2019年10月31日木曜日

避難所で疲れ果てた人々を勝手に映すメディアを締め出すべき(7)

避難所内の取材や報道は、肖像権を侵害しているばかりでなく、プライバシーを侵害している。災害被害にあって避難して困った状況に陥っているということ自体、当事者にとっては重要なプライバシーに関する情報である。メディアの取材は、避難者のプライバシーを蹂躙しているし、不幸な状況の人たちを一層困らせているという点で人権を侵している。

 避難所でテレビクルーがライトをつけて取材、インタビューをする行為は、同じ空間で仮眠をとっているお年寄りなどの安寧を脅かしている。避難所の生活は一重に静謐で安心できるものでなければならない。


避難所の運営の大きな改善を


 避難所を設置運営するのは、地方行政の市町村だ。災害は時間の余裕なく襲ってくるので、十全の準備をするのは困難なことだ。だが、設置責任者以外にその運営に責任を持つべきものはいない。

 避難所を設置すると同時に、「利用は被災にあわれた、そのおそれのある人に限ります。立ち入り面会は近親者などに限ります。内部の報道取材は禁止します」などの掲出をすることを強く求めたい。

 日本はこれだけ天災が繰り返される国なので、避難所での生活品質も向上確保してもらいたい。たとえば避難した女性の方たちについては、次のような配慮が要望されている(内閣府「避難所運営ガイドライン」など)。

1.男性の目線が気にならない更衣室や休養スペース

2.授乳室

3.間仕切り

4.男女別トイレ

5.女性用品(生理用品、下着など)を女性担当者が配布

 台風19号の避難にあたっては、東京都台東区でホームレスの2人が、「都内居住者でない」と収容を断られ、人道的な見地から問題となった。避難所の中に非居住者用のコーナーを設けるなどして対処するしかないだろう。

「天災は忘れた頃にやってくる」というが、わが国では「忘れる暇もなく毎年何かが起こる」である。誰もがいつ避難所にお世話になるかわからない。避難所生活におけるストレスが少しでも軽減されることを願いたい。

(この項 終わり)

2019年10月30日水曜日

避難所で疲れ果てた人々を勝手に映すメディアを締め出すべき(6)

さて、大きな災害で避難が発生しているときに私がいつも疑問に思っていたことがある。それは避難所の中の様子をテレビなどのメディアが報道することだ。典型的なシーンでいえば、体育館のような大きな空間に多数のご家族が床に座り、あるいは横になっている。カメラはそれらの人々を映し出し、リポーターは避難者の誰かに被災の様子や感想を語らせる、と

 避難所の中の様子を報道することは、2つの観点から大きな問題がある。

 まず、肖像権の侵害だ。報道する側としては、インタビューに対応した人にはもちろん了解を得てのことだろうが、背景に映し出される多くの人たちの了解を得ていないだろう。それらの人たちの顔は、テレビの映像や写真にさらされた瞬間に「不特定多数」ではなく、「特定された個人」になってしまう。

 インタビューに応じる人々のなかには、着の身着のままで避難してきたり、メイクができていない状況の人もいるだろう。疲れ切った自らの顔や姿を、何を好んで全国にさらされる必要があるのだろう。「お疲れのところすみません、インタビューよろしいでしょうか」と丁寧に頼まれると、日本人はおもてなしの心に富んでいるので、受け入れてしまうのだろう。しかし、「やめてください、写さないでください、出て行ってください」と断ってもよいのではないか。

(この項 続く)

2019年10月29日火曜日

避難所で疲れ果てた人々を勝手に映すメディアを締め出すべき(5)

結局、窓ガラスにガムテープを貼るのをやめた。まだ昼だったが、カーテンを左右から引き、中で合わさったところを安全ピンで数カ所留めた。窓が突き破られればカーテンを留めた安全ピンなどもすぐに役に立たなくなるのかもしれないが、瞬間的にガラス破片が飛散するのを防ぐことを期待したわけだ。

大きな被害、残る爪痕


 台風19号が上陸、関東を通過した10月12日の夜は当家でもそれなりに不安な夜を過ごした。しかし、幸いなことに窓ガラスも割れず、停電も断水も起こらなかった。筆者が居住する市の被害は限定的で済んだが、被害は全国的に甚大なものとなった。東京都を含む東日本で大規模な洪水や土砂災害が起こり、19号が過ぎて1週間がたった10月19日時点で、66人の方が犠牲となり、行方不明の方が13名いる(消防庁発表より)。断水は7万9565戸で続いている。

 交通インフラも中央道などの高速道路や北陸新幹線が不通となった。住宅の被害も大きかった。洪水が各地で起きたので、床上・床下浸水は4万5000棟以上となり、家屋の全壊は85棟、半壊324棟、一部損壊は2169棟にのぼった。家屋の一部損壊などは内閣府の統計でも把握し切れていないものも多いと推定される。

 家を離れ避難所に避難した方たちも多数にのぼった。一時は5000人以上と報じられていたが、前述の発表では19日午後の時点でまだ全国12都県で4600人以上が449カ所の避難所に避難していたという。

(この項 続く)

2019年10月28日月曜日

避難所で疲れ果てた人々を勝手に映すメディアを締め出すべき(4)

窓ガラスにガムテープは貼らない


 意気揚々と帰宅した私は家人を呼んで戦果を見せ、さらに「2階の窓にガムテープを中から貼ろう」と提案した。ところが、「窓ガラスにガムテープを貼るのは危険だ」と家人は言うではないか。

