赤字の主原因は、15年に6200億円で買収した豪物流子会社トール・ホールディングスにあった。ブランド価値を示す「のれん」を一括償却したことにより、約4000億円もの損失を計上したのである。それに対して稲村氏は同記事で、
「特に巨額損失の全責任を負うべき西室氏に対しては怒りを感じます」
と、糾弾している。トール社の買収は西室氏の主導で進められ、15年2月に発表された際には「電撃買収」と報じられた。
稲村氏は同記事で「西室氏の経営手腕には、ほかにも疑問に感じる部分がありました」として、生保アフラックのがん保険を全国の郵便局で独占的に販売できるようにしたことなどを挙げている。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」という趣もあり、そもそも稲村氏の経営幹部としての在任期間は、トール買収発表以前ではあったものの、西室氏とかぶっていた。
稲村氏は「私は最初から反対だった」としているが、副会長という枢要な役員であり経営責任がある立場にあったのだから、「殿を諌めなかった家老連」という指摘も免れないかもしれない。
(この項 続く)
2017年5月30日火曜日
2017年5月29日月曜日
東芝と日本郵政の巨額損失を主導した戦犯、西室泰三氏の「突出した権力所有欲」(2)
稲村氏は、総務省時代から政策統括官として国営だった郵政事業を管轄し、日本郵政公社の常務理事に転出した人だ。一貫して郵政民営化に反対し、一時は大学に教授として転出し郵政事業から離れた。その後、民営化により株式会社日本郵便が発足した12年10月に同社副会長に就任した。14年3月には同社顧問を退任しているので、西室氏の社長時代(13年6月就任)と在任時期がかぶっている。
郵政民営化の推進役として民間から政府により招聘された西室氏と、一貫して公営化の利点を主張している稲村氏とでは、基本的な立場が正反対なので、在任中も協調的に経営に当たっていたとは思われない。
この記事が出たきっかけは、日本郵政が5月15日に17年3月期の連結最終損益が289億円の赤字(前期は4259億円の黒字)になったと発表したことだ。赤字は07年の郵政民営化以来初めてのことで、それが「郵政愛」の強い稲村氏の義憤につながったのだろう。
(この項 続く)
郵政民営化の推進役として民間から政府により招聘された西室氏と、一貫して公営化の利点を主張している稲村氏とでは、基本的な立場が正反対なので、在任中も協調的に経営に当たっていたとは思われない。
この記事が出たきっかけは、日本郵政が5月15日に17年3月期の連結最終損益が289億円の赤字(前期は4259億円の黒字)になったと発表したことだ。赤字は07年の郵政民営化以来初めてのことで、それが「郵政愛」の強い稲村氏の義憤につながったのだろう。
(この項 続く)
2017年5月28日日曜日
東芝と日本郵政の巨額損失を主導した戦犯、西室泰三氏の「突出した権力所有欲」(1)
![]() |
日本郵政・西室泰三社長(ロイター/アフロ) |
経営者、財界人として華麗な経歴を重ねてきた西室氏だが、退職後に批判が噴出し毀誉褒貶半ばというより、多くの非難を集めるという状況となってきている。
日本郵便元副会長が実名告発
元日本郵便副会長の稲村公望氏が西室氏を批判した記事が話題となっている。「週刊現代」(講談社/5月27日号)記事『日本郵政の巨額損失は東芝から来た西室泰三元社長が悪い』で、「日本郵便元副会長稲村公望氏が実名で告発」という副題がついている。
(この項 続く)
2017年5月27日土曜日
ソニー、倒産危機から完全復活…「魅了する家電製品」不在を嘆く人々の時代錯誤(8)
実際にはプレイステーションが属する「ゲーム&ネットワークサービス」セグメントは、17年度予想では売上2兆円近くとされ、この巨大企業の立派な柱となっているのだ。そんな製品が現存しているのに、多くのソニーOBやファンはないものねだり、あるいは過去への郷愁を表出しがちなのである。
前出ダイヤモンドの記事は「コングロマリットを目指すのではなく」と主張しているが、たとえば「金融」セグメントに目を留めてほしい。17年度予想では収入1兆円以上と大きな柱である。それに、営業利益が1700億円と予想されていて、これは対売り上げで15%にもなる。「半導体」以外の製造セグメント各部門では、対売上営業利益率はせいぜい10%だ。
米ゼネラル・エレクトリック(GE)が15年に金融事業から撤退すると発表し、株式市場はそれを好感し、ソニーもそれを見習うべきとの指摘もある。しかし、20世紀最大の経営者ジャック・ウェルチがレガシーとして残し、GEの金城湯池だった同事業から撤退したのは、ジェフリー・イメルト会長の大きな失政だと私は思っている。ソニーは粛々とタコ足経営(8事業体制)を進めていけばいい。
平井社長の「第2次中期経営計画」は17年度に達成される見通しだ。いずれ「第3次」が発表されることだろう。この「凋落ストッパー」経営者が、果たして「中興の祖」とまで呼ばれるようになるか、多いに興味がある。
蛇足だが平井社長の15年3月期の報酬は5億1300万円と公表されている。通常報酬(退職報酬などではない)としては日本人経営者で最高額だ。第2次、第3次中計を実践、達成していき、「報酬10億円日本人社長」の称号を手にしてもらいたい。
(この項 終わり)
前出ダイヤモンドの記事は「コングロマリットを目指すのではなく」と主張しているが、たとえば「金融」セグメントに目を留めてほしい。17年度予想では収入1兆円以上と大きな柱である。それに、営業利益が1700億円と予想されていて、これは対売り上げで15%にもなる。「半導体」以外の製造セグメント各部門では、対売上営業利益率はせいぜい10%だ。
米ゼネラル・エレクトリック(GE)が15年に金融事業から撤退すると発表し、株式市場はそれを好感し、ソニーもそれを見習うべきとの指摘もある。しかし、20世紀最大の経営者ジャック・ウェルチがレガシーとして残し、GEの金城湯池だった同事業から撤退したのは、ジェフリー・イメルト会長の大きな失政だと私は思っている。ソニーは粛々とタコ足経営(8事業体制)を進めていけばいい。
平井社長の「第2次中期経営計画」は17年度に達成される見通しだ。いずれ「第3次」が発表されることだろう。この「凋落ストッパー」経営者が、果たして「中興の祖」とまで呼ばれるようになるか、多いに興味がある。
蛇足だが平井社長の15年3月期の報酬は5億1300万円と公表されている。通常報酬(退職報酬などではない)としては日本人経営者で最高額だ。第2次、第3次中計を実践、達成していき、「報酬10億円日本人社長」の称号を手にしてもらいたい。
(この項 終わり)
2017年5月26日金曜日
ソニー、倒産危機から完全復活…「魅了する家電製品」不在を嘆く人々の時代錯誤(7)
複合企業のままで走れ
前出ダイヤモンドの記事の執筆者はソニーのOBではないが、ソニー愛は深く、同記事で次のように見解も述べている。
「“ウォークマン”のように人々の心に驚きと興奮を与えるモノを、ソニーが創り出すことは可能だろう。今後のソニーの経営には、収益性を重視しつつ攻める姿勢が必要だ。それはコングロマリットを目指すのではなく、新しい技術を使って、人々をワクワクさせる、より良いモノを創るということだ」
ソニー本などで多くのソニーOBが希求してきたことは、確かにそのようなことなのだろう。同記事ではまた、「新しい技術力を用いた製品のコンセプトをまとめ、それを先進的なデザインと組み合わせることが、ソニーの強さであり、最も強い部分=コアコンピタンスだった」ともしている。異論はなく、ただ私の立場は「そうだった」と強い過去形なだけだ。
「輝けるソニー」が大賀社長時代までだったとしたら、それは20年前の話であり、年商は現在の半分の時代だった。現在、仮にユニークで消費者を真に魅了するようなエレキ製品をソニーが世に送り出せたとしても、この8兆円企業にとってはシングルヒットにしかなり得ない。
(この項 続く)
2017年5月25日木曜日
ソニー、倒産危機から完全復活…「魅了する家電製品」不在を嘆く人々の時代錯誤(6)
しかし、前述したソニーの17年度セグメント別業績予想に関する私の分析によれば家電製品はすでにソニーの本流ではない。そこをめざしても、売上8兆円ものこの巨大企業を導いていけるようなボリューム感のある製品を送り出すことは難しい。
歴代社長を振り返ってみたとき、トランジスタラジオやウォークマンのような斬新かつ魅力的で、一世を風靡するような「家電」製品がソニーから出てくる時代は、大賀典雄社長時代(1982~95年在任)で終わった。そのあと、出井伸之社長(1995~2000年在任)以降は、ソニーの組織内からの社長昇格者となり、彼らのアントレプレナー(起業家)的素養は大きく減じてしまっている。平井現社長はアントレプレナーとしての強みではなく、マネジメント能力で勝負していると私は見ている。
アントレプレナー型ではなく、能吏型の経営者に見える平井社長は、12年から14年までの「第1次中期経営計画」で大不調会社だったソニーの止血作業を行った後、ただちに15年に「第2次中期経営計画」を発表し、実践してきた。
その最終年となる17年度に目標とした5000億円の営業利益を達成しようとしている。CEO在任5年間の通信簿としては、着実に成果を上げてきたと評価できるだろう。
(この項 続く)
歴代社長を振り返ってみたとき、トランジスタラジオやウォークマンのような斬新かつ魅力的で、一世を風靡するような「家電」製品がソニーから出てくる時代は、大賀典雄社長時代(1982~95年在任)で終わった。そのあと、出井伸之社長(1995~2000年在任)以降は、ソニーの組織内からの社長昇格者となり、彼らのアントレプレナー(起業家)的素養は大きく減じてしまっている。平井現社長はアントレプレナーとしての強みではなく、マネジメント能力で勝負していると私は見ている。
