2011年5月20日金曜日

才能のある国語学者3名





前回のブログに自分で触発されたので、この記事を書く。

私は国文科出で、一応修士号を持ち、活字になった学術論文もあったつまり研究者の卵だった。その視点から、私の学生時代から現在まで、このフィールドで三人の偉大な先達者がいると感じてきた。

池田弥三郎氏(故人)は、慶応国文の名物教授だった。テレビが盛んになる前、ラジオのクイズ番組などで、大変な売れっ子となっていた。彼は民俗学が専門で、その生涯を通じての最大の業績は師匠の折口信夫の民俗学を整理することだった。私が不勉強で知らなかったのかも知らないが、それ以外に私は知らない。

林望氏は、文献学の先生で業績は(唯一ではないだろうが)オックスフォードに納められている日本語文献のリストを作成したことと言われている。あまり負担になる研究でなかったことは、その合間に「イギリスは美味しい」という食べ歩き本をものしたことでも知れる。国語の能力を発揮して、エッセーが巧みである。

金田一秀穂氏については、前ブログで触れた。

さて、皆さん。ご自分の専門できちんと勉強しましょう。

金田一国語学 三代?






ラジオに金田一秀穂氏が出演していて、日本語学研究の経緯など話していた。
「歌舞伎のように家系として期待されているところもあったのか」
などと、コメントしていて、大いに違和感を持った。初代(?)金田一京助はアイヌ語学の擡頭、かくれもない大国語学者だった。2代目(?)春彦は辞書の編纂などして、これも「国語学者」と敬することにやぶさかではない。
金田一秀穂、who? まともな国語、国文学者ならこんな感想となるだろう。秀穂氏は杏林大学の教授だが、所属は外国語学部であり、ご専攻は日本語教育、つまり外国人に日本語を教えるというものだ。どんな商売も卑下されるべきではないが、日本語教育は技術であって、それ自体が学問と言えるものなのか。
そもそも学問に家業や家督承継などありえない。環境論的にその道に入る人はいることだろう。しかし、学的達成と真理の追究は遠い話である。
「私はタレントなんですよ」
とは言えないのだろうが、爺さん・オヤジの学的七光り的なひけらかし(類縁を語り、現在の自分の専攻を語ればそうなってしまう)は慎んだ方がよい。

「戦略の名著!最強43冊のエッセンス」 書評76




講談社+アルファ文庫、2009年。有坪民雄・守屋淳の分担執筆(こういうのを「共著」と言って良いのかな?)

有坪民雄が自分の分担のところでおもしろい見解を述べている。

「アカデミズムの世界とは別に、日本には三つの俗流経営戦略の潮流が出てくる。連合艦隊、中国古典、徳川家康といったような歴史に学ぼうというベストセラー雑誌を好んだ「プレジデント」派、軍事理論に学ぼうとしたランチェスター派、アメリカで認められなかったエドワード・デミングにならうカイゼン派である。」

1980年代の日本における経営セオリー世相を上手く説明しているではないか。「俗流経営戦略」というのは有島の造語であろうが、なかなか表現力に富む。
そういえば、新聞に毎月「プレジデント」誌が大きな広告を出していましたね。考えてみれば、あんなにあの雑誌は流行っていたわけだ。
またデミングのことを「今は亡き」風に軽く触れているのが確かな時代感覚だ。私も「タフネゴシエーターの人を見抜く技術」(講談社2001年)で、「デミング賞受賞企業のその後」の検証をしてみた。すると、受賞企業の方がそのためにその後業績不調に陥っていることが実証された。デミング賞に対して世の中が白けてきたのは、私の指摘と時期を一にしていると思っている。
その後「経営品質大賞」なんて始まったが、時代を魅了したとは言えない。

2011年5月19日木曜日

「経営幹部が会社を潰す!」連載(11)




◆抜擢して育てろ!

 前回(2011.1.11 No.11-005)、「『企業はヒトなり』だけではない」と述べ、大きな反響をいただいた。
そして、「ヒトは『組織の三要素』の1つであり、他の2つの要素『ジョブ・スペック』と『組み合わせ』の設計にこそ、マネジメントの出番がある」とも指摘した。この指摘の裏には、「全てのヒトが短期間に大きく伸びることはない」という厳しい現実がある。
全ての社員が望むスピードで成長しないのであれば、「早く伸びる少数の社員を見出し、彼らの成長を助ける」ことが、解となる。
社員全体のモラール確保の立場からは、「研修・育成の機会は全員に与える」というスタンスを示すのだが、実際には特定の社員を育てるべきなのだ。これが、「社員は抜擢して育てろ」と、私が主張する所以である。

