
2018年1月18日木曜日
あんぱん有名な木村屋総本店、袋パン事業が「捨てる経営」でV字回復 (7)
職人神話にメスを入れることから始まった木村屋総本店袋パン事業改革
――木村屋総本店は著名なあんぱんで勝負すればいいのではないでしょうか。
福永暢彦氏(以下、福永) スーパー・コンビニ向け事業においては、あんぱんは5%ほどの売上比率しかありません。袋パンでも「あんぱんのキムラヤ」という知名度はあっても、袋パンのマーケットで求められているのは、あんぱんだけではありません。我々は、あんぱんだけでない「強みとこだわりが詰まった袋パン」で成長していかなければなりません。伝統の美味しい袋パンのあんぱんの認知度を上げていくためにも。
だから、方向性を明確にしていくために、スーパー・コンビニ向け事業ではあえて「あんぱんのキムラヤとの決別」という言い方をしてきました。決して「あんぱんのキムラヤ」を否定しているのではありません。袋パン分野での当社の認知度はまだとても低く、ポテンシャルは極めて大きいと感じています。
――「あんぱんのキムラヤとの決別」というのは、古くからいる社員にとっては抵抗のある方向付けだったのではないでしょうか。
福永 そのとおりです。でも私の着任前は、古いやり方、考え方に皆がとらわれていたからこそ、本来持っている伝統や強みが生かし切れていなかった。皆の考え方を変えていけば、袋パンのあんぱんの製造を続けてきたからこその強みを生かしていけると考えています。
(この項 続く)
2018年1月17日水曜日
あんぱん有名な木村屋総本店、袋パン事業が「捨てる経営」でV字回復 (6)
インストアベーカリーと大手パンメーカーの間で、独自のポジションを確立して成長していく
――日本の袋パンメーカーのなかで、木村屋総本店はどんな位置取りになっているのですか。
福永 まず、年商が1兆円を超えるガリバーのような存在が山崎製パングループです。続いてフジパングループ、パスコグループが2000億円以上の年商規模です。
――2位からいきなり桁違い、年商規模が下がっているわけですね。
福永 はい。そして年商200億円を超える規模の袋パンメーカーが数社あり、木村屋総本店のスーパー・コンビニ向け事業の年商はもう少し規模の小さいところに位置しています。
――いわゆる街のパン屋さんはそれこそたくさんありますね。
福永 店内でパンを焼いている業態は「インストアベーカリー」と呼ばれています。これらは製造した焼きたてパンを直接消費者に販売しているわけです。我々のスーパー・コンビニ向け事業は、大手パンメーカーほどに機械化されていませんし、インストアベーカリーのように手づくり度が高いわけでもない、という中間的なポジショニングです。
――中間的なポジショニングのメリットとデメリットはなんですか?
福永 当社も含めて、中間に位置するパンメーカーの悩みは、なんといっても大手との競合にさらされていることです。大手の強みには実は物流網もあり、パンメーカーにとっての物流費の割合の高さからは、とても効率の面で勝負になりません。
また、大手と同じようなパンの製造に走ってしまうと、大手が製造する効率のよさにこれもかないません。中堅メーカーは特色あるパンを開発し続けないと生き残ることが難しい業界です。製造において大手よりも一手間と時間を余分にかけたつくり方をすることで、大手と差別化したカスタマイズ度合の高い、そしておいしい袋パンをつくれることが当社の強みです。我々はこの中間的なポジショニングを「中量生産」と定義して、木村屋総本店の袋パンの開発・製造の強みとしていきたいと取組んでおります。
(この項 続く)
2018年1月16日火曜日
あんぱん有名な木村屋総本店、袋パン事業が「捨てる経営」でV字回復 (5)
――パンの種類は減らしただけなのですか。
福永 いいえ、減らしたアイテムと増やしたアイテムがあります。増やした、というのは当然新製品の開発になりますが、以前のように漠然と商品を出すのではなく、「強み・こだわり」が詰まった「利益が出るパンの開発」というテーマで取組んできています。「利益が出るパンの開発」とは、決して原材料費を抑制することではなく、原材料の廃棄抑制、生産性の向上、定番化することでの計画生産度合の向上など、製造・販売の起点としての重責を果たせる製品開発にチャレンジしています。
オペレーションの改善という点では、計画生産と開発の方向性の具体化、この2点が大きな改革だったと思います。生産量のふり幅を少なくするというのは結構難易度の高いチャレンジだったと思います。
――そのほかには?
