2014年3月4日火曜日

本を書く (13) 丸谷才一、大野晋、谷崎潤一郎 (書評195)

その丸谷才一『文章読本』には、大野晋(すすむ)先生が解説を寄せている。

同書の初出は1980年とあるから、大野先生の筆致には、著者丸谷への親密さはまだ窺えない。もしかしたら、この本の解説執筆を以て二人の親交が始まったのではないか。

私が上野の寺に駆けつけたときは、大野先生の告別式は既に始まっていた。教え子やファンが作っていた列の末尾に並ぶと、式場から弔辞が外に向かってもスピーカーで流されていた。

しばらくそれを聞いていたら、尋常ならないその挨拶の作法に驚いた私は、前に並んでいたたぶん学習院大学国文科の先輩だろう小母さんに声を潜めて尋ねた。
「あれは、、一体どなたですか?」
小母さんは私をたしなめるように小声で教えてくれた。
「あなた、あれは丸谷才一ですよ、、」
ベストセラー『挨拶は難しい』(朝日文庫)の著者が一世一代の弔辞を捧げていたのだ。

(この項 続く、しかし飛び飛び)