2017年3月22日水曜日

TV番組でヤマト運輸問題をコメント(3)

宅配料金は適正なのか?

公共料金でないので、「適正」という決めはないし、できない。個々の企業が「どれだけ利潤を乗せるか」「コストをどれだけ抑えられるか」による。

それより、ヤマトはアマゾンの価格を倍に上げれば全ての問題は解決できる。
アマゾンが値上げを飲まずに逃げ出したら、それでも問題は解決される。

アマゾン側のオプションとしては、配送量の設定、あるいは「アマゾン・デリバリー社」を立ち上げ、自社配送を始めること。ヨドバシカメラはそれを自分ですでにやって成功している。

「アマゾン・デリバリー社」はアマゾンの物流専門となるだろうから、ほかの宅配業者への影響はない。共存できる。

(この項 続く)


TV番組でヤマト運輸問題をコメント(2)

時間帯指定サービスの見直しは効果があるか?

宅配サービス、特にヤマトが直面している過重な荷物の取り扱いの解決にはならない。

一般的に、企業はオペレーション(仕事のやり方)の改善で得られる効果は年数%が限界。今回の改善策でも効率的にはその程度だろう。

抜本的な改善には、最大顧客であるアマゾンを返上すること。ヤマトの問題は、宅配サービス業界の一般的な問題ではない、その証拠に佐川急便もヨドバシカメラもうまくやっている。
  
アマゾンを返上した佐川は業績を急回復。ヤマトはアマゾンのために利益急減、社員は過酷な労働へ。「利益なき繁忙」に至っている。

(この項 続く)

2017年3月21日火曜日

TV番組でヤマト運輸問題をコメント(1)

3月21日(火)、とあるテレビ番組でヤマト運輸の労使合意についてコメントした。

16日の合意では、宅配便の時間帯サービスを見直し、アマゾンなどの総量規制(繁忙期)が合意された。また、ベアの金額も昨年より厚遇。

この合意は妥当か
宅配便のドライバーの業務は過酷なので、少しでも改善されることはいいこと。
しかし、これらの合意より同社にとって重要なのは、サービス残業の追放だろう。これは、昨年の電通事件が影響している。過去のサービス残業分として同社が200億円ほども負担するという見方もある。

(この項 続く)

2017年3月18日土曜日

ランチェスター協会の戦略研究会 メモリアホールディングス(4)

3月13日(月)のランチェスター協会戦略研究会に行ってみると、リーダーズブートキャンプのOBが2名来ていて、合流して聴講した。

さすが、ブートのOB,勉強熱心なことと関心。

「葬祭事業のランチェスター戦略」として発表してくれたメモリアホールディングス創業会長の松岡泰正氏は、3万人人口の市で地図を活用して、地域ランチェスター戦略を展開して、いわば制覇した。

東京支社を開設した、という話もあり、私が質問した。
「大マーケットとなるが、同じ手法で展開するのか、フランチャイズなどで急展開するのか?」

すると、やはり3万人商圏を想定し、特定地域にフォーカスして参入している、とのこと。それをその外に広げていく方策としては次の段階で考えるらしい。

進行中の実事例で興味深かった。

(この項 終わり)

2017年3月17日金曜日

『残念な経営者 誇れる経営者』(山田修、ぱる出版) 表紙映像

『残念な経営者 誇れる経営者』が正式タイトルとなった。

4月中旬に発刊。アマゾン:
http://amzn.asia/iaXDARW

ランチェスター協会の戦略研究会 メモリアホールディングス(3)

3月13日(月)の戦略研究会でもその後の懇親会で、竹端隆司理事長が早速ご挨拶していただいたし、田岡佳子名誉会長にご挨拶したら、久しぶりでとても喜んでいただいた。


いろいろな方と旧交を温めたりしたが、中に初対面の大学教授の方がいらした。経営学部で専攻が戦略という。

私が本を出している、ということから「どんな本を?」ということで、左記の本を例に話した。
「えー、あれは山田さんがお書きになったのですか」
と驚かれた。

「あの本は、みんなが読んでいますよ。話題になりましたね」
とも。

ここで教授が言われた「みんな」とは、経営学の学者、研究者のことだ。とても光栄だと思った。

「おかげさまで、あの本は2月に出して、その年の内に7刷りしました」
などと話した。

しかし、同書はあまり専門論文や専門書では取り上げられていない。「みんな」が教えている経営戦略セオリーに軒並み水をぶっ掛けている内容なので、私の本を評価すると先生方にとっては自己否定なことになってしまうのだ。

