『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか?』(あさ書房)
クラスでは、本書の第3章と第6章だけを課題対象とした。それぞれの章に報告者を前講で指名してある。報告者以外のクラス生は1週間前までに感想文をクラス共通のFaceBookに張り出してもらった。これも、所定の用紙があり、かつそれはA4で1ページを超えない、とも指定されている。
クラスでの報告と討議は、第3章と第6章それぞれ30分ずつ、計1時間を当てた。今回は、報告者も含めて実際に成城石井を視察、買い物をしてきたクラス生もいて、活発な書きこみ、クラス討議となった。
そのセッションが終わり、休憩時間をはさんで、登壇してもらったのが事前告知しなかった「シークレット講師」である。特別講義があることさえ、周到に伏せておいた。
突然の著者の登場により、その後の1時間半はとても刺激に満ちたクラス展開となった。
(この項 終わり)
上阪徹氏はブックライターとして200冊以上の書を上梓している。著名な経営者による本の目次の最後に小さく「編集協力」としてお名前を見かけることが多い。
およそ世の経営者は本など書く技量も時間も持ち合わせてない人が圧倒的に多い。しかし、経営者本や企業本が巷に溢れているのは上坂さんのような専門ライターのおかげである。
経営者ブートキャンプは2月20日(土)に第12期の第6講を迎えた。全7講で、後は最終講の戦略発表会を残すのみとなった。
この日の事前課題図書は『成城石井はなぜ安くないのに選ばれるのか?』(あさ出版)。すでに7刷りを数えて読まれている。
(この項 続く)
三洋電機が来た道
シャープの業容の推移を見ていると、三洋電機の栄枯盛衰を思い出す。三洋は一時年商2兆円、従業員数10万人規模を誇った。それが11年にパナソニックの子会社として吸収され、今では社名も残っていない。シャープも機構案ではいずれ切り刻まれ、事業ごとに別の会社と統合され、名前も残らなくなったであろう。一方、鴻海の支援を受け入れれば、社名やブランドは残るだろうが台湾企業となる。三洋の白物家電部門が中国ハイアールに吸収されたのと同じ構図だ。
私は15年2月の別の連載「展望!ビジネス戦略」で「赤字転落のシャープ、17年までに消滅の危機」とした。そのなかで、高橋社長のことを「心もとない高橋社長のリーダーシップ」とも酷評した。三洋電機も思い起こせば、解体消滅したときにはジャーナリスト上がりの「けったいな」女性社長が登板して、力を発揮することができなかった。高橋社長も「シャープのけったいな企業文化を変える」として立ちすくんで来てしまったままだ。
軽井沢事故の教訓は、「バスが曲がり角に差し掛かったときに不適な運転手が搭乗していると恐ろしい」ということだった。シャープも大転倒しないことを祈る。
(この項 終わり)
官民ファンドは手を引くべき
機構側がこの期に及んでまだ意欲を示しているのが不可解だ。機構案では、液晶部門のジャパンディスプレイとの統合に加え、家電事業は東芝の家電事業と統合するなど、シャープを解体して電機業界再編の目玉にする意向だ。それを機構側では「われわれが入れる資金は、成長投資にしか使わない」(志賀俊之会長兼CEO)としているが、統合により設備過剰の弱者連合になるなど、ダイナミックな成長は期待できない。
さらに、機構が出資するカネの色合いが問題となる。つまり、それはもとを正せば税金ではないか、という点だ。成長企業の育成という使命を掲げて設立された機構が、公的資金を使ってゾンビ企業を永らえさせるのが正しいことなのか。
機構案では、さらにシャープに貸し越している2銀行に多額の債権放棄を求めている。銀行といえども一事業会社だ。放漫経営を続けて苦境に陥った事業会社を救済するのに、なぜ銀行という民間金融機関が大きな損害を受けなければならないのか。
「そんなことは必要がない」とする鴻海が出てきた以上、機構が従来のスキームを通そうとすることはまったく説得力がない。志賀会長は「引き下がったわけではない」としていると伝えられるが、お引き取りをいただいたほうがよい。
(この項 続く)
さらに2月12日にシャープは臨時取締役会を開き、機構とも出資など支援策の受け入れに向けた本格的な交渉に入ることを決めた。
鴻海と機構との間で高橋経営陣は右顧左眄(うこさべん)しているとしか思えない。婚約希望者をじらしているかぐや姫はそのうち月に上ってしまった。
2月5日のその時点で結論はおろか、方向も示すことができなかった高橋社長を含むシャープの経営陣が、2月29日までにきっぱりとした決断を出せるのか、大いに見ものである。
シャープが今回もし鴻海を取り逃がしたら、高橋社長は「2016年ワースト経営者」の有力候補となる。現にその候補資格を有していると、多くの識者が見ているのではないか。
(この項 続く)
