2016年10月30日日曜日

出光の合併を阻止し株主に損をさせる創業家は、経営合理性も「義」も欠如している(7)

全国出光会のアプローチに対しても、昭介氏は面談の扉を開けようとしていない。いわば「聞く耳を持たない」。これはしかし、同社が創業以来標榜してきた大家族主義と大きく異なる対応ではないだろうか。この頑なな態度で昭介氏は大家族からの「信」を失っていると知るべきである。


 全国出光会が仲裁に乗り出したのを契機に、創業家側は扉を開き、矛を引くタイミングとすべきである。


 経営は現役経営陣に任せるとして「よきに計らえ」とするのが、世に尊重される大オーナーというものでないだろうか。それが、創業家に残った「名」を残す、輝かす途ということになるだろう。


「名誉会長がハーバード大学に入ったのは英邁なことだった」

 こんな称賛を今後、出光社員から聞くようなことはあるのだろうか。

(この項 終わり)

2016年10月29日土曜日

出光の合併を阻止し株主に損をさせる創業家は、経営合理性も「義」も欠如している(6)

株主資本主義では「最大株主は会社を潰してもよい」とされるが、実際にはステークホルダーのことを慮るべきだろう。

合併延期の発表により10月13日、出光の株価は前日比6%安、昭和シェル株は5%安と急落した。創業家が合併反対を打ち出して以来、両社の時価総額は約460億円減少している。つまり、多くの株主が損失を被っている。

 9月に入り、出光の販売店組織「全国出光会」が合併に賛成の立場を表明し、創業家と経営者側に話し合いの再開を要望した。経営合理性という観点から創業家はその論点の「理」を持たないとしたら、創業以来取引のある販売店の離反により、「義」を失ったというべきだろう。

(この項 続く)

2016年10月28日金曜日

シグニアムインターナショナル(株) 創立20周年

福居 徹 氏
シグニアムインターナショナル(株)の20周年記念パーティに招かれて行ってきた。久しぶりにとてもハイブローで豪華なパーティだった。リッツカールトンで、ということでドレスコードの指定は無かったが、皆さんそういういでたち。200名ほどのうち、西洋人の男女出席者が40名近くもいただろうか。
 
創立者の福居徹社長は、日本のエグゼクティブ・サーチの草分け的なレジェンド・ヘッドハンター。シグニアムを創業する前は、東京エグゼクティブ・サーチ(通称テスコ)の副社長を長い間なさっていた。学習院の先輩、とは後に知ったことだ。
 

箱田 忠昭 氏
1983年の正月、MBA留学から一時帰国していた私は、箱田忠昭氏に面接された。箱田さんはそのときポラロイド社の採用コンサルというお立場で会ってくれた。

箱田さんに即座に落とされたのだが、箱田さんがその場で福居さんに電話を入れて私を紹介してくれた。そして、お説教された。

「山田さん、転職するなら横に跳んでは駄目です。縦に、上に跳びなさい」

それから私の外資転職人生が始まったのだ。あれから、33年を数える。箱田さんもパーティに来ていて、壇上に呼ばれて福居さんを囲んで鏡割りをなさっていた。


こんな人たちに育てられてやってきた。


出光の合併を阻止し株主に損をさせる創業家は、経営合理性も「義」も欠如している(5)

君臨して統治しないのが大オーナーの矜持


 しかし、昭介氏のこだわりは率直にいえば過去の栄光を求めているに等しい。長く大手同族企業の旗頭だった出光は、06年に上場公開された。それは、昭介氏の後任社長として同族でない天坊昭彦社長(当時)によって実現された。

 昭介氏はそれ以前、01年に代表権のない名誉会長に退いていたので、その立場は同社の上場により、「最大株主グループである創業家を代表する」という「実質オーナー資本家」に変容して今日に至っている。

 今回の合併については、ビジネス上の合理性、つまり規模の拡大、コスト削減、経営効率化などのメリットが、両社の経営陣から繰り返し報告された。そして、2社による合併可能性の討議を通じて十二分に精査された結果、現下の状況で最善策として合意されたものだ。

 創業家は合併反対の理由として、両社の企業体質の違いを挙げる。このほかには、イランと親密な関係を持つ出光が、サウジアラビア国営石油の資本が入る昭和シェルと合併することは、両国が対立する状況下では不適当だとしている。しかし、両社が説明する合併による経営合理性について、個々の要素を創業家側は取り上げていないし、判断も示していない。
 

