鈴木社長の巧みな人心掌握術
持ち株会社を設立して複数の事業会社を傘下に置く体制は、化粧品の業態においては、複数ブランドの展開を容易にする。実際、現在では9つのブランドで事業ポートフォリオを組成する一方、ポーラフーズなどのノンコア事業は早々に売却している。鈴木体制になってから立ち上げたブランドの中には「THREE」(スリー)のように大成功したものもある。複数の事業会社を立ち上げるに当たっては、従来のブランドに加えて、外部会社をM&A(合併・買収)したり、合弁を組んだり、その経営手法は柔軟かつ機動的だ。また新しいブランドや事業会社を任せる人材も、必要とあらば外部からの登用を厭わなかった。これも以前にはあまり見られなかったことだ。
新たに招請された社長の一人に話を聞いた。
「実は、私は鈴木社長と年齢はあまり変わりがなく、業界経験は私のほうが長かった」
同氏はポーラ・オルビスグループへの入社を決めた経緯について、「鈴木社長が、『金は出すが、口とヒトは出さない、思うとおりのブランドを立ち上げてくれ』と言ってくれたからだ」と述懐した。さらに、鈴木社長の人柄を表すエピソードを教えてくれた。
「仕事を始めてしばらくして、鈴木社長と話す機会があった。その時、社長は私に『あの時、面接されていたのは自分のほうだった』と言ってくれた」
採用してくれた上司にこんなことを言われては、部下としては感激奮起するしかない。鈴木社長とはまことに「部下たらし」に長けた、優れたリーダーだと驚かされた。
ポーラが次の段階として目指しているのが、国際化なのだろう。11年には米H2O PLUSを、12年には豪Jurliqueを立て続けに買収している。これからの5年間で、資生堂・花王という2強の牙城にどれだけ迫れるのか、けだし見ものである。鈴木時代の後半戦が始まる。
(この項 終わり)
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