孫正義と柳井正 (15) 孫正義は狩猟民族経営
このように孫氏が事業を発展してきた経緯を振り返ってみると、「辺り構わず」ともいえるビジネス・ドメインの展開ぶりです。
なにしろ、製造業から流通業へ移って初期の業容拡大を成した後は、展示会運営会社であるコムデックスや出版会社を買収しては売却したり、金融事業からエネルギー事業までに参入したりと、基軸といえる事業の軸足を大きく動かしてきています。その放散ぶりは「しっちゃか、めっちゃか」とまで形容できるのではないかと思ってしまいます。
「大きくなれればなんでもいい」
これが実は孫氏という経営者の正体なのではないかと筆者は思っています。これは別に悪いことではなく、むしろ感心します。成長可能性の大きい事業領域にある特殊な境遇の会社に大胆に手を出すことによって、自らの事業全体の成長を加速していく、そういうことに関して恐ろしく嗅覚が鋭く、かつ果断に突っ込んでいくことのできる稀代の事業家なのです。
(この項 続く)