思わぬところで賞賛を頂いたものと受け止め、一人悦に入った。

(この項 続く)

2017年3月16日木曜日

ヤマト、業績悪化&運転手パンクの元凶・アマゾンと取引中止すべき…佐川は放逐に成功(9)

値上げがアマゾンに受け入れられない場合を「ケースB」としよう。

「アマゾンの売り上げを失ってもいいという覚悟で望む必要があるが、実際に失うと今後は人手がだぶついて、赤字になってしまう可能性がある」(「週刊東洋経済」<東洋経済新報社/3月4日号>より、ヤマト幹部のコメント)

 今がすでに業務的にパンクしているのだから、業務を個数ベースで2割減らすのは理にかなったことだ。前述したように、金額ベースでは1割ほどのことだ。そして、ケースBの有効性は13年に佐川で実証されたことでもある。

 労働組合から改善を求められている諸問題は、実は年間取り扱い個数を現状で頭打ちにするということでは解決できない。現状ですでに過大なサービス残業などが発生しているからだ。問題を解決するためには、現状で個数凍結するのではなく、減らさなければ駄目だということを直視すべきだ。

 ヤマトがアマゾンとの取引を停止したら、アマゾンをはじめとするインターネット通販、そして「配送無料」などはどうなるだろうか。

 そんなものはどうにでもなるし、状況が動けばビジネス機会をものにする企業は必ず出てくる。また、ヤマトの経営陣はそんなことまで考える義務はない。
「小手先のことより抜本的なことを」――。それが経営戦略的なアプローチであり、選択だろう。

(この項 終わり)

ランチェスター協会の戦略研究会 メモリアホールディングス(2)

私とランチェスター協会、そしてランチェスター戦略との縁は深い。

日本でランチェスター戦略が有名になったのは1970年代だが、MBA留学を前にしてマーケティングを勉強していた20代の私も、このユニークな和製戦略に納得感があり、一通り勉強した。

今週の戦略勉強会は実に第226回だったが、実は私はその200回記念講演を依頼され、2011年9月に大会場で講演させてもらった。

同協会関連のランチェスター戦略学会の福田秀人先生(元立教大学ビジネススクール教授)とは親交を頂き、経営者ブートキャンプには何回か特別講師としてご登壇いただいている。

(この項 続く)

2017年3月15日水曜日

ヤマト、業績悪化&運転手パンクの元凶・アマゾンと取引中止すべき…佐川は放逐に成功(8)

どうすればいいか。現在のアマゾン特別価格250円を、少なくとも500円に訂正する。

 この値上げがアマゾンに受け入れられる場合を、「ケースA」としよう。ケースAなら、アマゾン取り扱い個数が年間約3億個なので、約750億円の増収が見込まれる。ヤマトは黒字会社であり、かつこの増収に対して何の新規業務が発生しないのでこの750億円は「限界利益」となり、そのまま増益に回る。

 750億円は、約5万4000人いるセールスドライバーの待遇改善にそっくり回す。一人当たり139万円の年収改善余資となる。中小型トラックドライバーの年収平均は388万円で、全産業平均の489万円より低い(15年、厚生労働省調べ)。仮にヤマトのセールスドライバーの年収を388万とすると、139万を改善すれば527万円となり、ヤマトの運転手不足は一気に解決に向かうだろう。

 値上げがアマゾンに受け入れられない場合を「ケースB」としよう。

(この項 続く)

ランチェスター協会の戦略研究会 メモリアホールディングス(1)

