2018年12月22日土曜日

外資ファンドに子会社化されたパイオニア、「無給」宣言した森谷社長は即刻辞任すべきだ(8)

 森谷氏が無給でパイオニアの経営に当たるというのは、それを自分はボランティアでやると宣言したわけだ。聞こえがいいかもしれないが、経営の責任への認識がプロフェッショナリズムと対極にあることを晒してしまっている。プロの対極とはアマチュアなので、森谷氏は自分が経営者として自信がないから「無給でやらせてください」ということになってしまったのだ。

 しかし、そんな経営者に率いられる従業員こそ、かわいそうだ。そもそも年俸がゼロとなる経営上の大きな瑕疵が森谷氏には見当たらない。6月に新社長として着任したのだから、ここに至るパイオニアの苦境に対して直接の経営責任を問われる立場にないのだ。

 企業経営には大きな責任も伴えば、チャレンジも迫られる。だからこそ、それに対して一般従業員よりも高い報酬が提供されるのだ。最高経営責任者が自らの報酬を作為的に操作決定したという点で、ゴーン氏と森谷氏は同罪だ。金額操作の方向が上に行ったか、下に行ったかの違いはあるが構造的には同じ出来事である。

 ベアリング傘下入りに際して、パイオニア側でそれを差配した森谷氏はどう身を処せばよかったのか。他の役員同様辞めればよかった、今からでも辞めればよい。ベアリング側は戸惑うだろうが、必ず次の世代のなかから頭角を現す幹部が出てくるはずだ。技術の蓄積があるパイオニアには、それをつくってきた優秀な社員の蓄積もあるはずだ。

 リストラなどに対する社員からの突き上げや反感を忖度したのだろう、あろうことか失敗もないのに自らの給与を返上するような根性のない経営者は、その席を降りたほうがいい。

(この項 終わり)

2018年12月21日金曜日

外資ファンドに子会社化されたパイオニア、「無給」宣言した森谷社長は即刻辞任すべきだ(7)


無給の社長など禁じ手ではないか


 森谷社長は、実はパイオニアで新任の社長である。今年の6月に常務から昇格したばかりである。新卒でパイオニアに入社して各部署を歴任したプロパー社員であり、創業家出身でもない。サラリーマン社長といってよいだろう。

 6月に新社長に昇格して最初の大仕事が、新卒から勤め上げてきたパイオニアを外国の投資ファンドに売り渡すこととなった。しかも、それを発表した7日の席では、社員3000人を削減することも発表した。そんななかで、プロパー役員のなかで自分だけが社長に居続ける。

 森谷社長はよほど寝覚めが悪い思いをしたのか、発表の席で「私の報酬はなくなる。貯金を取り崩しながら、会社の再成長をやり遂げたい」と吐露し、悲壮な覚悟を見せた。森谷氏の基本報酬は19年1月からゼロとなる。

 この決定はベアリングから押し付けられたものではなく、森谷氏が自分で選択したものと思われるが、それは経営者としてセンチメンタルに過ぎると私は思う。賛同できない。

 いやしくもパイオニアは年商3654億円、従業員数約2万人(いずれも18年3月期)を擁する名の通った大企業である。資本構成が変わるからといって、これだけの企業のトップが無給という例は少ない。

 他の例としては、日本航空を再生させた稲盛和夫前会長のケースがあった。しかし、稲盛氏は京セラの創業者であり稲盛財団の理事長で、その資産力は想像にかたくない。しかも同氏は仏教臨済宗で在家得度までしている宗教家だ。通常の経営者では及びもつかない奉仕と救済の意思を有していた。

 稲盛氏が日本航空会長に就任時も、私は「無報酬なんてとんでもない禁じ手だ」と評していた。企業の経営には大きな責任が伴い、集中的な没入が要求される。それをボランティアでやれてしまうのは、資産家で宗教家だった稲盛氏のみにできることで、その行動指針を他のあまねく経営者の模範としてはならないと思ったのだ。

 また、日産のゴーン前会長が報酬の未記載で逮捕されているが、公表されていた年報酬約10億円とほぼ同額を、先払い扱いとしていたと報じられている。不動産の提供や個人の投資損の会社への付け替えを図ったなどとも報じられているが、それらはさておき、あれだけの事業再生を成し遂げた経営者に年俸20億円がふさわしかったのかどうか、しっかり公表して市場や従業員の批判を受ければよかったのだ。

(この項 続く)

2018年12月20日木曜日

外資ファンドに子会社化されたパイオニア、「無給」宣言した森谷社長は即刻辞任すべきだ(6)

しかし、シャープやパイオニアのように技術特化が見られる製造会社の場合、外から乗り込んで行ってビジネスを立て直すことは難しい。日産をV字回復させたカルロス・ゴーン前会長にしても、同業他社での豊富な経営経験があったからこそ、「技術の日産」という大企業を切り回すことができた。

エレクトロニクスの特定領域でパイオニアの技術レベル、そしてポテンシャルは高いものと推定される。そしてその活用こそがパイオニアを再生するための肝となるはずだ。しかし多様で、まだシーズ(種)であろう技術要素を発掘し、評価する作業は、外部から乗り込む経営者には難しいことだろう。

 私の場合も、経営者を引退するまでに6つの会社を任されたが、開発志向の製造会社の場合は、進むべき技術分野の選定にはいつも苦慮したものである。だからベアリングは、パイオニアで他のプロパー役員は退任させた一方で森谷社長だけを残して、新体制でも采配を振るうことを許した、あるいはむしろベアリング側がそれを望んだと推察できる。

無給の社長など禁じ手ではないか


(この項 続く)

2018年12月19日水曜日

外資ファンドに子会社化されたパイオニア、「無給」宣言した森谷社長は即刻辞任すべきだ(5)

さて、せっかく買収した、それも100%子会社とした会社にベアリング側が新社長を送り込まないのはなぜだろう。

同じ電気メーカーでも、シャープの場合は親会社となった台湾・鴻海精密工業(ホンハイ)から戴正呉氏が最初から新社長として送り込まれ、同社長の指揮のもと、V字回復を遂げている。

 一般的に投資ファンドがある事業会社に投資した場合、あるいは会社を入手した場合、ゴールとするのは「利益を出した上での売却」であり、再上場も含まれる。これを「投資の出口(エグジット)」という。

 利益率のよいエグジットを行うために、投資ファンドは入手した企業の企業価値を高めようとする。経営指導や支援もするし、適切と見れば経営者の送り込みも行うのが通常だ。

買収した事業会社がサービス産業やレストラン・チェーンなどのフード産業などの場合は、そのオペレーションの改善やコストカットにより業容を再生させることができる。送り込んだ新社長でも、その事業会社の事業構造を見て適切な手を打てることが多い。

 しかし、

(この項 続く)

2018年12月18日火曜日

外資ファンドに子会社化されたパイオニア、「無給」宣言した森谷社長は即刻辞任すべきだ(4)

投資ファンドはメーカーを経営できない


栄光と挫折を繰り返してきたパイオニアは、結局現時点ではキャッシュを生みだす基幹事業を喪失してしまった状況だ。

 7日の発表で森谷社長は、「地図やデータの組み合わせによるソリューション・ビジネスでの成功を目指す」とした。というのは、高精度なデジタル地図向けのデータベースを持つインクリメント・ピーという子会社があるからだ。この技術資産は、これから始まろうとしている自動車の自動運転に活用できる、確かにビジネスの可能性があるものと考えられる。

 しかし、インクリメント・ピーのビジネスが現在のパイオニアの財務に大きく貢献しているわけでもない。このような状況で、名門企業パイオニアは悔しくも膝を屈してベアリングの傘下に入る道を選ばざるを得なかったということだ。

