筆者は7月末にスペインを周遊した際、「世界で一番美しい村」といわれるモンテフォリオを訪れた。寒村の裏道に車が入るなり、この村唯一の大看板に圧倒された。「SUZUKI」のロゴが大きく眼に入ってきたのだ。
スズキをはじめとする多くの日本企業にできた、自社製品を世界中にあまねく供給するということが、なぜ花王にできないのか。それは、その覚悟が花王になかったとしか考えられない。他業界の一流企業が持っているのと同等、あるいはそれ以上に強大な経営資源を有しているのが花王だからである。
花王の歴代社長には、マーケティングの成功者、名経営者として讃えられている人も複数いる。しかし筆者には、せっかく経営資源を有しているのに世界へ出て行こうとしなかった、勇気と戦略に欠けた「怯懦の系譜」にしかみえない。易々と世界市場をP&Gに明け渡してきてしまったその罪は重い。「攻撃は最大の防御」という有効戦術を海外で発揮してこなかった花王は、近いうちにP&Gが伸ばしてきた爪を首筋に感じることになるかもしれない。
次稿では、世界を制覇してきたP&Gの成功の秘密について考察する。
(この項 終わり)
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