2012年6月21日木曜日

「モリー先生との火曜日」ミッチ・アルボム 書評141(1)

日本放送出版協会、1998年。全米で100万部を超えるベストセラーとなり、ジャック・レモン主演で映画化もされている。本書もその後普及版と文庫版が出版された位なので、日本でもずいぶん読まれた。

 「ミッチ、私は死にかけているんだよ」
16年ぶりに再会した恩師、モリー・シュワルツ教授はALS(筋萎縮性側索硬化症)に侵されていた。忍び寄る死の影。「あと4か月か5か月かな」。だが、その顔には昔と変わらぬ笑顔があった。「この病気のおかげでいちばん教えられていることとは何か、教えてやろうか?」そして、老教授の生涯最後の授業が始まった――。
(アマゾンでの商品説明)

感動的な実話で、それに遭遇した著者は全米NO.1スポーツ・コラムニストに11年連続輝くという手練れだ。多くの読者に迎えられ、「愛と死」を考え直させた。

このような良書が、しかし国を超えて同じように良書でいられるのだろうか。日本で等価値でいられるのだろうか。

(この項 続く)

2012年6月19日火曜日

横浜銀行経営者懇話会 「勝ち残る繁栄の黄金律経営」講演

浜銀総研が正式には主催する、横浜銀行の取引先企業の経営者を対象とした懇話会に招かれ、標題で講演。
他の銀行では、「経営塾」とか「経営者セミナー」などと称しているところを、横浜銀行では会員企業同士のネットワークを特に重視する立場から、「懇話会」としているという。

神奈川県でも、今回は特に金沢区地区にある企業60社程の社長さん達が参加していた。「懇話会」というだけあって、講演が終わっての懇親会(立食パーティ)での皆さんの交流がとても活発で、仲もよろしい様子を拝見して、感心した。気持ちの良い出講となった。

「スティーブ・ジョブズ I・II」 ウォルター・アイザックソン 書評140(2)

W.アイザックソン
それだからこそ、iで始まる幾つかのエポック・メイキングな製品群を世に送り出すことが出来た。そして「世界を変えた」。

手にある基幹技術を、ビル・ゲイツはオープンとし、ジョブスはクローズとして両者とも成功した。どちらの成功が大きかったか、あるいは長続きするか。アップルの場合は、ジョブスという教祖を亡くしたわけで、今までのような偏執的なクローズ政策が持続できるか。

著者は、ジョブスに招かれて晩年の数年間を親しく取材してきた(これも異例だ)。詳細なエピソードから知られることは、IT産業も結局シリコン・バレーの閉じられたジニアスなグループによって展開されている人間くさいゲームだと言うことだ。死期が迫ったジョブスをビル・ゲイツがアポもなく自宅に見舞い、数時間話し込んだシーンなど、時代を争った大ライバル二人に通じていた機微に触れられる。

経営書として得られるところは少ないが(誰がジョブスのようになれるだろうか、なりたいと思うだろうか?)、リアルなジニアス企業家の読み物としては文句なくおもしろい。
(この項 終わり)

2012年6月18日月曜日

りそな総研セミナー「部長の指導力・行動力強化セミナー」

りそな総合研究所の東京本社が5月に移転した。それ以来、ここでは初めての出講。

部長セミナーは「戦略立案」とならんで私の定番メニューとなってきている。今回も、部門戦略の立案ドリルを柱に、「繁栄の黄金律」の四つの要素を解説。
1.成長戦略
2.組織効率
3.モチベーションのアップ
4.コミュニケーション(社内)

始めに、「今日は何を学びたいか」を2枚のカード出しで言語化してもらたた。そうすると、「部下の指導」と「リーダーシップ」に悩んでいる部長さんが多いことが分かった。上記4項目を解説していく中でも、それらの2カードの項目に引きつけて話してあげた。

最後のアンケートの評点がとてもよかった。

2012年6月17日日曜日

「スティーブ・ジョブズ I・II」 ウォルター・アイザックソン 書評140(1)

講談社、2011年刊。 ご存じベストセラー。

長すぎる。これだけのスター経営者についての極め打ち本となると、商業主義が働き、上下本としたくなるのだろう。ジャック・ウェルチ「我が経営」もそうだった。

そして、両者に共通して言えることは、該当企業の経営を始めてからの部分がおもしろく、示唆に富む。出自とか、生い立ちとか、その企業に辿り着くまでの話などは(一応おもしろいが)、本筋ではない。ということで、本書もIIの方だけ読めば必要にして十分だろう。つまり、ジョブスがアップル社に復活してからの時代である。

