森谷氏が無給でパイオニアの経営に当たるというのは、それを自分はボランティアでやると宣言したわけだ。聞こえがいいかもしれないが、経営の責任への認識がプロフェッショナリズムと対極にあることを晒してしまっている。プロの対極とはアマチュアなので、森谷氏は自分が経営者として自信がないから「無給でやらせてください」ということになってしまったのだ。
しかし、そんな経営者に率いられる従業員こそ、かわいそうだ。そもそも年俸がゼロとなる経営上の大きな瑕疵が森谷氏には見当たらない。6月に新社長として着任したのだから、ここに至るパイオニアの苦境に対して直接の経営責任を問われる立場にないのだ。
企業経営には大きな責任も伴えば、チャレンジも迫られる。だからこそ、それに対して一般従業員よりも高い報酬が提供されるのだ。最高経営責任者が自らの報酬を作為的に操作決定したという点で、ゴーン氏と森谷氏は同罪だ。金額操作の方向が上に行ったか、下に行ったかの違いはあるが構造的には同じ出来事である。
ベアリング傘下入りに際して、パイオニア側でそれを差配した森谷氏はどう身を処せばよかったのか。他の役員同様辞めればよかった、今からでも辞めればよい。ベアリング側は戸惑うだろうが、必ず次の世代のなかから頭角を現す幹部が出てくるはずだ。技術の蓄積があるパイオニアには、それをつくってきた優秀な社員の蓄積もあるはずだ。
リストラなどに対する社員からの突き上げや反感を忖度したのだろう、あろうことか失敗もないのに自らの給与を返上するような根性のない経営者は、その席を降りたほうがいい。
(この項 終わり)
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