福永 計画生産の度合が低いことなどから、残業も多く発生していましたが、全体として大きく改善してきました。また、以前はゼロであった女性管理職が4名、毎日重責を果たしてくれています。
(この項 続く)
福永 いいえ、減らしたアイテムと増やしたアイテムがあります。増やした、というのは当然新製品の開発になりますが、以前のように漠然と商品を出すのではなく、「強み・こだわり」が詰まった「利益が出るパンの開発」というテーマで取組んできています。「利益が出るパンの開発」とは、決して原材料費を抑制することではなく、原材料の廃棄抑制、生産性の向上、定番化することでの計画生産度合の向上など、製造・販売の起点としての重責を果たせる製品開発にチャレンジしています。
オペレーションの改善という点では、計画生産と開発の方向性の具体化、この2点が大きな改革だったと思います。生産量のふり幅を少なくするというのは結構難易度の高いチャレンジだったと思います。
――そのほかには?
福永 計画生産の度合が低いことなどから、残業も多く発生していましたが、全体として大きく改善してきました。また、以前はゼロであった女性管理職が4名、毎日重責を果たしてくれています。
(この項 続く)
2018年1月15日月曜日
あんぱん有名な木村屋総本店、袋パン事業が「捨てる経営」でV字回復 (4)
――どんな分野ですか?
福永 薄利多売の日配ビジネスであるスーパー・コンビニ向け事業は、計画生産がとても難しいビジネスです。しかし難しい条件、つまり与件のなかでも自分たちの行動を変えることで、100点は難しいが可能な限りの計画生産にチャレンジしてきました。
――具体的には?
福永 大手チェーンでの特売セールでは造個数が大幅に増えます。日常の受注とのふり幅が大きくなるほど、実は製造コストが大きくなり損失が膨らみます。私の着任初期にとあるスーパーさんのチラシに載せれば売上が何百万円になる、という受注を社員が取ってきたときにお断りさせたこともあります。そのやり方は旧来の社員たちにはなじめないところもあったようです。「利益につながる売上」という意識を持ってもらうことに腐心しました。
――私も再生経営者として見知らぬ会社に着任した時に、いつも社員の意識を変えることに苦労しました。
福永 各チェーンからの袋パンの注文は最終的には前日までに来るのですが、それにしても過去のトレンドを見たり、それぞれのスーパーさんとしっかりお話ししていれば、どの程度の受注が来るのかはある程度わかるでしょう、と言ってきました。あとは、その見込みに対して人員を配置したり、生産計画を立てたりしてもらうわけです。「100点は無理だけど計画生産にチャレンジしよう」と旗を振ってきました。
当社の取引先の大口はスーパーとコンビニです。スーパーさんのチラシに当社の袋パンが載ると、多くの注文が入ります。嬉しいことなのですが、それが予測できていなければ、生産対応できない。セールスチャンス・ロスとなったり「利益なき繁忙」として生産しなければなりません。
具体的に見ていくと、お取引先であるスーパーさんの販売パターンが見えてきます。販売パターンがわかったことで当方も対応の仕方が見えてきました。個別のスーパーの状況だけでなくスーパー・コンビニ向け事業全体として予測して、計画生産につなげる仕組みが徐々にではありますが出来上がってきました。
(この項 続く)
福永 薄利多売の日配ビジネスであるスーパー・コンビニ向け事業は、計画生産がとても難しいビジネスです。しかし難しい条件、つまり与件のなかでも自分たちの行動を変えることで、100点は難しいが可能な限りの計画生産にチャレンジしてきました。
――具体的には?
