2010年8月12日木曜日

「フロンティア突破の経営力」小川政信 書評44



プレジデント社、2009年刊。国文科出身の私はこの人が使う言葉や、その組み立てにどうもついていけない。タイトルにある「フロンティア」がまずその一だ。この単語は私の使用では「突破して到達すべき地平」というものだったが、著者の使用は「それ自体が突破すべきもの」となっている。それなら「フロント(前線)」では無いのか?危うさを感じさせる単語の使用法なら、その定義やら説明がしっかりあるかと思ったが、見当たらない。

論理の展開も初めから危うい。「前書き」で「得意技の次元での解決策の効果は低減する」と指摘している。そうなのかもしれないが、「どうして?」はおろか「どのように」などの簡単なサポート(説明)がない。

「人と組織が動き出さない」という「この壁は情報と思考の力だけでは突破できないのではないだろうか」などと言っているが、そんなことは経営者なら百も承知である。驚いているのは著者のよなコンサルタントだけだろう。

初めのあたりから「危うい著者だ」と思っていたら、第1章で提出したケースがまた信じられない。「タスクフォースが始動して早や三週間」でトップへ中間報告?それは早いだろう。その三週間の間にこのチームは海外市場でサンプル調査を複数回行ってきていた、だと。「どんな調査をすれば良いのか」の段階だろう。

本書で素晴らしいところがある。それは豪華推薦者陣だ。やはり応援団が必要な本だったと分かる。

「人財」は新将命氏の登録商標




経営者ブートキャンプ第4講(8月7日)では、新将命(あたらしまさみ)特別講師の講義が2時間あった。
久しぶりに新さんのまとまった話をうかがった。いろいろ勉強させてもらったが、「人財論」も印象深かった。

このごろは上場企業も含めて、以前は「人事部」と称していた組織を正式に「人財開発部」などと名付けているところが珍しくなくなった。どこの世界でも新しい用語がスタンダードとして定着するには、時間もかかるし、そのコンセプトにインパクトが無ければならない。

「人財」という言葉は疑いも無く我らが新さんが、この日本のビジネス社会に導入した概念である。ああ、大先輩よ。

2010年8月10日火曜日

セミナーや講演稼業には3年手帳が必要か



8月に入り、2011年実施のセミナーの依頼が4件入った。
ありがたい話であるが、スケジュールを書き込もうと思ったら、手帳に来年の先の方の月などがない。つまり通常の単年手帳をずっと使っている。

今の時期は本屋さんの店頭に手帳などがまだ並んでいない。次に買い替える時は「3年手帳」が必要か。

2010年8月7日土曜日

経営者ブートキャンプ第4回



全6講で展開している「経営者ブートキャンプ」。本日はその第4講。

参加者に実施してもらっている「自社の実際の経営戦略作り」も佳境に入ってきた。本日は、「重要課題」に対しての「解決策カード出し」と「重要解決策の選択(つまりアクションプランとしての戦略の策定)をやってきてもらい、それを小グループで討議した。

また、新将命特別講師の特別講義が深い感銘をクラスに与えた。

これらのことは、経営者JPのサイトに連載している「ブートキャンプ実録日記」に近々詳しく書いてアップする。懇親会で、転進を図っている経営者の方から、
「ブートキャンプを受講したことを履歴書に書こうかと思っている」
と言われ、大変喜ぶ。

2010年8月6日金曜日

日立で部長研修



(株)日立アドバンスト デジタルは社員約1,200名。半期に一度部長研修を行っている。今回初めて外部講師として招かれて講演。

「最強幹部となる戦略の立て方とリーダーシップ」

部長40名、社長以下役員、課長30名、計約80名。

2010年8月4日水曜日

経営者ブートキャンプ 無料説明会セミナーの開催


第2期に興味を持っている方のために、前回好評だった無料講義と説明会を行う。

http://www.keieisha.jp/seminar100901.html
(本日ブログのタイトル・クリックでリンク)

9月1日(水)、9月14日(火)、10月5日(火)
各日16:00-18:00と19:00-21:00
恵比寿駅5分 経営者JPセミナールーム

山田が、 特別講義(無料)

「50日で変わる!儲かる経営幹部・組織・戦略の作り方」講座:アドバンスト編~企業繁栄の黄金律!」

と題して特別セミナーを行う。

2010年8月1日日曜日

「プロフェッショナルマネジャー」ハロルド・ジェニーン 書評(43)



プレジデント社2004年刊。著者はITTのCEOを長年務め、同社を巨大コングロマリットに仕上げただけでなく、58四半期に渡って連続増益させた。文句なしの名経営者。
ここでは、しかし解説をくわている柳井正(ご存知ファーストりテーリング社長)の「入れ込み具合」について感想を。帯で、柳井は「私の最高の経営の教科書」とまで持ち上げ、長い前書きと小冊子になるくらいの巻末解説を寄せている。
柳井の長文の解説を読んで、柳井とジェニーンの「相性の良さ」が理解できた。文章に表れている。
柳井の文章は、これだけの大会社の経営者にしては珍しくと言ってよいほど読みやすく、切れがある。柳井がとても明晰でそれを著わす(他に伝える)ことに優れていることは明らかだ。

ジェニーンの方も、概念の整理とそれの分派をきちっと説明できるという点で、言語的に優れている表現者だ。たとえば、「事実」という概念も経営の現場では
「表面的な事実」
「仮定的事実」
「報告された事実」
「希望的事実」
の違いがあるとし、それらを説明し分けている。まことに犀利な言い分けだ。

経営の現場でそれらのことは「起こっている」が、それらの現象の異なり具合に気づき、表現し分け、それぞれについての注意ごとなどにまでに「言と分け」できる経営者などそうそういるものではない。

柳井が、自分のやはり稀有な資質上の先達者としてジェニーンの本を発見し、それに心酔していったところが、私も「表現する経営者」として良く理解できる。この二人は同類項なのだ。

2010年7月30日金曜日

「先見経済」に執筆(2)SMBCと三菱UFJリサーチにも書いた




「巻頭特集」といえば、著名研修会社の月刊経営誌には、これで幾つも書いたことになる。いずれも、何と巻頭論文やら、巻頭記事だ。私のサイトの方(著書ページ)に掲載してあるので見てほしい。
    SMBCコンサルティングのMit誌
    三菱UFJリサーチ&コンサルティングのSQUET誌
    日本人材マネジメント協会(生産性本部)のJSHARM誌(50号記念論文)

「先見経済」に巻頭論文を執筆中(1)



経営者向けのセミナーなどを催している会社・団体は数多いが、そのなかでも一際伝統を誇っているのが「清話会」。何しろ70年に及ぶ活動の歴史を誇る。

その清話会が隔月刊で会員経営者に発行しているのが「先見経済」。こちらも通算で700号に迫ろうという伝統の経営誌だ。

その「先見経済」の9月1日号に、巻頭論文を7ページに渡って執筆を依頼され、鋭意準備している。タイトルは「強い組織は抜擢して創る」。乞うご期待。

2010年7月29日木曜日

内藤名人に勝った!