アントレプレナー型ではなく、能吏型の経営者に見える平井社長は、12年から14年までの「第1次中期経営計画」で大不調会社だったソニーの止血作業を行った後、ただちに15年に「第2次中期経営計画」を発表し、実践してきた。
その最終年となる17年度に目標とした5000億円の営業利益を達成しようとしている。CEO在任5年間の通信簿としては、着実に成果を上げてきたと評価できるだろう。
(この項 続く)
2017年5月24日水曜日
ソニー、倒産危機から完全復活…「魅了する家電製品」不在を嘆く人々の時代錯誤(5)
平井社長は12年に「第1次中期経営計画」を発表、実施したのだが、それにより1万人もの社員削減、本社ビルの売却、パソコンなど複数の事業売却などを推し進めた。
この時期、これらの痛みを伴う改革と相まって、平井経営への批判は高まった。ソニーという注目を集め続けている企業に対し、多くの解説本が世に問われ、「ソニー本」と呼ばれている。ソニー本の特徴のひとつは、ソニーOBの方が書いたものが多い、ということだ。
それらの本の多くは、ソニーが昔持っていた輝かしい家電製品のリリースをなつかしみ、エレクトロクス分野(エレキ)での復権を促している。
今回、16年3月期の決算発表を解説した記事にも、たとえば次のような記述がある。
「ソニーがかつて消費者に与えてきた、“モノ(製品)を手にする喜び”を高められているかどうかを考えると、その復活は道半ばと考えられる」(5月9日付ダイヤモンドオンライン記事『ソニー好決算で「逆ソニーショック」は起きるか』より)
しかし、、、
(この項 続く)
この時期、これらの痛みを伴う改革と相まって、平井経営への批判は高まった。ソニーという注目を集め続けている企業に対し、多くの解説本が世に問われ、「ソニー本」と呼ばれている。ソニー本の特徴のひとつは、ソニーOBの方が書いたものが多い、ということだ。
それらの本の多くは、ソニーが昔持っていた輝かしい家電製品のリリースをなつかしみ、エレクトロクス分野(エレキ)での復権を促している。
今回、16年3月期の決算発表を解説した記事にも、たとえば次のような記述がある。
「ソニーがかつて消費者に与えてきた、“モノ(製品)を手にする喜び”を高められているかどうかを考えると、その復活は道半ばと考えられる」(5月9日付ダイヤモンドオンライン記事『ソニー好決算で「逆ソニーショック」は起きるか』より)
しかし、、、
(この項 続く)
2017年5月23日火曜日
ソニー、倒産危機から完全復活…「魅了する家電製品」不在を嘆く人々の時代錯誤(4)
テレビに関しては、5月に入りソニーが有機ELテレビに10年ぶりに参入すると大きく喧伝されたが、実際には韓国LGエレクトロニクスなどからパネルを外部調達することによる展開で、自社による本格的な製造展開ではない。「ブラビア」の主製品である液晶テレビのパネルも、以前から外部調達なのである。
そもそもソニーはテレビ製造販売から撤退するのではないかとの観測も、昨年まではささやかれていた。15年2月にテレビ事業が分社化された時、私は事業売却の準備の可能性があると指摘した。そんな事業部門が、会社の主流に返り咲くことは考えられない。
ソニーは1997年度に最高益を記録して以来、業績凋落の傾向が続き、多くの批判を集めてきた。2011年度に4567億円という過去最大の赤字を計上した直後の12年に平井一夫社長がその舵取りを任され、現在に至っている。
(この項 続く)
そもそもソニーはテレビ製造販売から撤退するのではないかとの観測も、昨年まではささやかれていた。15年2月にテレビ事業が分社化された時、私は事業売却の準備の可能性があると指摘した。そんな事業部門が、会社の主流に返り咲くことは考えられない。
電気「製品」から離れていくことで利益が向上する構造
ソニーは1997年度に最高益を記録して以来、業績凋落の傾向が続き、多くの批判を集めてきた。2011年度に4567億円という過去最大の赤字を計上した直後の12年に平井一夫社長がその舵取りを任され、現在に至っている。
(この項 続く)
2017年5月22日月曜日
ソニー、倒産危機から完全復活…「魅了する家電製品」不在を嘆く人々の時代錯誤(3)
総合電気メーカーではない、タコ足コングロマリット
吉田氏は続けて「17年度セグメント別業績見通し」を発表した。ソニーが展開しているすべてのビジネスを8つのセグメント(事業部門)に分解して、それぞれの売上と営業利益の見通しを示したのである。総売上が8兆円、営業利益が5000億円となることは前述の通りだ。
その発表によると、営業利益でもっとも金額が大きいのは「金融」と「ゲーム&ネットワークサービス」の2事業部門で、それぞれが1700億円。後者にはプレイステーションが属する。それに次ぐのが「半導体」の1200億円。これらの3事業で17年度営業利益総額合計の5000億円のうち4600億円となるという。
これらの利益構造をみると、ソニーを総合電機メーカーと呼ぶわけにはいかない、とますます思う。つまり従来型のコンシューマー(個人)向けハード機器による利益貢献など、この会社にはないに等しいのだ。
具体的には、携帯電話(「モバイル・コミュニケーション」セグメント)の17年度予想利益はわずか50億円だし、代表的な家電製品であるテレビが含まれる「イメージング・プロダクツ&ソリューション」セグメントのそれは600億円だ。音響機器が属する「ホームエンタテインメント&サウンド」セグメントのそれも580億円にすぎない。
(この項 続く)
2017年5月21日日曜日
ソニー、倒産危機から完全復活…「魅了する家電製品」不在を嘆く人々の時代錯誤(2)
営業利益の大幅な伸張
4月28日の決算発表会では、吉田憲一郎副社長兼CFO(最高財務責任者)が淡々と数字を発表していったのだが、それを聞く限りでは、実は17年3月期のソニー業績は減収減益だった。売上高7兆6000億円は対前年比6.2%減で、営業利益2887億円も対前年比1.9%減となった。
一見すると後ろ向きの数字だが、16年期にはいくつかの特異的な業績要因がみられた。すなわち、映画分野の営業権の減損1121億円、カメラモジュールの長期性資産の減損239億円、熊本地震の影響による保険収入相殺後の物的損失等154億円、熊本地震に関連する機会損失343億円や、保有株式(エムスリー)の売却益372億円などで、これらを相殺すると実質的な営業利益は4300億円強にも押し上げられることになる。実質的には前年比で50%近くもの大幅伸張だった。
16年期の実質的に好調な業績を受けて、吉田CFOは18年3月期業績見通しとして売上を8兆円とするとし、加えて「15年2月に発表いたしました、現行中期経営計画の目標である営業利益5000億円以上、ROE10%以上は達成可能と考えております」と述べ、自信を示した。
(この項 続く)
2017年5月20日土曜日
ソニー、倒産危機から完全復活…「魅了する家電製品」不在を嘆く人々の時代錯誤(1)
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「ソニー HP」より |
株式市場はその発表を好感し、直近安値3422円(4月14日終値)から4081円(5月10日終値)へと、4週間で20%も値を上げた。5月10日の終値は52週高値、つまり直近1年間での最高値ともなった。
競合各社と比べても、ソニーに対する株式市場での評価は高い。時価総額をみてみると、5月12日現在でのソニー株式の時価総額は5兆円を超え、5兆1113億円に達した。同日で業界2位というと三菱電機が3兆5000億円、“津賀改革”で業績を回復してきたパナソニックが3兆3000億円、選択と集中でV字回復を遂げた日立製作所がようやく3兆円を超えるくらいである。
なぜ、ソニーへの市場評価がここまで高いのか、16年3月期決算から短期的な要因を、そして12年4月からCEO(最高経営責任者)として同社を率いてきた平井一夫社長が実践してきた経営の戦略から、中長期的な道程をみてみよう。
(この項 続く)
2017年5月16日火曜日
大塚家具、「残念な」久美子社長が危機脱出のネックに…ダメ企業がダメな本質的原因:対談(8)
三越伊勢丹
――今年3月に社長が交代した三越伊勢丹ホールディングスは、どのような手段で再建すればよいと考えていますか。
山田 小売業界で最も業績が優れている大手はイオングループですが、イオングループの収益構造を見ると、小売りよりもテナントの賃料で収益を上げています。イオンモールをつくってテナント料を得るという安定した収益構造になって、いわば小売業からデベロッパーに転換したわけです。
同じように三越伊勢丹ホールディングスも事業構造を入れ替えて、デベロッパーやショッピングセンターへの転換を図るべきです。これができれば人件費など固定費を大幅に削減することも可能です。
――多くの社長人事を見て思うのは、社長に就任させる人材は育てるものではなく、見つけるものであることです。
山田 確かにそういう面はあると思いますが、それは日本のビジネススクールのあり方にも問題があります。アメリカと違って日本のビジネススクールはこれから経営者を目指す30歳前後の人たちを対象にしていますが、彼らが独立しても成功するかどうかはわかりません。この現状に対して、私が「リーダーズブートキャンプ」を主宰して取り組んでいるのは経営者の教育です。受講者には、一部上場企業の経営者や、受講を経てIPOを果たした経営者などもいます。
経営者の必須要件は、リーダーシップ、戦略策定力、マネジメント力の3つです。社長になるような人はリーダーシップを身に付けていますし、マネジメント力はルーティンワークが対象なので、これも修得しています。経営者が伸びるには戦略策定力を強化することで、MBA流を叩き込むことが有効です。
