2017年11月30日木曜日

飯島三智の「3人セット売り」戦略の意図は? ビジネス評論家が「新しい地図」ブランド化を分析(2)

3つのケーキがパッケージから離れてしまうことになり、全体のブランドは終了してしまいました。元のケーキ屋さんに残った2つのケーキは個別商品として、立派に販売されていますし、引き続き愛されています。一方、離れてしまったのが3つのケーキです。離れたときから、あるいはそれ以前から、この3つのケーキは一緒に店頭に並べてもらおう、と決めていました。個別商品3つを1つのセットとして流通する、消費者にセットとして認定してもらうには、やはり新しいブランドが必要となります。そこで「新しい地図」があたかも新商品名のように機能し始めたのです。
 新商品を大々的に売り出そうとした最初のビッグ・セールが『72時間ホンネテレビ』でした。同番組では、大物タレントが入れ替わり立ち代り登場したり、元SMAPメンバーの森且行が21年ぶりに共演して、「森くん」がTwitterのトレンドワードで世界1位になったなど、いくつものプロモーション的コーナーが組まれ、話題を呼びました。また、番組の告知にSNSを積極的に使うなど、今日的なマーケティング手法も積極的に取り入れています。
 飯島さんのこれらの仕掛けは「成功を収めた」と言えるでしょう。さすが、ジャニーズ時代に「敏腕プロデューサー」「SMAP育ての親」と言われただけのことがあります。忘れられてしまう前に、旬なうちに、「SMAPロス」が世を覆っているうちに……というタイミングで、「3つのケーキ」を求め続けていた消費者に見事に応えたのです。3つのケーキは個別に売られたとしても、求められるだけの“味”がありますが、ファンは何しろ「SMAPロス」。3人をアソート(組み合わせ)したことで、復活インパクトは個別の3倍を大きく超えた効果となったわけです。

(この項 続く)

2017年11月29日水曜日

飯島三智の「3人セット売り」戦略の意図は? ビジネス評論家が「新しい地図」ブランド化を分析(1)

 SMAP解散騒動、それに続いてのメンバー5人のうちの稲垣吾郎草なぎ剛、香取慎吾のジャニーズ事務所退所騒動が、昨年から今年にかけて大きな話題となっていました。退所した3人は、「SMAP育ての親」と言われる飯島三智さんが率いるプロダクション「CULEN」と合流して、サイト「新しい地図」を9月22日に立ち上げ、芸能活動再開の号砲を鳴らしたのです。
 新体制で最初の大きなイベントとなったのが、ネットTV『稲垣・草なぎ・香取3人でインターネットはじめます「72時間ホンネテレビ」』(AbemaTV)への3日間の生出演。ネット番組なので、視聴者は断続的に替わっていったはずですが、延べで7400万回ものクリックが記録され、ネットテレビ視聴の新記録となりました。
 地上局テレビの視聴率は、1%だとしたら関東地区では40万8,000人の視聴者数と推定できるそうです(『視聴率ハンドブック』株式会社ビデオリサーチ)。ですから7400万回クリックというのは、7400万人が見たということではないのですが、それなりに大きな数字なのでしょう。世間の「SMAPロス」が大きかったことが窺えます。

■「SMAP」という大ブランド、「新しい地図」という新ブランド

 SMAPは5人グループでしたが、「新しい地図」は3人です。昨年からの動きは、ビジネスでいうブランドの考え方で理解できる側面があるかもしれません。
 「SMAP」というのが、5つのケーキを詰め合わせ商品だと考えてください。5つのケーキはそれぞれに個性があり、いずれもおいしいものでした。それらのケーキは単品でも売られることもありましたが、消費者は全体の商品名「SMAP」というブランドで強く印象付けられていました。
(この項 続く)

2017年11月28日火曜日

【日馬富士暴行】貴乃花親方の行動は完全に正しい、日馬富士は即刻引退させるべき(4)

異なる部屋の力士同士の飲み会は問題だ


そして捜査は司直の手に委ねられたのだから、内部調査は非公式なことになる。警察の調査結果を待つのが正しい。詳細が警察によって明らかにされる前に、つまり立件される前に、加害者の日馬富士は引退させてしまうべきだ。会社なら、わかっている事実だけで懲戒解雇とすべき事案である。引退させることで、横綱の逮捕という不祥事(これこそが相撲道にとってあるまじき不祥事となる)を避けられる。相撲協会の早急な英断が望まれる。