昨夕のテニス・オフで内藤名人に勝った。記念すべき夜となった。ブログにアップせねば。

テニス・オフとはネットでテニスをしたい人をその時だけ募集してプレーするサイト。私は「近間・ダブルス」という限定で時々参加している。

家の地域で何ヶ月かに一度くらいお手合わせしていただく内藤さん(50代)が、群を抜いて上手い。強い人はたくさんいるが、技巧派と言うことでは我々のレベルでは頭が随分出ている。

私は内藤さんと遭遇するたびに、自分の力量の向上の目安としてきた。6人くらいが集まり、乱数表でダブルスを組み、6-7試合をする。内藤さんが誰と組もうと私が誰と組もうと、4ゲーム先取マッチで勝てることがほとんどない。たまに内藤さんが相手にいるペアから1勝できると、それは本当にうれしいことだった。

昨夕は、何と、3回対戦して「あの内藤さん」から2勝をあげることができた。私に「テニス記念日」がいくつかあるとすれば、その一つになる勝利である。

プライベートなトピックで申し訳ない。

2010年7月28日水曜日

新CD「人を見抜く技術」(4)




フォレスト出版が案内用に作ってくれたサイトはそれだけで「一つの作品」と言うべきものだろう。
とても手が込んでいる。一見の価値がある。是非、ブログタイトルをクリックしてリンクで見てほしい。

一方、題名からこのCDが旧著「タフネゴシエータの人を見抜く技術」と関連があるのかという質問を受けた。
それは是非、両者を比べて判断してほしい。

経営者ブートキャンプ、第2期の詳細アップ




10月16日(土)から開講する、第2期の詳細案内がアップされた。
このブログのタイトルをクリックすると、経営者JP(主催社)の当該ページにリンクが張ってある。
全6講。来年2月まで。

無敵の特別講師陣、など。第1期の講義録が早速東洋経済新報社から出版される企画が進行。ただし、刊行は年が明ける(第1期の終了が10月なので)。評判は伝わり、注目は大きい。私も全力。

2010年7月27日火曜日

経営者ブートキャンプ実録日記(8)「ケースは講師自身の体験談」


フィリップスライティング社での私の体験談から入り、その他の会社でのエピソードを加えながら、経営者としてのその要諦を解説。

先日、とある社会人経営大学院で教授をしている友人から

「山田さん、そういう参加者構成なら是非ケース・スタディをやらせたら」

と言われた。私は、

「いや、私の場合は自分が6社も経営してきたので、自分自身のケースをいくらでも話すことができる」

と返した。

日本の社会人経営大学院で使うケースは、ハーバードビジネススクールや慶応ビジネススクールのものが多い。私も、大学院はあちらでもこちらでも、たくさん通ってきた。だからそんなケース・スタディはいやと言うほどやらされて来ている。慶応ビジネススクールの先生からは、日本語ケースの英訳を依頼されてやってあげたこともある。

裏も表も分かっている。

自分の経営ケースを教えるような立場の先生がいないので、各校では仕方なく「よそ様の、よその業界の、知られている会社のケース」を教える他は無いのだ。

2010年7月26日月曜日

「30分で達人になるツイッター」(津田大介) 書評(42)



青春文庫。2010年5月発刊。

「30分で達人になる」かどうかは疑問だが、「30分で読むことが出来」た。大変読みやすい本。最新のネット・コミュニケーション手段のツイッターを手際よく説明してくれる。よく分かった。

ツイッターを始めるかどうするか、と思い知人のCO2さんに相談したところ、この本を進めてもらった。
読んでみて、現在の私にはなじまないと判断できた。当面ブログを使い、140字以上のコメントを発信していこうと思う。

新CD「人を見抜く技術」(3)発売開始

フォレスト出版社より、山田のCDが新発売となった。

本日のブログタイトルをクリックしてもらうと、リンクが張ってある。大詳細情報あり。
一見されたい。

2010年7月24日土曜日

「戦略」の定義




企業が自己実現するために選択する重要なやり方
        
                (山田 修)

2010年7月23日金曜日

野球は不思議なスポーツ



先日の朝日新聞で、元プロ野球の桑田真澄氏がエッセイを寄せていた。
その後半に、桑田氏らしい指摘があった。いわく、
「野球で声を出す場面が大きく二つある。ひとつは練習でノックを待っているとき、もうひとつは試合中相手にベンチから野次を飛ばす時」
として、前者は練習の進行方法を合理化すれば無くせると言う。

後者については、
「対戦相手に対するリスペクトということだ」
と書いていた。野球人から、このような自省の言葉を聞いたのが全く初めてだったので、大いに印象に残った。

私も野球の試合を観ていて、違和感を感じていたことである。およそ試合をしに来てくれた相手を
「ピッチャー、ノーコン!」
などと罵る無礼な競技を他に知らない。
テニスで
「やい、このへぼサーブ」
と相手に怒鳴ったらどうなるか?
想像もつかない。ルールも思いつかない。そんなことはあり得ない。


また、野球で打者が平凡なゴロを打ってしまい、一塁に駆け込む。その時、タイミング的にどうしても間に合っていないのに、味方の1塁側コーチは、大きく両手を広げアピールし、あまつさえ「セーフ」と大声を出す。何と卑怯なことだろう。これに限らず、クロスプレーでは必ず自軍に有利なアピールを繰り返す。

これらはフェアプレーの精神に大いに違背する。情けないことに高校野球でさえ、そうだ。つまり日本野球に塗りこまれている負の伝統と言うべきだろう。
「高校野球が教育?」

大いに疑問だ。見てみるがよい、高校球児で長じたものはプロに入り、時に大乱闘を繰り広げる。
こんなスポーツが他にあるだろうか。

桑田、よく言った。PLで同僚だったKの傍若無人とは大違いだ。

2010年7月21日水曜日

「マーケティング脳VSマネジメント脳」(アル&ローラ・ライズ)書評(41)



翔泳社、2009年刊。親子著者は著名マーケティングコンサルタント。
経営者を左脳(論理的)思考者、マーケターを右脳(感覚的)思考者と都合よくかつ根拠なく分類し、ポイントを先鋭化して論を立てている。
そして、その立場から当然経営者の判断に異を唱えているわけだ。しかし、このアプローチって、別にマーケティングの幹部からだけでなく、どこの分野の幹部からでも出て来るだろう論議ではないか。すなわち、開発部門や製造部門、財務担当の幹部でも
「当社のCEOは自分の分野について理解してくれない」
ということだ。
実際は北米では経営者の多くがマーケティング出身者だろう。かくいう私もそうだった。著者たちが主張するようにそう便利に分類して非難できるはずがない。

それから、著者たちが「マーケティング」として主張しているのは、実はその一分野である「ブランド・マネジメント」に関する記述が大半。
25も章立てして、マネジメント側の無理解を非難して(あるいは泣き言を言って)いて、ブランドマネージメントにいろいろな側面やら要素があるのは分かるが、
「で、結局どうなの?」
ということだ。結末の言葉が印象的だ。
「マーケティングの戦士よ、ひるまず進むべし」
再度、マネジメント側(評者)から
「で、結局どうなの?」

アメリカンアイドル(TVオーディション番組)



歌手発掘オーディション番組「アメリカン・アイドル」は、ジェニファー・ハドソン(「ドリームガールズ」でアカデミー助演女優賞)他多くのシンガーを輩出している。既にシーズン9(9年目)を数え、全米各地の予選会のそれぞれに1万人を超える応募者が来場するという規模を誇っている。

日本ではBSテレビの深夜に放送され、私は数年来のファンだ。昨晩も見ていて、自分がこの番組のどこが好きなのか、よく分かった。
それは、地方予選の審査室から「予選獲得」の黄色いカードをもらって出てきた応募者が家族と抱き合い、ハイタッチし合い、狂喜する様を観るのが好きだということだった。
中には稀にサポーターがいない応募者もいるが。
アメリカ人の開けっ広げな喜び方、「アメリカン・ドリーム」への挑戦を「是」とするポジティブ思考、、そんなものを見せつけられて私も幸福な気分になれる。

私自身は「留学後に住み続けるのはご免だ」と思い逃げ帰って来た、恐ろしいまでのあの競争社会。
成功の方の側面である、達成への歓喜。とにかく刺激の強い番組で見るのを止められない。

