2018年1月14日日曜日

あんぱん有名な木村屋総本店、袋パン事業が「捨てる経営」でV字回復 (3)

――メーカーとしての特徴を出しにくい構造ですね。
福永 そんななかでなんとか当社の強み・こだわりを打ち出したい、と苦闘してきました。

既成概念を破って改善してきた


――福永さんが就任してからの業績はどのように変化、改善してきたのですか。

福永 袋パン業界のマーケットや事業構造からして、今までのやり方を変えなければ利益を出すことはできないと、強く感じました。一方で、これまでの長い歴史の中で培われたすでにある強みや、大手メーカーにない特徴にトコトンこだわれば、これはいけると感じました。

――どんな分野で改善を図ったのですか。

福永 取扱いアイテムを約4割削減し、お取引いただく小売チェーンも半分近くにまで絞り込みました。その結果、日配の物流コースを2割ほど削減することにもつながっています。これらの絞り込みは、計画生産に近づける上でも、生産性や物流効率を改善する上でも、大きなインパクトがありました。

――いろいろ絞ったわけですね。

福永 いわゆる「選択と集中」を行いました。お取引いただくチェーンは当社にとって顧客ですが、当社が一定の販売ボリュームと利益を確保できないところを中心に絞り込みました。アイテムを絞り込むにあたっても、利益率は大きな要素です。加えて、当社の新たな強み・こだわりにマッチしないアイテムも絞り込みました。

――ABC分析による絞り込みはよく叫ばれるところですが、それをパレート図として描出することが実際には難しいところがあります。

福永 そのとおりです。顧客別にせよ、アイテム別にせよ、実際には共通経費をどう個別に振り分けるか、その方式を決めるのに苦労しました。なかでも、製品設計から製造、そして売上が計上されるまでのプロセスを具体的に理解することに苦労しました。

――しかし、その苦労に対する果実は大きかった、と。

福永 アイテム数も、取引いただく小売のチェーンの数も絞り込んだので年商は一時的には減少しましたが、現状ではほぼ横ばい近くまで回復しています。一方、利益のほうは私の着任前にはスーパー・コンビニ向け事業で数億円あった営業赤字が、2期目には黒字になりました。

――木村屋のように伝統のある会社では難しい改革を積み上げて、いわゆるV字回復を達成なさったのですね。

福永 社員に愛着があるが、強み・こだわりが希薄で利益も確保できていないアイテムを絞り込むには労力を要しました。一方、捨てるだけでは縮小するだけで未来がなくなってしまいますので、「育てる」ことにも注力してきました。

(この項 続く)

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