 事件はモンゴル力士会が巡業先で開いた親睦会で起こったという。白鵬が貴ノ岩の生活態度について注意しているときに、貴ノ岩のスマホが鳴り操作したので日馬富士が激昂したというのである。貴ノ岩は平素はこの集まりからは距離を置いていたという。

 相撲という格闘競技で、そもそもこんな集まりがあるのがおかしい。確かに日本という異国に来てがんばっている同士が交流し合いたいのはわかる。しかし、大相撲は部屋別総当たり制で、基本的に他の部屋の力士とは敵同士だ。

 それが和気藹々と呉越同舟してしまったら、それこそ八百長の温床といわれかねない。事件を起こしたときに白鵬と日馬富士が発揮して醸成しようとしたのは、貴ノ岩に対する上位関係である。そんな人間関係が強まれば、勝負の世界で影響しないことはないだろう。特定の人間関係を断ち切った上で純粋に強弱を競い合うことを目指しているのが貴乃花親方であり、その指導を受けてモンゴル人力士会から距離を置いてきた貴ノ岩が正しい。

 繰り返しになるが、貴乃花親方の選択を相撲協会内の派閥争いや次期理事長選と結びつけて貶めようとしている論調は間違っている。単純に告発されるべきは日馬富士と、いたずらに彼の処分を行わないでいる相撲協会のほうである。

(この項 終わり)

2017年11月27日月曜日

【日馬富士暴行】貴乃花親方の行動は完全に正しい、日馬富士は即刻引退させるべき(3)

貴乃花親方が速やかに相撲協会に届け出なかったこと、そして相撲協会からの初の聴取では「よくわからない」と答えたことが議論を呼んでいる。もちろん「よくわからない」はずはなく、診断書を持って警察に被害届を出したのは貴乃花親方だし、その際に事件の概要を説明したはずだ。

 つまり、相撲協会に対して「わからない」としたのは、相撲協会に対する貴乃花親方の不信の表明と取るべきなのだ。協会に話してもうやむやにされてしまうとか、被害届の取り下げの圧力がかかるため、協会チャネルではなく警察に任せてしっかり立件されるのを待とう、という判断だったのではないか。

 こうした貴乃花親方の行動を、1月に行われる相撲協会理事長選挙に向けた動きとしてとらえる見方には、私は与することができない。ましてや、巡業部長である貴乃花親方を次の巡業に帯同させないという動きが相撲協会にあるなど、暴行被害者側に対する不当な圧力、人権侵害となると強く警告したい。

 事件を普通の会社での出来事と置き換えてみる。平取締役(貴乃花親方)の子(貴ノ岩)が他の部の部長(日馬富士)に暴行されて入院に至った。入院する前に十数針縫う重症だったので、平取締役はあまりのことだと警察に被害届を出した。事前に社長(八角相撲協会理事長)に報告しなかったと非難されたが、社長は知ったなら、「双方の話を聞こう」「独自調査をしよう」「何より警察沙汰にはしたくない」と動くのではないか。社長の覚えが悪くなるかもしれないが、うやむやにだけはしたくない――。そういうことだったのだ。

(この項 続く)

2017年11月26日日曜日

【日馬富士暴行】貴乃花親方の行動は完全に正しい、日馬富士は即刻引退させるべき(2)

事件後、貴ノ岩が日馬富士に謝罪したとか、2人が和解の挨拶をしたなどといわれているが、それは瑣末なことであり、あるいはうわべのことと理解すべきだろう。被害届提出による刑事告発という、法治国家に暮らす国民として公式な手続きを踏んだことが、被害者側の正式な対応として受け止められるべきだ。

 被害を受けた後に貴ノ岩が巡業に参加していたこと、通常どおり日常生活を送っていたことが指摘されているが、診断書が異なる医師から2通も提出されていることは絶対的だ。診断の日時がずれているので所見が異なるところもあるが、傷害の存在については共通している。

 交通事故の場合でも、直後無理して行動していた被害者が、やがて自覚症状が強まり動けなくなったという経過は珍しくない。傷害によって休場を余儀なくされたばかりか、入院したという状況を素直に受け止めるべきだ。そして、それは重大なことだ。

殴られたら、まず警察へ行く



 事件を受けて、貴乃花親方が警察に被害届を出したことに批判的な論調がある。東京相撲記者クラブ会友の杉山邦博氏は、16日放送の『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)で、次のように指摘した。

