電車に乗る時、駅まで自転車で行くことがある。駅前の地下に公共駐輪場があるので、そこに乗り捨てることにしている。乗り捨てる、と言っても前輪をロックしてくれる装置が並んでいるので、それに愛車を固定していくのだ。
使用料は安く、初めの2時間は無料、それから2時間毎にわずか100円である。廉価なのに管理人が常駐していて、利用者がいると「行ってらっしゃい」「お帰りなさい」と挨拶してくれたり、「あちらに空きがあります」などと案内してくれた。顔を覚えるほどの利用頻度ではなかったが、何人かが交代で出ていたようだ。
先日、帰ってきて自転車を装置から外そうとしたら、ロックが動かない。数回試したが駄目なので、管理人に申し出た。その時居合わせた管理人は、椅子に座って文庫本を読みふけっていた。声をかけたのだけれど、反応してくれない。耳が遠い人かと思い、私は近くに寄ってみて声をかけた。返答、反応が相変わらず、無い。肩に手をかけることまでは憚れ、困惑してしまった。
(この項 続く)