トップセミナーや部長研修の依頼が立て継ぐ


本日はよく使う、吉祥寺のカフェで企業向けの研修会社と打ち合わせ。
某巨大企業の子会社の経営者グループを集めての3日x2回のプログラムで最終講義をしてくれとのこと。

打ち合わせを終えて帰宅途中に、携帯電話が鳴り、公開研修を行っている大手から、昨年に引き続き今年も部長クラスを対象とした1日セミナーを開講してくれとの依頼。

自宅(SOHO)に戻ってメールを開いてみたら、今度は関西でのトップ・セミナー(金融が取引先の経営者を会員としている月例勉強会)への出講依頼。

東北大震災で息を潜めていたような業界が、秋に向かって走り始めたことを感じる。

ダイヤモンド社の講師プロファイルが一新



ダイヤモンド社からは2冊刊行している。同社が

「ダイヤモンドビジネスタレント.COM」が、

サービス名を始め、WEBサイトを一新いたしましたので、ご案内申し上げます」

と通知をしてきてくれたので、これを機会にそちらで紹介して貰っている私のプロファイルも更新した。本日のタイトルをクリックして貰うとリンクが張ってある。おもしろいことに、私の著書として写真付きで何点も掲載されているのだが、最後の2点は同姓同名の著者のもの。データを引用するシステム上の問題で直せないらしいが、どんな本が私の本とされているか、ご一覧あれ。こんな本まで書ければ、私も何と守備範囲の広い人物なのだろう。

2011年5月17日火曜日

「経営幹部が会社を潰す!」連載(10)




◆マネジメントの出番は

企業のパフォーマンスを決めるのは「ヒト」だけではなく、「組織の三要素」なわけだ。それでは、「組織の三要素」を経営者はどのように差配したり、操ることができるのだろうか。
まず、「ヒト」は変わりにくいし、全ての「ヒト」が伸びるわけではない。またよい「ヒト」を的確に中途採用することも、実は難しい。そこで私は、「選んで育てろ」と教えている。
与件という要素が強い「ヒト」に比し、「ジョブ・スペック」と「組み合わせ」は、会社が自由に選択・決定して実施できる領域だ。言ってみれば「マネジメントの出番」であり、業績に直結する。だから、ここを考えるのが「組織再構成」のホネとなる。
「企業はヒトだから」などと言っていい人材の出現だけを待っていないで、また、いい人材がいないからと諦めていないで、最大効率となる組織形態を探し、実現していくのが経営者の役目であろう。

圓窓師匠に学ぶ落語勉強会



お世話になっているインサイトラーニング社が、同社のプロの講師だけを対象にした勉強会を定期的に開催している。プレゼンテーションやコミュニケーションの分野では草分けのような同社での社内講習会というと、どんな先生が、、、と思うでしょう。

やはり、すごい。大真打ちの三遊亭圓窓師匠から5回にわたって教えてもらえるんだって。幸い今期はスケジュールが合ったので来月から月次、全5回に出席させてもらうことにした。いや、楽しみ。

2011年5月15日日曜日

「経営幹部が会社を潰す!」連載(9)




◆組織の三要素
堺屋太一氏もいつぞや「『企業はヒトなり』は組織論の墓場だ」とおっしゃっていた。この言葉の代わりに私がずっと提唱してきたのが、「組織には3つの重要な要素がある」ということだ。
私の考える「組織の三要素」とは、「ヒト」「ジョブ・スペック」「組み合わせ」である。
「ヒト」は個々の社員のことであり、組織を構成する最小単位だ。
「ジョブ・スペック」とは、それぞれの「ヒト」に何をやらせるかという、仕事の割り当てのことだ。「業務管掌」と訳し、制度としてそれを持っている会社では、「業務管掌票」により個々の社員の業務内容を明示している。
「組み合わせ」で一番小さいものは、「ヒト」と「ヒト」との組み合わせだ。つまり特定の「業務」を割り当てられた「ヒト」(個々の社員)同士をどう組み合わせるか。 そして次には、できた小単位(チーム)同士をどう組み合わせるか。さらに、課や部などの大きな単位をどう組み合わせるか。これらの決定により、会社のビジネス・フローやビジネス・モデル(業務の流れ・やり方・分担)が決まっていく。

「経営戦略論」十川廣國 編著 書評75



中央経済社刊。編者による「経営学イノベーション」3冊シリーズの2冊目。それぞれの章は各大学経営学の教授が分担執筆している。2006年刊行なので、アカデミーの比較的最近の到達点を概観できる書の筈である。

