2018年1月15日月曜日

あんぱん有名な木村屋総本店、袋パン事業が「捨てる経営」でV字回復 (4)

――どんな分野ですか?
福永 薄利多売の日配ビジネスであるスーパー・コンビニ向け事業は、計画生産がとても難しいビジネスです。しかし難しい条件、つまり与件のなかでも自分たちの行動を変えることで、100点は難しいが可能な限りの計画生産にチャレンジしてきました。

――具体的には?

福永 大手チェーンでの特売セールでは造個数が大幅に増えます。日常の受注とのふり幅が大きくなるほど、実は製造コストが大きくなり損失が膨らみます。私の着任初期にとあるスーパーさんのチラシに載せれば売上が何百万円になる、という受注を社員が取ってきたときにお断りさせたこともあります。そのやり方は旧来の社員たちにはなじめないところもあったようです。「利益につながる売上」という意識を持ってもらうことに腐心しました。

――私も再生経営者として見知らぬ会社に着任した時に、いつも社員の意識を変えることに苦労しました。

福永 各チェーンからの袋パンの注文は最終的には前日までに来るのですが、それにしても過去のトレンドを見たり、それぞれのスーパーさんとしっかりお話ししていれば、どの程度の受注が来るのかはある程度わかるでしょう、と言ってきました。あとは、その見込みに対して人員を配置したり、生産計画を立てたりしてもらうわけです。「100点は無理だけど計画生産にチャレンジしよう」と旗を振ってきました。

 当社の取引先の大口はスーパーとコンビニです。スーパーさんのチラシに当社の袋パンが載ると、多くの注文が入ります。嬉しいことなのですが、それが予測できていなければ、生産対応できない。セールスチャンス・ロスとなったり「利益なき繁忙」として生産しなければなりません。

 具体的に見ていくと、お取引先であるスーパーさんの販売パターンが見えてきます。販売パターンがわかったことで当方も対応の仕方が見えてきました。個別のスーパーの状況だけでなくスーパー・コンビニ向け事業全体として予測して、計画生産につなげる仕組みが徐々にではありますが出来上がってきました。

(この項 続く)

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