ランチェスター戦略の総本山、ランチェスター協会は、2カ月おきに「戦略研究会」を開催している。

3月13日(月)は、メモリアホールディングスの創業会長、松岡泰正氏が講演してくれた。

同社は中京地区で葬儀サービスを手がけ、200年代に25歳で葬儀業社を立ち上げた。最初はなかなか立ち上がらなかったが、ランチェスター協会でランチェスター戦略を学び、数年で10億円年商を達成し、現在ではグループ年商45億円、300人の組織を率いている。

同氏は、葬儀サービスの展開にランチェスターの典型的な地域戦略を使った。実際に地域地図を活用し、それへの境界入れ(戦場認識)、種々のプロット入れなどによりマーケティングや営業展開の戦略作りとした、としている。

(この項 続く)

2017年3月14日火曜日

ヤマト、業績悪化&運転手パンクの元凶・アマゾンと取引中止すべき…佐川は放逐に成功(7)

というのは、14年から値上げを断続的に行ってきた経緯があるのだ。しかし、その都度競合との価格競争に巻き込まれ、長期的な単価引き下げと営業利益率低下のスパイラルとなってきてしまった。

 組合からの申し入れを受けて、今回会社が検討に入ったのが、冒頭に掲げた諸策なのだが、私に言わせればそれらにより状況が解決されるとは思えない。

 というのは、ヤマトの根本的な問題というのは、利用顧客のすべてに展開して解決すべきものではないのだ。そして解決できることでもない。

 問題となっているのは、ヤマトにとって最大不良顧客アマゾンただ1社なのである。この構造は、ちょうど1980年代に日米貿易摩擦問題が勃発したときに、分析してみれば日本の対米貿易黒字のほとんどは自動車業界だった、というのと似ている。ヤマトはアマゾン問題を解決しない限り前に進めないことを、肝に銘じなければならない。

アマゾンをヤマトは返上すればいい



 どうすればいいか。現在のアマゾン特別価格250円を、少なくとも500円に訂正する。
 この値上げがアマゾンに受け入れられる場合を、「ケースA」としよう。

(この項 続く)

2017年3月13日月曜日

ヤマト、業績悪化&運転手パンクの元凶・アマゾンと取引中止すべき…佐川は放逐に成功(6)

実際、「ヤマトの売り上げに占めるアマゾンの割合は1割を超えている」(同)、あるいはヤマトに潜入取材したジャーナリスト、横田増生氏のように、「ヤマトは現在、年間17億個超の宅急便を配達する。アマゾンの荷物はその2割にあたる約3億個」(「週刊文春」<文藝春秋/ 2017年3月9日号)という見方もある。

 問題は、その最大顧客の単価が群を抜いて安い、ということだ。ヤマトの平均運賃単価である570円台と比べると、アマゾンのそれは約250円と、半額以下とされる(横田増生氏)。もちろんこれより安い大口顧客はいないとみられる。ヤマトの顧客シェアとして、個数ベースで約2割、単価が平均の半額なので金額ベースでは約1割となるというのは整合性があるので、両方とも信じられる。

 2月に入り、ヤマトはついに労働組合から眦(まなじり)を決した申し入れをされてしまったわけだが、経営陣の言い分としては、これまで何もしていなかったわけではない、というところもあるだろう。

(この項 続く)

2017年3月12日日曜日

『残念な経営者・一目置かれる経営者』 ~間違いだらけのビジネス戦略~ 新著4月刊行

『残念な経営者・一目置かれる経営者』

~間違いだらけのビジネス戦略~(山田修、ぱる出版)

4月に刊行される。前著と同様なテーマ別ビジネス評論集。

「2016経営者残念大賞」3賞と番外賞を発表したりもしている。乞うご期待。

ヤマト、業績悪化&運転手パンクの元凶・アマゾンと取引中止すべき…佐川は放逐に成功(5)

さらにヤマトのデリバリー事業の営業利益に目を移すと、12年の410億円から、アマゾンとの取引が開始された14年には359億円へと急落し、16年3月期は382億円程度と推定されている(「週刊東洋経済」<東洋経済新報社/2017年3月4日号>)。

