第7章「ラーニング・スクール」から何点か。
こんな記述が。
「なぜなら、現場の行動に最も密接に繋がっている部隊の最前線が、戦略に対して最も大きい影響力を持つからだ」
どうしてそんなことが言い切れるのだろうか。戦略に対して影響力を持つモデルはいくらでも有り得るし、事業会社により異なるだろう。上述のように断定できるのなら、次の章の「パワー・スクール」での議論、すなわち「誰が戦略決定に影響力を行使するのか」などは不要と成るはずである。
戦略形成プロセスのところでの「ホンダの北米マーケットにおけるオートバイ市場参入」のケースがおもしろい。
BCGが当初分析・報告したのが、ホンダはその参入に当たり「注意深く考え抜かれた計画的戦略」によりそれを実行・成功したという。1975年の報告であった。
ところが1984年のリチャード・パスカルの後追い研究が発表された。パスカルは実際にホンダで現地での参入を実施したマネジャーにインタビューして確かめたという。それによれば「特に戦略があったわけではないのです」、と。
当初ホンダは北米で中型オートバイを売ろうと考えていたが、全くだめで、担当マネジャーが事務所の周りの足として使っていたスーパー・カブ(50cc)が現地で話題になり、売り出したところ、爆発的な人気を呼んだという。つまりMarket Pullそれも偶然の産物で、競争戦略論の領域でなかったという。
最初のBCGレポートは絵に描いたような(虚構の)競争戦略を叙述し、皮肉なことにパスカルの報告で覆されるまではハーバードなどの名だたるBスクールで「参入戦略の典型的な成功事例」教材として教えられたと言う。
著名コンサルの中身が透けて見える話ではないか。
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