各章あまり紙数が多くなく、活字級数も詰まっていないので読みやすい。学部学生向けの概説書として好個な編集と思う。

私は、第10章の「戦略プロセスにおけるマネジメントの役割」が目当てで購入。というのは、このテーマでを掘り下げた学術書で適当なものが見当たりにくかったことがある。馬場杉夫専修大学経営学部教授の担当執筆。ところが、第10章の本論の中では、先行文献の引用が殆ど無く、戦略論ではこのテーマが掘り下げられていないことを再確認した。第10章本文での記述もだから馬場教授のご論の筈だ。その内容については大いに異論を感じ、次回拙著に急遽筆を割いた。

2011年5月14日土曜日

経営者ブートキャンプ参加者が話題の書を





「「新・ぶら下がり社員」症候群」(東洋経済新報社)が話題となっている。30歳前後の会社員の無気力ぶりとそれへの対応策を説いて、週刊誌などでも記事として取り上げられている。

この著者の吉田実さんが第3期の参加者として列席してくれている。経営者ブートキャンプの講師陣も来月共著を同じ出版社から出す。講師も参加者もあの東洋経済新報社から、だ。本コースの充実ぶりがうかがわれるだろう。

経営者ブートキャンプ 第3講 開講




経営者ブートキャンプの第3講が本日開講した。
開講までは大震災で落ち着かない状況だったが、開講してみればいつもの熱気がもどった。

執筆終了したばかりの、7月(予定)発刊「赤字企業を立て直す! 超実践 経営改革の進め方」(日本実業出版社)での新しい知見を早速レクチャー。戦略立案論として初めての技法を発表することになる。

2011年5月5日木曜日

新著 脱稿!



いやはや、新著の執筆に集中していて、ブログの更新がこれだけ空いてしまった。ブログ開設以来、初めて。
新著は無事脱稿して、初稿の校正をしている。3月中旬から執筆開始して、原発疎開があり、実質6週間で500枚を書き下ろした。

ブログを見てくれている読者は混乱するかも知れない。
6月発刊 決定  共著 「プロフェッショナル・リーダーの教科書」東洋経済新報社
7月(予定)発刊 単著 「赤字企業を立て直す! 超実践 経営改革の進め方」

「脱稿した!」と喜んでいるのは後者のこと。
この本は、経営戦略の実際の立て方を示した世界初の書。私が諸処で教えているオリジナル「戦略カードとシナリオライティング」を詳細に披露している。まあ、アントニオ猪木が卍固めを繰り出したようなものですな。

方法論だけではただの「ハウツー本」になってしまうと編集の方が言うので、フィリップスライティング社の再生で実際に繰り出した戦略と絡めて、戦略策定が進んでいくという、読み物としてもおもしろく(たぶんとてもおもしろい)。タイトルはこの編集の人が付けた。

合間合間に、マイケル・ポーターから楠木建まで、主要な戦略セオリーを斬りまくり(?)最後は私の戦略策定モデル、PSRDモデルを提唱している。

PSRDモデルって何の略で、どんなモデルなのかと お尋ねですか?

是非この本をお求めになり、お確かめください。

組織は経営者の意思表示



今週、名古屋に赴いてとある会社の経営陣による三年経営戦略発表会を司会、コメントした。彼らが外部の資本家に対して行い、私は過去数ヶ月その策定を指導してきた。

私は常々「組織戦略が最も重要」と主張している。今週の戦略発表に対しても、組織に関するところで幾つかコメントさせてもらった。経営者は、彼が預かった組織を通じてその会社の―あるいは彼のー経営目標を実践する。ということは、「社長は一人では何も出来ない」。

組織の再編成をすると言うことは、経営者が何をやりたいか、何を不要と考えていることの具現化となる。
こまめにメンテナンスして、時には大胆に編成し直す。ここのさじ加減が経営の真骨頂となる。

2011年5月1日日曜日

「イノベーションのジレンマ」 書評74 (2)



新著に引用批判するので、精読した。下記が、著書で書き込んだ原稿である。


このように考えてみると、破壊的技術を経営戦略の立案に使えるプレイヤーは存在しないことになります。
クリステンセンの解説と分析は見事なもので、学問的には意味がありました。しかし、実際の経営戦略を立てる際のパーツとして使えないとなると、それは実用的には価値がないものです。この段落の二つの文を縮めて言い直しましょう。
「意味があるけど、価値がない」

2011年4月30日土曜日

「経営幹部が会社を潰す!」連載(8)


◆抜擢して育てろ!