「貴乃花さんは巡業全体を掌握すべき立場です。その過程で起きた出来事ですね。警察に被害届を出した事実がある以上、重役として協会トップはじめ、親方や理事らに相談や報告するなり、話を通していないとおかしいんです」

 確かに警察への届け出の後に速やかに協会に報告しなかった、というのは謗りを受けざるを得ないかもしれない。しかし、一部に「まず協会に届け出るべきだった」という論調があるのは首肯できない。暴力沙汰は犯罪なのだから、まず司法に駆け込む、というのが市民の取るべき第一行動だ。実の両親を亡くし日本という外国で精進してきた貴ノ岩にとって、貴乃花親方夫妻は両親同然、親方にとっては子同然として貴ノ岩を大事に育ててきた。子供が入院するほど殴打されたら、まず警察に行く、というのがあるべき対応ではないか。

 法的事象は所属組織の規範に優先するのだが、所属する組織や会社に相談すると、外聞などを気にしていろいろな思惑でもみ消されるリスクがある。近年重視される内部告発も、第三者的な受け皿が必要とされるゆえんだ。

(この項 続く)

2017年11月25日土曜日

【日馬富士暴行】貴乃花親方の行動は完全に正しい、日馬富士は即刻引退させるべき(1)

貴乃花親方(写真:日刊スポーツ/アフロ)
横綱・日馬富士が平幕の貴ノ岩に暴行した事件で、相撲界が揺れている。

いち早く警察に被害届を提出して刑事立件の可能性を選んだ貴ノ岩の貴乃花親方の行動を疑問視、あるいは非難するような論調も多く見受けられる。また、ビール瓶による殴打の有無、貴ノ岩の症状の評価についても情報が錯綜している。

 しかし、この問題の根本は単純に考えたほうがいい。つまり、暴力の有無と、角界最高権威である横綱の尊厳だ。日本相撲協会内での理事長選挙との関連など、派閥争い的な見方を絡ませると問題の本質が見えなくなってしまう。基本的に、貴乃花親方の対応は正しかった。

真相は藪の中だが、わかっていることで十分だ


当初、殴打がビール瓶で行われたと報道され、大いに驚かされた。未確認報道のなかには、日馬富士が激昂してアイスピックを手にして、それは制止されたというものまであった。ビール瓶の使用については、白鵬が「それはなかった」と証言しているが、警察が居合わせた全員から聴取を進めているというので、早晩明らかになるだろう。

 日馬富士自身は、とりあえず殴打を認めている。この事件で重要なことはただひとつ、「横綱という角界最高位にある者が暴力事件を起こした」ということなのだ。これだけで、日馬富士は引退に値する。以前に横綱・朝青龍が暴力事件を起こし引退したのと同じ構図だからだ。

(この項 続く)


2017年11月23日木曜日

「りらくる」爆成長の驚異的経営…セラピストの自由過ぎる働き方(5)

セラピストの稼動はシェアリング・エコノミー・モデル



――時間単価が安いので、セラピストさんの手取り、あるいは月収はどんなものなのでしょうか。
出上 セラピストとは雇用契約ではなく、業務委託契約としています。ですから、皆さん個人事業主で、会社としては交通費も払っていません。しかし、その代わりに詳細は申し上げられませんが、需要予測を行うことにより、セラピストが実働できる稼働率を高めるようにしています。

――1万2,000人以上も稼動しているということは、そんなに割が悪いわけでもない、と。
出上 セラピストさんの取り分はだんだん上がっていく仕組みになっていまして、ベテランになると1時間2,980円単価のうち、ずいぶんの額を受け取れるようにしています。なかには月に80万円稼ぐセラピストさんもいまして、サラリーマンの旦那さんより稼ぐ奥さんのケースでは、その旦那さんのほうが会社を辞めてしまって当社のセラピストに転向したという例もあります。

――指名することもでき、その場合は指名料がありますね。
出上 はい。下限は200円からで上限はなく、その指名料はセラピストさんが自身でそれぞれ決めるんですね。腕がよくて自信があるヒトは高く設定しています。指名の多さのランクを店ごと、そしてサイトでは全国規模で前月のランキングを発表して、お客様に参考にしていただきつつ、セラピストの励みにしています。