 トップが伸びたのにボトムが悪化する、このような状態を「悪手の経営」と呼ぶことができる。

ヤマトの取り扱い個数の2割がアマゾン



 ヤマトのデリバリー事業のなかで、アマゾンがどれだけの企業内シェアをもっているのか。13年にアマゾンとの取引を開始した時の売上伸張が、当時の年商の4.2%程度だった。これが、そのまま当時の「ヤマト内アマゾンシェア」とみることができる。
 その後、アマゾンジャパンの売上は13年に約7,500億円、15年に約1兆円と推定されている(同)。15年の伸び率は16年にはさらに加速しただろう。アマゾンのこの成長がそのままヤマトにおける宅配個数の伸びとして考えられる。

(この項 続く)

2017年3月11日土曜日

ヤマト、業績悪化&運転手パンクの元凶・アマゾンと取引中止すべき…佐川は放逐に成功(4)

佐川の場合は、「儲からない最大顧客」を果敢に放逐し、獲得した余剰経営資源で新しいビジネスセグメントに打って出た。すなわち、企業間物流であり、国際物流だ。宅配便から手を引いたということではないが、軸足を移した、ということだ。そして、それは成功している。アマゾン問題を含み、佐川は戦略的に賢い立ち回りをしたと評価する。

 一方、ヤマトの通信簿(財務)を見ると悲惨だ。

 アマゾンと取引開始直前の12年3月期のデリバリー事業は、売上が1兆145億円だった。アマゾンを獲得したことで、14年の売上は1兆987億円へと842億円のオンを果たしている。この2年間に佐川は売上を570億円減らしたので、ヤマトはアマゾン分の売上が増加し、さらにその他のビジネスが積み上がったと見ることができる。

 ちなみに16年3月期のヤマトのデリバリー事業の売り上げは1兆1119億円と、売上的には大問題を起こすほどの伸張にはみえない。しかし、そこに同社の経営戦略的な問題が潜んでいる(詳細は後述)。

(この項 続く)

3.11当日のブログ


3月11日がめぐってきた。6年前のあの日の後、本ブログに書いた記事を掲げる。亡くなられた方、被害に遭われた方に改めて粛然としたお見舞いを捧げる。

引用:
その時はみずほ総研で「結果を出す経営戦略の立て方と実践」というタイトルで出講していた。

3時近くに経験したことのない強く、長い横揺れが起こり、クラスは騒然となった。
「このビルは安全です」
とか
「エレベーターは使わないでください」
などの館内放送が鳴り響く。

携帯やメールでの連絡を奨励している内に、4時になり主催会社がセミナーの中止を決定。
しかし、交通機関が全面ストップと言うことでもあり、帰れない、帰らないという参加者が多く出た。

私も徒歩で帰宅するとなると6時間くらいか。ビルの外の歩道には帰宅難民があふれ、やがて夜が来た。

帰れない参加社とともに結局1泊。感心したのは、参加者全員に対しての清潔な毛布や、乾パンなどの非常食の用意に抜かりがなかったことだった。
「さすが、「リスク管理」などのセミナーも公開実施している研修会社、抜かりがないな」
と感心


引用終わり:

2017年3月10日金曜日

ヤマト、業績悪化&運転手パンクの元凶・アマゾンと取引中止すべき…佐川は放逐に成功(3)

佐川がアマゾンから撤退したのを潮時にヤマトと、一部日本郵便がアマゾンの宅配を受任して現在に至っている。
 売上シェアを追ったヤマトと、利益を尊重した佐川、どちらが戦略的に賢い選択をしたのか。

賢かった佐川急便、ぬか喜びしたヤマト




 アマゾンと取引した最終年に当たる12年3月期の佐川のデリバリー事業は、売上が7,664億円だった。アマゾンとの取引を中止したことで、14年同期の売上は7,094億円へと7.5%減衰し、16年3月期に至っても7,215億円とアマゾン時代まで回復していない。
 ところが、佐川のデリバリー事業の営業利益は、12年の253億円から14年には363億円へと急伸張し、16年3月期は384億円と、対売上営業利益率5.3%で着地している。アマゾンを手放したことにより、収益が大いに改善した。

(この項 続く)