ジョブスはある種の性格障害だったわけだ。徹底、執着、攻撃性など通常の経営者では決して獲得できない。また獲得したいと思わない。

(この項 続く)

2012年6月16日土曜日

シャープディスプレイプロダクト社 佐治寛社長 スティーブ・ジョブスとの違い

日経6月16日朝刊で、佐治社長が次のようにコメントしている。

「デバイスを進化させ、そのデバイスで新しい用途を創る。わしらはずっとそうやってきた。今も技術はある。新しい用途をかんがえるだけでワクワクするで」

この期に及んで、無残としか言いようのないプロダクト・アウトの思想であり、技術者発想である。このような、「成功の復讐」に捕らわれて来た技術者上がりの経営者が、シャープの液晶テレビ事業を崩壊に導き、鴻海(ホンハイ)精密工業の軍門に下ってしまったではないか。

ジョブスも新技術や新デバイスに囲まれていた(自分で開発したわけではない)。しかし、それら既存技術などを組み合わせて新しいものを構築した。音楽産業を巻き込んでiPodの世界を構築し、携帯電話とOSを組み合わせてiPhoneに統合して世界に提出した。

それらの技術要素を持っていたソニーは、シャープは坂を転げ落ちていただけではないか。
「ワクワクする」だけではダメなのだ。「どうにか」しなければ。
どうにか出来なかったのでしょう?これから出来るとも期待できない。もう退出した方が良いのではないか。

2012年6月15日金曜日

田原総一朗氏 幻惑の瞬間(とき)

電話がいきなり掛かってきて、「TVに出ませんか」と。「知名度が上がり、自分ブランディングにも」とも。

しかし、いわゆる地上波局では無いらしい。「CATV局番組ですが、特長として放映した映像の2次使用を認める」、つまり私のサイトに貼り付けられるらしい。興味を持って費用など尋ねたら、「出演料は無く、制作料として5.8万円かかる」という。「サイトを見ていただければ、今月のご出演者には田原総一朗さんがいます」。

会うことにした。会合の前にそのAさんから電話が来た。「取材のため、自分がいけなくなったので代わりにBがうかがいます」。
現れたBさんが冒頭言った。
「いや、申し訳ありません、Aが扁桃腺炎で40度近い熱で来れなくなりました」。
どうも申し送りが悪い。

「制作費は35万円で、映像使用料が月5万円で最低1年契約です」
つまり、95万円ということだ。配信しているというCATV局は聞いたこともないし、視聴の大半はこの会社のサイト(つまりWeb)に見に来るものだという。月間アクセス数(ページ・ビュー)など聞いても、「開示できる媒体資料はない」とのこと。

一人8分ほどのこの映像に出演(?)している人は400名近くいるらしい。つまり、年4億円ほどの売上げ(?)があることになる。きっと、違法ではないのだろう。田原総一朗氏はどういうつもりで出演されているのだろうか。

2012年6月13日水曜日

NTN社 高木重義社長 談合部長を憎めるか

ベアリング・カルテルでNTN他2社と役員ら7人が公正取引委員会から検事総長に告発される。談合を申告したジェイテクトは免れる見込み。

NTNでは鈴木泰信前社長(現会長)が「談合はけしからん」としていたので、当初談合会議には出席していなかったと言われる。ところが、他の3社会議の後、1社とNTN担当者が会い合意内容が伝えられ、4社はほぼ同時に値上げしていたと報道された。

いずれ事態が進展していけば、高木社長はこの担当者を処分することになるだろう。その時、この担当者に対してどういう思いを持ち、どんな処遇をするか。会社のためを思ってと言うことだったので、「泣いて馬謖を斬る」ということになるのか。表面上は退職などさせて関連会社にポストを与えるのか。

しかし報道が事実なら、私に言わせればこのような担当者を「獅子身中の虫」という。トップが大方針を打ち出しているのに、足元ではそれをゆるがせにしている。この会社ではトップの方針が社員によって軽んじられているか、トップが心にもないことを口に出しているか、どちらかである。鈴木会長の面子も何も有ったものではない。

こんな社員の存在を憎み、放逐することでしか高木社長は経営者としての覚悟や矜持を示すことは出来ない。踏み絵が回ってきた。

2012年6月12日火曜日

三重銀経営者クラブで経営セミナー 「勝ち残る経営戦略はこう立てろ!」

三重銀総研が、三重県の経営者や幹部の皆さんを対象として定期的に開催している経営研修会。6月は「勝ち残る経営戦略」と題して、私が1日セミナーを行った。四日市市でのこのセミナーに登壇するのは2年ぶり。