――いろいろとリアルなお話を聞かせていただきました。ありがとうございました。
(この項 終わり)
大塚家具、「残念な」久美子社長が危機脱出のネックに…ダメ企業がダメな本質的原因:対談(7)
一方で、久美子社長の業況説明では、固定経費で一番足を引っ張っているのは家賃だというのです。これだけでも戦略的に辻褄が合いません。もし私が経営会議に出席すれば「それはおかしいでしょう。売り上げが伴わなかったらどうするのか?」と質問しますが、答えられない経営者はバツ印です。大塚家具の場合、店舗数をカッシーナの倍の8店舗ぐらいに減らして、富裕層にターゲットを絞れば利益が出るようになると思います。
――その戦略を実施するには、久美子社長の存在がネックになりませんか。
山田 そうです。久美子社長には、経営者の資質がないのではないでしょうか。一昨年に勝久氏を放逐して全権を握り、初めてフリーハンドで経営に当たった最初の通期決算である2016年12月期に、売上高が前期比20%減の463億円、営業利益は前期に4億円でしたが、マイナス46億円に転落させてしまいました。社長としてダメでしょう。
――今後の大塚家具はどうなりそうでしょうか。
山田 ファンドの傘下に入って、ファンドがプロ経営者を送り込んで再建するか、あるいは経営悪化がさらに進行して転落していくか。どちらかになるのではないでしょうか。
(この項 続く)
2017年5月15日月曜日
大塚家具、「残念な」久美子社長が危機脱出のネックに…ダメ企業がダメな本質的原因:対談(6)
山田 プロ経営者から見れば、この道数十年の人たちがやってきて、これだけひどい状況になってしまったんじゃないの? と。つまり、これまでのやり方が間違っていたのだから、別のやり方を探しましょうよと。これがプロ経営者の見方です。
――ところで、プロ経営者にとって最も大変な仕事はなんでしょうか。
山田 企業文化を変えることです。これは大変な仕事です。成功した例に稲盛和夫氏が日本航空の企業文化を変えたことが挙げられますが、稲盛氏はプロ経営者として禁じ手を使いました。それは社長在任中に無報酬だったことです。無報酬で懸命に働きかければ、社員はついてきます。しかし、仕事として経営を引き受けるのですから、普通は無報酬で働くわけはいきません。
――やはり無報酬は禁じ手ですか。
山田 それは禁じ手ですよ(笑)。
大塚家具
――本書では、大塚家具にかなりのページを割いて取り上げています。山田さんが大塚家具の再建を依頼されたら、どんな手を打ちますか。
山田 大塚家具は価格のポジショニングを間違えて失敗しました。元会長の大塚勝久氏の時代には高価格帯で手厚い接客という整合性がありましたが、大塚久美子氏が社長になって中価格帯に切り替えて接客も担当制を廃止したら、富裕層に逃げられ、中間層も取り込めませんでした。課題は、価格のポジショニングとターゲット層をどう設定するかです。
中価格帯と低価格帯に移行すると、ニトリとイケアが待ち構えていますが、ニトリとイケアは製造小売業なので、流通小売りだけの大塚家具は構造的に勝負できません。そう考えると勝久氏の路線は悪くなかったのです。ところが店舗数が多すぎました。反面教師はカッシーナです。富裕層を対象にして日本に4店舗しか設けていません。大塚家具の店舗数は17店舗ですが、縮小均衡を図るべきです。店舗数を減らせば売り上げも減りますが、固定費を削減できて黒字に転換できる道が開けます。
(この項 続く)
2017年5月14日日曜日
大塚家具、「残念な」久美子社長が危機脱出のネックに…ダメ企業がダメな本質的原因:対談(5)
山田 こんな出来事がありました。2人の副社長と管理本部長の3人が抵抗勢力だった米国系の会社では、3人に辞めてもらいました。副社長の1人が次は自分が社長になれると思っていたのですが、米国の本社はその副社長では力不足と判断して、外部から私を送り込んだのです。すると、この3人が私を着任させまいとして、本社に「山田じゃダメだ」と連絡したりしました。ところが、就業規則に厳密に照らし合わせて叩けば、たいていの経営幹部は何かしら違反を犯しているもので、現にその3人が重大な違反を犯している動かぬ証拠が見つかりました。
――金銭に関する違反ですか。
山田 そうです。そこで本社に「抵抗されているので着任できない。どうするのか?」と報告しました。本社は「就業規則違反のエビデンスもあるし、山田をサポートするから3人を解雇してくれ」と回答してきたので、解雇しました。3人が地位保全の仮処分を裁判所に申請したところ、労働裁判では会社側の敗訴が多いのに、証拠があったので会社側が勝訴したのです。
抵抗勢力への対処法は、こうした毅然とした方法もあれば、今までよりも処遇を良くするから安心してくださいと笑顔で対処する方法もあります。要するにアメとムチの使い分けです。
(この項 続く)
2017年5月12日金曜日
大塚家具、「残念な」久美子社長が危機脱出のネックに…ダメ企業がダメな本質的原因:対談(4)
山田 A評価の幹部が担いできたプロジェクトや商品・技術とか、推奨している技術なら良いのではないかと判断しました。フィリップスライティング(現日本フィリップス)の社長に就任したときには、150億円から半減していた年商を就任3年後に3倍に増大させましたが、これはと思う幹部が推奨してきた商品が6つあったので、6つ全部を拡販してみようじゃないかと判断して、戦略商品群と位置付けました。
すると6つのうち、自動車用ヘッドランプとポータブルプロジェクターの2つがものすごく走り出したので、2つを強化したら大ヒットして、年商3倍増に対して半分ぐらいに寄与しました。戦略上で大事なことは、状況はいつも動いているので、固定的でなく走りながら柔軟に考えることで、これは戦略セオリーとしても正しいのです。
私の場合、社長に就任した6社とも部下を連れていかず、1人で入社しました。その会社従来の土俵で、方法と組み合わせを変えることが戦略です。
抵抗勢力の扱い方
――他の業界から来た社長には、抵抗勢力も出てくると思います。どんな業界でも、他の業界で実績を上げた人に対して「うちの業界を知らない」とか「この業界は甘くない」とか、そういう見方をする人は極めて多いですね。
山田 そうです。社長に着任したときに、部下から面と向かって、そう言われることは珍しくありません。私も何社かで経験しました。部長会で着任の挨拶をしたときに「社長、何々についてはご存じですか?」と抵抗勢力が業界知識を試してきたのです。私は「いえ、知りません。皆さんのほうが詳しいですよね」と。
相手は、その道数十年ですから、今から私が勉強しても対抗できません。専門知識で勝負するのではなく、専門知識は部下に任せて、それを判断するのが社長の仕事です。多くの場合、選択と集中が有効でした。
(この項 続く)
2017年5月11日木曜日
大塚家具、「残念な」久美子社長が危機脱出のネックに…ダメ企業がダメな本質的原因:対談(3)
――Aという業界では実績を上げても、Bという業界では通用しなかったでは、プロ経営者とは呼べないわけですね。
山田 それからプロ経営者には重要な要素があります。それは資本家との関係で、プロ経営者は雇われ経営者なのです。藤森氏が退任したのは、LIXILグループの前身であるトステム創業家出身でLIXILグループ取締役会議長の潮田洋一郎氏の主導による人事です。
プロ経営者は高額な報酬のほかにストックオプションを与えられているので、株価を上げれば億単位の収入を手にできますが、株価を上げられなければ資本家から冷徹に退場を促されます。資本家とはドライな関係です。
戦略セオリー
――山田さんがプロ経営者として持たれている、構造的分析と戦略的立案に関する独自のフレームワークについて教えてください。
山田 私には社長に就任した業界の知識も、会社の知識も、技術の専門知識もありませんが、経営のセオリーを知っています。そこで、まず幹部から平社員まで面談を行ってから、幹部一人ひとりに宿題を出しました。これから売上の上がる分野、商品、技術について理由も併せて、2~3週間後に私と1対1でプレゼンテーションしてもらうのです。プレゼンを受けても、私には知識がないので、内容を理解できません。何を判断するのか。それは人物です。
立論に整合性が取れていて私がスーッと理解できるプレゼンをした人の評価はA、私が「ちょっと待ってくれ」と所々質問をはさんでギクシャクしてしまう人はB、私の質問に対して埒も明かない答えをした人はCと評価しました。Cの人は「今までこのようにやってきた」「この業界のやり方はこうだ」などと抗弁してくるものです。私は業界の素人ですが、プロ経営者には判断力があります。プレゼンを受けて幹部を判断しました。
(この項 続く)
2017年5月10日水曜日
大塚家具、「残念な」久美子社長が危機脱出のネックに…ダメ企業がダメな本質的原因:対談(2)
――残りの1割は、どのような社長なのですか。
山田 1割もいませんが、プロ経営者です。たとえば、元LIXILグループ社長の藤森義明氏、資生堂社長の魚谷雅彦氏、カルビー会長の松本晃氏。それから私は必ずしもプロ経営者だとは思っていませんが、ローソン会長の玉塚元一氏(5月末で退任)も、世間ではプロ経営者として扱われています。要するに他の業種に移っても、それまで培ってきた本人が築いてきた実績の再現性を期待され、実際にうまく経営できる人で、外資系出身が多いですね。
どの業界に行っても状況分析ができて、こういう手段を打てばよいと判断できて、実績を上げるのがプロ経営者です。口はばったいのですが、私も外資系4社と日系2社で社長を務め、すべて異なる業種でした。私が社長を務めていた時代にプロ経営者という言葉はなく、私は「企業再生経営者」と呼ばれていました。