 前回、「『企業はヒトなり』だけではない」と述べ、大きな反響をいただいた。
そして、「ヒトは『組織の三要素』の1つであり、他の2つの要素『ジョブ・スペック』と『組み合わせ』の設計にこそ、マネジメントの出番がある」とも指摘した。この指摘の裏には、「全てのヒトが短期間に大きく伸びることはない」という厳しい現実がある。
全ての社員が望むスピードで成長しないのであれば、「早く伸びる少数の社員を見出し、彼らの成長を助ける」ことが、解となる。
社員全体のモラール確保の立場からは、「研修・育成の機会は全員に与える」というスタンスを示すのだが、実際には特定の社員を育てるべきなのだ。これが、「社員は抜擢して育てろ」と、私が主張する所以である。

次の本(単著)を執筆中




次の著作は、経営戦略に関するもの。日本実業出版社から。「7月に出させてください」と言われ、ゴールデンウィークは捻り鉢巻きで執筆中。当初お手軽な体裁を予定していたら、編集の方は「しっかりしたものを」ということでページ数も厚くなり、つまり字数も予定していた2倍くらい書き下ろす羽目に。

がんばれ、山田。

2011年4月29日金曜日

「経営幹部が会社を潰す!」連載(7)



◆マネジメントの出番は

企業のパフォーマンスを決めるのは「ヒト」だけではなく、「組織の三要素」なわけだ。それでは、「組織の三要素」を経営者はどのように差配したり、操ることができるのだろうか。
まず、「ヒト」は変わりにくいし、全ての「ヒト」が伸びるわけではない。またよい「ヒト」を的確に中途採用することも、実は難しい。そこで私は、「選んで育てろ」と教えている。
与件という要素が強い「ヒト」に比し、「ジョブ・スペック」と「組み合わせ」は、会社が自由に選択・決定して実施できる領域だ。言ってみれば「マネジメントの出番」であり、業績に直結する。だから、ここを考えるのが「組織再構成」のホネとなる。
「企業はヒトだから」などと言っていい人材の出現だけを待っていないで、また、いい人材がいないからと諦めていないで、最大効率となる組織形態を探し、実現していくのが経営者の役目であろう。

「イノベーションのジレンマ」クレイトン・クリステンセン 書評74



伊豆原弓訳、2001年、翔泳社。

副題にも付いていないが、クリステンセンが本書でその存在と構造を発表した「破壊的技術」を知らしめた書。

私が次に出す著書で引用することもあり、孫引き・受け売りばかり書くわけにはいかないので精読している。
経営戦略の新セオリーを提出している本は幾つかあり、多くはうさんくさいが、本書は刺激的でもあり、実証もきちんと行っている。読んでおくべき書である。

好感が持てるのは、著者が初めの方で
「時として」破壊的技術が現れる
と、本セオリーの適用限界を認識していることだ。これは他書の多くで、蘊蓄と押しつけがましい新奇なセオリーを読まされてきた身としては嬉しい。

謙虚な姿勢にはきっと真実と自信の裏付けがあるのだろう。

2011年4月26日火曜日

「ブルー・オーシャン戦略」(4)




ブルー・オーシャン戦略の成功事例として著者達が掲げているものに、石灰質を沈着させない英国の電気ヤカン(フィリップス)というのがあった。

水質が悪いイギリスで、紅茶を点てるとコップの中に石灰質が浮くのだという。フィリップスの電気ケトルはそれを発生させない工夫をして市場を席巻した、そうである。

私がフィリップスの子会社の社長だったので、この例に目が行った。冗談じゃない!フィリップスはヨーロッパ屈指の数兆円企業である。イギリスでフィリップスが電気ヤカンでいくら売上げを上げたか著者達は示していない。それがいくらであろうと、フィリップス全体の業績にみじんも影響を与えなかったことは明白だし、何よりも近年フィリップスは家電事業全体を売却してしまった。イギリスの電気ヤカンは巨大企業フィリップスを救いはしなかったのだ。

「経営幹部が会社を潰す!」連載(6)



◆組織の三要素
堺屋太一氏もいつぞや「『企業はヒトなり』は組織論の墓場だ」とおっしゃっていた。この言葉の代わりに私がずっと提唱してきたのが、「組織には3つの重要な要素がある」ということだ。
私の考える「組織の三要素」とは、「ヒト」「ジョブ・スペック」「組み合わせ」である。
「ヒト」は個々の社員のことであり、組織を構成する最小単位だ。
「ジョブ・スペック」とは、それぞれの「ヒト」に何をやらせるかという、仕事の割り当てのことだ。「業務管掌」と訳し、制度としてそれを持っている会社では、「業務管掌票」により個々の社員の業務内容を明示している。
「組み合わせ」で一番小さいものは、「ヒト」と「ヒト」との組み合わせだ。つまり特定の「業務」を割り当てられた「ヒト」(個々の社員)同士をどう組み合わせるか。 そして次には、できた小単位(チーム)同士をどう組み合わせるか。さらに、課や部などの大きな単位をどう組み合わせるか。これらの決定により、会社のビジネス・フローやビジネス・モデル(業務の流れ・やり方・分担)が決まっていく。

