●孫正義の誇大妄想
上記表で掲げた「基本的な事業性向」と「ビジネス拡大の手法」については、これまでの本連載で分析してきました。この2つの視点で2人の経営手法を観察すると、「異名を付けるなら」の項目に収斂されると思います。
まず孫氏ですが、柳井氏自身が「孫氏は経営の天才だ」と評したことを本連載で紹介しました。名経営者の柳井氏が一目置くほどの孫氏の天才ぶりは、学生時代から表れていました。せっかく入学した九州の名門高校を1カ月で中退し米国の大学に留学、さらにUCバークレー大学院に進み、在学中に起業してしまう。こんな経歴はスティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツ、ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン(グーグルの創業者)などと重なり、当時の日本ではほかに見当たらない経営者としての出現ぶりでしょう。孫氏自身が、若い時のことを振り返って次のように述べています。
「僕は小学生1、2年のときからいずれ何万人の部下を持つ会社をつくると思っていました。(略)16歳でアメリカ留学する時、親にも友達にも学校の先生にも止められました。しかし英語の勉強やアメリカを体験するのは、大人になって頭が固まってからでは遅い。若いうちに世界を見たいと一人決意してアメリカに飛び出しました。その時からいずれ日本で事業を起こす。日本で成功させたら世界で勝負したいと当時から言っていました。誇大妄想狂といわれていましたが(笑)」(「企業家倶楽部」<07年4月号>)
(この項 続く)