「戦略カードとシナリオ・ライティング」により、課題解決型の経営戦略立案技法のさわりを展開。とはいえ、5つのステップの内の3ステップを小規模ながら演習して貰い、最後はペア同士でミニ発表もして貰った。

自社に持ち帰って役立てていただければ嬉しい。

2012年6月10日日曜日

『リッツ・カールトン一瞬で心が通う「心がけ」の習慣』 高野登 書評139

リッツ・カールトン高野登さんが、参加者全員にサインして配布してくれた。2011年、日本実業出版社刊。

高野さんを経営者ブートキャンプの特別講師として招聘。本書は参加者に対しての課題図書として指定された。高野さんの演題は「深化するホスピタリティ」。

本書は、リッツカールトンのホスピタリティ経営の中でも、「言葉がけ」にフォーカスしたもの。しかし内容は、ホテルマンやサービス産業のヒト達だけに限らない、素晴らしい話し方教室である。

本書で少し触れられているリッツ・カールトンのクレドのことは、クラスで高野さんは実物を廻してくれて説明してくれた。「言葉の筋トレから心の筋トレへ」など、「至極のホスピタリティ・マネジメント」を主導してきた著者の秘訣の一端に触れられる、好著である。

【実践!戦略立案技術】(22)

派生問題と対処

◆ミニ・シナリオの束が全体のシナリオ・ライティング


「課題の設定」「解決策の策定」「派生問題と対処」は繋がっているステップです。つまり、これまでで「ミニ・シナリオ」がいくつも形成されてきました。これらのカードが並んだものを「シナリオ・ツリー」と呼びます。

 このように、戦略カードの操作によって「シナリオ・ツリー」の形まで到達してくる作業全体が「シナリオ・ライティング」というわけです。

次回は、「作った戦略を発表しよう」に進みます。


「派生問題とその対処」を考えておくことは、新しい経営戦略を導入・実践する場合にとても重要なことです。というの経営は「成功の事前証明」ができないからです。

2012年6月9日土曜日

「ジョン・コッターの企業変革ノート」 書評138(3)

Dan S. Cohen
ダン・S.コーエン達は、序章で既に優れた知見を述べている。まず、「分析の限界」について。
1.大きな真理を発見するのに分析は必要ない。
2.激動する世界では、分析手法は通用しにくい。
3.優れた分析を見たからといって、俄然やる気にはなることはない。やる気とは理性の問題ではなく感情の問題である。

分析手法を重視したマイケル・ポーターを批判したヘンリー・ミンツバーグ(そして私も!)と同じ立場に立つのが、1と2だ。3はコッター達のオリジナルな主張で、その重要性の指摘は正しい。

8っつに分けられた各段階でのセオリー付け、説明にも納得できる。例えば第3段階で、「大きな変革を成功させるための4つの行動指針」として予算、計画、戦略、ビジョンをあげ、それぞれについて解説しているところなどだ。

この章で、大型飛行機の組み立ての効率を上げるために、製造工程が完成しなければ「ポジション」を移動させることを禁じたケースは、私が「極め打ち戦略」として拙著『プロフェッショナルリーダーの教科書』(2011年刊、東洋経済新報社)として説明したものと完全に整合する。

研究手法も、概念の解説も両方優れた良書である。

(この項 終わり)

【実践!戦略立案技術】(21)

派生問題と対処

戦略を実践する際のリスク・マネジメント


「派生問題とその対処」を考えておくことは、新しい経営戦略を導入・実践する場合にとても重要なことです。というの経営は「成功の事前証明」ができないからです。

どんなにさそうな戦略の妙手を思いついたとしても、それは「成功の可能性」でし化ありません。だとしたら「阻害要因」をしっかり予想して、リスクをできるだけ小さくしておきたい。それがつまり、「戦略のリスク・マネジメント」ということになります。

2012年6月8日金曜日

「ジョン・コッターの企業変革ノート」 書評138(2)

ジョン・コッター
企業変革の現場を何回か仕切った私から、コッターの立論を見るとどうか。

まず彼の「八つのプロセス」を掲げる。
1.危機意識を高める
2.変革推進チームを作る
3.適切なビジョンを作る
4.変革のビジョンを周知徹底する
5.従業員の自発的な行動を促す
6.短期的な成果を生む
7.さらに変革を進める
8.変革を根づかせる

秀逸な着眼点は、6だろう。変革やら戦略の本格的発動の初期に「早くも」というタイミングで成果が是非欲しい。これで疑心暗鬼なメンバーも「いけるんじゃあないか」と前向きになる。