「知り合いの物理の先生が『ガムテープで補強した窓ガラスに強風が吹くと、ガムテープが張っていない弱い部分に風圧が強まり、貼っていないときより割れやすくなる』と話していた」

 それは一般常識とは異なる話だった。しかし、常識を信じる必要もない。ネットで検索すると、以下の記事を見つけた。

<大災害への危機管理対応を行うアメリカ合衆国の『連邦緊急事態管理庁(FEMA)』は、「窓へのテーピングは時間と労力のムダであり、飛び散る破片に対しての保護能力もない」ことを2006年7月に発表しています。

(中略) 窓をテーピングすることは時間と労力のムダです。ガラスにはほとんど強度がなく、飛び散る破片への保護もありません。ハリケーン(台風)の警告が出たら、ドアと窓を保護するためにシャッターを下ろす必要があります。(Fact Sheet Hurricanes、篠原修司訳)

 また、自然災害や人災から家族を守るための方法を指南するアメリカの非営利団体「Federal Alliance for Safe Homes(FLASH)」は、窓ガラスの破片が大きくなることで重症を負う可能性があると2014年に警告しています>(『窓ガラスに養生テープ・ガムテープは破片が大きくなることで大怪我のリスクも』篠原修司 /10月11日付Yahoo!ニュース個人記事)


(この項 続く)

2019年10月27日日曜日

避難所で疲れ果てた人々を勝手に映すメディアを締め出すべき(3)

近隣地域で訪れた店の数は15店にのぼった。スーパーマーケット、コンビニエンスストア、家電量販店などだ。すべての店で上述の3点は見事に売り切れていた。台風がいよいよ接近してきた当日12日の朝も車を走らせてみた。とあるホームセンターを目指したが、この日になるともう多くの店が営業自体を取りやめてしまっていた。ふと通りがかった大型のディスカウントショップが営業しているではないか。何台もの車が吸い込まれていっている。

「ここなら」と思い私も車を入れた。店内に入り、この店のガッツというか、ビジネスマインドに感心した。台風当日も通常通り朝8時から営業していて、店内は活気にあふれていた。ミネラルウオーターもあった。「1家族様1パック」と書かれている。2リットル入り10本の箱をゲットした。ガムテープも普通に置いてある。台風接近を見込んで多めに手配したのだろう。大手の小売りチェーンのなかで近年独り勝ちしているこのチェーンの成功理由の一端を見た気がする。電池も探したが見つからず「もしかして」と思ったら、「電池付の懐中電灯」そのものが売っていた。2つを購入してこれも一安心となった。

窓ガラスにガムテープは貼らない


(この項 続く)

2019年10月26日土曜日

避難所で疲れ果てた人々を勝手に映すメディアを締め出すべき(2)

飲み水としてはミネラルウオーターの在庫は少しあったが、不安でもある。大手のネット通販を覗くとミネラルウオーターはほとんどが売り切れていた。ようやく在庫があるサイトを見つけ、しかも「翌日配送」とあるので注文し、一安心した。ついでに窓ガラスを補強するガムテープも発注した。

「これで安心」と思っていたら、翌日の11日になって愕然とすることとなった。「大変ご迷惑をおかけしますが」というメールがネット通販会社から来て、「本日の配送が難しくなりました」というではないか。到着は台風通過後となるという。「それでは役に立たない」ということでキャンセルしてしまった。

 そうこうしているうちに家人が「停電するかもしれない」と言いだした。民間の気象予報会社が発表している「停電リスク予測マップ」に当家の地域が「警戒地域」として示された、というのである。懐中電灯はあるが、点検してみると単1電池がひとつ足りない。水もない、ガムテープもない、電池もない、ということで台風上陸の前日に私は車で走り回る羽目になった。

(この項 続く)

2019年10月25日金曜日

避難所で疲れ果てた人々を勝手に映すメディアを締め出すべき(1)

台風19号、東日本各地に被害 長野県(写真:AFP/アフロ)
日本列島に大きな爪痕を残した台風19号。各地の避難所に身を寄せた人の数は5000人以上にのぼり、1週間たった時点でも4600人以上の人たちが避難所での不自由な生活を送っていた。

 避難所は災害時に緊急設置される施設だが、プライバシー保護や女性対応など一層のきめ細やかな運営の方策が求められる。避難所での安寧を妨げているのが実はマスコミの報道陣であることを指摘し、行政の断固とした対応を求めたい。


台風前日、電池がない!



当家は都下郊外に位置し、大きな川の近くでもない。地震や水害などの自然災害からは比較的縁が遠い地域に暮らしてきた。だから、大型の台風接近などということになっても、準備行動などすることは少なかったし、ましてや事前避難を検討することなどなかった。「我が家が安心」というありがたい状態だったわけである。

 ところが今回、台風19号が接近して重大な警告が報道で繰り返されるので、さすがに少し不安となった。最大の不安は、「都内でも最大瞬間風速60メートルの可能性がある」という予報だった。おりしも、9月初旬に襲った台風15号の記憶はまだ新しかったし、千葉県で起きた停電と断水による生活の大停滞は一部継続していた。

 台風19号が上陸し関東を通過していったのは、10月12日(土)夕方から夜にかけてのことだった。前々日の10日になり当家でも風呂やバケツなどのあらゆる容器に水を張った。生活用水にあてるつもりであった。

(この項 続く)