 今回のファンドによる子会社化に伴って、パイオニアでは連結で約2万人いる従業員(非正規も含む)のうち、約3000人程度を削減するとした。生産や販売体制の見直しに加え、冒頭に記したように経営陣も刷新する。

 さて、せっかく買収した、

(この項 続く)

2018年12月17日月曜日

外資ファンドに子会社化されたパイオニア、「無給」宣言した森谷社長は即刻辞任すべきだ(3)

次にパイオニアが名を馳せたのは、カー・ナビゲーションである。市販品としては世界で最初にGPS対応のカーナビを世に送り出したのが90年のことだった。パイオニアのカーナビは90年代に「カロッツエリア」というブランドでマーケットをリードしたが、その後スマートフォン(スマホ)の普及により、カーナビ専用機全体の市況は不調となってきている。

 家電の王様、テレビの世界でもパイオニアはユニークなビジネスを展開した。すなわち、2000年代にプラズマ・テレビの大手メーカーとして松下電器産業と並んでその普及に挑んだのである。しかし、やがてプラズマ・テレビそのものが液晶テレビとの価格競争に敗れ、パイオニアもこの分野から09年に完全撤退した。

 歴史を振り返ってみると、パイオニアという企業はエレクトロニクスのいくつかの領域で尖がった技術を有していたが、それを最後まで世界でビジネス展開していく経営力は十分でなかった。そのため、他社による完全子会社化に至ってしまったのだ。

投資ファンドはメーカーを経営できない


(この項 続く)

2018年12月16日日曜日

外資ファンドに子会社化されたパイオニア、「無給」宣言した森谷社長は即刻辞任すべきだ(2)

勝ちきれなかった先駆者、パイオニア

パイオニアの創業は古く、伝統がある電気メーカーだ。1938年に福音商会電機製作所という社名で創業されたときはスピーカーのメーカーだった。戦後、ステレオの製造販売も始め、「スピーカーのパイオニア」としてそのオーディオ技術が評価されていた。オーディオ専業だった時代の61年に社名をパイオニアと変更した。

 パイオニア(先駆者)という社名にふさわしく、いくつかの分野で創出的なメーカーとしてマーケットをリードしてきた。80年代にはカラオケに使われるレーザー・ディスク(LD)で一世を風靡して、カラオケの普及に大いに貢献した。しかし、カラオケがオンラインで楽曲を呼び込むような時代がやってきて、スタンド・アロン機器としてのレーザー・ディスクはその使命を終えた。

 次にパイオニアが名を馳せたのは、

(この項 続く)

2018年12月15日土曜日

外資ファンドに子会社化されたパイオニア、「無給」宣言した森谷社長は即刻辞任すべきだ(1)

経営再建中のパイオニアが12月7日に、アジア企業に投資するアジア系投資ファンド、ベアリング・プライベート・エクイティ・アジアの傘下に入ると発表した。

ベアリングは総額1020億円で買収してパイオニアを完全子会社とする。これによりパイオニアは東京証券取引所での上場を廃止する。

 今回の買収に伴い、パイオニアは経営陣も一新し、森谷浩一(もりや こういち)社長と社外取締役2人を除く現取締役は辞任し、ベアリングから取締役が送り込まれる。

森谷社長は無給になると発表されたが、オーナー経営者でもないのに無給で留任するとは、むしろ経営倫理的に問題があると私は考える。森谷氏も退任するのが適当だ。

勝ちきれなかった先駆者、パイオニア


(この項 続く)

2018年12月14日金曜日

水谷栄二先生の13回忌がやってくる

昨夕、九段クラブの忘年会に出席した。
九段クラブは国際関係学院の主任講師をなさっていた水谷栄二先生の教え子により創設され、40年に渡って自主的な勉強、研鑽を続けてきた。

昨夕の集まりで、水谷先生の命日、1月30日が13回忌となることから、ぜひ「偲ぶ会」を催そうということになった。

経営における私の師、メンターは水谷先生だ。教えをいただいたのが40年前に遡る。「水谷先生の最初の言語はフランス語で、次に英語を習得し、日本語は成人した後からの習得だ」などの思い出を話すうちに、あのとてつもない知識人を思い浮かべる。

多様な分野で成功してきた九段クラブのメンバーの今日は、先生の薫陶によるところが多い。

私も水谷チルドレンの一人だった。

2018年12月4日火曜日

ライザップ、赤字転落で成長神話の終焉か…「実態は零細企業の寄せ集め」と失望広まる(8)

松本氏がカルビーを退任すると報道されたその夜に、瀬戸氏は自ら電話を入れたと伝えられる。当初、松本氏をCOOとして迎えたのは、85社を見てほしい、との希望だったのだろう。しかし、いかにプロ経営者だとしても、それを自ら執行していくのは不可能だ。プロ経営者ができるのは、85社の経営を監督、指導する「仕組みをつくる」ことだ。

 着任して早々に10社以上の子会社の社員たちと交流会を持ったという松本氏は、すぐにそのことに気がついたのだろう。直接統治という職制ではない、「構造改革担当」の代表取締役という肩書きに収まった。

 ついでに言えば、松本氏と経営陣との意見の相違があったと報道された。松本氏は「私と瀬戸さんが対立したことは一切ない」としているが、瀬戸社長を取り巻く既存の幹部、役員とは相克があったはずだ。今までの路線にストップをかけられる、つまり自分たちのやってきたことを否定されるわけだから、対立がないはずはない。しかし、そんな動きは外部から着任するプロ経営者にとっては当たり前の「反対勢力」なわけだ。

 瀬戸社長の松本氏への信任は厚いように見える。松本氏は外部での活動もあり、フルタイムでRIZAPの経営に没入しているわけでもないらしい。そういうことなら、いっそう現場を預かるCOOより現在の肩書きのほうが寄与しやすいのだろう。

 松本氏や私のような世代、経営者としての先輩から見ると、瀬戸氏は好感あふれる若手実業家だ。決算発表会で自らの責任を語るとき、真摯な表情を見せたし、その後の社内説明会では涙を流したという。人間としての率直さ、感受性をベースとして人を巻き込んできたのが瀬戸氏の経営技法、能力の一つと見た。

 松本氏の助言により、RIZAPは新しいM&Aを当面凍結するという。「自己投資産業グローバルNo.1へ」という同社のグループ・ビジョンはわかりやすく、すばらしい方向付けだ。願わくば、今回の方針転換により暫時の雌伏の時を経て、近い将来、快進撃を再開してほしいものだ。

(この項 終わり)

2018年12月3日月曜日

ゼブラのボールペンサラサ3に問題が(11)

ゼブラからの回答書には次のような記載もあった。

「現状の価格設定で、今以上にペン先を強度を持たせることが難しいのも正直なところでございます。」

正直なところはいいが、メーカーとしての本音としての
「安いのだからがまんしろ」という論理は通らないだろう。

確かに、本換え芯を私が購入した価格は一本60円弱だった。しかし、値段が幾らのものにせよ、不良率が半分を超えたというのは、市場に出す商品としては失格以外の何者でもない。

私の場合はネット通販で購入しているので、本記事に記載してきたような購入歴、不良歴がさかのぼって検証できた。
しかし普通の購入者は皆泣き寝入りしていることと思う。私一人の不満の後ろにはたぶん何万人という声無き不都合を強要されている消費者がいるはずだ。

また、使用法に問題がある、留意しなければならないというのなら、商品自体にいわゆる「ネガティブ表記」が成されなければならない。ゼブラが不都合を認識していて、それを怠っているわけだから、大手メーカーとして責任ある対応とは言えない。

ゼブラの猛省をうながす。

(この項 とりあえず終わり、もしかして再開)

2018年12月2日日曜日

ライザップ、赤字転落で成長神話の終焉か…「実態は零細企業の寄せ集め」と失望広まる(7)