(この項 続く)
2017年5月9日火曜日
大塚家具、「残念な」久美子社長が危機脱出のネックに…ダメ企業がダメな本質的原因:対談(1)
構成=小野貴史
ここ数年、東芝やシャープなど日本を代表する企業の経営危機が立て続けに起こるなか、「プロ経営者」の存在が注目を浴びることが多くなった。そこで今回は、プロ経営者としてこれまで数多くの企業再建に携わり、4月に『残念な経営者 誇れる経営者』(ぱる出版)を上梓した山田修氏に、企業再生に必要な条件や具体的手法について話を聞いた。
――山田さんは本書で「9割の日本の社長は経営戦略を勘違いしている」と指摘されています。
山田修氏(以下、山田) 戦略的な思考とは、構造的に物事を見られるかどうかで、日本の経営者にはこれが欠けていることが多いのです。日本の経営者は創業社長、サラリーマン社長、プロ経営者に分けられますが、創業社長とサラリーマン社長が90%以上を占めています。
創業社長は情熱とエネルギーをもって遮二無二働き、直感勝負をします。構造的分析や戦略的立案などのアプローチではなく、エネルギーのままに突っ走って、成功と失敗に分かれてしまいます。戦略なき経営でも成功して、会社が成り立っている場合もあるのです。
一方、サラリーマン社長は出世の報酬として社長という職位に就くので、従来の経営を踏襲し、ほかのことはやらないのが基本的なパターンです。社長に指名してくれた先輩を裏切れないことも踏襲の理由で、しかも多くの場合、先輩は会長や顧問、相談役などに就いて影響力を発揮しています。従って戦略的な決断ができにくい環境にあるわけです。こうした意味で、「9割の日本の社長は経営戦略を勘違いしている」といえます。
(この項 続く)
2017年4月29日土曜日
ローソン 玉塚元一会長 退任 スター経営者はどこへ行く(8)
しかし、そういう人間的魅力と経営能力との整合性は、どれだけあるものなのか。16年に入って玉塚氏は「これからはオール三菱で当たろう」とか「三菱グループとしての強みで戦う」などとしていた。玉塚氏は退任会見で次のように述べた。
「三菱商事を巻き込んで、総合戦闘力を生かしていこうということを発信したのはそもそも私自身」
「1500億円をぶち込んで、過半数の株式を取得するTOBをされることには正直びっくりした」(共に17年4月13日付東洋経済オンライン記事『ローソンの玉塚元一会長が電撃引退する事情』より)
正直なところは、お人の良さ、育ちの良さが窺われて好感が持てる。
今回の玉塚氏の退任発表を受けて、あるメディアは「プロ経営者は次にどこに行く?」と報じていた。
スター経営者である玉塚氏のことだから、次の挑戦機会も引く手あまたのことだろう。しかし、「プロ経営者」というのは玉塚氏のどこを指して言っているのか、私にはわからない。
(この項 終わり)
「三菱商事を巻き込んで、総合戦闘力を生かしていこうということを発信したのはそもそも私自身」
「1500億円をぶち込んで、過半数の株式を取得するTOBをされることには正直びっくりした」(共に17年4月13日付東洋経済オンライン記事『ローソンの玉塚元一会長が電撃引退する事情』より)
正直なところは、お人の良さ、育ちの良さが窺われて好感が持てる。
今回の玉塚氏の退任発表を受けて、あるメディアは「プロ経営者は次にどこに行く?」と報じていた。
スター経営者である玉塚氏のことだから、次の挑戦機会も引く手あまたのことだろう。しかし、「プロ経営者」というのは玉塚氏のどこを指して言っているのか、私にはわからない。
(この項 終わり)
2017年4月28日金曜日
ローソン 玉塚元一会長 退任 スター経営者はどこへ行く(7)
マクドナルドが使用期限切れ鶏肉使用で大きく売り上げを落としたときが年商減少率で15%だった。玉塚ロッテリアは大きな問題も報じられなかった着任初年度に、マクドナルドの最悪の年よりも悪い年商減率を記録している。また、ロッテリアの店舗数は07年9月に469店あったのだが、11年6月には398店に減少している。
惨状を呈していたロッテリアからローソンに玉塚氏が転出したのが10年のことだったから、「投げ出してしまった」と言われても仕方ない。
玉塚氏は人間的な魅力があるので、ついつい「自分の後継経営者に」とか「不調なこの会社を任せたい」と思わせるのだろう。それは素晴らしいことだ。ローソンの店舗オーナーからは「タマちゃん」と呼ばれ親しまれていたという。
(この項 続く)
惨状を呈していたロッテリアからローソンに玉塚氏が転出したのが10年のことだったから、「投げ出してしまった」と言われても仕方ない。
プロ経営者はどこに行く
玉塚氏は人間的な魅力があるので、ついつい「自分の後継経営者に」とか「不調なこの会社を任せたい」と思わせるのだろう。それは素晴らしいことだ。ローソンの店舗オーナーからは「タマちゃん」と呼ばれ親しまれていたという。
(この項 続く)
2017年4月27日木曜日
ローソン 玉塚元一会長 退任 スター経営者はどこへ行く(6)
玉塚会長はまた、15年からは「1000日実行プラン」と銘打った改革を実行してきたが、その成果を見届けないままに退任を申し出た。私の目には「また途中で投げ出してしまった」と映る。
かつて「週刊東洋経済」(東洋経済新報社/14年11月22日号)が『ローソン社長 玉塚元一の逆襲』という特集記事を掲載している。「負け続けたプリンス」という副題が付いており、「大学ラグビー、ユニクロ…。最後の最後で勝利を逃す男、玉塚元一。大手コンビニで人生最大の逆襲に打って出る」と、遠慮のない表現をしていた。その「人生最大の逆襲」から、またも玉塚氏は降りてしまったのか。
周知のように、ファーストリテイリングの社長に一度は就任した玉塚氏は、やがて柳井正氏に解任される。この解任について両人はその後互いに情けのある言辞を交換しているのだが、柳井氏が経営者としての玉塚氏を評価しなかったことは厳然たる事実だ。
その後、企業再生会社リヴァンプを創業し共同代表となるが、目だった実績はない。かろうじてハンバーガー・チェーンのロッテリアの経営再建に当たったことは知られている。玉塚氏は06年1月にロッテリアの会長兼CEOに就任して自ら経営の任に当たった。同社は公開会社でないので詳細な財務実績は不明だが、玉塚氏が就任した翌年の07年3月期の年商が155億2,700万円と、就任前と比較して16.1%減(年換算比)になったという報告がある(経済新人会マーケティング研究部 ファーストフード業界2班)。
(この項 続く)
かつて「週刊東洋経済」(東洋経済新報社/14年11月22日号)が『ローソン社長 玉塚元一の逆襲』という特集記事を掲載している。「負け続けたプリンス」という副題が付いており、「大学ラグビー、ユニクロ…。最後の最後で勝利を逃す男、玉塚元一。大手コンビニで人生最大の逆襲に打って出る」と、遠慮のない表現をしていた。その「人生最大の逆襲」から、またも玉塚氏は降りてしまったのか。
周知のように、ファーストリテイリングの社長に一度は就任した玉塚氏は、やがて柳井正氏に解任される。この解任について両人はその後互いに情けのある言辞を交換しているのだが、柳井氏が経営者としての玉塚氏を評価しなかったことは厳然たる事実だ。
その後、企業再生会社リヴァンプを創業し共同代表となるが、目だった実績はない。かろうじてハンバーガー・チェーンのロッテリアの経営再建に当たったことは知られている。玉塚氏は06年1月にロッテリアの会長兼CEOに就任して自ら経営の任に当たった。同社は公開会社でないので詳細な財務実績は不明だが、玉塚氏が就任した翌年の07年3月期の年商が155億2,700万円と、就任前と比較して16.1%減(年換算比)になったという報告がある(経済新人会マーケティング研究部 ファーストフード業界2班)。
(この項 続く)
2017年4月26日水曜日
ローソン 玉塚元一会長 退任 スター経営者はどこへ行く(5)
新浪氏の転出に伴い、ローソンの筆頭株主だった三菱商事は自社から後任社長を出そうという意向だったが、新浪氏が自らのシナリオに沿って強く玉塚氏を推挙したとされる。フランチャイズ・システムであるローソンにとって、後継社長は店舗オーナーに受けのよい人間力を持っている玉塚氏を最初から考えていたのだ。
前述のような玉塚氏の華麗な転進の連続を、今回以下のように評する声もある。
「まるで楕円のラグビーボールのように活躍の舞台は転々とし、そしてローソンの社長に就任した。それから3年、玉塚氏はローソン顧問となり経営の一線から退く。『みんなのローソン』は完成したのだろうか」(『「みんなのローソン」未完 玉塚氏にノーサイド』<4月12日付日本経済新聞ウェブ版記事>)
「『みんなのローソン』にしていく」とは、玉塚氏がローソン社長に就任した14年に宣言した言葉だ。「17年度には連結営業利益1000億円を目指す」(14年3月24日社長交代会見)ともしていた。しかし、17年2月期は737億円で終わった。仕上げていない。
(この項 続く)
キングになれなかったプリンス
前述のような玉塚氏の華麗な転進の連続を、今回以下のように評する声もある。
「まるで楕円のラグビーボールのように活躍の舞台は転々とし、そしてローソンの社長に就任した。それから3年、玉塚氏はローソン顧問となり経営の一線から退く。『みんなのローソン』は完成したのだろうか」(『「みんなのローソン」未完 玉塚氏にノーサイド』<4月12日付日本経済新聞ウェブ版記事>)
「『みんなのローソン』にしていく」とは、玉塚氏がローソン社長に就任した14年に宣言した言葉だ。「17年度には連結営業利益1000億円を目指す」(14年3月24日社長交代会見)ともしていた。しかし、17年2月期は737億円で終わった。仕上げていない。
(この項 続く)
2017年4月25日火曜日