(この項 続く)

2016年10月27日木曜日

出光の合併を阻止し株主に損をさせる創業家は、経営合理性も「義」も欠如している(4)

ちょうど私は米国留学から帰ってきたばかりだったので、日本で高校まで過ごした昭介氏がハーバード大学に入学することは、同大学の経営大学院に入るより難しいということをよく知っていたのだ。東京大学に合格するより、ずっと至難の業である。

 当時、出光サントリーと並んで、非公開企業、つまり同族企業の最大手の一つだった。出光チームから私が聞かされた社是は「和(やわらぎ)」というもので、大いに驚いたのはこの社是により、出光には定年がない、もちろん解雇もない、そして組合もない、という特異な労使関係であり、企業文化だった。


 社員の離職率も低かったし、皆さん丁寧で、人間関係を本当に大切にしている会社だった。有名な「出光の大家族主義」である。前述した特異な諸制度は、上場した後の今に至るまで同社では受け継がれている。


 昭介氏が今回の合併話に反対を表明したのは、そんな異色の企業文化を持つ出光と、外資である昭和シェルとでは「社風が合わない」、この1点に尽きる。

(この項 続く)

2016年10月26日水曜日

出光の合併を阻止し株主に損をさせる創業家は、経営合理性も「義」も欠如している(3)

合併への対抗策として、本年8月には昭和シェル株40万株を取得するなど、昭介氏の両社合併への反対の意思は固いとみられるが、代理人として弁護士の浜田卓二郎氏を立て、自らは表に出てこない。館長を務める出光美術館は出光本社内にあるが、本案件について出光の現経営陣と面談したのは1回にとどまっているとされる。

大家族主義の社風が出光の誇りだ


 私は1984年に1年間、出光本社とビジネスでかかわったことがある。当時は米シアーズのプロジェクトを代表する立場だったので、出光側の経営中枢チームと仕事をさせてもらった。その出光チームには創業家の方もいたので、総帥だった昭介氏について尋ねると、「社長は米ハーバード大学卒業で」と誇らしげな顔で告げられ、肝を潰した記憶がある。

(この項 続く)

2016年10月25日火曜日

出光の合併を阻止し株主に損をさせる創業家は、経営合理性も「義」も欠如している(2)

出光の創業家が頑なに反対


ガソリンや石油の市場規模縮小が続くなか、業界各社は合従連衡により規模を確保・増大することで生き残りを図っている。民族派である出光と外資の昭和シェルが合併を発表したのが、15年11月のことだった。“資本の国籍”は違えど、現下の業界地図からは妥当な組み合わせとみられた。

 ところがその発表の翌月、出光創業家の出光昭介氏が反対を表明して、本合併案件は迷走し始めたのである。

 89歳の昭介氏は、出光創業者である故出光佐三氏の長男で、同社の第5代社長、そして会長を経て01年に代表権のない名誉会長に退いている。昭介氏個人としての持ち株比率は1.21%だが、創業家関連で3分の1以上の株式を保有し、合併が諮られる株主総会が開かれれば、グループとして拒否権を行使できるとみられている。

(この項 続く)

2016年10月24日月曜日

出光の合併を阻止し株主に損をさせる創業家は、経営合理性も「義」も欠如している(1)

石油元売り大手、出光興産昭和シェル石油合併に向けた協議が迷走している。出光創業家が反対しているためだ。

しかし、同社の長期的発展の視点からみると、この反対は果たして正しいのだろうか。逆にここで大株主としての“度量“を示せば、その世評は高まるだろう。


 出光の月岡隆社長と昭和シェルの亀岡剛社長は、10月13日に共同記者会見を開き、来年4月としていた合併の時期を延期すると発表した。出光創業家が現計画での合併に反対しているためとした。

 出光による英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルからの昭和シェル石油株取得は、従来どおり10~11月を予定している。2017年4月に予定されていた合併は延期するが、株式取得に向けた公正取引委員会の企業結合審査は続いているという。

出光の創業家が頑なに反対


(この項 続く)

2016年10月23日日曜日

セブン&アイ、深まる混迷と社内に鬱積する不満…「皆の意見を聞く」井阪社長の限界(8)

