プレジデント社2004年刊。著者はITTのCEOを長年務め、同社を巨大コングロマリットに仕上げただけでなく、58四半期に渡って連続増益させた。文句なしの名経営者。
ここでは、しかし解説をくわている柳井正(ご存知ファーストりテーリング社長)の「入れ込み具合」について感想を。帯で、柳井は「私の最高の経営の教科書」とまで持ち上げ、長い前書きと小冊子になるくらいの巻末解説を寄せている。
柳井の長文の解説を読んで、柳井とジェニーンの「相性の良さ」が理解できた。文章に表れている。
柳井の文章は、これだけの大会社の経営者にしては珍しくと言ってよいほど読みやすく、切れがある。柳井がとても明晰でそれを著わす(他に伝える)ことに優れていることは明らかだ。
ジェニーンの方も、概念の整理とそれの分派をきちっと説明できるという点で、言語的に優れている表現者だ。たとえば、「事実」という概念も経営の現場では
「表面的な事実」
「仮定的事実」
「報告された事実」
「希望的事実」
の違いがあるとし、それらを説明し分けている。まことに犀利な言い分けだ。
経営の現場でそれらのことは「起こっている」が、それらの現象の異なり具合に気づき、表現し分け、それぞれについての注意ごとなどにまでに「言と分け」できる経営者などそうそういるものではない。
柳井が、自分のやはり稀有な資質上の先達者としてジェニーンの本を発見し、それに心酔していったところが、私も「表現する経営者」として良く理解できる。この二人は同類項なのだ。
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