また、変革を実践するためには最長3年くらいの短期で1から8まで一気呵成にやらなければならない。

(この項 続く)

2012年6月7日木曜日

「ジョン・コッターの企業変革ノート」 書評138(1)

ダン.S.コーエンとの共著、2003年刊、日経BP社。
企業変革を幾つか実践してきた私からも、本書はこの分野で推薦できる。本書でのコッターの手法に納得感があり、結論にも賛同できる。

研究手法として、130余の組織、計400名あまりにヒアリングをしてまとめたという。方法の開示だけでなく、各章に渡って象徴的な回答ケースを複数示している。それぞれが興味深いストーリーだし、各章での論旨展開を支持している。

このような研究結果の開示は、実はこの手の書物では例外的と言える。多くのセオリー本では、「広汎な研究により得られた新見は、、、」などとしているのだが、その研究の手法やら示例は示されることの方が少ない。そのような場合、著者は何でも好きなことを言えるわけで、実はそんな主張は無効として読まれるべきなのだ。

本書の構成は驚くべきシンプルさだ。序章で既に「変革のための8段階」というコッターの研究成果と主張を示してしまっている。第1章以下は、8段階のそれぞれの解説だ。

(この項 続く)

2012年6月6日水曜日

【実践!戦略立案技術】(20)

派生問題と対処


◆「派生問題」を予測したら、「対応策」カードを切ろう

「最大障害」を想定したら、次には「対応策」カードを選びます。これもやはり複数のカードを出してから選択しますが、前のステップに比べてあまり難しくありません。何しろ自社のことですから、どんなことが起きたらどう対処すればいいかは、見当がつくわけです。

2012年6月4日月曜日

【実践!戦略立案技術】(19)

派生問題と対処

◆「派生問題」の中で「最大障害」カードはどれ?

何か必ず起こるとしたら、事前にそれを予想しておきましょう。

「課題A」というカードに、「解決策」として3枚のカードを選びました。そのうち、「A1」カードを実施したら、どんなことが起こるでしょうか。ステップ5として、「戦略カード出し」であり得る問題をできるだけ多く予想してください。

「カード出し」をしたら、このステップでの「カード選び」は1枚だけで結構です。「選択マーク」をつけ、裏に「理由書き」をすることは今までのステップと同じです。

ここで1枚選んだカードのことを「最大障害」と呼びます。この定義は、「その障害を克服することができれば、その解決策はほぼ実現することができる」というものです。

(この項続く)

2012年6月2日土曜日

リッツ・カールトン 高野登氏 経営者ブートキャンプに登壇

「究極のホスピタリティ」経営を示現したとして広くリスペクトされているザ・リッツ・カールトン。その日本支社長を務められた高野登氏を、経営者ブートキャンプの特別講師として招聘した。
本講は一般公開ではないが、経営者ブートキャンプのOBには開放とした。OB多数が参加してくれた他、新将命(あたらしまさみ)特別講師も聴講。高野さんと新さんのコメントの交換などは、とても贅沢なパネル・ディスカッションとなった。

懇親会にも高野講師は参加してくれた。OB及び現役受講生達は、その後も2次会と称して夜の街に消えていった。「経営者の梁山泊」は強固に形成され続けている。

【実践!戦略立案技術】(18)


派生問題と対処

◆戦略には「派生問題」が不可避


「経営戦略」のことをは「や方」と呼んでいます。「新しい戦略」とは「新しい仕事のやり方」なわけですね。

今までと違うやり方を導入しようとすると、その組織には必ず力学的あるいは化学的な反応が生まれます。中には、その戦略に対して阻害要因となるものも当然あるわけです。新しい戦略を自社の中で展開しようとすると、必ず何か問題が起こることを覚悟しておかなければなりません。

2012年6月1日金曜日

【実践!戦略立案技術】(17)


派生問題と対処

「戦略カードとシナリオ・ライティング」による戦略立案を5のステップで展開してきました。今回は最後のステップとなる「派生問題と対処」についてお話しします。


ステップ1       目標の設定       「3年目標」のカード出し、選定、理由の裏書き
  (一人ブレーン
  ストーミング)
ステップ2       目標合意         資本家、役員会など
  (コミュニケータブル)
ステップ3       課題の発見        カード洗い出しから重要課題、理由の裏書き
  (気づき)
ステップ4       解決策の設定      課題それぞれにカード出し、重要カード、理由、
  (思い付き)                     戦術カード
ステップ5       派生問題と対処     重大障害と対処策カード
  (リスク・マネジメント)