今回の発表でも、百貨店事業ではエイチ・ツー・オー リテイリングに3店舗が譲渡されたことが発表されたが、それ以外の店舗はどうするのか。鈴木氏が過度に傾斜していたオムニチャネル事業を単なるマーケティング・ツールへとリ・ポジショニング(転換)し、鈴木氏が「世襲への布石ではないか」と腹を探られていた主因であった次男・鈴木康弘取締役を同事業の責任から外したのも正しいことだ。

今回の発表は概ねの方向性としては正しいほうに向かっているが、当面取り組む改革としては物足りないし、18年2月月期に始まる中期3カ年計画(これも鈴木時代にはなかったものだ)で目指すことも、同グループの規模感からみれば物足りない。

 前述のとおり、「能吏でおとなしい」というのが井阪社長に対する私の印象だった。経営技法も経営計画も、結局はお人柄の範疇に収まるということだろう。鈴木氏による更迭を拒みきった“芯の強さ”を、計画展開のフェーズではぜひ発揮してほしい。

(この項 終わり)

2016年10月22日土曜日

セブン&アイ、深まる混迷と社内に鬱積する不満…「皆の意見を聞く」井阪社長の限界(7)

しかし、「皆の意見を聞いて」「一枚岩を目指す」やり方では、何も大きなことができない。そこが従業員社長として祭り上げられた井阪氏の手法であり限界であろうと私は感じた。

今回の中期3カ年計画取りまとめの中心になったとされる「改革委員会5人組」に創業家出身の役員がいるというだけで、祖業であるイトーヨーカ堂事業への包丁さばきが鈍っていることがうかがえる。

物足りない「100日プラン」


 私は4年前から、セブン&アイ・グループは祖業であるイトーヨーカ堂を売却せよ、そこで得られる何千億円というキャッシュをコンビニ事業の世界展開に投入せよと指摘してきた(15年1月31日付け本連載記事『セブン&アイ、株価下落の元凶“お荷物”ヨーカ堂を即刻売却すべき 超優良グループに変身』)。今年に入り、投資ファンド、サード・ポイントも同じことを要求した。

(この項 続く)

2016年10月21日金曜日

セブン&アイ、深まる混迷と社内に鬱積する不満…「皆の意見を聞く」井阪社長の限界(6)

「皆の意見を聞いて」の限界



「稽古不足を幕は待たない」タイミングで舞台に立たされた井阪氏は5月の社長就任時、「100日待ってくれ」「100日後に『100日プラン』を出す」と正直に告げた。これは大正解だったと思う。井阪氏は直感的に優れている経営者なのではないかと感じた。


 私自身もこれまで経営者として企業再生に入った時は、「3カ月戦略」ということをよく言っていた。「着任して3カ月目には再生戦略を立てろよ、さもなければ何も始まらないよ」ということだ。
 10月6日の発表会は、中期3カ年計画も含めて、まさに井阪氏の答案提出となったわけだ。冒頭で井阪氏は次のように述べ説明を始めた。


「グループの経営をどう舵取りするか。社内外多くの方々の話に耳を傾け、考え抜いてきた」

(この項 続く)

2016年10月20日木曜日

セブン&アイ、深まる混迷と社内に鬱積する不満…「皆の意見を聞く」井阪社長の限界(5)

 総合スーパー事業であるイトーヨーカ堂では、17年2月期までに約20店舗を閉鎖、最終的には20年までに約40店舗を閉鎖することが発表された。加えてこれまで好調とされてきたイトーヨーカ堂を核店舗とする大型ショッピングセンター「アリオ」(Ario)の新規出店も凍結する方針だという。

これらの決定に対し、「赤字幅は着実に減らしている。どうしてスーパーばかり悪者にされるのか」などと、社内にも不満がくすぶっていると報じられている(同紙より)。


「一枚岩になってやっていく」などということを、井阪社長が信じていないことを私は望む。

「そんな声には耳を貸さず、返り血を浴びてでも粛々と改革を進めていく」という覚悟がなければ、企業再生などできはしない。リストラされる可能性のある立場の事業会社と、それを判断・決定しなければならない持ち株会社の経営者の立場と覚悟は、異なるところに求められるのだ。

(この項 続く)

2016年10月19日水曜日

セブン&アイ、深まる混迷と社内に鬱積する不満…「皆の意見を聞く」井阪社長の限界(4)

セブン&アイHDはコンビニ以外に百貨店、総合スーパー、金融会社を擁する。大きな違いは、「ひとつだけでなく複数ある」ということだ。この点が、一事業会社とは決定的に異なる構造として、井阪氏に襲い掛かった。


