2011年10月23日日曜日
「本物のリーダーとは何か」 ウォレン・ベニス 書評96
海と月社、2011年刊。「史上最高のビジネス書ベスト50のひとつ―ファイナンシャル・タイムス紙」だそうである。
私にはそうは思えない。著者達は冒頭で、先行類書について、
「リーダーシップの解釈は多岐にわたり、それぞれが鋭い洞察を含んでいるが、説明としては不完全で、とうてい満足できるものではない」
と、喝破して始めているのだが、本書を閉じて思ったことは、
「それって、自分たちのことについて弁解してから始めたんだろ?」
ということだ。
そんな感想を残した理由は二つある。立論の方法論と、主張する内容の両者だ。
「90名にわたる成功した組織リーダーに直接インタビューして結論を出した」
とのことだが、その資料とその取り扱いについて断片的にしか示されていないので、その調査というものがしっかりした構成によって行われたものか、集まったデータの分析法が適切だったものかうかがえない。それどころか、著作のページを埋めるためにつまみ食い的にデータを出していて、その解釈は恣意的なものではないかと伺わせる。
内容についても突っ込みどころが多い。リーダーシップとは個人に関する議論の筈だが、6章では「組織の学習」にすり替わっている。原著が書かれた1985年の頃にはクリス・アージリスによって「Learning Organization」論が提唱され始めていたので、本書もそれに乗っただけとみることができる。
「マネジャーはものごとを正しく行い、リーダーは正しいことをする」
という定義についても、その証明について触れていないし、そもそもこの概念分けそのものもよく理解できない。よく理解できない場合は、内容がおかしいか読者の能力が足りないか、である。
「未来はもう始まっており、バトンはわれわれに渡されているのだ」
この文は何を意味するのか?読者にただ恥ずかしい思いをさせるために書かれたのだろう。
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