2010年7月19日月曜日

経営者ブートキャンプ実録日記(7)「課題図書の発表に著者が出現!」




7月10日(土)に行われた第3講の話。

サプライズ・ゲストに福田秀人氏

今回の課題図書は『リーダーになる人の「ランチェスター戦略」入門』(東洋経済新報社)。昨年刊行された書で、私が今春偶然書店頭で手にして感心しての採用。

全13章だが、キモとなる特定の6章を、2章ずつ3名に前回分担させた。そしてわざわざ

「批判的にまとめてくるように」

と注文をつけておいた。3人の発表者たちは、それぞれ読み込んでまとめてきてくれた。

セッションが始まる直前に、見知らぬ紳士が現れ、席に着く。皆が訝った様な顔をしたところで、私が澄まして

「今日は、著者の福田秀人先生が特別にお出でになりました」

と紹介した。


皆もちろん驚いたが、中でもこれから発表することになっていた3人は冷や汗をかいたことだろう。最初の発表者のダース(ID名)氏は次の日、私へのメールで、次のように感想を述べている。

「いきなりの福田さんのご登場にびっくりしました!ただ、著者と直接話せる、しかも、反論を述べる機会など通常考えられないので、非常に貴重な機会でした。どうもありがとうございます」

ダースさんは、会社の名前を言えば良く知られている、ネット系で急成長している企業の創業社長。まだ40歳になっていない。

2010年7月18日日曜日

「ランチェスター思考II 直観的問題解決のフレームワーク」福田秀人 書評(40)



福田秀人著。東洋経済新報社、7月16日刊。

経営書の中で、今年最大の収穫の書であろう。「ランチェスター思考II」をメイン・タイトルとしているのは、前著からの流れから。本書の中心と白眉は、「アメリカ陸軍の指揮官マニュアル」を本格的に紹介し、それを経営現場での意思決定に引きつけて論じていることだ。

経営学の分野で、これだけの新しい概念や経営技法がまとまって提出されたことは近年記憶にない。それも世界屈指の組織が長年かけて膨大な努力により磨き上げ、洗練させた、いわば「経営学の外部で徹底的に体系化された方法論」が咀嚼され、提示された。その咀嚼と適応は、経営学の教授であり同時に自衛隊幹部学校での指導にも当たっている、この著者でなければ可能とならない作業だっただろう。

本書により、「本当の軍事」側から「経営」側に提示された新概念、あるいは現概念の訂正を迫っている点が幾つもある。少数を例示するだけで次の如くである。
1.「意思決定」には、許された時間枠により、直観的決定と分析的決定が選択される。
2.「決定は間違って当たり前」という前提。
3.情報はすべて誤っている可能性があるが、責任は意思決定者に残る。
4.広的ネットワークは、質が伴わなければ混乱するだけ。
5.部下の忍耐力を見極め、能力に合った任務を与えよ。
6.意思決定には三つのレベル、「戦術」「作戦」「戦略」レベルが存する。「作戦」レベルの概念は今までの経営学では無かった。
7.「集団的浅慮」概念の明確化と、それが起こり得る状況。
など。

これらの捉え方や対応を、アメリカ陸軍は、「指揮官マニュアル」として長い年月と組織をあげての英知を傾けて整備してきた。文字通り「生きるか死ぬか」の結果に繋がる、世界最大規模で最も進んでいると思われ軍事組織が作り上げたマニュアルである。刮目して読むべき書だ。

「日本型プロフェッショナルの条件」安永雄彦 書評(39)


ダイヤモンド社から新刊。
安永氏は(株)島本パートナーズの社長で、前職からの長いお付き合い。エグゼクティブ・サーチのコンサルタントであるだけでなく、グロービスでクラスを教えているし、僧侶でもいらっしゃる、ユニークな多面の人だ。

本書では氏の原点となった三和銀行時代、特にそのロンドン駐在時代のエピソードが興味深い。また、プロフェッショナリズムの確立の重要性を説いているあたりは故・水谷栄二先生を思い出した。

ビジネスパーソンにして宗教家、コーチングの実践など、安永氏には精神の成熟を常々感じていた。本書により、「個性的であれ」あるいは「人生の目的とは」などについて氏のご高説をうかがうと、他の経営者にはない説得力を感じる。凡人の一般ビジネスパーソンの心の琴線に触れるのか、アマゾンの書評の数がこの段階で15もある。

2010年7月16日金曜日

野村監督サイン本が当たる(2)

いやはや、「私はMr.Lucky」ということが起きたわけだが(そんなにその本が欲しかったわけではない。ジャンケンをしている間にも「当たったら本なので重いな」などとも思っていた)、そう思ったのはこういうものが当たってしまうことは結構あったのだ。

ミード社の日本法人に着任してまだ日も浅い時、最大の顧客であるアサヒビールが取引業者をよんで開いてくれるパーティに出席した。
後半に抽選大会があった。それには、アサヒビール自身だけでなく、大手の業者も随分商品を出していた。メインエベントみたいな商品は大型カラーTVで、それを出していたのは段ボールメーカーのレンゴーだった。レンゴーは、マルチパックに関しては日本で最大の供給元でそれに次いでいたのがミード社だった。

その商品が何と私に当たった!出席者500人を超えていたなかで、直接競合で新任社長だった私に当たったのである。前に出て名乗り、礼を述べたのだが、レンゴーの関係者はさぞ苦虫をつぶしたような顔をしていたことだろう。

翌週の朝礼で、皆に、
「これは、レンゴーがアサヒビールで展開しているビジネスが、私につまり当社に来るという神のお告げである」
と皆に話した。

経営者には時に応じてハッタリも必要なのである。

「プロ経営者の育ち方」インタビュー(3)私のコミュニケーション

インタビューが終わった翌日、私が発信したメールを転載する。


冒頭で「私はコミュニケーションを重視する経営者です」と申し上げました。
最後の方で「社員とは距離をとります」と申し上げました。
象徴的なエピソードとして、「社員とランチに行かない、飲みに行かない」とも申し上げました。

これらの矛盾するようなステートメントをブリッジする説明として
「その代わり、プログラム的なランチの設定をしてそれは実施する」とも申し上げました。

新社に赴任すると、半年後あたりから一人で社長室で弁当を使うこともあるのですが、着任3か月くらいまでは、
全て「ビジネス・ランチ」となります(外出をのぞいて)。逆に言うと、こんなに社員と飯を食う社長はいないといつでも言われました。
その後はペースが落ちますが、定例となります。
工場に行くとかならず現場の社員をグループで招き、ランチ懇談をしました。「社長と話すのは初めてだ」とどこでも言われました。

私が避けるコミュニケーションの形態: アドホックで、無作為で、不公平な対象設定。内容がプライベートでインフォーマルなもの

私が追及したコミュニケーション:   プログラム化され、システマテックで、階層別にその密度が配慮されたもの。公平感があり、
                   社長とのコミュニケーションが実現したことに驚きと喜びを与え、その継続に期待を持たせる形態。
                   ビジネスの内容のみにフォーカスし、個別であろうとグループ面談であろうとフォーマルなコミュニケーション。
プライベートな話はしない、聞かない。

また、社長が社員と距離を取ることは正しいことなのです。来月解雇を申し渡すことを決めている幹部と親しく飯を食って談笑する、酒を飲むなどと言うことを続けると
たぶん人格破たんすることになるでしょう。あるいは、その可能性のある社員(再建を目指している場合、全員にその可能性がある)との距離感も同じことです。

私が追及したのは、「ドライなコミュニケーションの量と質を徹底する」ということです。「ウェットなコミュニケーション」は社長にとっては大いに危険なことだと思います。

以上、追加ご説明です。どうぞよろしく。

2010年7月15日木曜日

野村克也監督講演会で直筆サイン著書をもらう(1)


日本経営開発協会(関西経営管理協会)が帝国ホテルで3日間に渡り挙行している「全国経営者大会」に招かれ、顔を出してきた。30万円近くの受講料をものともせず、何百人も参加している。開催も110回以上となっている「お化けセミナー」だ。

楽天の前監督・野村克也氏の講演のみを聴きに行った。病後と言うので、やはり元気が無いのか、それともあれが「地」の、いわゆる「ぼやき節」なのか。直筆のサイン本が三冊だけ提供され、抽選により、何と私が1冊もらった。

監督の、講演を通してのメイン・メッセージはこうだった。

「弱い者は、強いものと同じことをしていては、決して勝てない」

あれっ、これってランチェスター戦略ではないのか?

