まず、距離感と節度がないのがゴウ氏のスタイルだ。そもそも買収契約が締結されたのは4月2日で、出資期限とされたのは10月5日であり、出資はまだ実施されていない。鴻海はまだシャープの株主ではない。
それにもかかわらずゴウ氏はもちろん、鴻海側のチームはシャープの工場や事業所に遠慮なく立ち入り、在庫の資料などを精査している。台湾、中国のホンハイ事業所ではシャープ製品の即売会を行うなど、「もうすっかり子会社」という扱いだ。
シャープに対するゴウ会長の取り組みは、よくいえば朝令暮改、わるく表現すれば傲岸不遜とも形容できる。出資予定額も買収契約締結後に1000億円も減額するなど傍若無人、やりたい放題である。
買収調印前には、現経営陣の温存とシャープ従業員をリストラしないなどとしていたが、5月12日に至り、シャープは次期社長に鴻海の戴正呉副総裁が就任すると表明した。高橋興三社長が実質更迭されることについて快哉を覚えるシャープ社員も多いことだろうが、「鴻海に付けば安泰だ」と高橋氏が思っていたとしたら当てが外れたことだろう。
(この項 続く)
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