2011年4月25日月曜日

新著の表紙とタイトル



”5人本”がいよいよ形になってきた。6月発売予定。「プロフェッショナル・リーダーの教科書」東洋経済新報社。

2011年4月24日日曜日

「ブルー・オーシャン戦略」(3)



「ブルー・オーシャン戦略は多くの場合、10年から15年もの間大きな挑戦を受けずに持ちこたえる」と、著者達は豪語しているのだが、どうか。

本書でたぶん一番筆が割かれている事例である、Yellow Tailを検証しよう。この豪州ワインは2001年にアメリカで発売され、2004年には輸入ワインNo.1となる成功を収めていた。本書の原書の発刊は2005年だったので、好事例として取り上げられたのであろう。

実情は、2004年には早くも、カンガルー、ワニやらペンギンなどのラベルの豪州ワインが出回った(Yellow Tailのラベルはワラビー)。

2008年のアメリカにおけるマーケット・シェアは2.9%(ワイン全体)。しかし輸入ワインマーケットは、アルゼンチンが前年比30%伸び、チリや南アフリカ産に押され、廉価ワインでの豪州の優位は無くなったと専門家はしている(2009年の記事)。

「競合相手を遙かに引き離す」ブルー・オーシャン状態とは見えないけれど、10年近く持った、とも言えるのかな。

「ブルー・オーシャン戦略」(2)



ベンチマーキングをしない:

著者達は、「ブルー・オーシャンを切り開いた企業は、競合他社とのベンチマーキングを行わず」(31ページ)と観察している。

ところが一方でブルー・オーシャンを実践するための4つのアクション」(51ページ)で掲げているのは
-業界標準と比べて 減らす、 
ー付け加える、
ー増やす、
ー取り除く
としている。これらの行動をするためには、業界標準のベンチマーキングをすることになるはずである。


その戦略の作り方が教示されていない:

「ブルー・オーシャン戦略の策定手順」なるものも掲げてはいるのだが(159ページ)、これはただのPDCAサイクルチェックリストで、この手順から戦略そのものは決して出てこない。たとえば、その第1項目が
「この事業アイデアは、比類無き効用をもたらすだろうか」というもので、「アイデアに対する評価チェック項目」であり、肝心のそのアイデアをどう見つけてくるのかということを示してはくれない。

本書の至る所に出てくる、「戦略キャンパス」なるものも、当該企業の細かな戦略分野分けと、競合とのポイント付けにより、「後付けの解説、分析」という傾向が強い。とはいえ、自社を取り巻く戦略分野を知悉し、競合との比較をマップすることにより、どこの分野で出し抜こうかというツールとして使える可能性があり、一定の評価は与えられる。

「経営幹部が会社を潰す!」連載(5)


「企業はヒトなり」の誤謬
 「企業はヒトなり」。とてもよく聞く言葉だ。松下幸之助翁が提唱し、多くの経営者が信奉するに至っている。
しかしこの言葉は短いだけに、「ヒトを育てれば、企業はそれだけで上手くいく」というように解釈されることがある。そしてその延長として、「当社の業績が不調なのはいい人材がいないから」とか、「人材さえ育てば会社は伸びていくはずだ」などと慨嘆する経営者も多い。
しかしそれらの思い込みは、私に言わせれば「幻想」、あるいは「言い訳」に過ぎない。
なぜか。
私が経営者として携わった企業はみな、厳しい業績に苦しんでいたが、再建に取り組んでみると、数年のうちに好業績に転換することができた。
いずれの企業でも、この「ビフォー・アフター」を支えて結果を出していたのは、同じ社員たちであった。「企業はヒトなり」だけが真実だとすれば、こんな正反対のことが短期間に起こるはずがないのだ。

2011年4月23日土曜日

「ブルー・オーシャン戦略」キムとモボルニュ(1) 書評73



ランダムハウス講談社、2005年刊。原著も同年刊。

私が今執筆している経営戦略本の中で取り上げるので、しっかり読み返している。突っ込みどころの多い本なので、数回に分けてブログで取り上げる。

一言で言えば、「無い物ねだり」を薦めている本で、経営者を混乱させる書と言える。
レッド・オーシャン戦略と比較してのブルー・オーシャン戦略の優位を表としてまとめている(38頁)のを引用すれば、次の通りである。
-競争のない市場空間を切り開く
ー競争を無意味なものにする
-新しい需要を掘り起こす
-価値を高めながらコストを押し下げる
ー差別化と低コストをともに追求し、その目的のためにすべての企業活動を推進する