おもちゃ箱M&A路線の修正へ、松本氏が助言


 業績の下方修正は、11月14日に開かれたRIZAPの「2019年3月期 第2四半期決算説明会」で行われたのだが、壇上には瀬戸健社長と並んで、松本晃氏が代表取締役構造改革担当の肩書きで登壇した。

 松本氏はカルビー会長兼CEOを退任するや、瀬戸社長の懇請で今年の6月にRIZAPのCOO(最高執行責任者)に着任し、この10月には構造改革担当という肩書きとなった。瀬戸社長はまだ40歳で若手経営者だとすれば、松本氏は71歳のベテランプロ経営者という対照的なコンビである。決算説明会でも、松本氏は創業社長である瀬戸氏を前に臆することなく、「この会社はおもちゃ箱のようだと思っていたが、壊れているおもちゃも結構ある。それは直さなければならない」と、苦言を呈していた。

 私が瀬戸氏の経営者としての資質を評価できるのは、その人柄の良さと、今回示した「自分の限界を知る」という能力だ。勢いのままに85社も傘下に収めて「グループ経営」を気取ったのはいいが、気がついてみればそんなにたくさんの異業種の会社を経営、あるいは指導していく能力が自社のなかにはない、あるいは大きく足りないということに気がついたのだろう。

(この項 続く)

2018年12月1日土曜日

ライザップ、赤字転落で成長神話の終焉か…「実態は零細企業の寄せ集め」と失望広まる(6)

もう一つ私が疑問に思うのが、85社も急激に買ってしまって、個々の会社の財務状態をしっかり検討したのか、という点である。補完性や相乗効果があるに越したことはないが、そうでなくても事業改善の見通しがなくてはならなかった。

 私が親しくしている大手のM&A仲介会社がある。そこの役員が昨年、「RIZAPには当社からも10社以上、仲介実績がある」と打ち明けていた。M&A仲介会社の成功手数料は莫大で、それは社員一人当たりの平均年収が近年常にベスト3にランクされていることからもよくわかる。

 瀬戸氏はRIZAPボディメイクの大きな成功に高揚して、気が大きくなりすぎた嫌いはなかったのだろうか。ここ数年、多くのM&A仲介会社が瀬戸詣でを繰り返してきた。それらのM&A仲介会社の「お勧め」――それはある場合「仲人口」のようなことがある――に安易に乗りすぎた嫌いはなかっただろうか、というのが私の懸念である。ババをつかまされたことが、どれだけあったのだろうか。

おもちゃ箱M&A路線の修正へ、松本氏が助言



(この項 続く)

2018年11月30日金曜日

ゼブラのボールペンサラサ3に問題が(10)

ゼブラ社から来た2回目の回答書の1部に次の記載があった。

「<原因調査結果>
(略) 前回のご案内と重複し、誠に恐縮ではございますが、ペン先部のボールをかかえている金属(カシメ部)は傷が付き、変形しておりました。このために、、(略)」(30年111月6日、お客様相談室)

はて?同状の別の部分。
「<お申出内容>
(略) 使い方にも配慮しているが、その後も同じ不具合が生じている。」

第1回目のクレームのときに貰った回答書では、筆圧が強いためにカシメが壊れただろうという見解だった。

それで気をつけて使ってきたのに、ゼブラ社の分析のようにまたそこが破断したという。丁寧にペン先の拡大画像も添付されていたが、それはまさに不良商品の自己証明ではないか。

原因がわかり、そこに気をつけて使用してきたのに不具合が繰り返されるということは、それが市販に供するに耐えない商品ということなのではないか。

回答書ではさらに別の記載があった。

(この項 続く)

2018年11月29日木曜日

ライザップ、赤字転落で成長神話の終焉か…「実態は零細企業の寄せ集め」と失望広まる(5)

たとえば、今回の下方修正の足を引っ張った子会社群として、「ワンダーコーポレーション、ジャパンゲートウェイ、サンケイリビング新聞社、 ぱど、タツミプランニングのメガソーラー事業等、経営再建途上のグループ会社・事業に加え、今期の一時的要因の影響が出ているMRKホールディングス」などがあげられた。

 これらの子会社群の多くが、RIZAPが共通ビジョンとして掲げている「自己投資産業グローバルNo.1へ」と関連して集められたものとは見えないのだ。例えばワンダーコーポレーションはCDの販売会社だし、ぱどはフリーペーパーを発行している。またMRKホールディングスは女性向け下着の会社だ。

 そして、結果として雑多な会社を買ってしまったのはいいが、それらの経営を指導していく本体側の経営人材はどれだけ用意があったのか。RIZAPは瀬戸社長の強いリーダーシップの下に急激に伸びてきた会社だ。そんな会社に、果たして異業種である多くの子会社を経営指南していける役員人材の手駒は足りていたのか。

(この項 続く)

2018年11月28日水曜日

ゼブラのボールペンサラサ3に問題が(9)

ZEBRA社の社長に問いたい。石川真一社長に問いたい。

「あなたは自分の会社が、17本使ってもらって10本以上の不良発生をしているような商品を製造販売してどう思っているのですか?」

私はこの製品のヘビーユーザーでもあり、愛用者だ。ファンであると言ってよい。そんなコアな消費者をこんなにがっかりさせてどうするのか。

ちなみに、第2回の返送に対してZEBRA社から代替品の配送とともに不良品の解析が送られてきた。それに付けられた貴社の担当者のコメントにはこんなことが書いてあった、、

(この項 続く)

2018年11月27日火曜日

ライザップ、赤字転落で成長神話の終焉か…「実態は零細企業の寄せ集め」と失望広まる(4)

M&Aにより業績を急激に拡大するのは、有効であり危険である。問題はRIZAPの内部にPMIに長けた経営資産があったか、機能したかである。

PMIとはポスト・マージャー・インテグレーションのことで、買収した後にその子会社を本体に一体化させる作業のことをいうが、別に一体化しなくともそれぞれの会社の業績を伸ばせればいい。要は安くM&Aをして、それを迅速に事業再生する経営力があったか、ということだ。

 M&A巧者として知られているのは、日本電産の永守重信会長兼社長だ。永守氏のM&Aを見ていると、まずコア事業であるモーターの関連事業の会社を買い集め、それらの技術を束ね上げるという一貫した方針がある。

そして、M&Aの対象候補となった企業のEBITA(税引前利益に支払利息、減価償却費を加えて算出される利益)の10倍までしか金を出さないという財務指標がある。

さらに、買収したら側近を送り込んで数年の間に日本電産流を徹底的に植えつけるという確立したPMI技法がある。つまり、「M&A勝利の方程式」があるのだ。

 永守式M&Aに比べて今回の瀬戸社長の発表を見てみると、まるで反省発表会のように聞こえる。

(この項 続く)

2018年11月26日月曜日

ゼブラのボールペンサラサ3に問題が(8)

それはさておき、本製品(替え芯)の、私のところでの不良発生率を確認しておく。

前述したように、私はこの1年余に3色合わせてY通販から19本購入し、2本が未使用である。つまり、17本を使ったことになる。

一方、ZEBRA社に不良返送したのは、1回目が3本、2回目が2本(誤って送ったP社のものはもちろん含まない)、そして3回目として返送依頼を受けたものが3本ある。

つまり、不良総数は3+2+3=8本だ。加えて、第1回目の前に数本の不良発生があったので、返送クレームにいたったのだ。その第0回の分は捨ててしまった。それを入れれば10本超が不良となった。

ZEBRA社の社長に問いたい、、、

(この項 続く)

2018年11月25日日曜日

ライザップ、赤字転落で成長神話の終焉か…「実態は零細企業の寄せ集め」と失望広まる(3)