――セラピストの動員について、とても深いノウハウがあるのですね。
出上 セラピストの業務時間と、お客様の来店予想とのマッチング・モデルだと思っています。その意味ではウーバー・イーツと同じようなシェアリング・エコノミー的なアプローチだと思います。

――シェアリング・エコノミー・モデルだと「誰でも参加できる」ですか?
出上 1万2,000人以上登録しているセラピストの年齢は18歳から74歳まで広がっていますし、65歳以上が200名近くいます。外国籍の方も200名以上登録しています。

(この項 続く)

2017年11月22日水曜日

「りらくる」爆成長の驚異的経営…セラピストの自由過ぎる働き方(4)

――育成期間中は無給ですね。
出上 無給ですが、レッスン費用も徴収しません。実務に入ってからも希望があればフォローアップ・セミナーを無料で受けられます。

――技術の上達に力を入れているのですね。
出上 ちょうど10月27日に日本リラクゼーション業協会主催の「リラクゼーションコンテストJAPAN2017」があって、当社は2位に入りました。
 
――私がやってもらったセラピストの方には、前職がSEでまだ40代の方がいましたし、定年後にこれを始めたという方もいました。
出上 主婦の方もいますし、学生の方もいます。年齢も国籍も問いません。副業としていただいてもいいし、出勤時間も自由なんです。就業の自由度を最大として、それへのハードルを下げる形態としています。

――セラピストの方にお伺いしたら、どこの店舗で働くこともできるし、出勤時間も自分で自由に選べるとか。
出上 入店希望の時間と業務希望店などを、1カ月前と1週間前に当社サイト上で希望登録してもらいます。各店ではセラピストの需要予測、いわば稼動枠がありまして、そこに先着順に入ってもらいます。関東のセラピストがお盆で九州に帰省している間は福岡で業務するということもあります。

――店ごとの稼動枠というのは、AI(人工知能)で決めているのですか。
出上 現在は本社でヒトにより決めています。いずれシステム運用の度合いを高めていきます。

(この項 続く)


2017年11月21日火曜日

「りらくる」爆成長の驚異的経営…セラピストの自由過ぎる働き方(3)

――マッサージや整体とは業態が違うわけですが、それらの先行業態での価格相場は1時間なら6,000円とかせいぜい5,000円でした。りらくるは価格破壊を行ったわけで、大きな驚きでした。いってみれば、理髪業界のQBハウス(10分1,080円、調髪のみ)がリラクゼーション業界に登場した、というような状況でした。
出上 そうかもしれません。


セラピストのバックグラウンドは多彩



――いろいろなセラピストの方がいて興味を持ちました。
出上 現在実働してもらっているセラピストの方は1万2,000名ほどいるのですが、実は専業の方ばかりだけでなく、パートの方も多いし、主婦の方も珍しくありません。

――国家資格ではないのですよね。
出上 日本リラクゼーション業協会のセラピスト認定資格を取る方もいますが、基本的には自社で育成レッスンしています。私どものセラピスト育成センターは全国で35カ所あり、そのほかに臨時も含めると約50カ所で展開しています。各拠点にはトレーナーが1人はいます。

――ずいぶん数が多いのですね。どのくらいレッスンするのですか。
出上 セラピストになりたい、という方に広く働く機会を与えたい、また当社としてはセラピストをできるだけ確保したい、という意向がありまして、できるだけ希望者の近間で育成レッスンをできるようにしています。レッスン時間としては70時間から80時間を標準として、卒業試験に合格してもらうのが要件です。

(この項 続く)

2017年11月20日月曜日

「りらくる」爆成長の驚異的経営…セラピストの自由過ぎる働き方(2)

リラクゼーション業界のQBハウス



――社名は「りらく」ですが、店名のブランドとしては「りらくる」で展開なさっていますね。
出上幸典氏(以下、出上) はい。2009年に創業者の竹之内教博(たけのうちゆきひろ)が1号店を大阪に開いたときは「りらく」屋号でしたが、16年に500店を達成したのを機会に新しいステージということで、あえて新ブランドとしました。

――リラクゼーション業界では店舗数が一番多いそうですね。
出上 11月1日現在で580店舗となり、毎月ほぼ5~6店開店しています。すべて直営店で、25年に1,000店を達成するのが現在の目標です。