世の中、ベスト・プラクティスなどの考え方で、「強者の模倣」的なアプローチももてはやされるが、それって結局限界があり、「改善」の域を出ない。
「大きく変わるなら、やり方を変えろ」
ということだ。「やり方」とは「戦略」のことである。

「とても合理的で頭の中が整理できた」セミナー参加者(2)

別の方からいただいたメール。


「経営戦略を立てるためのメソッドとして、戦略カードを活用した方法はとても合理

的で、大変勉強になるとともに、頭の中がよく整理されてきました。

先生が講義で話されていた通り、常にやりたいことや課題、いろいろなアイデア

が頭の中でいつもモヤモヤグルグルしていたものが、書き出すこと、抽出する

ことでかなり明確になってくるのに驚きました。

今回は経営戦略のさわりの話とのことでしたが、このツールを活用・応用して

自社の経営に役立てて行きたいと思います」

2010年7月14日水曜日

今度は沖縄へ出講

私はいろいろなところへ出没するが、今度は沖縄出講をお声がけいただいた。

仮タイトルは「中小企業が伸びる繁栄の黄金律とは」

公開セミナーでないので、日程や主催者名はこれからも記載しない。

そういえば、企業内研修でもこのような「社名明かさず」で実施しているのが幾つもある。
コンサル業界の倫理でもあるので、仕方がない。私に依頼されるのは管理職研修、あるいは幹部研修が多いわけだが、次世代幹部育成と言うのは結構定番だ。次世代幹部育成研修では選抜型で、全4-6講という構成としている。

実は、今週何と新入社員育成研修の話しが持ち込まれ、ついに「役員から新人まで」(あるいはその逆か)などと思ってしまった。まあ、相談されれば、それなりの研修案は立てる。
私のところに来てくれるのは何と言っても
「元経営者で研修を教えられる先生はいないか」
という切り口なわけだ。

「具体的な解決法が見えた!」セミナー参加者(1)

セミナーに参加された方から嬉しいメールをもらうことがある。下記は、ある参加者からいただいたメールの一部の抜粋。


セミナーにて、先生の貴重なご講義に参加するとこが出来て、
大変光栄に思っております。

私達が日々過ごす中で、何とも言えないモヤモヤしたものはたくさんあります。
それを何となく過ごしてしまい、スッキリしないことが多々あります。
昨日のセミナーでは、演習の時間にそれを文章にして実際に書き出すことによって、
明確になりより具体的な解決方法が発見できるのだと、実感いたしました。
演習の時間がたくさんあれば、もっと現実的に近いものが出ていたかもしれませんが、
短い限られた時間であるからこそ、、『これだ!こうなりたい!』という、自分が強く思い描いている夢、
将来あるべき姿が書き出されたのだと思います。
演習の時間はとてもワクワクして、お隣のかたに熱く語ってしまいました。

「プロ経営者の育ち方」の研究対象インタビューを受ける(2)

某著名シンクタンクのインタビューを2時間に渡って受ける。相手は所長を含めて4名。インタビュー・リストが用意されていて質問攻めにあった。

研究テーマは標題の通り。13名のプロ経営者を選び、インタビュー方式で研究を実施し、その人たちの経営手法や、特にその手法やセオリーの成育過程を探り、共通点や共通要素を見出したい、とのこと。

私も
「経営者には個性があり、また経営スタイルというものが厳然として存在する」
と指摘したが、それは百も承知で、それを超えた、共通に存するものを見出し、次代の経営者育成の糧として提供したいとのこと。結果は当然出版されて公のものとなるそうだ。

「プロの経営者」の定義と言うか、研究対象に選出の要件として
「複数の会社で業績をあげている経営者」
を真っ先に挙げていた。
(当方はもう一線をしりぞいているのだけれど)
などと思う。でも私が研究対象の筆頭で、今回のインタビューの第1号だそうだ。

インタビュー実施に当たっては、ある程度の仮説を作ってきてくれた。それも興味深いのだが、当シンクタンクが研究をまとめて結論を公にしてくれるのを待つの仁義かと思い、ここでは書かない。

若手経営者塾もう1講 出講依頼が

二つ前のブログに書いた、某メガバンクが展開している地域別の若手経営者塾。前のブログでは埼玉西地域での実施の第1講、つまりキックオフを担当してくれと言うことで引き受けた。

今度は、同じ銀行が別地域で実施している若手経営塾でも講義してくれという話。地域は首都圏、こちらの方は全4講の、最終回、「トリを締めてくれ」という話である。

経営者を教えられる(元)経営者という切り口での依頼とのこと。いずれにせよ、「経営者ブートキャンプ」実施の評判などが伝わっているのかな。

2010年7月13日火曜日

りそな総研「必勝の経営戦略」セミナー実施

4大メガバンク系研修会社でまだ出講していなかったのが、りそな総研。

本日、「必勝の経営戦略」と題した1日セミナーを実施。三重県からも来場してくれた社長さんもいて、感謝に堪えない。

多くの参加者が、
「経営体験のある先生の話を聞きたかった」
と言ってくれた。実際、いくつか話した実話のエピソードをとてもおもしろがってくれた。「戦略カード」と「シナリオライティング・メソッド」を使って、演習を2回挟んだ。実際に自社戦略を作ってみる演習をしてもらったが、とても新鮮に受け止めてもらった。というか、社長さん達と言っても実際にそんな作業でしっかり自分のところの戦略を立案したことがないので、すっかり感心してくれた。役に立ててもらったようで嬉しい。

若手経営者塾に出講依頼

某メガバンクが埼玉西地域で主宰する、「若手経営者塾」への出講依頼を受け、引き受けた。

月次で全3講の第1講目。第1講ということもあるのか、私の回だけ時間が長い。実施は9月。
経営者ブートキャンプの好評が漏れ伝わってきたか。

2010年7月10日土曜日

経営者ブートキャンプ 第3講





第3回も大いに盛り上がる。今回から、特別講師の特別講義が始まった。

「課題図書レビュー」で、『リーダーになる人の「ランチェスター戦略」入門』の著者、福田秀人氏が登壇。サプライズ・ゲストとして知らせてなかったので、発表者3名が大いに驚く。この顛末は、「経営者ブートキャンプ実録日記」の方にゆっくり書こう。

二人目の特別講師、池本克之氏の講義も迫力満点。さすがにドクター・シーラボともう1社、2社を早期に上場させただけの手腕の先輩経営者だと皆感心。こちらのほうも、「実録日記」の記載を待たれよ。

2010年7月9日金曜日

上場会社支店長60名に研修

伸びる会社は、しっかり幹部研修を行っている。過去数年二ケタ成長、今年も絶好調、しかも建設業界で、というと上場している会社でこんなに元気のよいところはおのずと絞られてくる。
というより、
「あそこしかないじゃあないか」
と、業界人ならすぐ分かることだろう。

今年1月に支配人の方たちをお教えしたら、今度は加えて取締役と子会社の社長さんも入れてやってくれ、ということになり60名ものクラスを1日研修させてもらった。

「繁栄の黄金律」の中で、今回強調したのは「コミュニケーション」。その組み立てと実施の方法。

修了して、陪席してくれていた人事部長から、
「さすが元経営者の話しは説得力がありますね」
とほめていただいた。

上場会社の役員研修をやらせてもらったのも嬉しいことだった。

2010年7月7日水曜日

新CD「人を見抜く技術」(2)内容


ー はじめに
ー 「人を見抜く技術」が成功への近道
ー いったい誰を見抜くんだ
ー 見抜くための7つの力
― 3分間で相手を見抜こう
― 何を見抜いてこの世を渡る?

