私の指摘に対して、犬飼准教授は、あっさりと
「ご指摘はその通りです」
と認められた。そして
「その点は本論文の方では触れる予定でした」
と付け加えた。
司会の丹沢安治・中央大学教授が
「発表者の肩をもつわけではないけれど」
と割って入り
「(山田の)対抗仮説ではTobin's qの急落が説明出来ない」
と、指摘した。私もそう思った。しかし、
(それでも私の指摘が無効になるわけではない)
とも思った。すると発表者自身が
「Tobin's qは便宜的に使用したので」
とおっしゃった。犬飼准教授は真理と真実の前に公平な学者だ、と私は強く好感を持った。
学会で発表者に異論を申し立てるのは居心地が悪く、緊張することである。自分を励まし、手を挙げることにしている。
(この項 終わり)