 井阪氏の不慣れと混乱は、着任当初の「一枚岩の組織を目指す」としたことにみてとれた。その方針に従い井阪氏は、セブン&アイHD社長に着任すると、事業会社別に月1回の会合を開き、経営課題を洗い出して共に成長戦略を描こうとしてきた。ところが、「事業会社とともに一枚岩で成長を目指す」などということは、持ち株会社の経営者がやってはいけないことなのである。


 今回、エイチ・ツー・オー リテイリングへの譲渡が発表されたそごう神戸店など関西の3店舗は、譲渡されてうれしいかといえば果たしてどうなのか。一方、今回譲渡されない非戦略店舗では、リストラと経費削減が必至だ。そごう・西武の社内には「グループの中で本当のリストラに取り組んできたのはうちだけ」という不満の声が多いと報じられている(10月20日付日本経済新聞朝刊より)。

(この項 続く)

2016年10月18日火曜日

セブン&アイ、深まる混迷と社内に鬱積する不満…「皆の意見を聞く」井阪社長の限界(3)

しかし、「その席」とは「その責」でもある。

事業会社と持ち株会社、舵取りの作法が違う


 井阪氏のセブン&アイHD社長就任に一番とまどったのが、井阪氏自身であろう。井阪氏は青山学院大学を卒業して新卒入社して以来、セブン-イレブン一筋できた、典型的なサラリーマン社長である。その間、ずっと鈴木氏がグループのトップに君臨していた。井阪氏は鈴木氏の指導の下、セブン-イレブンという同じ会社で業務を遂行してきた。本格的なコンビニエンスストアとして日本でも先発的な会社で、その業態に手本とする他社はなく、ユニークな経営形態を自在に発展させてきた。


 そんな特異な会社で井阪氏は社長として近年辣腕を振るってきた。しかし、それはあくまで鈴木CEO(最高経営責任者)のもとでのCOO(最高執行責任者)としてであり、セブン-イレブンというひとつの事業会社以外にまったく経験を広げることはないままに、持ち株会社のトップに就任させられたのである。

(この項 続く)

2016年10月17日月曜日

セブン&アイ、深まる混迷と社内に鬱積する不満…「皆の意見を聞く」井阪社長の限界(2)

プレゼンの冒頭で井阪氏は前会長、つまり鈴木氏のことを改めて賞賛した。井阪氏が鈴木氏に抜擢されて09年にセブン&アイHD傘下のセブン-イレブン・ジャパン社長に就任して以来、鈴木氏の薫陶を受けてきた経営者なので、鈴木氏に比べれば小粒感が出るのは仕方がない。また井阪氏は自ら持株会社であるセブン&アイHD社長の座を狙っていたわけではない。

 今年3月に起こった同グループのトップ人事抗争は、当時会長だった鈴木氏が井阪氏を更迭しようとしたことに端を発した。好業績をたたき出し続けていたセブン-イレブン社長の井阪氏は、「辞めさせられるいわれはない」として、初めて師でもある鈴木氏に反旗を翻して、創業者である伊藤雅俊名誉会長のもとに駆け込んだのだ。

 目指した人事が否定された鈴木氏は自ら身を引いたわけだが、その結果、セブン&アイHDトップの座が空席となってしまった。井阪氏自身はこれまでの経緯からも単にセブン-イレブンの経営者でいたかったようにうかがえるが、消去法的に持株会社であるセブン&アイHDの社長に就任した。いわば「その席を望まなかった経営者」の誕生である。

(この項 続く)

公開セミナー中にあの停電!

メガバンク系の大手コンサル会社で、先週1日公開セミナーを行った。

「社長の右腕になる!『部長の指導力・行動力』」

福岡など、地方からも30名強参加。
3:40に停電となる。大規模の停電で、結局4時に中止が決定。

ほぼ1時間を残し、中止となったので、主催者が翌日全員に電話をして事情説明。なんと参加者の満足度は高かった。私にも直接のメールで参加のお礼をもらっている。

残った部分について、質問なども受けているが、ほぼほぼ終了できたことは不幸中の幸いだった。

2016年10月16日日曜日

セブン&アイ、深まる混迷と社内に鬱積する不満…「皆の意見を聞く」井阪社長の限界(1)


セブン&アイ・ホールディングス・井阪隆一社長(ロイター/アフロ)
セブン&アイ・ホールディングス(HD)が10月6日、2017年2月期の第2四半期決算および18年2月期を初年度とする中期3カ年計画の発表を行った。