ローソン 玉塚元一会長 退任 スター経営者はどこへ行く(4)
大学卒業後のキャリアをみてみても、旭硝子から米国留学を経て日本IBMに転職、ここまでは平のサラリーマンだが、ファーストリテイリングの柳井正社長に見込まれて同社に参画、やがて02年に40歳で柳井氏の後継として社長に登用された。
しかし、05年には更迭されて同社を離れ、企業再生のリヴァンプを澤田貴司氏(現ファミリーマート社長)と創業して共同代表を務めた。
そして10年に玉塚氏をローソンに招聘したのは、同社の新浪剛史社長(当時)だった。三菱商事から転籍してきた新浪氏は、ローソンで辣腕を振るい、カリスマ経営者として君臨していた。
14年5月に新浪氏が会長に退き、玉塚氏が社長に就任するという人事が発表されたとき、私はそれを新浪氏が外部に転出するための準備だと予言した。果たしてそのすぐ後、6月に新浪氏のサントリー社長への転進が発表された。そもそも新浪氏が玉塚氏をローソンに招聘した時には、すでにサントリーへの転出を見据えてのことだった、とも評論した(14年11月24日付本サイト記事『サントリー新浪社長、就任まで4年越しの深慮遠謀』)。
(この項 続く)
しかし、05年には更迭されて同社を離れ、企業再生のリヴァンプを澤田貴司氏(現ファミリーマート社長)と創業して共同代表を務めた。
そして10年に玉塚氏をローソンに招聘したのは、同社の新浪剛史社長(当時)だった。三菱商事から転籍してきた新浪氏は、ローソンで辣腕を振るい、カリスマ経営者として君臨していた。
14年5月に新浪氏が会長に退き、玉塚氏が社長に就任するという人事が発表されたとき、私はそれを新浪氏が外部に転出するための準備だと予言した。果たしてそのすぐ後、6月に新浪氏のサントリー社長への転進が発表された。そもそも新浪氏が玉塚氏をローソンに招聘した時には、すでにサントリーへの転出を見据えてのことだった、とも評論した(14年11月24日付本サイト記事『サントリー新浪社長、就任まで4年越しの深慮遠謀』)。
(この項 続く)
2017年4月24日月曜日
ローソン 玉塚元一会長 退任 スター経営者はどこへ行く(3)
私の分析に、後になって玉塚氏自身の認識が追いついたのではないか。玉塚氏が辞表を叩きつけるべきタイミングは、本当は昨年9月だったのではないか。育ちのよさは人を鷹揚にさせるのかもしれない。
経営者としての玉塚氏のファンは多い。幼稚舎から大学まで慶應義塾という育ちのよさと、大学ではラグビー部のキャプテンを務めて、学生選手権や全日本で活躍した。
「ラグビーで鍛えた堂々たる体躯。身長は181センチ。甘いマスク。誰とでも一瞬にして打ち解けることができる。それが玉塚の最高のスキルである」(「週刊東洋経済」<東洋経済新報社/14年11月22号>より)
こう評された人間的な魅力などにより、その去就がいつもマスコミで報道されるスター経営者だった。
(この項 続く)
経営者としての玉塚氏のファンは多い。幼稚舎から大学まで慶應義塾という育ちのよさと、大学ではラグビー部のキャプテンを務めて、学生選手権や全日本で活躍した。
「ラグビーで鍛えた堂々たる体躯。身長は181センチ。甘いマスク。誰とでも一瞬にして打ち解けることができる。それが玉塚の最高のスキルである」(「週刊東洋経済」<東洋経済新報社/14年11月22号>より)
こう評された人間的な魅力などにより、その去就がいつもマスコミで報道されるスター経営者だった。
(この項 続く)
2017年4月23日日曜日
ローソン 玉塚元一会長 退任 スター経営者はどこへ行く(2)
華麗な経歴、スター経営者・玉塚元一
12日の退任会見で、退任を考えたのはいつ頃かと問われた玉塚氏は、「今年の2月末ぐらいから。ちょうど三菱商事によるTOB(株式公開買い付け)が成立した直後というタイミングだった」と答えている。しかしTOBを行うことは、2016年9月に発表されていた。その時点でローソン株の33.4%を有していた筆頭株主の三菱商事が、さらに50%超まで株を公開で買い付けるという内容だ。
その意図について私は当時、本連載記事で以下のように解説していた。
「私はずばり、玉塚元一会長CEO(最高経営責任者)への不信任の徹底ということにあるとみる。別の見方をすれば、6月に玉塚元社長が会長に上がったときに新社長COO(最高執行責任者)に就任した、三菱商事出身の竹増貞信氏への経営権集中ということだ」(2016年10月2日付記事『コンビニ、2強生き残りかけ最終戦争突入…ローソン、玉塚氏排除で三菱商事が直接経営』)
(この項 続く)
2017年4月22日土曜日
ローソン 玉塚元一会長 退任 スター経営者はどこへ行く(1)
2017年4月21日金曜日
ニコン、東芝の二の舞いの兆候…復活の富士フイルムと真逆、主力カメラも瀕死寸前(8)
東芝の途をたどるのか
中期的にニコンには、現在東芝に起きているようなことが起きるだろう。
全事業のなかで唯一しっかり黒字を出しているのが、FPD露光装置である。東芝が虎の子の半導体事業の売却に動いているように、ニコンも数年するとこの部門を売却せざるを得ない場面がくるだろう。
半導体露光装置からは、早晩撤退せざるを得ない。そしてその時に牛田社長が責任を取らなければ、会社としてのガバナンス体制が問われることになる。
映像事業(主としてカメラ)は、いわば一眼レフ部門に逃げ込んで、一部のファンからの強い支持を受け続けることができるかもしれない。しかしその場合でも、17年3月期3,800億円と予想されるこの分野での年商も1,000億円を下回ることになる。
結局、7,500億円の年商規模(17年3月期予想)のニコンが、会社全体として年商1,000億円に届かない会社になるシナリオである。その場合、社員数も7分の1にしないと、存続する算数が合わなくなる。
名門企業に対してなんたる予想か、といわれるだろうが、カメラ業界を見渡せば、コニカはミノルタに合併され、そのコニカミノルタは06年にカメラから撤退した。ヤシカという会社は、今はない。京セラも05年にはカメラから撤退している。
デジタルカメラの出現が銀塩フィルムのメーカーを駆逐し、今度はスマートフォンが出現したことにより、カメラ業界全体が淘汰されようとしている。クレイトン・クリステンセン博士が提唱した「イノベーションのジレンマ」現象がリアル・タイムで進行しているのだ。
(この項 終わり)
2017年4月20日木曜日
『残念な経営者誇れる経営者』 ランキング2位に
ブックエキスプレスは、JRが駅構内で展開している書店チェーン。大規模書店のひとつ。
4月20日(木)、新宿駅南口駅構内の同書店を見たら、拙著が「ビジネス書2位」として、写真のように掲出されていた。
昨日19日(水)は日本経済新聞朝刊に同書の広告が出たが、初めて私の顔写真があしらわれた。何かくすぐったいような気がする。
4月20日(木)、新宿駅南口駅構内の同書店を見たら、拙著が「ビジネス書2位」として、写真のように掲出されていた。
昨日19日(水)は日本経済新聞朝刊に同書の広告が出たが、初めて私の顔写真があしらわれた。何かくすぐったいような気がする。
ニコン、東芝の二の舞いの兆候…復活の富士フイルムと真逆、主力カメラも瀕死寸前(7)
まずコンパクト・デジタルカメラの分野では、もう負け戦だ。前述したように、2月に投入予定していた新機種3種の発売を中止してしまった。
次に3分野のなかで唯一市場が伸びているミラーレス・カメラでは、富士フイルムが1月に意欲的な新商品「FUJIFILM GFX50S」をリリースしている。同社の古森重隆会長は、次のように強い意欲を表明している。
「『デジタルカメラ市場の主役が、35ミリ一眼レフカメラからミラーレスに代わる歴史的な転換点だった』と後に言われるようにする、という決意表明です」(「週刊ダイヤモンド」<ダイヤモンド社/4月4日号>より)
ニコンは結局カメラ・メーカーとしても、一眼レフ分野での特殊な高級機種メーカーとして名を残すだけであろう。フィルムの場合、富士フイルムにおけるコダックとの大きな違いは、強力なリーダーシップを持っていた古森重隆社長(当時、現会長兼CEO)の存在があった。そしてその古森社長が喚起に成功した全社的な危機意識である。
そんな経営者と組織にみなぎる危機意識が、ニコンには見当たらない。
(この項 続く)
次に3分野のなかで唯一市場が伸びているミラーレス・カメラでは、富士フイルムが1月に意欲的な新商品「FUJIFILM GFX50S」をリリースしている。同社の古森重隆会長は、次のように強い意欲を表明している。
「『デジタルカメラ市場の主役が、35ミリ一眼レフカメラからミラーレスに代わる歴史的な転換点だった』と後に言われるようにする、という決意表明です」(「週刊ダイヤモンド」<ダイヤモンド社/4月4日号>より)
ニコンは結局カメラ・メーカーとしても、一眼レフ分野での特殊な高級機種メーカーとして名を残すだけであろう。フィルムの場合、富士フイルムにおけるコダックとの大きな違いは、強力なリーダーシップを持っていた古森重隆社長(当時、現会長兼CEO)の存在があった。そしてその古森社長が喚起に成功した全社的な危機意識である。
そんな経営者と組織にみなぎる危機意識が、ニコンには見当たらない。
(この項 続く)
2017年4月19日水曜日
ニコン、東芝の二の舞いの兆候…復活の富士フイルムと真逆、主力カメラも瀕死寸前(6)
コダックになるのか、富士フイルムになるのか
ニコンの年商7,500億円のうち、映像事業は3,800億円を占めている(いずれも17年3月期予想)。ニコンはまだかろうじて半分強をカメラで稼いでいる会社だ。
カメラ業界におけるこの20年間の技術革新は、関連する大企業をも巻き込み、勢力図の大きな変化を引き起こしてきた。