こんなコトが実現できれば素晴らしい!しかし単純に考えてみよう。同じ業界には必ず競合がいるわけで、その競合がこの同じ戦略をとったらどういうことになるのか。つまり、この時点でもう論理的に破綻している。

また著者達は108社の新規事業を研究して、ブルー・オーシャン型の新規事業の出現は少ないのだけれど売上高の伸びに対する比率と利益の伸びに占める比率で、レッド・オーシャン型の新規事業を大きく上回っていると主張している(25頁の表)。しかし、当該108プロジェクトのリストもなければ、どのような基準でレッドとブルーを分別したかを示していないので、著者達の主張は無効である。

(この項 続く)

「経営幹部が会社を潰す!」連載(4)



◆経営に必須の「コミュニケーション」
業績の大きな改善や早い成長を目指すのなら、従来にない的確な経営行動を取らなければならない。大技も小技も駆使していく必要がある。それら多くの経営行動を、「繁栄の黄金律」で収れんさせていくと上手くいく。
①成長戦略
②組織効率
③モチベーション
これら3つの要素の特徴は、それらの関係が「掛け算」であるということだ。
つまり、「足し算」ではないので、それぞれの単一の要素がどんなに充実・強化されたとしても、他の2つの要素のうちのどれか1つのパフォーマンスが非常に悪い、つまりゼロだとしたら、その「積」もゼロとなってしまうということだ。どれが欠けても上手くいかないのである。

「儲かる・成功する経営戦略の作り方」セミナー終了



経営者JPで先週から続いていた表題の2時間セミナーが終了した。3日間にわたって6駒を告知したら、満員となったので、本日夜に追加セミナーを開催。

ところが、本日の夜はドタキャンが多く、少数での開催となってしまった。来てくれた参加者とはインタラクティブにじっくり話せたのでお得感があったのではないか。

よかれと思って追加したのだが、金曜日の夜はやはりイベントに向かない時間帯のようである。

2011年4月16日土曜日

「経営幹部が会社を潰す!」連載(3)



◆たどり着いた「繁栄の黄金律」
 私は社長を務めた6つの会社で、曲がりなりにも業績を残してきた。フィリップス・ライティング社では、在任3年強で200億円の売上を達成した。これは直前の3年間で半減していた売上の3倍にあたるが、在任中も業界自体は二桁のマイナス成長に苦しんでいた最中での成果だ。
ミード社では、前6年間が赤字だったところ、着任初年度で黒字に転じ、3年目以降は経常利益率8%以上という優良企業に変身させた。
そもそも最初の社長職に就く前のコンピュータランド社という米国系企業でも、営業の総責任者として3年間で年商を23億円から67億円へと押し上げた。
つまり私は7つの異なる会社で、業績改善という結果を出してきたのである。このため、「企業再建経営者」などと評された。
「業績を回復させたり、急に伸長させるには、どのような経営技法があるのだろうか」
社長職を渡り歩いているうちに、だんだん自分の技法が整理されてきた。そして「経営の実践と、経営学のセオリーとの融合」というプロセスから、私の経営理論が練り上げられたのである。その要諦を図示化したものが、私の「繁栄の黄金律」だ。

続いて単著の執筆が続いている



「プロフェッショナル・リーダーの教科書」(東洋経済新報社より6月刊行予定)とは別に、とある別の出版社からの新刊を執筆中。経営戦略の立て方がテーマ。秋には上梓。乞 ご期待。

「プロフェッショナル・リーダーの教科書」新著のタイトル




6月に東洋経済新報社から発刊される、経営者ブートキャンプ講師5名による共著の題名は、表掲に決定。ゲラ稿も終わっていて、後は印刷会社で紙が確保できるか、で6月発刊となる。

東北大震災で、現在各出版社は5月の新刊を大幅にストップしているとか。

「マネジャーの実像」ヘンリー・ミンツバーグ 書評72



日経BP社、新刊。

従来のヒーロー型のリーダー像は実像にそぐわないと切って捨てるが、それではそれに代わるイメージを提出することはない。初めの方で「マネジメントは実践の行為である」と指摘していて、その通りなので反論もないが、「何を今更」と感じてしまう。

「マネジメントのモデル」が第3章で提出されていて、マネジャーの行為を三つの次元で説明している。しかし、モデルの提出が唐突で、証明が無い。

「マネジメントの思考様式の5つの糸」のモデルで「マネジメントの成功と失敗を考える枠組み」を示そうとしているが、気の利いたネーミングの要素の羅列の域を出たようには感じられない。つまりマネジャーの意思決定や行動を起動する「相互要素としてのモデル」としての説得力に欠ける。