 ベルサール東京日本橋で行われた発表会では、同社IR部シニアオフィサーの金子裕司氏が半期決算について説明した後、井阪隆一社長が壇上の大スクリーン横に立ち、当面の取り組みと中期3カ年計画を説明し、私は注意深く聞いた。質疑に移るまで、井阪氏はスクリーンに映し出された資料を使い、淡々と30分ほど説明を行った。

望まずに社長にされた経営者


 井阪社長の第一印象は、「おとなしいな」、そして「能吏だな」というものだった。前会長で大経営者の鈴木敏文氏のカリスマ性、そして驕慢(きょうまん)とも取られかねないスタイルとは、もちろん大きく異なる。

(この項 続く)

2016年10月15日土曜日

リーダーズブートキャンプ第1期 堂々完結

6月に開講された新生ブートキャンプは、10月15日(土)に戦略発表会を持ち、有終の美を飾った。

お名前などの表示許可を頂いた何人かのアンケート・コメントを掲げる。


戦略とは大きく考えるということを知った!

志の高い人が集まり、刺激があって良かった。講師の皆様の内容も良く、とても有意義でした。ありがとうございました。(森和平、レジオン社社長:介護事業 最優秀戦略発表賞)

ライバル社には出させたくない

経営者として支えとなる知識を頂きました。すでに経営判断のスピードの変化を感じます。経営改革を成功され続けた先生のお話は力があり、ほかの参加者の方々からも生きた知恵を学べました。(宗宮保、昭和ゴム(株)取締役)

参加者の意欲を強く感じた

自分で考え、使える戦略を創れた。課題図書からも学び、懇親会でも学んだ。(松田明 松田商工(株)副社長:鉄材加工)

受講生同士でリアルタイムな経験共有

山田先生の経験豊富な実体験に加えて、互いからの学びが大きい。(石井元 IT会社社長)

プレゼンも学べた

経営学の視点を持てるようになった。実体験に基づいた講話には信憑性が。末永く続けていただきたいセミナーです。
(原田清司 製造業取締役)

2016年10月10日月曜日

コンビニ、2強生き残りかけ最終戦争突入…ローソン、玉塚氏排除で三菱商事が直接経営(8)

「今はチーム玉塚として、みんなで肩を組んで歩いている(ローソンフランチャイズ店舗の有力オーナーの談)」(同記事)

 前任だった新浪経営が強いトップダウンによるリーダーシップとすると、玉塚経営は協調チームワークだったともいえる。そんな経営者だからこそ、いざとなれば親会社からの派遣経営者に自ら軍扇を差し出してしまったように見えるのは、その育ちのよさからなのか。放棄してしまったなら、リーダーシップも何もあったものではない。玉塚氏は「キングになれなかったプリンス」のままで終わるのだろうか。

外様である玉塚氏を遠ざけていくのがローソン経営の実態だとすると、今後コンビニ3強の戦いは、セブン&アイHD社長の井阪隆一氏、そしてユニー・ファミリーマートHDの上田準二社長という2人の個性ある経営者との戦いとしてみることができる。

 井阪氏は恩人である鈴木敏文氏を結果として放逐し、上田氏はユニーとの統合を果たした。いずれも荒事、修羅場くぐりを果たした、覚悟が決まった2人の経営者である。腰の引けた玉塚氏では勝負にならなかっただろうが、この2人に対して三菱商事流の組織経営となるローソンがどんな戦いを展開するのか。
 いよいよ天王山は近いのか。こんな企業戦争には滅多に遭遇できることはないだろう。括目して見守りたい。

(この項 終わり)

2016年10月9日日曜日

コンビニ、2強生き残りかけ最終戦争突入…ローソン、玉塚氏排除で三菱商事が直接経営(7)

親会社に外様経営者を疎む気配があり、玉塚氏本人は以心伝心で挫けることがなかったのか。難関の局面にきて、阿吽の呼吸で三菱商事側に経営権を禅譲してしまったのではないかと私は見ている。

 社長に就任したとき、玉塚氏は素敵だった。「17年度には連結営業利益1000億円を目指す」(14年3月24日社長交代会見)とした。しかし、現見込みでは720億円である。「誰とでも一瞬にして打ち解けることができる。それこそが玉塚の最高のスキルである」(「週刊東洋経済」(東洋経済新報社/14年11月22日号)と評された。