「結果にコミットする」RIZAPの大当たりで、M&A拡大路線へ


 RIZAPの創業者は、現社長である瀬戸氏だ。瀬戸氏は24歳で健康食品の通信販売会社の創業(健康コーポレーション)から事業を始め、2010年、32歳のときにRIZAPボディメイクのビジネスをスタートさせた(グローバルメディカル研究所、現RIZAP)。

「結果にコミットする」という印象的なキャッチフレーズで成功を収めてきたボディメイクビジネスをコアとして、瀬戸社長は積極的にM&Aに乗り出し、コングロマリット(複合企業)化の道を驀進してきた。RIZAPの子会社の数は、16年3月期には23社だったが、18年9月末には85社になっている。2年半の間に62社をほぼM&Aで入手してきた。

今期の売上予想はグループで2300億円と下方修正されたので、1社当たりの年間売上は単純平均で27億円ということだ。業績の下方修正で冷や水を浴びせられた投資家が、冷静になってしまうと「なんだ、零細企業の寄せ集めか」というふうにも、とらえられかねない業容である。

(この項 続く)

2018年11月24日土曜日

ライザップ、赤字転落で成長神話の終焉か…「実態は零細企業の寄せ集め」と失望広まる(2)

下方修正の発表を受けた翌日15日(木)は売り気配一色となり、345円のストップ安で終わった。売りに出された株の多くが約定とならず、続く16日(金)も2日続きのストップ安である265円で引けている。

年初来高値が1099円(1月30日)だったので、11月26日の週明けにはその高値から80%も下げる場面も予想されている。

 マーケットからこれだけの失望を買った要因は、直接的にはもちろん19年3月期業績予想の下方修正だ。具体的には、連結最終損益予想を従来の159億円の黒字から70億円の赤字に下方修正した。年間売上高予想も2500億円から2300億円へと下方修正した。

 しかし、業績の下方修正をするのは、別に珍しいことではない。RIZAPの今回の発表に対して投資家がこれだけ反応したのは、同社の成長神話の終焉、少なくとも大きな踊り場が来たことを感じたからだろう。ちなみに最終損益が赤字になれば08年3月期以来、11年ぶりとなる。

(この項 続く)

2018年11月23日金曜日

ライザップ、赤字転落で成長神話の終焉か…「実態は零細企業の寄せ集め」と失望広まる(1)

ライザップ(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)
RIZAPグループ(以下、RIZAP)が業績予想を下方修正したのを受け、株価が大きく下げている。

快進撃を続けてきたRIZAPが、大きな曲がり角に来たのだろうか。今年招聘されたプロ経営者の松本晃氏は、瀬戸健社長とどのように同社を経営していくのだろう。

 M&Aにより構築してきたRIZAPの「グループ経営」に問題が提起された。瀬戸社長の経営者としての踏ん張りどころが来た。RIZAPは再び成長軌道に戻れるのだろうか。


業績下方修正だけでない、成長神話の終焉への懸念


11月14日(水)の業績下方修正の発表を受けて、RIZAPの株価は大きく下げた。上場している札幌証券取引所の新興企業向け市場で13日(火)に497円(終値、以下同)を付けていた株価は、14日には早くも425円となり下げ始めていた。

 (この項 続く)

2018年11月22日木曜日

ゼブラのボールペンサラサ3に問題が(7)

ZEBRA社のT氏に
「実は、前回2回目に発送してから、私の手元にはまた2本不良が発生してしまって保存している」
と、告げた。

するとT氏は、
「それでは、それもお手数だが送ってほしい」
と言うではないか。

私は結構気を損ねて
「同じ問題で消費者に3回も迷惑をかけて、『また送れ』は無いだろう。こういう場合は貴社の方から菓子折りでも持って謝罪方々取りに来るような状況ではないのか」
と、抗議した。

T氏は
「申し訳ないが、それはできないので是非送り返してほしい」
の一点張りで終わった。

それはさておき、、

(この項 続く)

2018年11月21日水曜日

ゼブラのボールペンサラサ3に問題が(6)

すると、電話に対応してくれたZEBRA社の消費者相談センターのT氏は、「本日対応書と代替品をお送りしました」と言うではないか。実際、翌日受領した。

しかし、T氏に
「私のところでは使い方に留意をするようになったにも拘らず、問題が再発している。この商品は何か製造上の欠陥があるのではないか」
と、見解を述べた。

「あるいは、購入先をYネット通販に切り替えてから問題が起きているように感じているので、Yネット通販向けの製造に関わるロット不良が起きたのではないか」
とも指摘した。

そして、
「実はまだ手元には」
と、、、

(この項 続く)

2018年11月20日火曜日

なぜLIXILは、プロ経営者を連続解任したのか? 創業家、CEOに復帰で独裁経営(7)

10年ごろからM&A手法を繰り出し始めた潮田氏は、サンウェーブ工業、新日軽をたて続けに買収し、11年4月1日に傘下の事業会社のトステム、INAX、サンウェーブ工業、新日軽、東洋エクステリアの5社を統合した事業会社LIXILグループを発足させた。

 このようにいくつもの会社をグループ形成の持ち駒のようにしてきた潮田氏にとって、自らが招聘したプロ経営者もやはり経営上の持ち駒のように考えているのではないか。

 さて、潮田氏が会長兼CEOとして復帰したので、同社の取締役たちは戦々恐々としているのではないか。実際、10月31日の記者会見では、潮田氏と退任する瀬戸氏と並んで、社長兼COOに就任した山梨氏が出席していたのだが、同氏が自らコメントを述べることは少なかった。隣にいる潮田氏に遠慮したものと受け止められる。

 実質オーナーが直接経営に乗り出すとなると、これ以上の求心力は望めないだろう。しかし、藤森氏を実質解任した15年末には、潮田氏はシンガポールに居住していると報道されていたのだが、今回CEOに着任した後はどうするのだろうか。フルタイムで経営に当たるのだろうか。

 いずれにせよ、LIXILグループは新しく潮田体制で動き出す。潮田氏は「再びM&A手法も繰り出したい」と発表会見で語っている。同社のダイナミックな成長に期待したい。

(この項 終わり)

2018年11月19日月曜日

ゼブラのボールペンサラサ3に問題が(5)

前回に記したように、この1年間で当該ZEBRAボールペンの換え芯を19本購入してきた。

一方、私が「不良認定」(インクのボタ落ち、線のかすれ、あるいは書けない)したものはどれだけあったか。

まず、今年の夏前にZEBRAの消費者相談センターに「この頃使えないものが出てきて困っている」と電話をかけた。

一応の謝罪を受け、返送用の封書が送られてきたので3本送り返した。

10月に入り、今度はメールで同様の状態が続いている、とした。前回のやり方で私の使い方に問題がある(筆圧が強い)可能性の指摘を受けたので、「それには注意してきたのに再発した」と書き込んだ。

再び「不良を送ってほしい」とのことだったので、3本送った。その後、そのうちの1本はP社製のものだったといって返送された。机の中に紛れていたらしい。

11月に入り、「不良品を送ったのに受領の確認葉書さえもらっていない、どうしたか」と抗議の電話をかけた。

そうすると、、

(この項 続く)

2018年11月18日日曜日

なぜLIXILは、プロ経営者を連続解任したのか? 創業家、CEOに復帰で独裁経営(6)

潮田氏もこの程度の保有株式数でLIXILグループでキング・メーカーとして君臨できているのは、他にも理由がある。同氏は、同社で取締役会議長と指名委員会の委員長職を握っていたのだ。

藤森氏も瀬戸氏も、潮田氏が実質招聘したのだが、創業家である潮田氏が委員長として指名委員会で提案したのだから、他の誰も異議を唱えることなど難しかっただろう。潮田氏は今回自らがCEOに復帰したので、指名委員会を退任した。