2017年3月9日木曜日

ヤマト、業績悪化&運転手パンクの元凶・アマゾンと取引中止すべき…佐川は放逐に成功(2)

アマゾンというババをヤマトに引かせた佐川


ヤマトの「苦悩の元年」は2013年だった。インターネット通販の市場規模は15年に約13.8兆円に達したのだが、12年には約9.5兆円だった(経済産業省調べ、以下同)。10年からは年率10%程度伸びていたが、13年に約11.2兆円と対前年比で17%の伸張を果たし、「階段を上った」年となった。

 ネット通販の雄といえばもちろんアマゾンだが、13年まではアマゾンの宅配は佐川急便1社のほぼ独占的な取り扱いだった。しかし、アマゾンからの一個あたりの配送手数料の採算性が悪い状況を受け、あまりの宅配個数の伸張のために、佐川は手数料値上げの要請という交渉により、実質的に取り扱いを停止した。

 宅配業界は、佐川のほかにはヤマトと日本郵便が大手3社を形成している。15年の宅配便シェアはヤマトが46.7%、佐川が32.3%、日本郵便が13.8%と3社で90%を超えている(国土交通省調べ)。

(この項 続く)

2017年3月8日水曜日

ヤマト、業績悪化&運転手パンクの元凶・アマゾンと取引中止すべき…佐川は放逐に成功(1)

クロネコヤマトの宅急便の配送車
(「Wikipedia」より)
ヤマト運輸の労働組合が、2月中旬に行われた今年の春季労使交渉で、宅配便の引受総量の抑制を会社側に求めた。会社側は申し入れを真摯に受け止め、対策の検討に入った。

 検討されている対策のなかには、無料再配達などの現在の手厚いサービスの見直し、運賃の値上げ、そして宅配ドライバ-など従業員の働き方改革などが含まれている。私たち市民の便利な宅配生活に影響が出る可能性があるので、成り行きが注目されている。

 しかし、ヤマトの問題は実は上記のような総論での対策によるよりも、企業戦略的な選択で解決すると私は見ている。それはずばり、顧客としてのアマゾンの放逐だ。

(この項 続く)

2017年3月6日月曜日

出光、合併阻止狙う創業家への対応どうする(8)

そんなビジネスの状況を、昭介氏は意に介さないように見える。そんな状況が想定される昭介氏を翻意させるには、下記のようなセットが一案となるのではないか。

1.昭和シェルとの合併後も創業家が3分の1以上の株式を握り続けられるスキーム
2.創業家からの経営関与(取締役の送り込み)
3.月岡社長の交代

 そして、本問題は創業家で代替わりが起こるまで動かない、というのが、あり得る成り行きの一つの極かもしれない。

(この項 終わり)

2017年3月5日日曜日

出光、合併阻止狙う創業家への対応どうする(7)

浜田弁護士の代理人辞任という事態で、私はトランプ米大統領を想起した。

大統領に着任して、メキシコ国境での壁建設や7カ国からの入国制限など、次々と個性ある大統領令を発布し、強い反発を引き起こしている。不合理、不条理ともみえる決定は、それを発布できる権力に裏打ちされている。大統領選挙というアメリカの民主主義システムがそれを与えた。

 昭介「大統領」の場合は、株主資本主義というシステムから権力を与えられている。別の企業事例で見てみると、セブン&アイ・ホールディングスで創業家がどれだけの株を所有しているかというと、9.6%である。その持ち株分だけで、あの大経営者・鈴木敏文氏の詰め腹を切らせた。出光で昭介氏が掌握している株式は3分の1を超えている。昭介氏がまだ厳然として事実上のオーナーなのだ。

 昭介氏の行動は、出光経営陣の視点からは不合理、不条理とみえる。業界はまさに再編の波に洗われていて、JXホールディングスと東燃ゼネラル石油の統合会社、JXTGホールディングスが4月に発足する段階だ。出光・昭和シェル案件も待ったなしの状況で経営陣としては悲鳴をあげたいような段階となってきた。

(この項 続く)

2017年3月4日土曜日

出光、合併阻止狙う創業家への対応どうする(6)