ところが、その1時間後にシャープは「鴻海に優先交渉権を与えた事実はなく、2月29日まで交渉を続けるという合意をしただけだ」という発表を行った。これは、台湾人が大切にする「面子」を真っ向から潰すようなことだ。
2月5日の郭董事長とのサシの交渉で、高橋社長が最終決定を出せなかったことは理解できる。シャープは上場している株式会社なので、このような重大事案について取締役会での議決を経なければ、その場で高橋社長が結論を示すことは許されないからだ。
しかし、状況を考えてみれば、年商15兆円規模を誇る世界有数の企業グループの総帥が1週間の間に2度も来社し、機構が提案していた支援策よりも大幅に有利な案を示したのだ。「提案を感謝して、真摯に検討し前向きな結論を目指したい」というような対応が、なぜ取れなかったのか。
(この項 続く)
オーナー経営者とサラリーマン社長
風向きを変えたのは、1月30日に鴻海の郭台銘(テリー・ゴウ)董事長がシャープ本社を訪問して、大胆な提案をしたことだった。6000億円とも7000億円ともいわれる支援提案をし、これにより銀行の債権放棄は要請しない、とした。またリストラや経営陣の退陣も求めないとした(のちに「40歳以下の社員の雇用は守る」と後退)。
2月4日に開いた2015年度第3四半期決算の記者会見で、高橋社長は鴻海案を前向きに取り上げ「(鴻海案にが)一番リソースを掛けて検討している」と、一定の評価を見せた。
これを受けて、郭董事長は急遽再来日を果たし、2月5日にはシャープ本社で出資交渉を行った。8時間以上に及んだ交渉直後、郭董事長は記者団に「交渉は9割乗り越えた。あとは法的な問題だけだ」と合意は時間の問題だとして、合意文書で郭董事長と高橋社長がサインした部分まで示して自信を見せた。
(この項 続く)
シャープ再建のパートナーは台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業となるのか、官民ファンド・産業革新機構(以下、機構)となるのか――。
2月29日までにシャープは鴻海の提案に答えを出すとしているが、高橋興三社長が率いるシャープの経営陣は本当に答えを出せるのか、私は疑っている。
1月末段階でシャープへの出資者として有力だったのは機構だった。機構は3000億円規模の出資をする代わりに、シャープに多額の融資を行っているみずほ銀行と三菱東京UFJ銀行に対して債権の一部放棄を要求していた。また、現経営陣に対しても退陣を求めて、社員のリストラも必要だとしていた。
シャープの液晶部門を機構が出資するジャパンディスプレイに統合することにより、技術の海外流出を防ぐという大義名分を掲げた機構案が有利と見られていた。
(この項 続く)
また、その戦略的な重要性をヤマダも認識しているようで、中古家電の再販店舗を今後2年程度で現在の15店から3倍の50店規模に増やす意向だと報じられている。
そして人を替え
ヤマダの最大の戦略転換は、山田氏の社長退任だろう。1月21日、創業者で現社長の山田氏(72歳)が会長に退き、4月1日付けで桑野光正常務(61歳)を社長兼COOに就任させる人事を発表した。山田氏の甥、一宮忠男・副社長(60歳)は副会長兼CEOとなる。
新体制では、山田氏が住宅関連などの新規事業、一宮氏が構造改革、桑野氏が人材育成を分担する。山田氏の息子である山田傑取締役(41歳)には社長を継がせない方針も明らかにされた。また、一宮氏は13年に業績不振のため、社長から副社長に降格されたという経緯があった。
創業カリスマ経営者の山田氏が一歩退き、トロイカ体制でしばらく歩むことになったヤマダ。一度は成長のピークに達してしまったかに見える同社を、これからトロイカ経営陣はどのように再成長させていこうとしているのだろうか。大きな挑戦のフェーズを迎えた。
(この項 終わり)
リユースに本腰
YAMADA IKEBUKUROで私が特に注目しているのが、店名にタックス・フリーと並んで「アウトレット・リユース」が前面に出されていることだ。地下1階には高級ブランド品の買い取り・販売の「ブランドオフ」が出店した。また、3フロアを使って、魅力的な価格の「アウトレットコーナー」とヤマダ電機グループの自社工場で洗浄から点検までを行った「リユースコーナー」を導入した。この結果、同店では新品の家電と中古品の家電(携帯電話やPC関連の中古品もある)の両方が手に入ることになる。
中古品のほうが価格が低いので、高額な新品の販売を阻害すると危惧されそうだが、その心配は少ない。リユース品の荒利は一般的に高率となるからだ。たとえば、専業で最大手のハードオフコーポレーションの15年3月期の対売り上げ経常利益率は、10.5%にも上っている。
ヤマダは中期経営計画で20年3月期に1014億円の営業利益を目指すとしたが(16年3月期予想は607億円)、それを実現する大きな可能性の部分としてリユースビジネスがあると私は見ている。