 今回瀬戸氏を実質解任する前には、おそらく潮田氏は他の外部のプロ経営者を招聘しようと働きかけたのではないか。しかし、2人も招聘して解任という経緯を目のあたりにしたら、誰も受ける経営者などいなかっただろう。それで仕方なく自らがCEOに復帰することになったのではないかと、私は推測している。

潮田新CEOはLIXILをどこへ導く


 プロ経営者側から見れば、横暴ともいえるガバナンスを発揮した潮田新CEOだが、経営者としての実績は実は十分にある。

 潮田氏は前回、06年から11年までCEOとしてLIXILグループの経営に当たってきた。前述のとおり同社の源流はトーヨーサッシで、潮田氏が着任したときは社名がトステムであり、もうひとつ住生活グループという会社も率いていた。


(この項 続く)

2018年11月17日土曜日

なぜLIXILは、プロ経営者を連続解任したのか? 創業家、CEOに復帰で独裁経営(5)

創業家の潮田氏がCEOに復帰した理由


 創業家が直接経営に乗り出さずに外部からプロ経営者を招聘して、その後に更迭した例として記憶に新しいのが、ベネッセホールディングスだ。日本マクドナルドですばらしい実績を残した原田泳幸氏を招聘した。しかし、2年後には実質解任された。

 ベネッセの創業家は福武家だが、同家が直接あるいは信託銀行を経由して実質保有している株式は、同社の23.14%に上る(18年3月期同社有価証券報告書から筆者調べ)。大経営者といわれた鈴木敏文氏をセブン&アイ・ホールディングス会長職から解き、詰め腹を切らせた伊藤家の実質保有株は、同社の10%を超え、実質的に筆頭株主である。

 出光家、福武家、伊藤家と比べ、LIXILグループでの潮田家の保有株式比率は小さい。しかし会社を上場しても、創業者あるいは創業家が強い意思決定権を保持しているケースは、実は枚挙に暇がない。たとえその保有株式数が少数だったとしてもだ。

 たとえば、トヨタ自動車の豊田章男社長は創業者の豊田喜一郎氏を祖父に持つ御曹司とはいえ、豊田社長の持ち株比率は0.1%で、豊田家全体でも1%程度である。創業家といってもオーナーではない。それにもかかわらず豊田社長は実質オーナー社長のように受け取られている。つまり、上場企業となっても創業家は実質オーナーとしての威光を保つことが多いのだ。それらの会社は実質的にファミリー・ビジネスであるといえる。

(この項 続く)

2018年11月16日金曜日

ゼブラのボールペンサラサ3に問題が(4)

購入していたのがネット通販なので、購入本数の履歴が残っている。昨年の夏から換え芯だけで13本、ボールペン本体2本(芯が各3本)、合計19本の芯を購入してきた。机の中には予備として未使用が3本あるので、1年余の間に16本を使ってきたことになる。

これから詳細を記述するが、およそ半数が消費者としての私の立場からは使えなかった。

名のあるメーカーの、消費者向け商品としては聞いたことも無い高率な問題発生だ。市場に出回った商品の1%もクレームがつけば一般的にメーカーとしての死活問題となるが、本品に関して言えば、およそ多すぎる。単価が安い商品なので、声を上げていない消費者が圧倒的なのだろうが、私は2度にわたって、ゼブラ社に現品を送り、注意を促してきた。

その対応について電話もかけた。その顛末を記す。

(この項 続く)

2018年11月15日木曜日

なぜLIXILは、プロ経営者を連続解任したのか? 創業家、CEOに復帰で独裁経営(4)

前任者だった藤森氏も日本GEの会長兼社長を経て、外部から招聘されたプロ経営者だった。そんな藤森氏でさえ実質解任されて自分にバトンが渡されたわけだ。自らの業績が上がらなければ、あるいは下がるようなことがあれば、当然自分にも同様な途が示されることは覚悟して就任したはずだ。

 私はよく言うのだが、プロ経営者とプロ野球の監督は似ている。そのチームの戦績が振るわなければ、外部から新しい監督が招かれることがある。そして、多くの場合、数シーズンでまた次の監督にバトンタッチする。いってみれば、このような流動性が出てきたからこそ、プロ経営者も経営者市場に登場してくるわけだ。

 さて、2人のプロ経営者の更迭を主導した潮田氏は、LIXILグループ内でどれくらいの「資本力」を擁しているのだろうか。

 同氏はLIXILグループの前身であるトーヨーサッシを創業した潮田健次郎氏の長男で創業家の直系である。その持ち株数を見てみると、18年3月末現在で直接個人持ち株と、信託財産としての実質持ち株を合わせて、LIXILグループ発行済み株式の2.995%を保有している(18年3月期同社有価証券報告書より)。

 上場会社における創業家持分としては、それほど大きいほうではない。例えば、出光興産が昭和シェル石油との合併を最近まで踏み切れなかったのは、創業家の出光家がほぼ3分の1を有していたからである。

(この項 続く)

2018年11月14日水曜日

ゼブラのボールペンサラサ3に問題が(3)

昨年の夏から、ネット通販Yからの購入に切り替えた後から、ボールペンの芯からインクがボタオチし、ボールペンの先部を汚く覆ってしまうようになった。私が愛用しているモデルは先端部が透明となっているのだが、そこが中からどす黒く変色してしまうのだ。

それに何より、滑らかに書けていたものが、線描がかすれてしまい、早い話し、使用に耐えなくなった。もちろん、問題が起きた換え芯は最後までインクを使い切ることは適わない。

換え芯1本の値段は廉価なので、そのたびに買い換えて済ましていたが、問題はその発生率の高さだった。

(この項 続く)

2018年11月13日火曜日

なぜLIXILは、プロ経営者を連続解任したのか? 創業家、CEOに復帰で独裁経営(3)

思い起こせば、瀬戸氏の前任だった、藤森氏の社長交代劇もドライというか、苛烈だった印象がある。藤森氏は、ドイツの水回り設備会社のグローエを買収するなど、海外戦略を加速させた。しかし、15年にグローエの中国子会社が不正会計を行っていたことが発覚し、660億円の損失が発生すると、その年の暮れには藤森氏の社長退任、瀬戸氏の就任が発表された。

藤森氏は辞めるつもりはさらさらなかったと見られていた。その年が明けて、社長交代の発表会見に後任社長が出席しなかった(瀬戸氏はイギリスに滞在していた)という異例の事態は、直前に更迭が決まったことを物語っている。当時から取締役会議長で指名委員会委員長の潮田氏が断を下した。


上場会社でオーナー?


 瀬戸氏は退任会見で淡々としていた。

「これからのLIXILをどうしていくかの方向性が違ってきた。潮田氏が違う方向を考えているのであれば、対峙するよりもそれをやってもらうことが一番だなと判断した」

 瀬戸氏はまた、「ポジションを譲るのもプロ経営者」と話して、恬淡としたところを示した。3年ほど前に招聘され、今回は短期間の業績暗転で交代を要請された。そんな経緯なのに強い遺憾の念を持っていないように見えるのは、瀬戸氏にプロ経営者としての覚悟と矜持があるからだろう。

(この項 続く)

2018年11月12日月曜日

ゼブラのボールペンサラサ3に問題が(2)

ゼブラのボールペンサラサ3は、細字で水溶性のインクを使っている。そのため、書き味が滑らかで、私は数年来愛用している。

物書きという状況なので、筆記具を多用するので、常時5本ほど、このボールペンを使ってきた。机周り、かばんの中、車の中、テニスバックの中にも、という状況だ。

2017年の夏までは文房具屋さんで換え芯を求めていた。問題は無く、快適に使用していた。

問題が起こるようになったのは、8月からネット通販のYからの購入に切り替えてからだ。

(この項 続く)