収録時間 50分31秒

ジャケットには私の写真がシルエットで使われている。

間もなく、フォレスト出版から発売。乞うご期待。

オルセー美術館展を観る


新国立美術館で開催されているオルセー美術館展を観に行った。

オルセーとは行き違いとなっていた。パリで2回訪れたのだが、初回は月曜日で定例休館日。第2回目は日曜日に行ったのだが、館内補修のため特別休館!とのことだった。いずれもミード社からの出張を使ってのことだった。
「ペイントなら、ルーブルよりオルセーの方が」
と聞いていたので、残念な思いをしていた。

新国立美術館は大変な人出。平日の午前中だというのに、ごった返している中を観て回る。ゴッホが一番良かったかな。

眼福にあずかり、満足。たぶん、パリにはもう行く機会が無いだろうから、「冥土の土産」ということになる。誘ってくれた妻に感謝。

新CD「見抜く技術」(1)サンプル上がり

フォレスト出版から発売となるCDの音取りを4月に行っていたが、CDの形で、パッケージの表装もなり見本と言う形で出来上がってきた。

「150字弱の講演者自讃を書いてくれ」
との要請あり。


活き抜く技術!
世渡りの術(すべ)に長けない人は、昔から「憂き世に何か久しかるべき」(伊勢物語)とまで言われてきた。苛烈な現代ビジネスでは、その「術(すべ)」とはまさしく「人を見抜く技術」である。37歳から社長を務めてきた私が活用してきた「見抜く技術」を、是非貴方の役に立ててほしい。

2010年7月6日火曜日

「私をスキーに連れてって」映画



昨晩、BSテレビで昔の映画「私をスキーに連れてって」が放映されていて、思わず最後まで見てしまった。1987年製作だそうだ。当時この映画を観ることはなかったが、原田知世主演で、スキー・ブームを熱狂にまで高めた作品である。

万座スキー場で発表されるべき新作のウエアを着たモデルの原田が、どうしたわけか志賀高原の方に滑りに来てしまい、イベントに間に合わなくなるので、渋峠越えをして万座を目指す。遭難するところを追ってきたスキー貴公子に助けられ、二人で滑り込む、という筋立てである。たわいのない話だが、気持ちよく滑っているような気になるわけだ。

でも、元プロの私としては、、
志賀高原の横手山をリフトで登り、渋峠から万座に通うのはいわゆるスキーツアーコースだ。私は数回通っている。ここは、夏の車道をほぼ進む。風の吹きとおしとなっているので、雪付きはすこぶる悪い。だから、
「あのコースは歩くのだろう!」
あんなに気持ち良く滑れる斜面などありはしない。

原田知世のスキーシーンをスタントで滑っている女性スキーヤーが下手そうに滑っているのが、上手い。何と、万座スキー場に滑りこむときは女主人公はできなかった滑りが(大変な試練を突破してきて)、上手に滑りこんでくるという設定だ。
「1日で上手くなれれば」
とため息をつくわけだが、夢は与えたわけだ。

2010年7月2日金曜日

プロフェッショナル経営者として研究対象となる(1)


某シンクタンクから依頼を受けた。そこが、
「成功したプロフェッショナル経営者の共通要素を抽出する実証研究をしたい」
とのこと。
「成功したプロフェッショナル経営者」の定義は、「複数の会社の経営に成功した」ということだそうだ。

さ来週研究インタビューを受けることになったが、なんと4名もの研究員が集団聞き取りをしたいということだ。
「私のホームページでも見ておいてください」
と言ったら、
「ご著書は何冊も研究させてもらった」
とのこと。さてどんなことをきかれるやら。

部長研修の教材を作る

昨日は来月早々に実施する、部長研修用の教材を作った。プレゼン用のパワポスライドを80枚ほどと、それを印刷してテキストとする資料60枚ほど。投影して見せる方が、枚数多く興味を持ってもらうものを含んでいる。配布資料は、重要な用語を隠してアンダーラインとして置くなど、聴講中に書き込んでもらう仕組みにしている。私の講演やセミナーで眠る人を見たことが無いのは、このような仕掛けなどによるところもある。
「聞いてもらって、納得してもらって、学んでもらう」
というわけだ。

今回依頼されたのは、1千人規模のシステム開発会社。部長さんがおよそ40名ほど。
「是非意識改革をしたい」
という会社側からの依頼。
少しでも考え方や行動の転換点を与えられればと思う。

2010年7月1日木曜日

『小倉昌男経営学』 書評(38)


日経BP社。ヤマト運輸の2代目社長にして宅急便の創業者。1999年の初版だが、内容的には褪せることのない、経営者実録本としては屈指の書。

政府行政との戦いのことが知られているので、その話が多いのかと思った。実際には、初業態となる宅配便の細かなところまでのビジネスモデルの創出にたくさんの有効なアイデアを出していることが分かる。また、組合との関わりなど、会社を大きく伸ばすときに必要な「大技と小技の組み合わせ(これは私の表現)」を繰り出していることが分かる。
経営者ブートキャンプの参加者からの推薦図書の一つとして挙げられた。とても良い本に巡り合えた。

2010年6月30日水曜日

ユニクロの返品ポリシー

先日ユニクロで買い物をしたところ、レジのところで
「返品の場合はお買い上げ3か月以内にお持ちください。レシートをお願いします」
という旨の掲示を見た。

衣類で3カ月と言うと、結構着てからのことになる。下着など何度も何度も洗濯を重ねた後の返品を受ける、と言っているわけだ。

先日『フリー』(クリス・アンダーソン、NHK出版)の書評を6月9日付のブログに書いた。ユニクロの返品ポリシーって「逆フリー」(購買後の「フリー」の保証)だな、と思った。

ちなみに友人のW氏は、レシートなしで3月後に返品に応じさせたという。考えてみれば、日日の買い物のレシートなんか取っておかないよね。でもそれを受け付けることで、ユニクロは消費者の支持を構築しているわけだ。

経営者ブートキャンプ実録日記(6)課題図書報告はゼミそのもの



経営者ブートキャンプの最終目標は、各参加経営者が「新たな三年経営戦略」を策定する、というものだ。だから、私の講義も「戦略」に焦点を当てている。

最初の「課題図書」として選定したのは、だからこの分野のスタンダードとして『経営戦略の論理』(伊丹敬之、日本経済新聞出版社)。序章、1・2章、9章をそれぞれ指名し、報告させる。報告各10分、他の参加者との討議各10分。3名のセッションで計1時間。

本書を前に読んだことがあるという人が少なくとも3名はいた。夜の懇親会での感想は、

「学者が書いたものはとにかくつまらない」

現場の経営者ならではの切り捨てだった。

自社紹介(前回の続き)

残っていた4名の人が持ち時間12分、QA5分で、自社のビジネスを説明。最終回の「戦略発表」に向けての初めの基礎データ開示ということでやってもらっているのだが、これ自体が大変好評。