デジタルカメラの導入により銀塩フィルム・メーカーは総崩れとなり、世界的な優良メーカーだったコダックは倒産し、一方の雄だった富士フイルムはその事業ポートフォリオをすっかり刷新して盛業してきている。フィルム・メーカーのそんな変遷を私は「イノベーションのジレンマ」セオリーで解説し、デジタルカメラがこの場合「破壊的技術」だとしてきた。
今回、カメラ全体に対しての「破壊的技術」として台頭してきたのが、もちろんスマートフォンである。
代表的なカメラメーカーであるニコンのカメラ製品ポートフォリオは、大きく3つある。コンパクト・デジタルカメラ、ミラーレス・カメラ、そして一眼レフカメラである。これら3つの分野でニコンはすでに第1位のシェア・ホルダーではない。
スマートフォンの挑戦にさらされているニコンは、この3分野のそれぞれで、どう戦おうとしているだろうか。
(この項 続く)
2017年4月18日火曜日
ニコン、東芝の二の舞いの兆候…復活の富士フイルムと真逆、主力カメラも瀕死寸前(5)
16年11月に同社は、中期経営計画の「破棄」を発表した。ところが、それを制定したのが15年5月だというのだから、わずか1年半で尻尾を巻いたといわれても仕方がないだろう。
牛田社長は14年6月から現職にあるから、経営者として完全に責任を問われることになる。この「破棄」と同時に希望退職者の募集に踏み切ったところ、1000人の募集に対し想定を超える1143人が応募した。難破船から鼠が逃げ出すような状況だ。
17年3月期の業績についても、すでに3回も修正を発表している。3回とも下方修正である。自社のオペレーションもしっかり把握していない。
牛田社長のこれらの「実績」は、野球の打者でいえば「3ストライクでバッターアウト」ということではないだろうか。
(この項 続く)
牛田社長は14年6月から現職にあるから、経営者として完全に責任を問われることになる。この「破棄」と同時に希望退職者の募集に踏み切ったところ、1000人の募集に対し想定を超える1143人が応募した。難破船から鼠が逃げ出すような状況だ。
17年3月期の業績についても、すでに3回も修正を発表している。3回とも下方修正である。自社のオペレーションもしっかり把握していない。
牛田社長のこれらの「実績」は、野球の打者でいえば「3ストライクでバッターアウト」ということではないだろうか。
(この項 続く)
2017年4月17日月曜日
ニコン、東芝の二の舞いの兆候…復活の富士フイルムと真逆、主力カメラも瀕死寸前(4)
というのは、半導体露光装置はオランダのASML社が現在9割の世界シェアを握り、ニコンのそれは1割にも満たない。
もしこの分野への開発投資が恐ろしく減り、それが外部からも見通せるような組織構造になっていれば、ニコンの半導体装置事業は終焉したと顧客や市場からみなされるだろう。それを見えにくくする効果が、設計部門の他部門との集約にはあるのだ。
現社長の牛田一雄氏は、ニコンの半導体露光装置を開発、一時は世界のトップシェアを握るまでにした技術功労者だ。だから、経営戦略のことはわからない人なのではないか。
ASML社の方式はEUV(極端紫外線)露光というものだが、牛田社長はそれとは異なるArF(フッ化アルゴン)液浸露光という同社の既存技術の延長で勝負を選んだ。
「今ある技術に狙いを定め、主力部隊を一点に集中して戦う戦略を選んだ。半導体の微細化で、今視野に入る一番先端までは、ArF液浸で達成できる自信がある。判断にブレはなかった」(「プレジデント」<プレジデント社/2014年9月1日号>より)
牛田社長は3年前に語っているが、その結果が今の状況だ。
(この項 続く)
もしこの分野への開発投資が恐ろしく減り、それが外部からも見通せるような組織構造になっていれば、ニコンの半導体装置事業は終焉したと顧客や市場からみなされるだろう。それを見えにくくする効果が、設計部門の他部門との集約にはあるのだ。
牛田社長は三振した
現社長の牛田一雄氏は、ニコンの半導体露光装置を開発、一時は世界のトップシェアを握るまでにした技術功労者だ。だから、経営戦略のことはわからない人なのではないか。
ASML社の方式はEUV(極端紫外線)露光というものだが、牛田社長はそれとは異なるArF(フッ化アルゴン)液浸露光という同社の既存技術の延長で勝負を選んだ。
「今ある技術に狙いを定め、主力部隊を一点に集中して戦う戦略を選んだ。半導体の微細化で、今視野に入る一番先端までは、ArF液浸で達成できる自信がある。判断にブレはなかった」(「プレジデント」<プレジデント社/2014年9月1日号>より)
牛田社長は3年前に語っているが、その結果が今の状況だ。
(この項 続く)
2017年4月16日日曜日
ニコン、東芝の二の舞いの兆候…復活の富士フイルムと真逆、主力カメラも瀕死寸前(3)
実はニコンは、100周年を記念して大型製品をリリースするどころか、去る2月に高級コンパクト・デジタルカメラ「DLシリーズ」3機種の発売中止を発表している。およそ、B-to-Cの企業で新製品を投入し続けないトップ・メーカーなど聞いたことがない。
そして「弔」の発表だと私が見るのが、光学事業の開発部門の集約だ。光学事業の設計部門の集約という今回の組織変更には、説得力がない。
ニコンの主要事業は3つある。カメラ(17年3月期の予想売上3,800億円、対前年比27%減)、半導体露光装置と液晶/有機ELディスプレイ向けのFPD露光装置だ(合計して同2,480億円、同39%増、ただし増のほとんどは後者)。そのほかにメディカル事業は同190億円で、60億円の赤字予想と、まだ海のものとも山のものともわからない。
ニコンではこれらの事業を、製品事業部制をとって運営している。そのなかで、設計という特定の機能部門だけを集約するというのは、組織体制的には不自然なことなのだ。今回の変更は、大不調である半導体露光装置の開発費を見えにくくしようとする意図であるようにみえる。
(この項 続く)
そして「弔」の発表だと私が見るのが、光学事業の開発部門の集約だ。光学事業の設計部門の集約という今回の組織変更には、説得力がない。
ニコンの主要事業は3つある。カメラ(17年3月期の予想売上3,800億円、対前年比27%減)、半導体露光装置と液晶/有機ELディスプレイ向けのFPD露光装置だ(合計して同2,480億円、同39%増、ただし増のほとんどは後者)。そのほかにメディカル事業は同190億円で、60億円の赤字予想と、まだ海のものとも山のものともわからない。
ニコンではこれらの事業を、製品事業部制をとって運営している。そのなかで、設計という特定の機能部門だけを集約するというのは、組織体制的には不自然なことなのだ。今回の変更は、大不調である半導体露光装置の開発費を見えにくくしようとする意図であるようにみえる。
(この項 続く)
2017年4月15日土曜日
ニコン、東芝の二の舞いの兆候…復活の富士フイルムと真逆、主力カメラも瀕死寸前(2)
そのほかの新製品「D500 100周年記念モデル」は、1999年に誕生した同社のDXフォーマット一眼レフのレプリカ。これは撮影できる。ただし、当たり前だが新しい機能があるわけではない。
「D5 100周年記念モデル」も59年にデビューした、当時のニコンのフラッグシップ一眼レフのレプリカ。
そして、そのほかに発表された記念製品を見て、私は失望した。特に、一眼レフの分野で最高峰といわれたメーカーの100周年を記念する製品群の発表である。画期的な新製品、新技術の発表がまったくなく、ただ過去の主要製品のレプリカを少量再生産してお茶を濁している。あの先進的な一流企業のイメージにまったくそぐわない。
ニコンも、きっと臍を噛むような思いがあったのだろう、これらの記念製品発表は同社の「創立100周年記念サイト」上での発表で、実際に会見して披露されたわけではない。
(この項 続く)
「D5 100周年記念モデル」も59年にデビューした、当時のニコンのフラッグシップ一眼レフのレプリカ。
そして、そのほかに発表された記念製品を見て、私は失望した。特に、一眼レフの分野で最高峰といわれたメーカーの100周年を記念する製品群の発表である。画期的な新製品、新技術の発表がまったくなく、ただ過去の主要製品のレプリカを少量再生産してお茶を濁している。あの先進的な一流企業のイメージにまったくそぐわない。
ニコンも、きっと臍を噛むような思いがあったのだろう、これらの記念製品発表は同社の「創立100周年記念サイト」上での発表で、実際に会見して披露されたわけではない。
(この項 続く)
2017年4月14日金曜日
ニコン、東芝の二の舞いの兆候…復活の富士フイルムと真逆、主力カメラも瀕死寸前(1)
ニコン本社 |
カメラ業界にあって名声をほしいままにしてきたニコンは、現在重要な戦略的岐路に立たされており、私の分析では例えば10年後に存続が疑われるような可能性も出てきた。
100周年に新製品を出せないトップ企業とは
ニコンは1917年に岩崎小彌太の個人出資により、日本光學工業株式會社として設立された、三菱グループの中でも名門企業の一つだ。その同社が100周年を記念して発表した製品は、「名機」と呼ばれたニコンFをモチーフにした2分の1サイズのメタルダイキャストミニチュア。一部パーツは動くが、机の上の置物だ。
(この項 続く)
2017年4月13日木曜日
『間違いだらけのビジネス戦略』台湾で中国語出版
一昨年に上梓した『間違いだらけのビジネス戦略』(山田修、クロスメディアパブリッシング)が
台湾で中国語に翻訳、発刊される。
拙著は何冊かが中国語および韓国で翻訳刊行されている。英訳されたものはまだない。
台湾で中国語に翻訳、発刊される。
拙著は何冊かが中国語および韓国で翻訳刊行されている。英訳されたものはまだない。
2017年4月12日水曜日
『残念な経営者 誇れる経営者』刊行! 出版記念特別講演会を6月に
