まず、供給の問題だ。焼酎には各商品で使われる特定の芋種がある。黒霧島で使われる「黄金千貫」は、同社が展開する宮崎県都城市近辺のシラス台地という特有な風土に最適な品種だ。同社は、この地区での芋栽培農家2000軒以上から供給を受けている。しかし、いずれ材料の供給限界に直面してしまい、第5工場の稼動で手一杯となる懸念がある。
次に、酒類飲料という嗜好品が有する「飽き」、あるいは「ブーム」の問題もある。「皆が飲むから飲む」という段階にまでくると、「皆が飲むから今度は別のものを飲んでみたい」という傾向も生まれる。典型的なのが化粧品だ。焼酎銘柄でシェア20%を超えた黒霧島も、危険な領域に入ってきた。今後15年同じ成長が続くのかと考えれば、その危険は明らかだ。
「黒霧島に続く新製品を続々と発表している、それらはオンリー・ワン商品なので競合なく売れている」
同社は「赤霧島」「茜霧島」「黒宝霧島」「Ax霧島」などを販売しているが、サブブランドというのはそこそこ売れるが、いくつリリースしてもメインブランドを超えることはなく、また並立するほどの柱にもならない。アサヒビールの「スーパードライ」を想起してもらえればいい。
黒霧島が直面する上記のような壁は同社にとって成長限界となる危険性がある。江夏氏が掲げている年商1000億円を超えて同社がしっかり「Through」していくためには、新たな戦略の設定が必要だろう。ひとつの方策として、単なる輸出ではない本格的な海外進出が有効だと私は見ている。
(この項 終わり)
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