◆経営幹部を最大限に活用する
私が社長を務めた会社は、幸い、いずれも業績を大いに改善したので「再生請負経営者」などと呼ばれたりした。
そんな異名から、私のやり方が、着任するなりそれまでの全てを否定して、ただちに革新的な新機軸を立ち上げて果断に実施させるようなものを想定されることがある。つまり田中角栄のように剛腕で獅子奮迅の、ブルドーザーのごとき経営者像である。
しかし実際には、私自身はあまり働かない社長だった。自分のライフ・スタイルもあったのだが、とにかく可能な限り「部下に、誰かにやってもらう」ということを企図按配していた。
その要諦は、経営幹部たちの力量を最大限に活用するところにあった。社長に次いで重要となるのが「エンジン」たる幹部たちなので、ここをうまく構成することが大切だ。
私は着任すると、幹部のおよそ1/4を更迭し、1人か2人を外部からスカウトし、末席に部長クラスから2名ほどを抜擢することを例としてきた。こうすると「石」が除かれ、「玉」の原石が入り、外からの刺激が適度に加えられるのだ。
社長に着任して気づいたのは、経営幹部たちの能力の偏りだ。会社の中では有能な人たちなので、そこまで出世してきている。実績も貢献も積んできて、リーダーシップやコミュニケーション力では秀でているわけだ。
しかし、「戦略力」には欠けている。会社を取り巻く状況が変わっているのに、「新しいやり方」に頭を巡らすことができない。「この道20年」という幹部ほど「成功の復讐」に囚われてしまって、大胆な発想が苦手な人が多かった。場合によっては、部下が提案してくる方向転換への頑迷な抵抗勢力になってしまう。
「経営を見直す」には、まず、「経営チームを見直せ」ということだ。
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