 同じ記事の副題はしかし、「負け続けたプリンス」だった。慶応義塾大学時代にラグビー部でキャプテンを務めて、学生選手権や全日本などではいつも決勝で負けてしまったことも揶揄していた。コンビニ最終戦争がやってきたまさにこの時、この修羅場で戦うことができない、そして結局勝ちきることができない経営者だったのだろうか。

(この項 続く)

2016年10月8日土曜日

コンビニ、2強生き残りかけ最終戦争突入…ローソン、玉塚氏排除で三菱商事が直接経営(6)

さらに7月末に、セブン-イレブンが近畿2府4県の店舗数で、大阪発祥のローソンを抜いて首位になってしまった。同地区での店舗数は、ローソンの2393店に対し、セブンが2433店で40店上回った(3位のファミマは2081店)。

これらのことは大きな流れ、ローソンの長期的業績からはあるいは些事なのかもしれない。しかし、「コンビニ最終戦争」とか「2強に集約」などといわれる今年、その非常時には親会社を不安がらせるには十分な出来事だったかもしれない。不安なときは内輪親族で固めよう、というのが三菱商事の意思となったのではないか。

 

勝ちきれないプリンス、大事を遂げられない経営者


 玉塚氏もしかし、この非常時に妙に引いてしまっているように私には見える。年初のあたりから「これからはオール三菱で当たろう」とか「三菱グループとしての強みで戦う」などとして、親会社というか、玉塚氏にとっては進駐軍の張り出しを願っている、誘うような言動をしていた。非常時だからこそ、「俺について来い」「我が膝下に結集せよ」「俺の言うことを聞け」という力強い言葉を出せなければ、リーダーとはいえまい。


(この項 続く)

2016年10月7日金曜日

リーダーズブートキャンプ2月期 説明会 盛況 助成金活用続出

16年2月期に始まるリーダーズブートキャンプ第2期の説明会第1回が10月7日(金)に行われた。

適格となる企業が経営者や社員を参加させると170万円以上の助成金が出るという破格のスキームもあり、多数の参加者が熱心に聴講。

その場で参加申し込みをする企業や個人も続出した。

2月に向けて、定員に達し次第締め切りとなるので第2期参加検討の向きは急がれたい。とくに助成金使用を希望する向きは、交付されるタイミングが申請時期と連動するので早目としたい。

助成金使用によるブートキャンプ第2期出願についての相談も、今後随時受け付けるという(助成金申請コンサル会社)。下記に連絡されたい。

杉山正勝氏  [Jマッチ]
m_sugiyama@jmatch.jp

2016年10月6日木曜日

コンビニ、2強生き残りかけ最終戦争突入…ローソン、玉塚氏排除で三菱商事が直接経営(5)

玉塚氏の業績は、更迭されるほどに悪いものではなかった。新浪前社長が12期もの間増収増益を達成し名経営者と謳われたが、玉塚氏もその後2期増収増益を続け、17年2月期もそれを見越している。

 しかし、今年に入り足元では悪い兆候が見られるようになっていた。

 まず16年3〜5月期(第1四半期)の連結決算は、営業収入は前期比6.2%増の1489.11億円だが、営業利益は同8.8%減の174.51億円となり、経常利益は同12.9%減の166.76億円、四半期純利益は同15.2%減の77.18億円となった。

 次に、ファミマが4月に日本郵政グループと提携した。店舗をネット通販の配達拠点に活用したり、日本郵便の荷物を受け取れるロッカーを設置したりする。ゆうちょ銀行のATMを設置すれば、集客の大きな柱になる。実は、水面下でローソンとファミマの間で、ゆうちょ銀行のATM争奪戦が繰り広げられていた。

(この項 続く)

2016年10月5日水曜日

コンビニ、2強生き残りかけ最終戦争突入…ローソン、玉塚氏排除で三菱商事が直接経営(4)

三菱商事にとっては、同社出身だったカリスマ経営者・新浪剛史氏が残していった「外様経営者」から、今回、「譜代経営者」へとスイッチして経営の距離感を埋めようとしている。「経営権の大政奉還」、すなわち資本家である親会社への大政奉還が行われたのだ。


玉塚経営、スコアは悪くなかったが


 玉塚CEOと竹増COOの業務管掌を見ると、玉塚氏が国内のコンビニ事業、竹増氏がM&A新規事業や海外事業となっており、通常のCEOとCOOの立場が逆転している。しかも「国内のことは玉塚会長と私とで並んで見る」と竹増氏は述べている。


 トップ人事が2頭体制ではなく、竹増氏への経営権の傾斜ということが読み取れる。それでは、玉塚氏は実権が薄れる方向へ退けられたのか、あるいは自ら逃げ込んでしまったのか。おそらくその両方だと私は思う。

(この項 続く)

リーダーズブートキャンプ2月期 説明会迫る!