福永 大手チェーンでの特売セールでは造個数が大幅に増えます。日常の受注とのふり幅が大きくなるほど、実は製造コストが大きくなり損失が膨らみます。私の着任初期にとあるスーパーさんのチラシに載せれば売上が何百万円になる、という受注を社員が取ってきたときにお断りさせたこともあります。そのやり方は旧来の社員たちにはなじめないところもあったようです。「利益につながる売上」という意識を持ってもらうことに腐心しました。
――私も再生経営者として見知らぬ会社に着任した時に、いつも社員の意識を変えることに苦労しました。
福永 各チェーンからの袋パンの注文は最終的には前日までに来るのですが、それにしても過去のトレンドを見たり、それぞれのスーパーさんとしっかりお話ししていれば、どの程度の受注が来るのかはある程度わかるでしょう、と言ってきました。あとは、その見込みに対して人員を配置したり、生産計画を立てたりしてもらうわけです。「100点は無理だけど計画生産にチャレンジしよう」と旗を振ってきました。
当社の取引先の大口はスーパーとコンビニです。スーパーさんのチラシに当社の袋パンが載ると、多くの注文が入ります。嬉しいことなのですが、それが予測できていなければ、生産対応できない。セールスチャンス・ロスとなったり「利益なき繁忙」として生産しなければなりません。
具体的に見ていくと、お取引先であるスーパーさんの販売パターンが見えてきます。販売パターンがわかったことで当方も対応の仕方が見えてきました。個別のスーパーの状況だけでなくスーパー・コンビニ向け事業全体として予測して、計画生産につなげる仕組みが徐々にではありますが出来上がってきました。
(この項 続く)
2018年1月14日日曜日
あんぱん有名な木村屋総本店、袋パン事業が「捨てる経営」でV字回復 (3)
――メーカーとしての特徴を出しにくい構造ですね。
福永 そんななかでなんとか当社の強み・こだわりを打ち出したい、と苦闘してきました。
――福永さんが就任してからの業績はどのように変化、改善してきたのですか。
福永 袋パン業界のマーケットや事業構造からして、今までのやり方を変えなければ利益を出すことはできないと、強く感じました。一方で、これまでの長い歴史の中で培われたすでにある強みや、大手メーカーにない特徴にトコトンこだわれば、これはいけると感じました。
――どんな分野で改善を図ったのですか。
福永 取扱いアイテムを約4割削減し、お取引いただく小売チェーンも半分近くにまで絞り込みました。その結果、日配の物流コースを2割ほど削減することにもつながっています。これらの絞り込みは、計画生産に近づける上でも、生産性や物流効率を改善する上でも、大きなインパクトがありました。
――いろいろ絞ったわけですね。
福永 いわゆる「選択と集中」を行いました。お取引いただくチェーンは当社にとって顧客ですが、当社が一定の販売ボリュームと利益を確保できないところを中心に絞り込みました。アイテムを絞り込むにあたっても、利益率は大きな要素です。加えて、当社の新たな強み・こだわりにマッチしないアイテムも絞り込みました。
――ABC分析による絞り込みはよく叫ばれるところですが、それをパレート図として描出することが実際には難しいところがあります。
福永 そのとおりです。顧客別にせよ、アイテム別にせよ、実際には共通経費をどう個別に振り分けるか、その方式を決めるのに苦労しました。なかでも、製品設計から製造、そして売上が計上されるまでのプロセスを具体的に理解することに苦労しました。
――しかし、その苦労に対する果実は大きかった、と。
福永 アイテム数も、取引いただく小売のチェーンの数も絞り込んだので年商は一時的には減少しましたが、現状ではほぼ横ばい近くまで回復しています。一方、利益のほうは私の着任前にはスーパー・コンビニ向け事業で数億円あった営業赤字が、2期目には黒字になりました。