――実は私は近くのりらくるで2年来、ときどきお世話になっています。お店が大きい、という印象を持ちました。ベッドの数が15ほどもある。スーパーの2階で外階段を上がっていかなければならない。りらくるが入る前は焼肉屋でしたが、車で来なければならない立地という関係もあり、撤退してしまいました。
出上 当初から出店立地としてはロードサイドで駐車場があるところ、ということでやってきました。出店コストも安くなりますし。

――確かに料金は安いですね。
出上 1号店の時から60分のコースで2,980円としています。竹之内が10年に大阪の堺駅近くの雑居ビルでリラクゼーションに入ったら、60分で3,000円だったわけです。当時としては衝撃的な価格で、竹之内は「これだったらロードサイドで展開したらうまくいく」と思い第1号店を出した、というのが経緯です。


(この項 続く)

2017年11月19日日曜日

「りらくる」爆成長の驚異的経営…セラピストの自由過ぎる働き方(1)


出上幸典氏:株式会社りらく代表取締役社長兼CEO。
1979年生まれ。広島県出身。
2001年産業能率大学経営情報学部卒業。
SEとして社会人のスタートを切り、数社で経営企画業務に従事。
2012年にりらくに入社。執行役員を経て15年5月より現職。
リラクゼーション業とは従来のマッサージと異なる業態だ。従来産業であるマッサージや鍼灸あんま指圧、あるいは柔道整復などは厚生労働省の所管監督下にある。一方、リラクゼーション業は2013年に総務省の「日本産業分類」に初認定された、新しい業態である。

 リラクゼーション業は定義として「手技と高いコミュニケーションスキルでの接客による施術サービスで、男女・年齢を問わない幅広い利用者の心と身体の癒しをサポートする産業」とされる。「手技」とは、肘から先だけを使う施術だということだそうだ。医療行為は一切行わない。

 この新進業態であるリラクゼーション業界のなかでも急成長を遂げて、現在店舗数で1位となっているのが株式会社りらくである。同社の出上幸典(いでうえゆきのり)社長に急成長の秘密を聞いた。

(この項 続く)

2017年11月16日木曜日

ビックカメラは長年かけ確立したブランドを、自ら毀損し始めているのではないか?(8)

ヤマダ電機とヨドバシカメラの業態拡大に注目



 実店舗での家電量販が頭打ちになった現状で、同業の大手各社も業態拡大に頭を悩ましている。
 ネットビジネスに注力して大きくリードしてきたのがヨドバシカメラだ。冒頭の大手各社ランキングでも売上高は5位だが、対売上高経常利益率では群を抜いて1位だ。

 取扱商品そのものの拡大という点では、ヤマダ電機の戦略に注目している。11年に中堅ハウスメーカーのエス・バイ・エルを買収し、住宅事業に参入した。住宅事業と家電販売をマッチングさせようという試みだ。同社はまた家具雑貨店も展開し、家電販売との複合的な効果も狙っている。10月31日には、なんと電気自動車事業への参入を発表した。

 いずれもまだ成果を出す段階ではないが、戦略的な動きである。ヤマダ電機については稿を改めて分析、評価してみたい。

(この項 終わり)

2017年11月15日水曜日

ビックカメラは長年かけ確立したブランドを、自ら毀損し始めているのではないか?(7)

しかし、そんなことが可能なのだろうか。流通のリアル店舗の場合、私たち消費者は店名によってブランド認知を行う。つまり店名により、その店で取り扱われている商品種類を認識、あるいは期待するのだ。何を主として売っているのかわからない「ビックカメラセレクト」では、その店名ブランドによって消費者は引き付けられない。

 ビックカメラセレクトに商品カテゴリーが混在すると、文字通り小型スーパーという認識になってしまう可能性がある。ということは、今度は同社の旗艦店舗であるビックカメラ本体のブランド・イメージに混乱を与えることになる。つまり、家電量販店として長年確立してきた「ビックカメラ」ブランドを毀損してしまうことにほかならない。

 店舗形態をビックカメラと離して物販していくのなら、ビックカメラのブランドを使わないほうがいい。また、業態が認識しやすいように、主となる商品カテゴリーを店により確立させることだ。医薬品ならドラッグストアとしてのブランドをつくり、展開する。既存のドラッグストア・チェーンを買収してそのブランドにより他店舗展開を図る、などだ。

(この項 続く)

ビックカメラは長年かけ確立したブランドを、自ら毀損し始めているのではないか?(6)