「他の会社、業界の話をそれぞれの社長さんから直接説明してもらうのがとてもおもしろい」

と、参加者の皆さんが言う。

読書課題のサブ・リーディング(発表は無し)として、『成功するデジタル・プレゼンテーション』(箱田忠昭、日本経済新聞出版社)も読んできてもらった。参考にしてもらったのか、プレゼンのやり方も、今回の方がこなれてきたか。

2010年6月29日火曜日

経営者ブートキャンプで池本克之先生の講義を公開



◎次回、7/10(土)は「経営者ブートキャンプ」の第3回講座。

その日の15:00~17:00に、特別講師の池本克之さんによる特別講義が
行われます。

※池本さんのプロフィールはこちらからご参照ください
http://www.keieisha.jp/lecturers.html

テーマは「年商3億円から数年で120億円への急成長経営」
「2社を上場させた経営」&「社長の勉強法」。

現在はマーケティングコンサルティングや数社の経営に携わる池本さん
のノウハウや経営方法論のエッセンスを、受講経営者向けに濃縮して
この講座でしか聞けない本音話も交えての講義を頂きます。

この講義部分を聴講されたいという非受講生の皆様に、
特別に席数限定にて

【特別聴講席】

をご用意いたします。
会場の都合で数席しか設けられません。
ご希望の方は、以下にご記入の上、本メールへの返信をお願いいたします。


(以下に記入の上、返信ください)--------------------------

7/10(土)15:00-17:00「経営者ブートキャンプ」
池本克之さん特別講義 聴講希望

聴講費:20,000円(税込)

会場:経営者JPオフィス
〒150-0012 東京都渋谷区広尾1-16-2 K&S恵比寿ビルII 6F
MAP http://bit.ly/aJQw9u

お名前:
会社名:
お役職:
ご連絡先お電話番号:

----------------------------------------------------------

※基本的に先着順にて受付させていただきます。
同タイミングで席数を超えるお申込みを頂きました際は
抽選とさせていただきますので、ご了承ください。

経営者ブートキャンプ実録日記(5)「早くも本になる?」





経営者ブートキャンプの第2講(全6講)が6月12日(土)に行われた。

前回、5月の第1講では、第4講に特別講師として予定されている新将命(あたらしまさみ)さんが「サプライズ・ゲスト」として終日参加してくれた。

「伝説のカリスマ外資経営者」として隠れもない新さんの突然の参加は受講生を狂喜させた。長い経営体験から醸成された新さんの経営哲学、含蓄にあふれる箴言が随所で披露され、書物からだけでは得ることのできない、「終日のクラス参加共有体験」が提供されたのである。

今回・第2講からは他の特別講師、池本克之さんと井上和幸さんが全回参加だ。クラスに参加してくれる他に、私と手分けしてグループ討議にも参加してくれる。お二人とも鋭いコメントを発し、「さすが」と参加者をうならせていた。

早くも本になる!?

前回の「実録日記」で、「講師全員が経営者でベストセラー作家」と書いた。それは全くその通りで、このような面々が展開している経営者ブートキャンプのことが、早くも著名出版社に知られることとなった。

とりあえず、提示された出版企画が、各講師が話す特別講義を各1章として、「成功する経営のヒント」みたいな編纂本を出さないか、というものである。私ももちろん1章を起こす。

「実際の講義録が今面白いんです」

と、編集者の人が言ってくれる。

「まだ1講が終わったばかりなのに」

という驚きもあるが、

「経営者が集まり、経営者に学び、自社の戦略を策定する」

という本邦初のプログラムということで、注目をいただいているということだろう。先生もすごいが、参加者の質と結束が自慢できる。

2010年6月27日日曜日

Bスクール、日本とアメリカ

ご存知のように、私はこちらとあちらで、両方のビジネススクールに行っている。両方とも、社会人経営大学院なわけだが、違いはどこにあるのか。

法政大学でお世話になった洞口治夫現教授は、「自動車についての学び」という上手い例えをおっしゃっていた。
「日本の経営学部は、どう走るかエンジンのメカニズムを教える、アメリカのMBAスクールはどうそれを運転するかを教える」
というのである。洞口先生はハーバード・ビジネス・スクールで客員研究員として1年過ごされた。

私の「経営者ブートキャンプ」?
経営者の悩みに答えられる場の提供と、自分で問題に対処していける能力と覚悟を与えることにあるのだろう。

「ソリューション・フォーカス」マカーゴウ&ジャクソン 書評(37)


ダイヤモンド社。幾つかの意味で読みにくい本だ。まず翻訳。青木安輝というコンサルタントの方が翻訳されていて、この方は「ソリューション・フォーカス」の教祖様みたいになり、各種セミナーやらコンサルティングを展開されているらしい。

「売り」を求めて手に入れたという点でコンサルタントとしては鼻が効く(優秀)ということなのだろうが、語学の方はどうなのだろうか。こなれない言葉使いが多く、おそらく(原典の方に当たっていないので)誤訳だろうというところも散見する。同氏のある本には「1983年東京大学修了」という表記が、別の本では「卒業」となっているのも、立派なコンサルタントにふさわしく?である。

次に本の厚さだ。著者の主張には別に異議は無いものの、つまるところ5ページで書き表せる内容を350ページ以上に渡って展開している。まことに微に入り、細に入りである。結局、著者の二人もコンサルタントなので、「鬼面人を驚かせる」体裁の大著書が必要なのだ。

2010年6月25日金曜日

部長を変えよう!

日本を代表する重厚長大産業企業の関連会社から、部長研修を依頼された。
企業規模1,500名ほど。部長が50名弱。

従来、巨大企業である親会社の仕事だけやっていればよかったが、現下の状況で外に打って出ていきたい。ところが、例によってなかなか変われない、というわけだ。

企業行動のキーとなる部長さんたちの意識変革を啓蒙してくれ、というわけだ。3時間ほどの講演型の働きかけだが、精一杯のアジテーションを行おうと思っている。出講そのものは8月。2日間の部長研修の強盗を任されている。

2010年6月22日火曜日

「コア コンピタンス経営」ハメル&プラハラード 書評(36)



日経ビジネス文庫。著者はそれぞれロンドン・ビジネススクールとミシガン・ビジネススクールの元教授。
著者たちは冒頭第一章で、「何に向かって会社を変革するのか」と経営者に投げかける。そして次のような観点を検討する必要があると啓蒙している。
*5年から10年後に業界の構造がどう変わってほしいか。
*業界の変革を自社に有利に展開するにはどうする。
*業界で主導的な地位を築くには、、、

「それぞれの業界でトップになろう」というのが著者たちの示すゴールであり、続く章は「そのためには」と説いているのが本書だ。

しかし、5年も10年も先と言えば「自社」を想定することさえ難しいのに、「業界全体」の構造まで当社1社で規定、コントロールなどできることなのだろうか。それがあまりに不確定だとしたら、それを所与の目標として現在の自社を規定することは賢いことではないだろう。
グーグルでさえ、10年前に現在の状況を想定して戦略を設定したのではなく、時間枠の進行とともに「反応・対応」的に大小の意思決定をしてきたはずである。

そもそも、「業界1位」をめざす?仮に業界を150程度に分類したとして、この著者たちの主張が適応される企業と言うのは、日本だけでは300もないということになろう。著者たちが議論しているケースが大企業、大産業に偏していることから、ますます該当する企業は限定された「既に大企業」ということになる。

結論からいえば、本書は日本でだからせいぜい300部くらい読まれれば必要にして十分なはずだが、文庫本まで出ているのはどうしたことか。夢を持たなければ生きてはいけないという、厳しい現状は個人も企業も同じだからということだろう。