――木村屋のように伝統のある会社では難しい改革を積み上げて、いわゆるV字回復を達成なさったのですね。
福永 社員に愛着があるが、強み・こだわりが希薄で利益も確保できていないアイテムを絞り込むには労力を要しました。一方、捨てるだけでは縮小するだけで未来がなくなってしまいますので、「育てる」ことにも注力してきました。
(この項 続く)
福永 そんななかでなんとか当社の強み・こだわりを打ち出したい、と苦闘してきました。
既成概念を破って改善してきた
――福永さんが就任してからの業績はどのように変化、改善してきたのですか。
福永 袋パン業界のマーケットや事業構造からして、今までのやり方を変えなければ利益を出すことはできないと、強く感じました。一方で、これまでの長い歴史の中で培われたすでにある強みや、大手メーカーにない特徴にトコトンこだわれば、これはいけると感じました。
――どんな分野で改善を図ったのですか。
福永 取扱いアイテムを約4割削減し、お取引いただく小売チェーンも半分近くにまで絞り込みました。その結果、日配の物流コースを2割ほど削減することにもつながっています。これらの絞り込みは、計画生産に近づける上でも、生産性や物流効率を改善する上でも、大きなインパクトがありました。
――いろいろ絞ったわけですね。
福永 いわゆる「選択と集中」を行いました。お取引いただくチェーンは当社にとって顧客ですが、当社が一定の販売ボリュームと利益を確保できないところを中心に絞り込みました。アイテムを絞り込むにあたっても、利益率は大きな要素です。加えて、当社の新たな強み・こだわりにマッチしないアイテムも絞り込みました。
――ABC分析による絞り込みはよく叫ばれるところですが、それをパレート図として描出することが実際には難しいところがあります。
福永 そのとおりです。顧客別にせよ、アイテム別にせよ、実際には共通経費をどう個別に振り分けるか、その方式を決めるのに苦労しました。なかでも、製品設計から製造、そして売上が計上されるまでのプロセスを具体的に理解することに苦労しました。
――しかし、その苦労に対する果実は大きかった、と。
福永 アイテム数も、取引いただく小売のチェーンの数も絞り込んだので年商は一時的には減少しましたが、現状ではほぼ横ばい近くまで回復しています。一方、利益のほうは私の着任前にはスーパー・コンビニ向け事業で数億円あった営業赤字が、2期目には黒字になりました。
――木村屋のように伝統のある会社では難しい改革を積み上げて、いわゆるV字回復を達成なさったのですね。
福永 社員に愛着があるが、強み・こだわりが希薄で利益も確保できていないアイテムを絞り込むには労力を要しました。一方、捨てるだけでは縮小するだけで未来がなくなってしまいますので、「育てる」ことにも注力してきました。
(この項 続く)
2018年1月13日土曜日
あんぱん有名な木村屋総本店、袋パン事業が「捨てる経営」でV字回復 (2)
――そうなんですか? でも貴社でもあんぱんを扱っています。
福永 木村屋総本店のスーパー・コンビニエンスストア向けの事業では、袋パン向けに独自に開発設計したあんぱんを、埼玉と千葉にある工場で製造しています。当然、あんぱんの老舗をルーツとする企業として、こだわりの生地とこだわりの餡を使用した、大手メーカーとは差別化した袋パンのあんぱんです。
――現在の事業構成をご説明いただけますか。
福永 木村屋総本店には、デパートなどで伝統的なあんぱんを中心に販売している「直営店事業」と、袋パンを製造・販売している「スーパー・コンビニ向け事業」に大きく分かれており、後者が売上全体の80%を占めています。
――福永さんは木村屋総本店には外部から5年ほど前に着任なさったのですね。外から来てみてパン業界の難しさは、どのようなところでしょうか。
