自社社員の死にも拱手傍観
石井直氏は電通の第12代社長。1973年に上智大学から新卒入社している。社長就任は2011年、同社としては営業畑出身の初めての社長である。
社長就任の年次から、一連の「電通ブラック企業問題」に対する石井氏の経営責任は免れない。14年に関西支社(大阪市)が、15年に東京本社が、労使協定で定めた残業時間の上限を超える違法な長時間労働を社員にさせたとして、労基署から是正勧告を受けている。
当局から正式な勧告、つまり違法状態の指摘をたて続けに受けていた状況のなかで、石井社長は2件の社員過労死事件を起こしてしまった。石井氏が自ら率いる会社の長時間残業体質に「気がつかなかった」ということはあり得ないから、経営者として言語同断の現状放置だったといわざるを得ない。
新卒プロパーの生え抜き社長である石井氏は、自分が属してきた、そして今は率いている組織にしみこんだ「アンチ・コンプライアンス体質」に気がついていなかっただけでなく、自らが骨の髄までその体質に浸ってきてしまっていると私には見える。
(この項 続く)
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