しかし、私は自身が昔タカラトミーに奉職していた経緯から、玩具業界には興味を持って観察してきた。正直言ってビックトイズのような狙いの専門店はいくつも出現し、いくつも消えていってしまった。

既存ビックカメラの大型店舗内に玩具コーナーがあり、子供連れの消費者の「ついで買い」を狙うなら商機があると思うのだが、専門店展開に勝算はあるのだろうか。少子化時代にそぐわない戦略選択かと危惧する。

 もうひとつの目玉が「ビックカメラセレクト」の出店だ。11月に東京・原宿に1号店を開くという。売り場面積は340平方メートルと小型スーパー並み。ビックカメラ既存店が大型であるのと対照的だ。取扱商品群も医薬品や日用品などだという。ところが、何を中心に扱うかは店によって変えて、それによって販売効率を高めるとしている。

(この項 続く)

2017年11月14日火曜日

ビックカメラは長年かけ確立したブランドを、自ら毀損し始めているのではないか?(5)

店舗ブランドの組み込みと使い分けが肝要



 本業だった家電商品の売上の減少傾向を補うべく、宮嶋社長は決算説明会で「家電製品でない商品を伸ばしていく」と意欲を示したのだが、実はそちらへの舵取りもやさしいことではなさそうなのだ。

同社の連結決算で17年8月期の「その他の商品」は計1560億円の売上を計上したが、実は前年は1500億円だったので、4%の伸張を示したにすぎない。「その他の商品」カテゴリーが同社にとってまだ始動時のプロジェクトならともかく、すでに全事業の20%を占める主要カテゴリーとなっている段階でのこの成長度数では、大いにその先が思いやられる。

 説明会で宮嶋社長は、「その他の商品」カテゴリーを伸ばしていくいくつかの戦略を述べた。

 そのひとつが、11月からの専門店「ビックトイズ」の出店開始だ。玩具についてはすでに既存ビックカメラ16店舗で扱っているのだが、11月に専門店を愛知県日進市の商業施設にオープンするという。知育玩具など小学生以下の子供向けの商品を主に販売して、祖父母層の購買を狙うという。

(この項 続く)

2017年11月13日月曜日

ビックカメラは長年かけ確立したブランドを、自ら毀損し始めているのではないか?(4)

決算説明会で発表された資料を精査すると、同グループの「品目別売上高」というテーブルが目に留まった。

前述した17年8月期の連結売上高7906億円のうち、「物品販売事業」でない「その他の事業」には135億円しか計上されていない。この数字から見ると、ビックカメラという企業は商品の量販流通業に邁進している、ブレのないグループだということがわかる。

 さて「物品販売事業」の合計は7771億円に上るが、それらは4つのカテゴリーで報告されている。

音響映像商品  1269億円 (構成比16.3%)
家庭電化商品 2489億円 (32.0%)
情報通信機器 2452億円 (31.6%)
その他の商品 1560億円 (20.0%)
※上記は物品販売事業内の構成比

 ビックカメラが販売している物品のなかで、すでに20%が家電ではないのである。「その他の商品」として報告されたのは次のような商品群だ。

ゲーム(※)
時計(※)
中古パソコン等(※)
スポーツ用品
玩具(※)
メガネ・コンタクト
酒類・飲食物
医薬品・日用雑貨(※)
その他(※)
<(※)の品目は売上100億円以上>

 これらの商品群で最大の売上は「その他」で、467億円に達している。

(この項 続く)

2017年11月12日日曜日

ビックカメラは長年かけ確立したブランドを、自ら毀損し始めているのではないか?(3)

動き出していたビックカメラの製品多角化



 家電量販店大手各社の本業の業績は、近年いずれも不調である。それは、もちろんネット通販によって実店舗での販売が大きく蚕食されてきたからである。そのなかでヨドバシカメラだけが以前からネット通販に注力しており、対売上高経常利益率でも他社を大きく凌いでいる。

 ビックカメラは12年に同業のコジマを買収し、その分13年度の売上を伸ばしたが、14年8月期の連結売上8300億円をピークに、前回の決算までそれを落とし続けてきた。

 宮嶋社長としては、ここでなんとしてもその退潮傾向に歯止めをかけて、反転攻勢をかけたいところだろう。

 そこで、店頭での販売が頭打ちになった家電商品以外の物販に活路を見いだそうという戦略なのだ。しかし、今回宮嶋社長が示した方針というのは、実は同グループのなかではすでに進みだしている動きの追認で、目新しいものではない。