2018年11月11日日曜日

なぜLIXILは、プロ経営者を連続解任したのか? 創業家、CEOに復帰で独裁経営(2)

業績が下降すると退任を迫られる、それが雇われ社長の辛さ

瀬戸氏の退任発表の前触れとなったのが、10月22日にLIXILグループが発表した今期業績の下方修正だ。2019年3月期の連結純利益(国際会計基準)が前期比97%減の15億円に、事業利益が前期比40%減の450億円(従来予想は850億円)となると修正した。また、今期4-9月の上期決算では86億円の純損失が発生した
 10月31日の社長交代会見で潮田氏は「決算が原因ではまったくない」と話したが、そんなことはないだろう。

 業績の下方修正を受けて、10月22日には2062円を付けていたLIXILグループの株価は翌日1737円へと16%も下落した。ちなみに、10月31日の会見により株価は同日の1780円から11月1日は1530円と一段下げとなった。この社長交代が市場ではネガティブ要因としてとらえられた。

瀬戸氏が社長に就任した16年6月15日の前日の株価は1810円。就任後、今年1月の高値(3255円)までに80%上昇したのだが、10月23日には1737円へと下落してしまった。瀬戸氏の社長就任時の株価を下回ってしまったことから、現在でも大株主である潮田氏がそこで見切ったものと私は見ている。

(この項 続く)

2018年11月10日土曜日

なぜLIXILは、プロ経営者を連続解任したのか? 創業家、CEOに復帰で独裁経営(1)

リクシル本店(「Wikipedia」より/Rs1421
LIXILグループは10月31日に会見を開き、瀬戸欣哉社長兼CEOが来春に退任し、後任の社長に社外取締役の山梨広一氏が就任し、潮田(うしおだ)洋一郎取締役会議長が会長兼CEOに就任すると発表した。

潮田氏は創業家出身で、同社内で大きな意思決定権を行使している。同社では瀬戸氏の前任だった藤森義明氏に続いて、「プロ経営者」が短期での実質更迭となった。

 創業家が資本の保持だけでなく経営にも大きく関与している場合、招聘されたプロ経営者は機能しにくい場合がある。退任する瀬戸社長の本音はどんなものだろうか。

 また、直接経営に乗り出すことになった潮田氏だが、この機会に同社はオーナー経営型を続けたほうがよいのではないか。

業績が下降すると退任を迫られる、それが雇われ社長の辛さ


(この項 続く)

2018年11月9日金曜日

帝国ホテルで恒例の経営無料相談会

2019年1月22日(水)
23日(木)
満員
24日(金)


(秘密厳守)
- 戦略立案・点検
- 組織・人事再構成 
- 企業承継
- 幹部能力開発 幹部解職

1時間程度、無料

申し込みは
(有)MBA経営へ
yamadao@eva.hi-ho.ne.jp

2018年11月8日木曜日

ゼブラのボールペンサラサ3に問題が(1)

ゼブラ社のサラサ3シリーズというボールペンをここ数年来愛用してきた。

私は物書きなので、筆記具のヘビーユーザーである。

ところがこのボールペンの換え芯に連続して問題が起き、大いに不満に思っている。メーカーの対応も含めて、当方ー消費者側ーの利益を損なっている案件だと思った。

個人的に起きている問題なので本ブログに投稿するが、年商220億円を誇る筆記具の大手メーカーの商品に起きている品質問題としても提起したい。

本記事では私は一消費者としての立場だが、他の多くのユーザーも同じ問題を抱えているのではないかと思料する。私のところで起きている問題は他の消費者でも起きていると考える。その意味で、本件は公共性があり、多数のユーザー及び見込み客の利害に関係する公益性のある案件と考えた。

「たかがボールペンの芯」に起きた問題とは。

(本項 続く)

2018年11月7日水曜日

マツダ、欧州ディーゼル車から撤退すべきだ…ロータリー・エンジン過信で経営危機の二の舞(8)

つまり単一商品の技術力より、大きなマーケット構造のほうがビジネスの勝敗を帰結させるものなのだ。

 私は若いときにマツダのロータリー・エンジン車に乗っていたことがある。当時としてはすばらしいエンジン性能に惚れ惚れしたものだ。マツダの当時の経営陣も陶酔していたのだろう。

 ロータリー車はしかし燃費の悪さでマスとしてのユーザーを持続させることはかなわず、やがてこのエンジンの開発と製造を続けているのは世界でマツダ1社となってしまった。そして、マツダはとんでもない経営危機に陥ってしまったのである。

 あまり昔の話なので、今のマツダの経営陣や技術陣はその記憶が薄れてしまっているのかもしれない。しかし、おもしろいことに強い共同体験は企業組織にも取り込まれて残るものだ。
ここでは、「技術信奉によって大きなビジネス戦略選択上の失敗を犯す」というDNAがそれだろう。

 マツダは早くヨーロッパのディーゼルから撤退したほうがいい。

(この項 終わり)

2018年11月6日火曜日

マツダ、欧州ディーゼル車から撤退すべきだ…ロータリー・エンジン過信で経営危機の二の舞(7)

PLCセオリーと連動してプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)セオリーを援用すると、マツダの戦略的劣勢はさらに明らかになる。

PPMの4象限の中で、「ヨーロッパにおけるマツダのディーゼル展開」を当てはめてみると、「マーケット・シェア」の軸で極低、「マーケットの成長」軸では高低どころかマイナスということになる。

この2軸での組み合わせはPPMセオリーでは「Dog(負け犬)」と呼ばれる。そしてこの象限に入った商品や技術に与えられる戦略は「撤退」なのだ。

 マツダのディーゼル・エンジンの技術「SKYACTIV-D」は競争優位を持っているという。そして次世代のディーゼルでも優位性を持てそうだともいわれている。マツダのディーゼル技術は、製造の上では確かにコスト優位を実現しているかもしれないが、シェア1%の商品が「衰退期」フェーズでそのシェアを伸ばしていくには、巨額の市場開発費がかかる。マツダがそのコストに挑戦しきれるとは思えない。

(この項 続く)

2018年11月5日月曜日

マツダ、欧州ディーゼル車から撤退すべきだ…ロータリー・エンジン過信で経営危機の二の舞(6)

ロータリー・エンジンの二の舞になる前に


 PLCで衰退期に入ったそのカテゴリー領域で残存者利益を享受できるには、一定のプレゼンスがあるプレイヤーとなる必要がある。簡単にいえば、マーケット・シェアの高い商品が、露出が高いので選ばれるのだ。具体的には、フォルクスワーゲン、BMW、ダイムラーというドイツの三大企業がディーゼル車の環境対応に力を入れている。つまり、安易に撤退はしない、という意思を見せているのだ。

 アメリカの自動車メーカーはもともとディーゼル車を選好していない。商品としてのディーゼル車モデルそのものが少ない。日本の自動車メーカーは、マツダを除いてこの市場から撤退を決めている。ヨーロッパのディーゼル市場で残って勝負しようとしているのは、ドイツの三大メーカーと日本からはマツダだけとなる。そして、そのマツダのシェアは1%強しかない。

 PLCセオリーで、ごく小さいマーケット・シェアのプレイヤーに希望があるのは、「成長期」である。マーケット全体が急速に成長すれば、「フォロワー」としての弱小シェア商品もつられて伸びていくことは多い。しかし、繰り返すがこのマーケットは急激に「衰退期」に突入しているのだ。

(この項 続く)

マツダ、欧州ディーゼル車から撤退すべきだ…ロータリー・エンジン過信で経営危機の二の舞(6)

「成熟期」は言ってみれば高位安定期、つまりビジネス・ボリュームのプラトー(高原)状態を指すが、ヨーロッパのディーゼル車セグメントは全体としてそれを過ぎて「衰退期」に入ったことは間違いない。1年間に4%強も落ちている売上カーブを見れば、それは明らかだ。