 リーダーズブートキャンプ

17年 2月期開講 決定
詳細:
http://senryaku.p1.bindsite.jp/pg173.html


説明会10月7日(金参加費が無料となる政府助成金についても
申し込みは今すぐ!
http://www.eventbook.jp/join/1877

説明会10月13日(木)参加費が無料となる政府助成金についても
申し込みは今すぐ!
http://www.eventbook.jp/join/1880

2016年10月4日火曜日

コンビニ、2強生き残りかけ最終戦争突入…ローソン、玉塚氏排除で三菱商事が直接経営(3)

「コンビニは2社しか生き残れない」とは、ユニー・ファミリーマートホールディングスの上田準二社長の持論だ。そうだとしたら、ローソンにはまさに危急存亡の鐘が鳴り響き、親会社としてはなりふり構わないトップ人事と資本政策を展開し始めたとみるべきだ。


 玉塚氏がローソン社長に就任したのは14年5月のことだった。ローソンで長年看板経営者だった新浪剛史氏が同年10月にサントリーホールディングスに転出するために抜擢したのである。そもそも10年に玉塚氏をスカウトしてきたのも、サントリーへの転出に対応するために打った新浪氏の密かな布石だったと私は見ていたし、予言していた(「サントリー新浪社長、就任まで4年越しの深慮遠謀」本連載記事2014.11.24)。

しかし、玉塚氏の社長就任に危惧を抱いた親会社・三菱商事は、“保険人事”によってリスク対応とした。すなわち竹増氏を代表権のある副社長として送り込んだのである。三菱商事で畜産畑時代の直属上司には現社長である垣内威彦氏がいて、ローソンに移る直前には小林健社長(当時、現会長)の秘書を務めていた。竹増氏は三菱商事のこれ以上ないメイン・ストリームを歩いてきたエース人材なのだ。

(この項 続く)

2016年10月3日月曜日

コンビニ、2強生き残りかけ最終戦争突入…ローソン、玉塚氏排除で三菱商事が直接経営(2)

私はずばり、玉塚元一会長CEO(最高経営責任者)への不信任の徹底ということにあるとみる。別の見方をすれば、6月に玉塚元社長が会長に上がったときに新社長COO(最高執行責任者)に就任した、三菱商事出身の竹増貞信氏への経営権集中ということだ。

コンビニ最終戦争で三菱商事が前に出た

コンビニ業界は今年、激変の嵐に見舞われている。王者セブン-イレブン・ジャパンを傘下に収めるセブン&アイ・ホールディングス元会長の帝王・鈴木敏文氏が退任し、セブン-イレブン社長に古屋一樹氏が新社長となったのが春のことだった。

 9月にはファミリーマートサークルKサンクスを運営するユニーグループ・ホールディングスが経営統合し、店舗ブランドはファミマへの統一が決まっている。新生ファミマは一気に約1万8000店舗となり、セブン(約1万9000店)に肉薄することになった。ローソン(約1万3000店)は業界3位へと追いやられてしまったのである。

(この項 続く)

2016年10月2日日曜日

コンビニ、2強生き残りかけ最終戦争突入…ローソン、玉塚氏排除で三菱商事が直接経営(1)

三菱商事は9月16日、ローソンを子会社化すると発表した。株式公開買付け(TOB)によって50%までシェアを拡大させる。実施時期は2017年1月頃とされた。

現在、三菱商事はローソン株式の33.4%を持つ筆頭株主だが、TOBの実施におよそ1440億円の資金を投じる予定だ。

 しかし株式を3分の1以上持つと、株主総会の特別決議を否決できる。それには合併、営業権の譲渡、減資、解散、取締役・監査役の解任、株主以外の第三者への新株の有利発行、定款変更が含まれるので、実質的なオーナーとして意思決定が行える。すでに3分の1の株式を所有しているのに、多額を投資してまで過半数を握ることにした三菱商事の意図はどこにあるのか。

(この項 続く)