2012年6月19日火曜日

「スティーブ・ジョブズ I・II」 ウォルター・アイザックソン 書評140(2)

W.アイザックソン
それだからこそ、iで始まる幾つかのエポック・メイキングな製品群を世に送り出すことが出来た。そして「世界を変えた」。

手にある基幹技術を、ビル・ゲイツはオープンとし、ジョブスはクローズとして両者とも成功した。どちらの成功が大きかったか、あるいは長続きするか。アップルの場合は、ジョブスという教祖を亡くしたわけで、今までのような偏執的なクローズ政策が持続できるか。

著者は、ジョブスに招かれて晩年の数年間を親しく取材してきた(これも異例だ)。詳細なエピソードから知られることは、IT産業も結局シリコン・バレーの閉じられたジニアスなグループによって展開されている人間くさいゲームだと言うことだ。死期が迫ったジョブスをビル・ゲイツがアポもなく自宅に見舞い、数時間話し込んだシーンなど、時代を争った大ライバル二人に通じていた機微に触れられる。

経営書として得られるところは少ないが(誰がジョブスのようになれるだろうか、なりたいと思うだろうか?)、リアルなジニアス企業家の読み物としては文句なくおもしろい。
(この項 終わり)

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