2010年6月21日月曜日

ロジカルシンキングを構ずる

大手団体の職員対象に、ロジカルシンキングの一日セミナーを実施。

「(ロジカル)シンキングだけではなく、(ロジカル)コミュニケーションも大事だ」と強調。最初は、テクニカルなロジカル・シンキングだけを想定して出席してきていた参加者が、私の「論理的にメッセージを立てただけでは伝わるとは限らない」という説明と、伝えるスキルを加えての演習に納得してくれた。

例によって、個人及びグループで展開する演習例題を5つも散りばめてのセミナー。内容は豊富だったが、1時間おきに休みを10分間ずつ取って引っ張っていく。
参加者たちが組織内で円滑な意思疎通を実践、向上することを期待している。

2010年6月19日土曜日

「未来を創る経営者 石井元 他 書評(35)



国際経営者協会(IMA)編著、生産性出版。
経営者ブートキャンプの受講生石井元氏から恵贈いただく。20名の一流外資経営者が筆を取っていて、石井さんが巻頭第1章を任されている。こんな経営者が「生徒」の方で参加してくれているのだから、経営者ブートキャンプは心強い。計20名の著者のうち、泉桂さんと加藤春一さんとはそれこそ何度もお会いしている。というのは、お二人とも隠れもないエグゼクティブサーチ会社の社長さんだった方だ。

石井さんの話は、彼が初めて外資の社長に招聘されてから、その法人の本社がM&Aされてしまうまでの経緯を、ローカルの責任者の視点から書いている。ドラマティックであり、外資の社会を生きていく経営者の覚悟と処世術を示している。面白かった。

2010年6月18日金曜日

「ストーリーとしての競争戦略」楠木建 書評(34)



東洋経済新報社より先月発刊。既に増し刷り。2800円と高価で厚い本にしてはよく売れている。
戦略系で学者が書いた本の中で一番出来が良い。従来の私の主張ととても共通したことを言っていて共感が強い。
「ストーリーテリング」という著者の最大のキーワードは、私が使ってきた「シナリオ・ライティング」と同じ。「優れた戦略の条件」という副題の通りに、優れた戦略についての知見、新見に満ちていて、しかもそれらが整理して提出されている。

ただ、、厚い。私なら三分の一の紙数で同じ話を主張する。しかし、このように委細を尽くせないことも確かだ。大変よろしい。経営者ブートキャンプの課題図書に採用することとした。

2010年6月16日水曜日

三重銀総研・経営者クラブで「変革期における経営戦略」

四日市市で一日公開セミナー。三重県下の経営者、幹部たち30名ほど。戦略立案の演習も実施。例によって戦略カードを使って、「目標設定」「課題設定」「戦略」「派生問題と対応策」のステップを体験してもらう。

皆さん集中して聞いて下さったし、よく参加してくれた。終了アンケートの評点では、「5」と「4」だけ。

三重銀総研のご担当からは、私の公開セミナーのテーマなどについていろいろ質問を受けた。定番の「戦略立案」の他に、最近著との関係でこのごろは「幹部」「部長」を対象にしたセミナーの問い合わせ、実施が増えていることを話す。

参加者の方に喜んでいただいたことが何よりの励みだ。

2010年6月12日土曜日

経営者ブートキャンプ 実録日記(4)「演習(目標と課題設定)」



「演習(目標と課題設定)」

前セッションを受けて、個別演習を早速やってもらう。
「戦略カード」を使って、「目標設定」と「課題設定」をやってもらった。
それぞれの作業で、できるだけたくさんのカード出し(「網羅主義」)と、価値観による絞り込み(「効率主義」)の実施を指導。
次回はこの結果を、小グループ内で相互発表をしてもらい、他の参加者からの批判を受けてもらう。

2010年6月10日木曜日

「最高経営責任者」ネフ&シトリン 書評(33)



日経BP社。副題が「ヘッドハンターが選ぶアメリカのベスト企業家50」とあるように、個人の著作と言うより、スペンサー・スチュアートが社をあげて自社のパブリシティを兼ねて調査、編集して著したもの。米国スター経営者を選ぶ「オールスター紳士録」みたいにトップ50と目されるCEO達がそれぞれ10ページずつほど紹介されている。知っているあるいはファンである経営者のところを拾い読みするのは楽しい。

しかし、著作としての価値、提出した結論は、費やされた個別経営者についての記述に比べて貧弱だ。トップ50の大成功したCEO達の共通した成功要因とは何だ?著者も読者も、それが最大の興味となる。本書の一番大きな答えは

「適切なことを適切に実行する」

だと。

徳光和夫が歌番組の司会で、歌の題名も歌手名も覚えてこれないときに使うテクニックとして
「、、、それはこの人の、この歌です」
と言って紹介してしまう時がある。それってつまり何も言っていないんだよね。

ところで柳省三さんは今、どこで何をなさっていらっしゃるのだろうか。

経営者ブートキャンプ 実録日記(3)「戦略はどう作る」



山田修の「経営者ブートキャンプ」実録日記
第1回 いよいよ開講! 2010年05月15日


「自社紹介」

ランチの後では、参加者のうち、まず4名が自分と自社(あるいは自分が責任を持つ部門)の紹介。
これをしてもらうことは事前課題として連絡が出ていた。発表をした全員がインターネット接続で、スライドに画面投稿して説明。ストップウォッチを使い、12分発表、5分QAをしてもらう。「7つの約束」のおかげか、活発に手が上がり、講師として大変心地よい展開。



「戦略はどう作る」

私のレクチャー。
これから6回にわたり演習と続けていって、最後に「自社(自部門)の新経営戦略」を全員に発表してもらう。その戦略作りの方法論の指導。「シナリオ・ライティング」という私のオリジナル手法を説明し、そのための展開ツールとしての「戦略カード」の使い方を話す。
「シナリオ・ライティング」に関連して「プレイヤーズ・セオリー」、「戦略カード」の出し方などに関連して、「一人ブレーンストーミング」や「一人ナレッジ・マネジメント」の概念を話す。
また、一人ではなく組織の中で他のメンバーとともに戦略を開発する場合の、実際の手法についても説明する。
「経営者が明日から自社で使える経営技法を伝授する」ということを目指しているつもりだ。

2010年6月9日水曜日

新著発刊の企画が

3月に刊行した「あなたの会社はぶちょうがつぶす!」(フォレスト出版)が13冊目の著書となった。その他の書は、ホームページに全てアップしてみたので、ブログの今日のタイトルをクリックしてくれたら、リンクが飛んでいる。

今年、シリーズとして一番力を入れてきた活動が、経営者ブートキャンプだ。この活動を聞きつけてくれた出版社があり、そこと出版企画を検討し始めている。今年中に上梓したいと思っている。

となると、私としては初めて1年複数冊の刊行となるの年となる。

決定したら順次ブログなどで情報をアップしたい。

「フリー」クリス・アンダーソン 書評(32)


NHK出版。経営者ブートキャンプ参加者の「推奨図書」。

著者は、ネット通販における「ロングテール」の存在を指摘し、その言葉を用語として世間一般に広めたあの人物。ネットの社会での新しい現象をかぎ分け、ネーミングを行い、理論化し説明し、つまり世間に新しい知識を提供できる稀有な著者と言える。

本書も、デジタルの世界では提供する情報の複製コストは限りなくゼロとなることから、単なる情報提供料も無料とする多数のサービスが出現していることを指摘、そのことの商業的価値を明快に論じている。その方向がこれからも広がっていくことが予想されることからも、ネットビジネスの「預言者」と言ってもよいような切り口だ。

本書はしかし、厚過ぎる。この三分の一で同じことは提示できるだろう。不要に厚くなってしまった原因は、過去のつまりネットビジネス以前の通常ビジネス時代の「無料サービス」事例を集めたり、その解説に紙数を費やしたため。