その手紙で創業家側は、2つの点を指摘している。合併後、創業家の持ち株比率が相対的に下がるので、拒否権を行使できなくなる恐れがある、つまりオーナーシップが犯されること。そしてもう一つは、創業家から取締役の派遣を要望しているという点だ。

 非公開が要請されたこの書状は、昭介氏の本音に近いとみることができる。つまり利得的であり防衛的であり、当たり前の動きだ。「挨拶がない」ということでの不快感から始まった争いの落としどころとして、創業家が示した要点ではないか。

これを受け止めなかったのは、現経営陣としては創業家の経営関与を、合併を機会に将来にわたって排除したい、という判断があったのだろう。資本家である創業家と雇われ経営者側とで接点が生まれるべくもない、両者の異なる志向だ。

トランプ大統領と出光昭介氏:民主主義と株主資本主義


 浜田弁護士の代理人辞任という事態で、私はトランプ米大統領を想起した。

(この項 続く)

2017年3月3日金曜日

出光、合併阻止狙う創業家への対応どうする(5)

「韓国のS-Oil社の場合、かつては35%程度の株主であったサウジアラムコ社が、64%の株主となり社長も送り込まれ、タンカーがサウジアラビアとS-Oil社の間でしか往復しなくなっています。このような轍を踏まないようにしなければなりません」

 そのサウジアラムコ社が昭和シェルの株式を15%保有しているので、そんな昭和シェルと組むとサウジアラムコに出光も乗っ取られる、というのだ。

しかし、これはいかにも唐突な後付け的な理由であるし、そんなリスクを予想するなら資本ガバナンス的に予防する方法は十分にあるはずだ。

 昭介氏側と膠着状態に陥った出光側は、16年8月15日に記者会見を開き、15年12月、つまり問題が創業家側から提起されたときに、昭介氏から月岡社長に宛てられた手紙を一部公開した。「公開してしまった」とも言える。

その手紙には「あなた(=月岡社長)限りにしてください」とされていたというのだ。実質オーナーからのそんな制限つきの手紙を公開する経営陣の無神経さには、呆れるばかりだ。完全に喧嘩を売っている。

(この項 続く)

2017年3月2日木曜日

出光、合併阻止狙う創業家への対応どうする(4)

昭介氏は出光グループを創業した故・出光佐三氏の長男で、創業家直系の総帥だ。出光は上場企業ではあるが、創業資本家である出光家は経営にも深く関与してきた。

昭介氏は01年に代表権のない名誉会長に退くまで、第5代社長を12年間、会長職を8年も務めている。同社上場前には40%以上もの株式を所有する筆頭株主だった。そのような来歴から、同氏のオーナー意識は現在に至るまで強固なものがあると推察される。

 自らが任命したわけでもない従業員社長である月岡隆・現社長などは、昭介氏にとっては、その「出光ヒエラルキー」の中では「たまたま任せてやっている若造番頭」くらいのものでないのか。

 昭和シェルとの経営統合は、月岡経営陣により企図追及されてきたプロジェクトだ。昭介氏が反対を掲げたのは、当初「外資である昭和シェルとの社風があまりに違う」ということだった。しかし本音としては「オーナーである自分の了解も得ないでそんなことを始めるなんて」というところが強かったのではないか。つまりメンツの問題だ。

(この項 続く)

2017年3月1日水曜日

出光、合併阻止狙う創業家への対応どうする(3)

進展を模索した浜田卓二郎弁護士も辞任



 2月7日の決算記者会見で出光側が示した会談前進への観測は、むなしい燭光だったようだ。同9日に出光興産の創業家代理人、浜田卓二郎弁護士が代理人を辞任したことが明らかとなったのである。

 浜田氏は同日午前に昭介氏と面談し、今後の方針を話し合った。あくまで推測だが、昭介氏としては、「拒否を続けていた」としてきた出光側との協議が「実は再開されていた」と発表され、おもしろくなかったのではなかったか。浜田氏は同日付で創業家の資産管理会社、日章興産の代表取締役も辞任した。いわば、縁を切ったというかたちだ。

結局は気に染まないだけのこと?


(この項 続く)