(この項 続く)

2017年11月11日土曜日

ビックカメラは長年かけ確立したブランドを、自ら毀損し始めているのではないか?(2)

ところが、対売上高経常利益率で見ると、同社は5位に沈んだままだ。

1位 ヨドバシカメラ 8.45%
2位 ケーズHD   4.87%
3位 ヤマダ電機   4.22%
4位 ノジマ     3.56%
5位 ビックカメラ  2.95%
6位 エディオン   2.37%
7位 上新電機    2.13%

 つまり、経営下手という通信簿をもらったようなかたちとなった。主要商品である家電やIT関連商品の売上が苦闘している状況に対して、宮嶋社長は「家電でない商品を伸ばしていく」との戦略を示した。しかし、同社の製品多角化という戦略は機能するのだろうか。

(この項 続く)

2017年11月10日金曜日

ビックカメラは長年かけ確立したブランドを、自ら毀損し始めているのではないか?(1)

ビックカメラが10月20日に2017年8月期決算説明会を開いた。

説明会で同社の宮嶋宏幸社長は、同期の連結売上高は7906億円(対前年比1.5%増)、営業利益218億円(同0.7%減)、経常利益243億円(同5.6%増)と報告した。経常利益だけが若干の伸張を示した。

 売上高で見ると、ビックカメラは家電量販店大手7社のなかで2位の位置を保持している。

1位 ヤマダ電機   1兆5630億円
2位 ビックカメラ  7906億円
3位 エディオン   6744億円
4位 ケーズHD   6581億円
5位 ヨドバシカメラ 6580億円
6位 ノジマ     4320億円
7位 上新電機    3743億円
(ビックカメラ以外は17年3月期決算)

(この項 続く)

2017年11月9日木曜日

九州にセミナーなど

福岡では、部長を対象にした公開セミナー。

といっても、社長も出席していた。30名以上が戦略カードを使って、一日熱心に研修してくれた。

テーマは、
1.3年戦略の作り方(戦略カードを使って)
2.リーダーシップとコミュニケーション
3.組織(チーム)の作り方、モチベーション

終わりのアンケートの評点がよく、来年の出講も依頼された。来年?鬼が笑う?生きていれば?

もう1日、小倉で個社のコンサルをして帰った。

2017年11月2日木曜日

みずほ総研で部長研修(公開セミナー)

秋、ということで幾つか公開の1日セミナーの講師を委嘱されている。

「課題解決型の戦略策定法」を1日で速習させてほしい、と言ったような依頼だ。戦略カードを参加者のそれぞれの企業事例で演習実習してもらい、その使い方を伝授するのが通例だ。

10月末のみずほ総研でのコースでは、「社長の右腕になる!『部長の指導力・行動力』強化セミナー」と銘打たれ、50名近くの参加者が来てくれた。

この後も、年末に向けて同様なコースを別主催者で何回か。

2017年11月1日水曜日

イオン、過去最高益の「知られざる内実」…本業・流通業の利益はゼロに等しい状態(8)

「目標設定」の次に「課題の認識」が戦略策定のステップとしてくる。このとき、「重要課題」は先に設定された「目標」と連動する必要がない。というより、連動させてしまうと、それぞれの課題が持つ重要性とは関係なく「重要課題」が認識される弊害がある。「目標」とのつながりが意識されないほうがいい。

 イオンの場合、「グループ事業構造の改革」「事業基盤の刷新」などが目標設定に先立って重要課題として列挙されたのであるが、それはそれでいい。「重要課題」の定義は「それを解決、克服できれば業績の大幅な改善や伸張につながると期待できるもの」だからである。

 設定した「重要課題」の個々に対して、今度は「解決策-アクション・プラン」を考える、というのが「課題解決型の戦略策定法」の定番だ。イオンの場合は図らずもこのステップを進んでいるように見えなくもない。問題は、同グループのビジネスの基本構造-ビジネス・モデル-がすでに大規模流通業ではない、ということを経営陣が共通して認識しているかだ。

 現状の利益構造に対して、流通業大手として邁進してきた役員の皆さんが意図しなかったビジネス・モデルの変容に対して何かコンプレックスを感じたりして、原状回帰あるいは祖業のテコ入れなどを企むと、それは失敗してしまうだろう。

(この項 終わり)