繰り返しになるが、高橋氏は学卒でシャープに入社したプロパー社員である。「けったいな文化を変える」と思いついて口に出してみたものの、その実現に対しての覚悟が果たしてどこまであったのか。
16年の株主総会で自らの退任に触れ、「ご心配なく、『サラリーマン役員』はここから去ることになります」と、自虐的に語っている。
シャープという名門企業が構造的に不調に陥った状態で、高橋氏は経営権を引き継いだわけだ。しかし、その「不調構造」を正すべく前向きの戦略的な手を何も考え出さなかったし、打ってこなかった。ただただ、目先の資金繰りの施策と、不調が深まるにつれての底なしのリストラを繰り返すばかりだった。とても有能な経営者と称えられることはない。
社員からの評価も地に墜ちた。高橋社長と働いていた現役経営幹部が次のように語ったとされる。
「なにより許せないのは、高橋社長は嘘をつくということです。これまで社員に説明してきた重要なことは、ほとんど嘘だった。そして、ものづくりのことはまったくわかっていないくせに、ただ債権回収さえできればいいと考えている銀行とグルになって社員をだましてきた」(15年8月6日付「現代ビジネス」記事『シャープ現役幹部が決意の勧告』<井上久男>より)
(この項 続く)
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