(株)集英社インターナショナル、2008年刊。大著の印象が残るが、380ページほど。その印象は、重厚な文明比較論を展開しているところによる。
著者の立場はエコノミストなのだろうが、近年の世界的経済不調をアメリカ型の「グルーバル資本主義」の不調・限界と見て、その根源を西洋の1神教による文化的な背景と価値観に見いだしている。それへの対立軸として日本の多神教(八百万の神々:山田注)をあげ、日本文化の優位性を指摘している。
西東という比較は単純過ぎ、日本が先進国の中でも唯一の例外的な文化規範を持っているという著者の認識は正しい。文明論の引用として、日本神話で吉田敦彦を挙げているのも学的センスがよい。日本神話というと故大林多良博士を持ち出して新しがる向きが居るが、「吉田敦彦は大林を超えた」と、これは私の直接の恩師だった故吉岡日廣(ひろし)先生の言。吉岡先生は学習院大学の国文科主任教授で、私の恩師。私の在学時代は大林先生に学んで「何とすごい先生か」と驚嘆したものだが、吉岡先生によると、「吉田先生は、、」ということだった。吉田先生も吉岡先生の招聘で学習院大学でも教鞭を執ってくださったそうだ。
グルーバル資本主義の限界についての著者の分析と指摘は首肯できるものがあるのだが、それではPOST「それ」には何が来て、あるいは「それ」をどう修正すればよいのか。当たり前だが、未来への予測と回答までは著者を持ってしても示し切れていない。
東西文明や宗教の分析は迫力があり、教養に資する。
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