マネジメントとは雑多な行為を間隙なく遂行せざるを得ない存在だと喝破し(それも事実である)、重要なことはバランスの取れたマネジメントを行うことだという。29人のマネジャーに密着して観察しての知見を展開しているわけで、マネジメントが雑多な行為であるという観察を示そうと紙数を費やしている。しかし、その観察の報告が子細になっても、彼のポイントも雑多なままに感じられる。つまり収束してこない。

大部であるし引用文献も多く、本格的な学術書ではある。しかし読後疲労感の大きい割に読了達成感が少ないのは、マネジメントという迷宮から結局連れ出してもらえなかったからだろう。

2011年4月13日水曜日

「儲かる、成功する経営戦略の作り方」大盛況




経営者JP主催の標記セミナー、本日2回を実施。16時と19時より各2時間。

これ以降も満席と言うことで、追加日程が設定された。 
4月22日(金) 19時ー21時。

本日のブログタイトルをクリックで、詳細が。

時代は本物のリーダーを求めている





東洋経済新報社からの発刊準備が進んでいる、「5人本」。
経営者ブートキャンプの講師5人組が各1章を担当し、次の稿を担当。
ー 成長戦略 (山田修)
ー 組織戦略 (新将命)
ー マーケティング戦略 (池本克之)
- 競争戦略 (福田秀人)
- リーダー論 (井上和幸)

私は前書きも担当していて、前書きのタイトルが標記。先週ゲラが上がり、ゲラ稿が完了。あと一息。
6月刊行予定。

2011年4月10日日曜日

「経営幹部が会社を潰す!」連載(2)



◆経営幹部を最大限に活用する
 私が社長を務めた会社は、幸い、いずれも業績を大いに改善したので「再生請負経営者」などと呼ばれたりした。
そんな異名から、私のやり方が、着任するなりそれまでの全てを否定して、ただちに革新的な新機軸を立ち上げて果断に実施させるようなものを想定されることがある。つまり田中角栄のように剛腕で獅子奮迅の、ブルドーザーのごとき経営者像である。
しかし実際には、私自身はあまり働かない社長だった。自分のライフ・スタイルもあったのだが、とにかく可能な限り「部下に、誰かにやってもらう」ということを企図按配していた。
その要諦は、経営幹部たちの力量を最大限に活用するところにあった。社長に次いで重要となるのが「エンジン」たる幹部たちなので、ここをうまく構成することが大切だ。
私は着任すると、幹部のおよそ1/4を更迭し、1人か2人を外部からスカウトし、末席に部長クラスから2名ほどを抜擢することを例としてきた。こうすると「石」が除かれ、「玉」の原石が入り、外からの刺激が適度に加えられるのだ。
社長に着任して気づいたのは、経営幹部たちの能力の偏りだ。会社の中では有能な人たちなので、そこまで出世してきている。実績も貢献も積んできて、リーダーシップやコミュニケーション力では秀でているわけだ。
しかし、「戦略力」には欠けている。会社を取り巻く状況が変わっているのに、「新しいやり方」に頭を巡らすことができない。「この道20年」という幹部ほど「成功の復讐」に囚われてしまって、大胆な発想が苦手な人が多かった。場合によっては、部下が提案してくる方向転換への頑迷な抵抗勢力になってしまう。
「経営を見直す」には、まず、「経営チームを見直せ」ということだ。

2011年4月9日土曜日

急成長の飲食フランチャイズ本社での経営指導実施



1月から出張指導していた某社で、社長以下3名の経営陣の中期経営戦略策定を指導してきた。
6回実施し、午前中は3名一緒にクラス形式で、戦略の各分野やフレームワーク、「戦略カードとシナリオ・ライティング」での戦略立案法の手法などを教えてきた。「経営者の意思決定」「リーダーシップ」などの科目も。

午後は各自個別で80分ずつ指導して、それぞれに経営戦略をたててもらってきている。社長はもちろん全社戦略、お二人の取締役は担当分野でも部門別戦略ということだ。

次回はいよいよ、資本家に対してのお三人の中期戦略発表会を挙行する。いつもながらその成果が楽しみだ。
発表会まで、発表スライドの手直しが、それぞれとメールのやりとりで続く。

経営者ブートキャンプの本、6月刊行こぎ着けるか



経営者ブートキャンプの「無敵の講師陣」が執筆した本の準備が進んでいたが、出版社から連絡があり、ゲラも届き、いよいよ6月には上梓の運びとなりそう。

5人の講師陣が1章ずつ分担し、主任講師と言うことで私は前書きも執筆。経営の鉄人たちの薫陶を是非書物からも受けて欲しい。

仮タイトルはもちろんあるが、まだ出せない。乞うご期待。

「経営幹部が会社を潰す!」連載(1)