「衰退期」に入っている商品カテゴリーで利益を上げる戦略は「残存者戦略」となる。衰退していくマーケットから次々と競合他社が撤退していくと、「残り福」となったプレイヤーは残存者利益を享受できるというものだ。商品や技術の開発サイクルから考えても、大きな開発投資などが必要なのは「導入期」か「成長期」にあるとされる。

ましてや「SKYACTIV-D」は技術的・コスト的競争優位を達成したとマツダは誇っている。もう「濡れ手に粟」のような状態さえ考えているのではないか。

だが、それは間違っている。

(この項 続く)

2018年11月4日日曜日

マツダ、欧州ディーゼル車から撤退すべきだ…ロータリー・エンジン過信で経営危機の二の舞(5)

しかしマツダのこの自信は、転換点を迎えてしまっているヨーロッパ市場でこれから通じるのだろうか。
 ヨーロッパでマツダがどれだけのビジネス・プレゼンスがあるのか見てみる。

 マツダはヨーロッパで合計26万9000台を販売した(17年3月期、同社発表数値)。このうち約3割がディーゼル車だというから(同社広報)、8万台強がそれに当たる。ちなみに日本国内でのディーゼル販売比率は約4割だそうだ。

 前述したように、18年上半期のEC+EFTA30カ国でのディーゼル車の販売数は349万台であり、年換算すれば約700万台となる。つまりヨーロッパにおけるマツダのディーゼル車のシェアは約1.2%程度という勘定になる。

 ここで、商品がプロダクト・ライフ・サイクル(PLC)のある特定の局面ではどのように利益を上げる可能性があるかを考えてみよう。PLCセオリーでは、特定の商品や商品カテゴリーは4つのライフ・サイクルをたどると説明されている。「導入期」「成長期」「成熟期」、そして「衰退期」だ。

(この項 続く)

2018年11月3日土曜日

マツダ、欧州ディーゼル車から撤退すべきだ…ロータリー・エンジン過信で経営危機の二の舞(4)

通じるかマツダ、自社技術への自信


 前述したマツダの藤原副社長が示した自社のディーゼル技術への自信と、ヨーロッパ市場からの撤退を表明していないことについて、マツダの広報部に方針を確認した。

 まず「マツダはヨーロッパ市場からもディーゼルからも撤退する方針はない」(マツダ広報部)とした上で、その理由を次のように説明した。

「マツダのディーゼル技術を『SKYACTIV-D』と呼んでいます。このエンジンでは燃料である軽油のエンジン内での圧縮比率を効率化することにより、他社のディーゼル・エンジンよりNOxの排出量を少なくすることに成功しています。他社のエンジンでは多くの場合、排出されたNOxを後処理するための装置を付加しているのですが、『SKYACTIV-D』はそれが不要なのです」(同)

 つまり、環境的にもコスト的にも競争優位を持っているとの認識である。そして「世界での販売台数を2023年度に200万台にするのがとりあえずの目標です」(同)とした。200万台の内訳、つまりヨーロッパだけ、あるいはエンジン種別での目標台数は示していない。ちなみに17年3月期のマツダの世界販売数は162万台だった。

(この項 続く)

2018年11月2日金曜日

マツダ、欧州ディーゼル車から撤退すべきだ…ロータリー・エンジン過信で経営危機の二の舞(3)

自動車が排出する環境汚染物質は、CO2(二酸化炭素)とNOxがある。ガソリン車に比べてディーゼル・エンジンはCO2の排出量が少ないこと、燃費が良いことから特にヨーロッパ市場で受け入れられてきた。

ところが2015年に独フォルクスワーゲンによるディーゼル・エンジンの排出不正問題が発覚して以降、環境規制の厳格化も相まって、世界のディーゼル市場は大きなダウン・トレンドに突入してしまった。

 問題の出所となった北米市場ではディーゼル車のマーケット・シェアはもともと大きくなかったのだが、大きな痛手を被ったのが、ガソリン車よりもディーゼル車のほうが売れていたヨーロッパ市場だった。

 ピークの11年には西欧18カ国でディーゼル車のシェアは56%を占めたが、直近18年上半期では域内でのディーゼル車の販売総数349万台(対前年同期比4.2%マイナス)に比べ、ガソリン車は365万台(対前年同期比9.9%増)となった(欧州自動車工業会発表、ただしEUとEFTA<欧州自由貿易連合>全30カ国の合計)。域内でガソリン車の売上がディーゼル車を上回ったのは、09年以来8年ぶりだそうだ。

 今年前半のヨーロッパでのガソリン車の増え方は前年比9.9%増という、ほぼ2桁である。このパラダイム・シフトとも呼べる変化は、マーケットの大転換点と見ることができる。

(この項 続く)

2018年11月1日木曜日

マツダ、欧州ディーゼル車から撤退すべきだ…ロータリー・エンジン過信で経営危機の二の舞(2)

日本車7社のうち、最後のマツダの方針に注目が集まっていたが、マツダの選択は意外なことに、「ヨーロッパのディーゼル車市場でまだまだがんばる」というものだった。

 スズキの撤退が報じられた少し前の10月2日、マツダは「技術説明会2018」を開催した。その席上で今後のディーゼルの展望について、マツダの藤原清志副社長(研究開発部門も統括)は次のように述べた。

「ディーゼルは今後も諦めずに開発していくつもりで、まだまだ将来的に可能性があると思っています」

 このコメントは、ヨーロッパ市場だけを意識したものではなかった。

「その理由は2つあって、1つは燃料が低価格の軽油であること。もう1つはトルク(エンジンのねじり力)が大きいので、(車体が重い)SUVのクルマなどに適しているからです。NOx(窒素酸化物)をさらに減らしていくという課題はありますが、ハイブリッドの電動化をプラスすることで、さらにディーゼルの良さを追求できると考えます」(同)

(この項 続く)

2018年10月31日水曜日

マツダ、欧州ディーゼル車から撤退すべきだ…ロータリー・エンジン過信で経営危機の二の舞(1)

マツダHPより
ヨーロッパの環境規制強化を受け、日本の自動車メーカーは大部分がディーゼル車市場から相次いで撤退を決めた。

そんななか、「独り、わが道を行く」としているのがマツダだ。マツダは自社のディーゼル・エンジンの優位性に自信を示して、引き続きヨーロッパ市場で戦っていく意向だ。

しかし、マツダのこの「逆張り」戦略は、果たして「人の行く裏に道あり花の山」として結実するのだろうか。

 ヨーロッパのディーゼル車市場を「プロダクト・ライフ・サイクル・セオリー」で俯瞰すると、マツダの先行きの厳しさの構造が理解できる。


マツダ以外がヨーロッパから撤退したワケ


10月半ば、スズキが年内をメドにディーゼル車の欧州販売から撤退すると報じられた。それ以前から日本車各メーカーの同様の決定が五月雨式に伝えられていた。トヨタ自動車、日産自動車、ホンダ、SUBARU(スバル)はすでにヨーロッパでのディーゼル車の販売縮小に動いており、電気自動車(EV)など環境車に経営資源を集中するとしていたし、三菱自動車工業も英国やドイツなど主要国でディーゼル乗用車の販売を順次終える方針を発表していた。

(この項 続く)

2018年10月30日火曜日

トヨタとソフトバンク、協業関係に…豊田章男氏と孫正義氏が交わした「約束」(6)

次に、豊田社長がまさに今大苦闘している「社外勢力との協業、提携」に対して、孫社長は大きな助勢を与えることができるからだ。孫社長のことを私は近年「デジタル・インベスティング・モンスター」と尊称している。