福永 一番の特徴は日配(にっぱい)業だということですね。前日までに受注した一定のボリュームを、翌日の決められた時間までにはスーパーやコンビニの店舗に届けなければなりません。物流は時間がタイトで待ったなしの状態であり、受注から納品までのリードタイムが短く生産計画がとても立てにくい状況にあります。
袋パンの場合、消費者が製造メーカーを認識しづらいほど類似品が溢れかえっていて、パンメーカーは数が多いので競争が激甚です。近年、コンビニ向けにはパン専業ではない食品メーカーがパンを提供したりして、新規プレーヤーの参入も続いています。もうひとつ特徴を挙げると、小売りの力がとても強い、言い換えると、メーカーサイドの提案力がとても弱いということです。
(この項 続く)
福永 木村屋総本店のスーパー・コンビニエンスストア向けの事業では、袋パン向けに独自に開発設計したあんぱんを、埼玉と千葉にある工場で製造しています。当然、あんぱんの老舗をルーツとする企業として、こだわりの生地とこだわりの餡を使用した、大手メーカーとは差別化した袋パンのあんぱんです。
――現在の事業構成をご説明いただけますか。
福永 木村屋総本店には、デパートなどで伝統的なあんぱんを中心に販売している「直営店事業」と、袋パンを製造・販売している「スーパー・コンビニ向け事業」に大きく分かれており、後者が売上全体の80%を占めています。
――福永さんは木村屋総本店には外部から5年ほど前に着任なさったのですね。外から来てみてパン業界の難しさは、どのようなところでしょうか。
福永 一番の特徴は日配(にっぱい)業だということですね。前日までに受注した一定のボリュームを、翌日の決められた時間までにはスーパーやコンビニの店舗に届けなければなりません。物流は時間がタイトで待ったなしの状態であり、受注から納品までのリードタイムが短く生産計画がとても立てにくい状況にあります。
袋パンの場合、消費者が製造メーカーを認識しづらいほど類似品が溢れかえっていて、パンメーカーは数が多いので競争が激甚です。近年、コンビニ向けにはパン専業ではない食品メーカーがパンを提供したりして、新規プレーヤーの参入も続いています。もうひとつ特徴を挙げると、小売りの力がとても強い、言い換えると、メーカーサイドの提案力がとても弱いということです。
(この項 続く)
2018年1月12日金曜日
あんぱん有名な木村屋総本店、袋パン事業が「捨てる経営」でV字回復 (1)
明治の初めに創業した老舗、木村屋総本店副社長の福永暢彦氏は、外部から送り込まれた経営者だ。従来のやり方に慣れ親しんだ社員たちや業界慣習と向かい合い、この老舗を見事によみがえらせた。回復フェーズを通過し、成長フェーズをうかがう福永氏に、これまでの苦闘とこれからの展望、戦略を聞いた。
木村屋総本店の売上構成の中心は袋パンだった
福永暢彦氏(以下、福永) 木村屋というと東京・銀座4丁目にある、あんぱんで有名な銀座木村屋が知られていますが、木村屋総本店と同じルーツの別の法人であり、事業内容や主力の商品なども異なっています。
(この項 続く)
福永暢彦・木村屋総本店副社長:1968年生まれ、滋賀県出身。神戸大学経営学部卒業後、大手生命保険会社、業務改革コンサルティング会社にてキャリアを積む。2011年1月より、株式会社企業再生支援機構にて、中堅印刷メーカーの再生に構造改革責任者(CRO)として従事し、再生経営者としてのキャリアをスタートさせる。13年4月より、株式会社経営共創基盤に参画し株式会社木村屋総本店に経営者として派遣され、13年10月に代表取締役副社長に就任。17年4月に株式会社木村屋総本店に転籍する。「強みのある領域にフォーカスする」「仕組み・基準・手順に基づいて行動する」ことを信念とし、創業149年老舗企業の一層の発展に取組中。
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