日本郵政は大型M&Aから手を引いたほうがいい
野村不動産HDの買収を断念、トール社買収でも失敗、根強い「お役所体質」
2017年3月期の決算発表をする日本郵政の長門正貢社長(左)と市倉昇専務=5月15日
トール社買収でやけどした日本郵政に慎重論
今回の買収案件は、シナジー効果があまりなかった、と私は見ている。確かに日本郵政もグループとして多数の不動産を有しているが、その大部分は小店舗サイズの郵便局だ。一方、野村不動産HDは大型マンションの開発や管理を主要業務としている会社である。駅前の小さな郵便局の土地にマンションを建てるわけにいかないし、その小さな郵便局の管理を大手である野村不動産HDに委託するメリットもない。
野村証券は、日本郵政が2015年に上場したときの主幹事という縁があった。大型M&Aを実現したい日本郵政がその縁にすがったという、「投資有りき」で始まったディールなのだ。
日本郵政が大型M&Aを希求したのには、今同社が置かれている状況、タイミングがある。今年1月に政府が日本郵政株の2次売却を決定したのだが、それには15年に初上場した売り出し価格1.400円を市場価格が上回っていなければならない(6月20日終値1,387円)。
ところが、日本郵政は17年3月期で初の最終赤字289億円を計上してしまった。一方、野村不動産HDの同期純利益は470億円だったので、同社を取得して日本郵政の財務を大幅に改善しようともくろんだわけだ。
(この項 続く)
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