2018年4月9日月曜日

カルビー、8年連続大増収を遂げた松本会長が、退任しなければならない理由(6)

4年でやめればよかった?



 松本会長は就任当初、4年で辞めると周囲に話していたと伝えられている。私の経験から言うと、松本会長のような経営者は「3年やればあきてしまう」。というのは、新しい会社に乗り込むと大いに張り切るし、興奮する。実際にアドレナリンが分泌されるのがわかるのだ。大きな改革をやり始め、その施策に結果が伴い、業績が上ぶれし始める。そしてそのドライブは加速して、3年目、4年目には業績はますます伸張する。不調に沈んでいた企業を再生したことで、そのプロ経営者はカリスマ経営者として一身に尊敬を集める。

 しかし、実はその絶頂時にはもう主な改革や改善のカードは切り終わっていることが多い。ある状況で戦略的に動けた将軍も、別の状況でまた新たな戦略がすぐに浮かぶというものでもない。つまり、ステージが変われば別のタイプの経営者に指揮権を譲るのがよいのだ。ちょうどプロ野球の監督が成功したとしても、数シーズン限りで交代していくようなものだ。

 松本会長の場合、2月にカルビーの創業家出身で松本氏を会長に招聘した松尾雅彦氏が死去したことも影響している。創業家、あるいはオーナーとプロ経営者の関係は微妙で、招聘したのに退任させるなどのケースも多く見られる。そんな関係に陥ることなく、よい関係のままでいた資本家が死去すると、プロ経営者としては後ろ盾を失ったような気がする。あるいは、その招聘者に対しての畏敬の念が強い場合、「俺はこの人のためにがんばるんだ」という気概に私もなったことがある。そうなると、「その人」がいなくなった場合には大きく経営意欲がそがれることがある。

 さまざまな要因が絡み合って松本会長はカルビーを卒業することを選択した。すでにいくつも次のポジションのオファーがあるという。転進して、ぜひ次に引き受ける会社も再生、あるいは十分に伸張させてほしい。松本会長のような経営者事例が出ると、続くプロ経営者が日本にも輩出されていくことだろう。さらば、勇者よ! また活躍する日を見ることを確信して。

(この項 終わり)

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