三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)が、三菱東京UFJ銀行などの取引先企業に配信しているメールサービスに「daily REPORT」というのがある。そこに頼まれ、昨年後半から月に一度連載記事を書いた。(ちなみに私の前の執筆者は斉藤孝氏。教育学の先生なのにビジネスのことを知ったように書いているあの才人)。

同社が配信中は転載不可だったが、別テーマを書き始めたので、旧稿が解禁。今日から不定期にこの自分のブログにアップすることとした。


【経営幹部が会社を潰す!(1)】
社長は1人では何もできない
(有)MBA経営 代表 山田 修

◆社長は企業というロボットの「頭」
 私は37歳から22年間に渡って6つの会社を任され、そこで社長を務めてきた。会社を6つ経営してきて、痛感したことがある。それは、「社長は1人では何もできない」という事実だ。
会社をロボットに例えると、社長が頭になる。動かす筋肉は一般社員だ。「頭」から「筋肉」に指示を伝える「神経」が、管理職ということだ。そして、ロボット全体をダイナミックに前に進めていく「エンジン」は、役員や上級管理職などの幹部たちということになろう。
企業という「ロボット」で一番重要な役割を担うのは、それはもちろん「頭」である経営者だ。業績を大きく伸ばしたり、ターンアラウンドと呼ばれるような急激な改善を果たすには……だから、実は社長を変えるのが一番手っ取り早い。
とはいえ、それは現実的ではないし、会社には何十人・何百人という社員や管理職がいる。社長が一番重要だとしても「社長対残り全員」という関係で見てみれば、経営者といえども実績に対してできる貢献は僅かなものだということが分かる。
「ウチの社員は、ウチの幹部は」
と、嘆くことを止めて「自分以外の」組織成員の能力を最大限に発揮させる方策を考えることが、業績向上への早道となる。

(この項 続く)

2011年4月6日水曜日

「儲かる・成功する経営戦略の作り方」4月22日(金)に追加



4月12日より六回にわたり開講する表題の公開セミナー、全て満員の成り行き(4月21日(木)一六時のみ残席僅か)。

急遽4月22日(金)19時ー21時の会を追加開催することに。
本日のブログクリックで、本講座の詳細が。ただし22日の会の表示は数日のタイムラグがある。
ご興味のある向きは今春で最後のチャンスとなる。

2011年4月4日月曜日

「中国社会のとことん深い闇」湯浅誠 書評71



(株)ウェッジ2006年刊。元「香港ウォッチャー」としての興味から閲読。

中国側の資料、報道など大量に駆使して「中国性悪説」を展開。桜井よし子女子と通じる中国観である。

巻末での「中国人は結局散砂の民」との指摘は秀逸。「散砂」とはばらばらのこと。それを前提に、この人たちの統治としては独裁形態しかない、と指摘している。西側の民主主義が導入実施されると、利己主義・個人主義のこの国の人たちの社会は大混乱になるとも。

声高に他人の悪口をあげつらっているような書でもあるが、私も彼の国のヒトや文化と実ビジネスを通じて親しかったので、同感させられるとことも多い。
「北京五輪の後に社会危機が」
などと、ジャーナリスティックにあじらなければもっと説得感が出ただろうに。

2011年4月1日金曜日

経営戦略立案の方法論を知る人はないか



とある文章を書いていて、「経営戦略立案の具体的方法を提唱、教示しているものを少なくとも私は知らない」と書き付けかけて思った。

自分が知らないだけで、誰か知っているかもしれない。

最初の大学、学習院大学の学部の時に早くも吉岡廣先生に教えられたことがある。
「無いということを照明する、主張することはとても難しい」

ということで、謙虚になる。どなたがご教示いただければありがたい。

グーグルのロゴはおふざけが過ぎているのではないか





5分前にグーグルのトップページを開いたら、2番目に示したロゴが示された。
このブログを書き始めて、もう一度開いたら、左側のロゴになっていた。

グーグルのロゴが本来のものから、クリスマスなどの季節感のあるアレンジのあるものが表示されていることには気づいていた。しかし、この頃のこの頻度はやり過ぎだし、意味のない変更が含まれているように思う。つまり、私は眉をひそめている。

CI 戦略などというのは20年前の遺物だとして(CIとはちなみにコーポレート・アイデンティティの略で、例によってそれを提唱したアメリカのコンサル会社が大もうけしたに過ぎない、経営技法の一流行)、当世流行のブランド・マネジメントの立場から言っても、目を覆いたくなるような日替わりではないのか。

いつかTVに、グーグル日本法人でこのロゴをデザインする外人が出演していた。私に言わせれば、下手に専門職をインハウスに雇用してしまうと、このように「実力」を発揮してしまう。官僚が自らの業務を自己増殖していくのと同じだ。そしてその効果というと、、