ちくま新書2003年刊。著者の本は、「図書60 経営戦略思考法」で取り上げた(本日のブログタイトルのクリックでリンクを張った)。既存学説の解説が分かりやすいところが評価が高かった。
今日のこの本では、第4章の「欲求階層説の誤用」という主張というか、論理の立て方に難を唱えたい。
「欲求階層説」とは例の、マズローの5段階欲求階層説のことだ。
沼上はまず、マズローの説は実証されていない、とマズローの説明を受け入れない立場を取っている。これはマズロー説全体に対してのものだ。ところが、その後の沼上の主張は、「第5段階よりも第4段階の方が重要だ」というのだ。
おかしいではないか。論の成立を全否定したはずのセオリーなのに、次にはその1部を自分の主張に引きつけている。
これだけでも沼上の立論は成立しないのだが、さらに具体的に引用すると
「だから一番真剣に考えなければならないのは、、自己実現欲求なのではなく、承認・尊厳欲求の部分だと私には思われてならない」
と言っている。
マズローの方を「実証されていない」として、自分の方は「思われてならない」?どこに実証があるのだろうか。
沼上の主張の内容についての当否を私は指摘しているのではない。何を言うにしても、これではそれが論理的に成立していないよ、ということを指摘しているのだ。
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