ネット世界以外の「無料」関連ビジネスと言うことなら、現在の「おまけ」とか「無料」とか「サンプル提供」などの事例の方を集めてくれた方がありがたかった。

NHK出版も、その厚さほどの価値は無いだろうということで、本書の価格は謙虚に1,800円としている。

2010年6月8日火曜日

経営者ブートキャンプ 実録日記(2)「成長戦略」



オリエンテーション

続いて私がオリエンテーションを行う。今日を含み、「向こう6回のプログラムの時間割」を配布。
次のような「7つの約束」を説明。
1.明るく楽しく元気よく、そして仲良く
2.一人では学べない、クラスメートに感謝
3.率直な指摘、疑問の掲示が親切
4. 手を挙げてから発言
5.互敬に基づく討議
6.大変だけど準備して来て
7.オフ・クラスの交流で「勉強する社長仲間」を作ろう



「成長戦略」

最初の単元(1.5時間)は私のレクチャーで、「成長戦略」。6社を経営してきた私の実践事例の中から、企業の「成長」や「再生」に大きく奏功した要素を取り出し、分析してみせる。
さらにそれを演繹して「成功するための戦略要素」として掲示。参加者の経営者の皆さんは、事実例を本人が説明するので興味深く聞いてくれる。最初のセッションで、参加者たちの集中を強く感じた。

2010年6月7日月曜日

経営者ブートキャンプ 実録日記(1)「機密保持書が待つ開会式」


経営者ブートキャンプが5月に第1回を開講された。その進捗を「実録日記」として主宰社経営者JPのサイトに連載開始。本日のタイトルをクリックするとリンクする。

本日はその最初を転載する。



開会式
経営者ブートキャンプが5月15日(土)にスタートした。
記念すべき第1期の第1回は、品川の会場で10時に開講された。
開会式で、主催会社の経営者JPの井上和幸代表が挨拶。続いて参加者に配布されたのは、何と「機密保持の覚書(NDA)」だった。これは、プログラムの中で各参加者に自社の経営戦略を策定してもらうのだが、実際の企業情報を互いに高次元の段階で披露しあうので、それに対する配慮である。
「リアルな経営課題を取り扱う」
というのが特長の一つだ。

2010年6月5日土曜日

「最前線のリーダーシップ」ハイフェッツ&リンスキー 書評(31)



経営者ブートキャンプ受講者に出してもらった「他の参加者に読んでもらいたい推薦図書」の一つ。
リーダーシップの各要素を、主として米国の中央および地方レベルの政治力学的なケースを実に豊富にちりばめながら展開している。

本書のよいところは、変革を目指すリーダーシップの輝かしい成功や心得よりも、むしろリーダーシップを発揮することのリスクや失敗譚などに筆を費やしていることだろう。実際、リーダーシップを発揮しようとする場合のパワーポリティクスや、企業内で不可避となる各種の衝突のハンドリングの心得など、類書にはない斬新な視点であり、実際的だ。

ブートキャンプでの課題図書に採用することにした。

2010年6月4日金曜日

新入社員を教える

「一般社員に効率的な仕事の手順を教える」という切り口で話してくれと言われ、赴いた。「話せ」と言われても講演ではなく、本格的な1日セミナーをその企業内で実施した。演習も幾つも用意し、グループワークも実施してもらった。

行ってみたら、「一般社員」でも偶然「新入社員」の人ばかり16名が参加していた。新人研修を実施したことは、自分が社長時代に自社の新入社員に訓話を垂れた時以来、記憶にない。

私が話をさせてもらう対象は、経営者などのトップ層から、幹部の方たち、このごろは新著のせいで部課長まで降りてきている。ところが一足飛びに新人の皆さんに話をすることになるとは思わなかった。

「社長から新人まで」

今後はこのキャッチで行こうか。でも、若い人を相手に話すのは面白かった。まずエネルギーにあふれているし、出来の良いクラスだったからもある。この先30有余年のビジネスキャリアを無事に漕ぎだして行ってもらいたい。息子、娘を教えるような心境でもあった。

2010年6月3日木曜日

部長を教えられるのは誰だ

本日、とある会社に部長研修の打ち合わせに参上した。研修担当の人事部長が、「階層で言って、課長辺りまでは研修を企画実施できるのだが」とおっしゃる。

「部長研修と言うと自分も部長で、言ってみれば同じレベルなので」
と苦手意識の本音を披歴された。

「研修会社ではどうですか」
とおうかがいしても、「満足していない」とのこと。

管理職も上にあがってくるということは、実績に加え能力開発が進んでいるので、そんな人たちをさらに教える、能力開発を指し示すというのは難しいことになってくる。通常の研修会社のコンサルタントの先生にも手に負えないケースが出てくるわけだ。

私が提供している部長研修、幹部研修が少しでも役に立ってくれれば幸いだ。というのは、普通の研修会社では階層別で言うと、新入社員から始まり上にあがってくるのだが、私の場合はトップにお話しさせてもらった段階から始まり、部課長研修まで降りてきた。だから個人的に幹部層の階層に気後れはないし、実際十分に対処しているつもりだ。

2010年6月2日水曜日

「東京島」桐野夏生 書評(30)


以前にもブログに書いたが、桐野夏生女史は私のスキー仲間で20代の初めに何シーズンもご一緒させていただいた。学習院のスキー仲間と、私が教えていた某短大スキー部の部員たちが卒業してから作っていたスキーチームがあり、そこの一員だった。各シーズン15日程度はスキー行をご一緒している。

ブログに書いたので、久しぶりに桐野作品に手が伸びた。本の惹句はこうだ。

32 人が流れ着いた太平洋の涯の島に、女は清子ひとりだけ。
いつまで待っても、無人島に助けの船は来ず、いつしか皆は島をトウキョウ島と呼ぶようになる。
果たして、ここは地獄か、楽園か? いつか脱出できるのか――。
欲を剥き出しに生に縋りつく人間たちの極限状態を容赦なく描き、
読む者の手を止めさせない傑作長篇誕生!

桐野さんの構想力はいつも雄大で、現代作家の中でも屈指だろう。ストーリーが次々と展開して驚きが続く。「え、そんな展開が?」なんてこともあるのだが、何しろ作家は神なのだから「面白ければ勝ち」だと思う。
しかし、桐野作品に通底している、暗さ、気味悪さ、グロテスクさなどのため、私のFAVORITE WRITERではない。

離れ島漂着譚というと、どうしてもノーベル文学賞のゴールディング「蝿の王」が出てくる。「蝿の王」が示した宗教性、聖性、人間との直面などには、桐野夏生をもってしても達していない。エンターティンメントとしては十分勝っているのだが。がんばれ、まり子ちゃん。

2010年6月1日火曜日

「ドラゴン桜公式副読本 16歳の教科書」 書評(29)



講談社。7人のそれぞれの科目の専門家が、「高校教科」の本質、勉強法について諭すという形のオムニバス本。内容よりも編集と構成の手法に興味があり通読。

「国語」の科目の執筆者が金田一秀穂氏。「気鋭の日本語学者」として紹介されている。この本の内容ではなく、私はいつもこの人の紹介され方のスタンスが気に入らない。祖父の金田一京助、父の金田一晴彦に続く家系なので、TVなどでも「現代の代表的な日本語学者」などのように紹介され、登場している。

でも、そもそも学問って家督承継されるものではない。京助博士はアイヌ語研究で立派な日本語学者だったが、晴彦さんは言語学者。孫の秀穂さんに至っては、日本語教師である。日本語教師は私は学問とは認めない。

学習院大学国文科に、日本語教育が取り入れられて「日本語科」と名称が取り入れられた時、私の指導教授だった吉岡廣先生も「あれは学問ではない」と同列に扱われることを嘆いておられた。学問ではないなら何なのか。はい、技術者、技能者です。