今週、ついに新刊『残念な経営者 誇れる経営者』(ぱる出版)が刊行された。
アマゾン
「残念な経営者」としたように、第1章では「2016経営者残念大賞」を3人の経営者に認定、贈呈した。また数人を番外として顕彰(?)させてもらった。
「残念」だけでは片手落ちなので、「誇れる経営者」も章を立てて何人かその事跡を振り返った。
出版記念講演会
【「こうすれば
勝ち残れる経営戦略が立てられる!」
リーダーズブートキャンプ第3期 説明会つき】
山田修 特別講演会
第1回 2017年6月8日 (木) 15:00-16:45
第2回 2017年6月13日(火) 15:00-16:45
(同内容)
アマゾン
「残念な経営者」としたように、第1章では「2016経営者残念大賞」を3人の経営者に認定、贈呈した。また数人を番外として顕彰(?)させてもらった。
「残念」だけでは片手落ちなので、「誇れる経営者」も章を立てて何人かその事跡を振り返った。
出版記念講演会
【「こうすれば
勝ち残れる経営戦略が立てられる!」
リーダーズブートキャンプ第3期 説明会つき】
山田修 特別講演会
第1回 2017年6月8日 (木) 15:00-16:45
第2回 2017年6月13日(火) 15:00-16:45
(同内容)
2017年4月11日火曜日
リーダーズブートキャンプ、第2期 第4講 活発に(3)
私が教えたのは、前回からの続きの「組織戦略」と、「戦略セオリー論」。
前者は一般セオリーに加えて、私が遭遇実践した組織変革事例を説明。後者は、この日はポーター、クリステンセン、ブルーオーシャンなどを批判的に紹介した。
特別講義は箱田忠明先生。外部からもOBが参加して、熱心に聴講。「社長のためのプレゼンテーション」で、短時間のうちに参加者たちの話し方、発表の仕方に大きな影響と改善を与えてくれた。とても感心。
戦略策定をしている参加者は、この日で第1回目の途中(「目標」「重要課題」ステップ)小グループ発表を終了した。次講から順次第2回目の発表に入る。
(この項 終わり)
前者は一般セオリーに加えて、私が遭遇実践した組織変革事例を説明。後者は、この日はポーター、クリステンセン、ブルーオーシャンなどを批判的に紹介した。
特別講義は箱田忠明先生。外部からもOBが参加して、熱心に聴講。「社長のためのプレゼンテーション」で、短時間のうちに参加者たちの話し方、発表の仕方に大きな影響と改善を与えてくれた。とても感心。
戦略策定をしている参加者は、この日で第1回目の途中(「目標」「重要課題」ステップ)小グループ発表を終了した。次講から順次第2回目の発表に入る。
(この項 終わり)
2017年4月10日月曜日
リーダーズブートキャンプ、第2期 第4講 活発に(2)
日本電産の経営術についての解説も面白かったが、本書の白眉は著者が開発した「2面パレート図分析」だろう。
パレート図が一つだけだったら、従来のABC分析だが、「売り上げ」と「利益」あるいは「コスト」といった2種類の指標を上下に貼り付けているところが新鮮で、しかも有効だ。
難点は、エクセルでこの二つのグラフがかけないこと。軸をあわせて二つのチャートを張り合わせるしかない。
4月8日(土)のクラスで私が担当したのは、、、
(この項 続く)
パレート図が一つだけだったら、従来のABC分析だが、「売り上げ」と「利益」あるいは「コスト」といった2種類の指標を上下に貼り付けているところが新鮮で、しかも有効だ。
難点は、エクセルでこの二つのグラフがかけないこと。軸をあわせて二つのチャートを張り合わせるしかない。
4月8日(土)のクラスで私が担当したのは、、、
(この項 続く)
2017年4月9日日曜日
リーダーズブートキャンプ、第2期 第4講 活発に(1)
リーダーズブートキャンプのクラスが4月8日(土)に。今期の第4講で、ちょうど中日だ。
九州から来ている社長さんも含め、全員顔を揃えてくれて、熱心に展開。
課題図書は、1冊目の『日本電産流V字回復経営の教科書』(川勝宣昭、東洋経済新報社)をクラス読了した。
3講に渡って、5名に手分けして報告してもらいクラス討議した。大成功している日本電産の経営を学びたい、ということで前社員で今はコンサルをしている著者の情報開示と分析に期待した。
(この項 続く)
九州から来ている社長さんも含め、全員顔を揃えてくれて、熱心に展開。
課題図書は、1冊目の『日本電産流V字回復経営の教科書』(川勝宣昭、東洋経済新報社)をクラス読了した。
3講に渡って、5名に手分けして報告してもらいクラス討議した。大成功している日本電産の経営を学びたい、ということで前社員で今はコンサルをしている著者の情報開示と分析に期待した。
(この項 続く)
アマゾン・デリバリーがやってくる(8)
アマゾンは自ら集荷車を仕立てて、出版社から本を集配して自社の巨大倉庫に搬入するという。それも今秋には開始する。
アマゾンの巨大倉庫といえば、商品をピックアップするロボットが作業者のところまで商品を棚ごと持ってきてくれるという先鋭さだ。
インバウンドで本を集配する仕組みを発足させるのなら、アウトバウンドで荷物を出す-自ら宅配まで終了する、というところまではすぐに絵図が描けるだろう。アマゾンほどの巨大企業なら、中堅の物流会社をM&A(合併・買収)して始めることも可能だろうが、きっと驚くべく革新的なサービス・モデルを引っさげて始めると思うので、自社展開をする可能性が大きいと私は見る。
今、起きていないからといって荒唐無稽な話だと思わないでほしい。ヨドバシカメラはe通販部門の売り上げが年商1000億円を超えようとしているが、すべて自社配送である。
(この項 終わり)
アマゾンの巨大倉庫といえば、商品をピックアップするロボットが作業者のところまで商品を棚ごと持ってきてくれるという先鋭さだ。
インバウンドで本を集配する仕組みを発足させるのなら、アウトバウンドで荷物を出す-自ら宅配まで終了する、というところまではすぐに絵図が描けるだろう。アマゾンほどの巨大企業なら、中堅の物流会社をM&A(合併・買収)して始めることも可能だろうが、きっと驚くべく革新的なサービス・モデルを引っさげて始めると思うので、自社展開をする可能性が大きいと私は見る。
今、起きていないからといって荒唐無稽な話だと思わないでほしい。ヨドバシカメラはe通販部門の売り上げが年商1000億円を超えようとしているが、すべて自社配送である。
(この項 終わり)
2017年4月8日土曜日
アマゾン・デリバリーがやってくる(7)
私は、いずれアマゾン・デリバリーが始まると断言する。戦略構造的には平仄が合う話である。
まず、アマゾンのビジネス規模だ。現在で年間3億個という宅配便の個数が発生している。アマゾンやネット産業の成長を考えれば、それはいずれ年間5億個を達成するだろう。
現在宅配便最大手であるヤマトは、年間取り扱い個数12億個といわれる。ヤマトはアマゾンが離れれば年間9億個となる。アマゾンがヤマトを離れて自分で物流を始めれば、いきなりヤマトの半分の規模の巨大物流会社が誕生する。
次にアマゾンという会社の革新性だ。そもそも書籍のネット通販を世界で初めて開始して、今の巨大ビジネスに至っている。多くの日本人には知られていなかったドローンで宅配を始める、その実際の実験映像を見て度肝を抜かれたのは数年前のことだが、今ではアメリカで実用化の段階に入っている。
実際、本稿を記している3月22日付日本経済新聞夕刊で「アマゾン、本を直接集配」という報道がなされた。私からしたら、「やっぱり!」ということだった。
(この項 続く)
まず、アマゾンのビジネス規模だ。現在で年間3億個という宅配便の個数が発生している。アマゾンやネット産業の成長を考えれば、それはいずれ年間5億個を達成するだろう。
現在宅配便最大手であるヤマトは、年間取り扱い個数12億個といわれる。ヤマトはアマゾンが離れれば年間9億個となる。アマゾンがヤマトを離れて自分で物流を始めれば、いきなりヤマトの半分の規模の巨大物流会社が誕生する。
次にアマゾンという会社の革新性だ。そもそも書籍のネット通販を世界で初めて開始して、今の巨大ビジネスに至っている。多くの日本人には知られていなかったドローンで宅配を始める、その実際の実験映像を見て度肝を抜かれたのは数年前のことだが、今ではアメリカで実用化の段階に入っている。
実際、本稿を記している3月22日付日本経済新聞夕刊で「アマゾン、本を直接集配」という報道がなされた。私からしたら、「やっぱり!」ということだった。
(この項 続く)
2017年4月7日金曜日
アマゾン・デリバリーがやってくる(6)
同記事で「取り扱い単価約250円といわれるアマゾン荷物を500円に値上げすればコトは解決する(ヤマトの取り扱い平均単価は570円程度ともいわれる)」と、指摘した。電通の社長辞任という事態を見聞したヤマト経営陣が、取り扱い返上を覚悟で交渉すれば、他に容易に引き受け手がないだろう、宅配最大手顧客のアマゾンはそれを飲まざるを得ない。
ヤマトホールディングスの山内雅喜社長も
「分かりやすく言うと、取引がなくなるという形もあるだろうと考えている」(3月23日朝日新聞)
と、腹をくくったようだ。
どれだけの値上げで落ち着くかは今後の両社の交渉による。しかし、いずれにせよアマゾンにとっては、それは煮え湯を飲まされるような体験となる。すなわち、最大のネット通販会社であるアマゾンにとって、物流コストはコストとして最大のものであろうし、何よりそれをサービサー(サービス提供会社)によって規定されるということになれば、利益確定における経営の大きな意思決定を外部に握られてしまっている、ということだ。
私は、いずれアマゾン・デリバリーが始まると断言する。
(この項 続く)
ヤマトホールディングスの山内雅喜社長も
「分かりやすく言うと、取引がなくなるという形もあるだろうと考えている」(3月23日朝日新聞)