古くはヤフー(米国)があり、上場前のアリババ(中国)、さらにはアーム(イギリス)と、大胆で先見性のある投資を行ってきた。「10兆円ファンド」と呼ばれるソフトバンク・ビジョン・ファンドを通じての世界での投資活動も枚挙に暇がない。今回、豊田社長が「ドアを開ければ」と孫社長の先回りに舌を巻いたライドシェア各社への先行投資など、デジタル・インベスティング・モンスターにとってはほんの氷山の一角にすぎない。

 今回の新会社設立発表会での壇上対談でのやり取りを見聞きしていると、2人の大経営者は相性がよさそうに見える。孫社長が自社の社外取締役として迎えたファーストリテイリングの柳井正会長兼社長や日本電産の永守重信会長兼社長などと同じくらいに豊田社長と胸襟を開き合うことになれば、孫社長は豊田社長にとってはこれ以上ない大きな味方となるだろう。トヨタが望んでやまない社外のデジタル・ビジネス・ソサエティへの強力な紹介状がもらえるからだ。

 ビッグ・ビジネスも最後は人間が行う所業である。それには相性や好悪の要素も大きく入る。豊田社長が繰り返している「自動車産業100年に一度の危機」は正しい。このタイミングでの孫社長との遭遇は図らずも「トヨタ100年目の好機」をもたらすのだろうか。

(この項 終わり)

2018年10月29日月曜日

トヨタとソフトバンク、協業関係に…豊田章男氏と孫正義氏が交わした「約束」(5)

トヨタの真の果実は孫正義への接近


 しかし今回の新会社設立、そして2社の協業開始で一番大きな要素は、単にライドシェアという単一ビジネス分野のことではないと私は見ている。

 今後大きなビジネスの展開のなかでもっとも大きな因子となりうるのは、単純に豊田章男と孫正義という2大アントレプレナー(企業家)の遭遇であり、相互知見にほかならない。これは、特にトヨタにとって将来これ以上ない大きな布石となった可能性がある。

 私がそう指摘するにはいくつかの理由、状況がある。

 まず、豊田社長も孫社長も日本で並外れたアントレプレナー同士であることだ。孫社長はもちろんソフトバンクGの創業経営者でオーナーである。文字どおりの最高意思決定者だ。豊田社長はトヨタのオーナー経営者ではないけれど、創業家の3代目社長としてその求心力は近年とみに大きさを増してきている。

 2つの大きなビジネス・グループでサラリーマン社長でない、強い意思決定力を有している2人のトップ同士が直接胸襟を開き合う関係となり、実際にビジネスを開始した。これは、将来にわたり両グループの協業の千変万化な可能性を約束したに等しい。

(この項 続く)

2018年10月28日日曜日

トヨタとソフトバンク、協業関係に…豊田章男氏と孫正義氏が交わした「約束」(4)

今回の提携で大きな利を得るのはトヨタ側だというのが私の見方である。

 というのは、この提携でトヨタ側が求めたものは、「ライドシェアのトップグループ」の知見だった、という見方があるのだ(10月5日付BUSINESS INSIDER JAPAN記事『トヨタ×ソフトバンク提携には「必然」しかない』<西田宗千佳>)。

 ソフトバンクGはウーバー(北米・欧州)、DiDi(中国)、グラブ(東南アジア)、Ora(インド)といった、ライドシェア大手の筆頭株主になっている。

「『4社で全世界のライドシェアの乗車回数の90%を占めている』と孫社長が語るほど、影響力は大きい。そして何より重要なのは、巨大なシェアを背景に『配車』『運転』に関する情報が集まり続けている、ということだ」(前出BUSINESS INSIDER記事より)

一方、豊田社長は今年の初めにトヨタを単なるモノとしての自動車製造業者から、人の移動にフォーカスした「モビリティ・カンパニー」にすると宣言した。そしてこの方向性の実現のために、外部の非製造業者との資本あるいは業務提携に力を入れてきた。
 ライドシェアの分野では17年に東南アジア8カ国で配車サービス(ライドシェア)を展開するグラブ(Grab Holdings Inc.)と提携を始めると、18年6月にはグラブに対して10億ドルを出資。その2カ月後には米ウーバーに5億ドルを投入した。

 ところがトヨタが勇んで出資したこの2社の筆頭株主はソフトバンクGだったのである。今回の新会社設立発表会の壇上で豊田社長が「ドアを開けると、そこには孫さんがすでに座っていた」と慨嘆とも賛嘆したともいえる状態だったのだ。

 今回発表された新会社モネ テクノロジーズの株式持分は、ソフトバンクGが50.25%、トヨタが49.75%とされた。あの大トヨタがわずかとはいえマイノリティ株主となったことも驚きとされたが、ライドシェア分野でのソフトバンクGの先行を考えれば順当なところとも考えられる。

(この項 続く)

2018年10月27日土曜日

トヨタとソフトバンク、協業関係に…豊田章男氏と孫正義氏が交わした「約束」(3)

さらに「まだ発表していない諸々の施策」についてまで言及しておいた。
「状況の認識と矢継ぎ早の対応策の繰り出しという点で、私は豊田社長を優れた経営者だと認める。問題は、豊田社長が繰り出している、そしてまだ発表していないであろう諸々の施策が間に合うか、ということだ。変革するにはトヨタというのはあまりに大きな組織に見えるからだ。豊田社長の挑戦に注目し、応援している。」

 今回の2巨頭による発表などという大きな「隠し玉」がこんなにすぐに出てくるとまでは、私にも予想できなかったわけだ。


トヨタ側に大きなメリット、ソフトバンクGとのアライアンス


 今回の発表で意外だったのは、この提携が両巨頭のどちらかのトップダウンで始まったのではなく、両社の若手グループの事前協議で詰められて、豊田社長の孫社長訪問に至ったという経緯である。

「イノベーションのジレンマ・セオリー」では、先行巨大企業(この場合にはトヨタ)の内部には伝統的な価値観(バリュー・ネットワーク)がはびこってしまい、変革への大きな抵抗を形成するとされている。しかし、トヨタのなかでは少なくとも豊田社長のブレーン・レベルくらいまでは、この弊害に陥っていなかったらしい。これも豊田社長が近年繰り返して言ってきた「勝つか負けるかではない、生きるか死ぬかだ」というまでの危機感が伝播した成果なのだろう。

(この項 つづく)

2018年10月26日金曜日

トヨタとソフトバンク、協業関係に…豊田章男氏と孫正義氏が交わした「約束」(2)

両巨頭出席の発表会


発表会では両グループの副社長がプレゼンを行ったが、その後、豊田社長と孫社長自身も登壇し、いってみればトークショーのようなかたちで今回の提携の経緯を語り、和やかな対談を繰り広げた。
 日本で時価総額1位のトヨタと3位のソフトバンクG(10月22日現在)という2大会社の突然の提携発表も大きな驚きだったが、両社の2巨頭が壇上で親しくエールを交わしているような光景を予想した向きは少なかっただろう。

 トヨタが置かれている状況について、私は本連載前回記事で次のように指摘したばかりだった。

「トヨタが置かれている立場は、絵に描いたような『イノベーションのジレンマ』の事例だと言える。そして、そこでの戦略的なポジションとしては大いなる危機にあると言える。」(『豊田章男トヨタ社長は極めて優れた経営者…巨大組織の「100年に1度」の再構築を断行』より)

そして、豊田社長の状況認識と組織対応を次のように支持した。

「豊田社長は、自社が置かれている危機をよく理解している。それを社内に対してもよく発信しているが、既存組織の対応では間に合わないという構造もよく理解しているようだ。そして、対応策として既存組織(それは子会社群も含む)の再構成を行っているし、外部の経営資源の活用にも手を伸ばしている。」

(この項 続く)