試行錯誤というより迷い
では、ヤマダのようにダウン・トレンド(下降傾向)に入ってしまった業界トップ企業が復活する方策はあるのか。
率直にいえば、それは難しい。突然ではないが、恐竜が死滅するようなものだ。大きくて栄華を誇っていただけに、なかなか環境の変化に適応できない。14年末にヤマダが街の中小電器店との提携を発表した際、筆者は前出記事でこう指摘している。
「課題としては、個々の電器屋がどれだけ親切・親身になって高齢者世帯に入り込めるかだ。電器屋が製品の配置やインストールだけでなく、便利屋を兼業して家具の移動や配線工事、不要品の引き取りまで手がけるようになったら、その世帯の消費の大きな部分を引き受けられるようになる。売るモノは家電に限らず、総菜から、弁当、食材まで納品する仕組みまで視野に入る。専用タブレットを世帯にあまねく配ってしまうくらいのビジネス・モデルまで踏み込めば、ヤマダとしては一気に商機が広まるといえよう」
だが、こうした動きは本格的に起こりそうにない。
ヤマダが住宅メーカー、エス・バイ・エルを傘下に収めスマートハウス事業に乗り出したのが11年のことだったが、顕著な業績を残せていない。今年5月には「ビジネスをスピードアップするため」(山田氏)にソフトバンクとの資本・業務提携を発表したが、同社の経営方向の試行錯誤というより迷いを強く感じる。
業界の恐竜は、変化する環境に戸惑いながら徐々に体力を奪われて、足を止めてしまうのではないか。現在72歳の山田氏は、創業者でもあり社長復帰してまだ2年なので、経営意欲は高く、山田氏の目の黒いうちは大丈夫だと願いたい。
(この項 終わり)
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