と、腹をくくったようだ。
どれだけの値上げで落ち着くかは今後の両社の交渉による。しかし、いずれにせよアマゾンにとっては、それは煮え湯を飲まされるような体験となる。すなわち、最大のネット通販会社であるアマゾンにとって、物流コストはコストとして最大のものであろうし、何よりそれをサービサー(サービス提供会社)によって規定されるということになれば、利益確定における経営の大きな意思決定を外部に握られてしまっている、ということだ。
私は、いずれアマゾン・デリバリーが始まると断言する。
(この項 続く)
2017年4月6日木曜日
アマゾン・デリバリーがやってくる(5)
アマゾンを返上した佐川は業績を急回復。ヤマトはアマゾンのために利益急減、社員は過酷な労働へ。「利益なき繁忙」に至っている。
私は3月8日付本連載記事『ヤマト、業績悪化&運転手パンクの元凶・アマゾンと取引中止すべき』でも指摘したが、ヤマトで起こっているのは根本的なキャパシティ(取り扱い限界)の問題だ。そして、それは宅配方法を改善したり、消費者向けを含む全体的な価格値上げなどで改善できる規模ではない。
ヤマトにとっての最大顧客であるアマゾン対策によって事態は解決できるし、引き受けている配達個数年間3億個といわれるアマゾンからの依頼荷物の取り扱い方針いかんなのだ。
(この項 続く)
私は3月8日付本連載記事『ヤマト、業績悪化&運転手パンクの元凶・アマゾンと取引中止すべき』でも指摘したが、ヤマトで起こっているのは根本的なキャパシティ(取り扱い限界)の問題だ。そして、それは宅配方法を改善したり、消費者向けを含む全体的な価格値上げなどで改善できる規模ではない。
ヤマトにとっての最大顧客であるアマゾン対策によって事態は解決できるし、引き受けている配達個数年間3億個といわれるアマゾンからの依頼荷物の取り扱い方針いかんなのだ。
いずれアマゾン・デリバリーが始まる
(この項 続く)
2017年4月5日水曜日
アマゾン・デリバリーがやってくる(4)
宅配のやり方を改善しても、コトは解決しない
一方、宅配サービスの業務改善としては、時間帯指定サービスを見直し、繁忙期にはアマゾンなど大口顧客の荷物の総量を抑制するなどで妥結した。
しかし、この施策では宅配サービス、特にヤマトが直面している過重な荷物の取り扱いの解決にはならない。一般的に、企業はオペレーション(仕事のやり方)の改善で得られる効果は年数%が限界。今回の改善策でも効率的にはその程度だろう。
抜本的な改善には、最大顧客であるアマゾンを返上すること。ヤマトの問題は、宅配サービス業界の一般的な問題ではない、その証拠に佐川急便もヨドバシカメラもうまくやっている。
2013年に佐川急便がアマゾンを返上したとき、当時のヤマト社長が「佐川と同じ条件でアマゾンを獲得した」と、社内で得意顔に発表して、セールスドライバーの大反発を買った。
(この項 続く)
2017年4月4日火曜日
アマゾン・デリバリーがやってくる(3)
今回の合意で、社員の労働時間については、退社から出社まで10時間以上空ける「インターバル制度」を10月から導入し、賃上げはベースアップと定期昇給分を含め平均6338円とすることとなった。
では、これらの改善策が妥当なのか。
セールスドライバーの過酷な労働状況からみて、おおむね妥当であろう。一人平均6338円の賃上げは前年(5024円)に比べ引き上げ幅は拡大した。事務員を含めた基本給の引き上げ(ベースアップ)は814円と前年(1715円)を下回るが、その分を集荷・配達を担うドライバーへ重点的に配分する。集荷・配達個数やサイズなどに応じて付与されるインセンティブを2621円(前年は1049円)引き上げる。
それよりも実質的には今まで支払われていなかったサービス残業分の賃金が、きちんと支給される体制の確保が重要。それが確保できれば、さらに待遇面(報酬)が改善される。日本のドライバーの平均年収は388万円、全産業の同489万円より2割も低い。しかも激務だ。
(この項 続く)
では、これらの改善策が妥当なのか。
セールスドライバーの過酷な労働状況からみて、おおむね妥当であろう。一人平均6338円の賃上げは前年(5024円)に比べ引き上げ幅は拡大した。事務員を含めた基本給の引き上げ(ベースアップ)は814円と前年(1715円)を下回るが、その分を集荷・配達を担うドライバーへ重点的に配分する。集荷・配達個数やサイズなどに応じて付与されるインセンティブを2621円(前年は1049円)引き上げる。
それよりも実質的には今まで支払われていなかったサービス残業分の賃金が、きちんと支給される体制の確保が重要。それが確保できれば、さらに待遇面(報酬)が改善される。日本のドライバーの平均年収は388万円、全産業の同489万円より2割も低い。しかも激務だ。
(この項 続く)
2017年4月3日月曜日
アマゾン・デリバリーがやってくる(2)
時間帯サービスを限定し荷物も総量規制へ
3月16日にヤマトの労使が合意したのは、ドライバーの労働条件の改善と、宅配サービス方法の改定の2点に大別される。
これらの点に焦点が当てられるようになったきっかけは、昨年暮れに横浜北労働基準監督署から、労使協定を超える時間外労働があったとして労働基準法違反で是正勧告を受けていたことにある。実は昨年8月にも元ドライバー数人に対する未払い賃金があったとして、同労基署から是正勧告を受けていた。
ヤマト運輸の経営陣がこの勧告を真摯に受け止めたのは、なんといっても同じく昨年暮れに世間を騒がせた電通と同様の問題だからであろう。石井直・元電通社長には、昨年12月28日付本連載記事『電通の企業文化を体現する石井社長、社員過労死連発への責任感ゼロ』で「2016年経営者残念大賞」のグランプリに認定させてもらった。
同記事掲載日の夕に、石井氏は社長退任を発表した。
(この項 続く)
2017年4月2日日曜日
アマゾン・デリバリーがやってくる(1)
ヤマト運輸が労働組合と交渉を持って、現在の宅配便サービスを見直すことや労働条件の改善について3月16日に妥結した。
翌週21日に、テレビ番組がこの問題を取り上げて私にコメントを求めてきたので、出演して15分ほど見解を述べた。
ヤマト運輸の宅配サービスが限界に来ているが、同社が抱える問題は、内部的な業務遂行方法の改善や労働条件の改善では解決できない。問題を解決できるかどうかは、同社にとっての最大顧客であるアマゾンをどうするか、にかかっている。
そしてアマゾンは、いずれ独自の配送網を展開していくだろう。すなわち「アマゾン・デリバリー社」(私の仮称)を始めるのだ。
(この項 続く)
翌週21日に、テレビ番組がこの問題を取り上げて私にコメントを求めてきたので、出演して15分ほど見解を述べた。
ヤマト運輸の宅配サービスが限界に来ているが、同社が抱える問題は、内部的な業務遂行方法の改善や労働条件の改善では解決できない。問題を解決できるかどうかは、同社にとっての最大顧客であるアマゾンをどうするか、にかかっている。
そしてアマゾンは、いずれ独自の配送網を展開していくだろう。すなわち「アマゾン・デリバリー社」(私の仮称)を始めるのだ。
(この項 続く)
2017年4月1日土曜日
【株主総会を徹底取材!】 大塚家具、久美子社長の「経営失敗」で過去最悪の赤字…「購入する客」激減、社長退任要求も (8)
しかし、会社の基本となるポジショニングをはっきり市場に向かって発信できなかったこと、そして誤解があったとしてもそれを訂正できていないことは、大きな問題だ。会社側からのメッセージによって来店する顧客セグメントは移っていくし、16年度を見ればその母数が減ってしまっている。戦略の失敗といえるだろう。
株主からのほかの質問としては、減り続けるキャッシュ・ポジションや積立金の取り崩しなどについての心配もあった。しかし、全体的には「久美子社長がんばれ」という応援的なムードが横溢していて、前述20年来の個人株主が久美子社長へのエールを5分以上にわたって披瀝したときは、久美子社長が涙ぐみそうなっていたと私には見えたし、この発言が終わると大きな拍手が起きた。
さて、20年来ではない株主の私としては「現経営陣の安泰は、社業の安泰を意味しない」という、シビアなものだ。その意味でISSの助言に組する立場である。
大塚家具の経営問題は、父娘対決で話題となってから2年を過ぎて、世間の興味はもう低くなったと私は思っていた。ところが総会を出てきた私は、待ち構えていた報道陣に囲まれ、結局2つのテレビ局と主要経済紙から取材を受けることになった。
大塚家具への世間の興味は続いている。久美子社長、いよいよ正念場の年となっている。
(この項 終わり)
事態は楽観を許さない
株主からのほかの質問としては、減り続けるキャッシュ・ポジションや積立金の取り崩しなどについての心配もあった。しかし、全体的には「久美子社長がんばれ」という応援的なムードが横溢していて、前述20年来の個人株主が久美子社長へのエールを5分以上にわたって披瀝したときは、久美子社長が涙ぐみそうなっていたと私には見えたし、この発言が終わると大きな拍手が起きた。
さて、20年来ではない株主の私としては「現経営陣の安泰は、社業の安泰を意味しない」という、シビアなものだ。その意味でISSの助言に組する立場である。
大塚家具の経営問題は、父娘対決で話題となってから2年を過ぎて、世間の興味はもう低くなったと私は思っていた。ところが総会を出てきた私は、待ち構えていた報道陣に囲まれ、結局2つのテレビ局と主要経済紙から取材を受けることになった。
大塚家具への世間の興味は続いている。久美子社長、いよいよ正念場の年となっている。
(この項 終わり)
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