春は東京では終わった風情だった。少なくとも桜は散っていた。
当社で会議を行った日の朝、現地の気温はまだ冬と言うべき1度だった。昼の頃には22度に上がり急に暖かくなると、ほころびていた桜がそれこそ目の前で全開となった。
中央線特急あずさで当地に向かってきた前日、大月あたりで
「あー、まだ桜が」
と喜び、甲府に入ると辺り一面赤い桃の花に囲まれうっとりした。
春を追いかけ、追いつき追い抜き、冬に来てしまったと思った朝のその日のその昼、私は満開の春のただ中で嬉しい話を聞くことが出来た。
(この項 終わり)