(この項 続く)
目新しい点を挙げれば、まず1階には日本最大のコスメ・美容の総合サイト「@cosme」とのコラボによる「@cosme×YAMADA Beauty station」が配置された。既存店で好評のパウダールームやフィッティングルーム、無料ネイルお手入れコーナーも併設されている。2階は訪日外国人向けのフロアだが、家電だけでなくギフト、雑貨、医薬品まで展開している。もちろんフロア案内は、日本語、英語、中国語、韓国語の4カ国語でなされている。
他のフロアでも時計や調理器具など、従来のヤマダの店舗からは「一歩外れた」高額商品を扱っている。7階はGUNDAM専用フロアとなっていて、ニッチなマニア・マーケットを狙っている。
こうした店舗づくりの狙いは、高額品の販売、そして大きな利益の確保であることは明らかだ。「なりふり構わず」ということだが、もちろん悪いことではない。むしろ大胆なマーチャンダイジング・シフトとその挑戦意欲を評価したい。
(この項 続く)
店を変え、品を変え
15年11月に発表された中期経営計画では、今後出店ペースは年間8~10店に抑える一方で、白物家電売り場の拡張などをはじめとする店舗改装は、今後も年間200店ペースで実施していく方針だ。しかし、実はヤマダの出店戦略はそれ以上に大きく舵が切られている。
まず、15年10月末に東京・八重洲にオープンした「コンセプトLABI東京」だ。米アップルやソニー、パナソニックの商品だけを集めたコーナーが設けられ、メーカーのショールームと見まがうようなフロアでは、最新のAV機器など高額商品がずらりと並ぶ。また、インバウンド外人顧客を狙ったフロアなども構成され、富裕層や爆買い観光客をターゲットとしていることが明白で、従来のLABI店とはまったく異なる店舗構成である。
さらに2月5日には、「YAMADA IKEBUKURO アウトレット・リユース&TAX FREE館」をオープンした。この店舗はもちろん家電やPC関連も扱っているが、総合家電店としてのイメージを一新する複合業態店舗となっている。
(この項 続く)
「ヤマダ電機は全国に1016店舗を展開する。(略)人口3万人規模の市に1万世帯が生活しているとしたら、1世帯あたり年間19万円程度(ヤマダで)消費している計算が成り立つ」(14年12月12日付記事)
同記事が山田昇・ヤマダ社長兼CEOの目に留まったとも伝えられるが、15年春に電光石火の大量閉店となった。私は「そんなことができるのは、創業社長である山田氏ゆえだろう」と評価したが、山田社長自身も「(出店による規模拡大は)もう限界ですよ。店を出せば出すほど効率が悪くなる」(12月11日放送『ワールドビジネスサテライト』<テレビ東京>)などと、認識の変化があったことを公言している。
(この項 続く)
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ヤマダ電機 本社 |
ヤマダ電機の動きが急だ。2月4日に発表された2015年4~12月期の連結決算は、純利益が前年同期比87%増の262億円と様変わりした好調さだった。この期間の利益改善は、売り上げの上昇によるものではない。売上高は3%減の1兆2052億円だったのに対し、営業利益は2.4倍の430億円と、利益効率が大幅に改善されたのだ。
ヤマダは昨春来、既存約300店の改装を一気に実施し、白物家電の売り場面積を大幅に拡大した。結果、商品構成率でエアコンが上半期で前年同期から0.7ポイント増の9.8%に、冷蔵庫は同0.6ポイント増の9.3%、洗濯機は同0.7ポイント増の6.4%といずれも増加した。
しかし、既存商品や売り場構成といったマーチャンダイジングなどの小手先の変化に目を奪われると、ヤマダが目指している大きな戦略転換を見逃してしまうことになる。業績回復となった最大の要因は、昨春に断行された不採算店40店強の閉店である。本連載では14年からヤマダの出店拡大戦略が限界にきたことを指摘していた。
(この項 続く)
経営者ブートキャンプの第12期は、1月30日(土)に第5講を行った。全7講なので、いよいよ終盤に来た。最終講での戦略発表会へ向けて、参加者の意欲はいや高い。
10時から5時半まで、全日のクラス・カリキュラムの中で、この日の白眉は特別講師の井上和幸氏。人材会社である経営者JP社の創業社長であり、日本ヘッドハンター大賞を連続受賞するなど、「日本一のヘッドハンター」として知られる。ご著書もすでに10冊を数える。
井上さんがクラスで「採用」について話し、ブートキャンプの常として質問が多く出て、あっという間に1時間半が過ぎてしまった。準備してきてくれたスライドの残りは「リーダーシップ」だったので、私が提案して次の回のクラスでまた40分話してもらうこととした。
クラスがスイングして楽しいセッションだった。次回も期待。